Reno Air Race:リノ・エアレース
リノ・エアレースFAQ
- リノ・エアレースとは?
年に一度、9月中ごろ、ネバダ州リノ市郊外のリノ=ステッド空港(Reno Stead Airport) で行われる、飛行機によるスピード競技+各種の地上・飛行展示のある飛行機のお祭りです。
- エアレースってどんなの?
現在リノで行われているのはパイロン競技と呼ばれ、地上約 10m の高さに立てた標識(パイロン)でコースを設定、一周 3〜8 マイル(5〜13Km) のコースを周回して速度を競うものです。機種ごとにフォーミュラ1(100hp エンジンの小型自作機)、バイプレーン(200hp エンジンの複葉機)、T-6(ノースアメリカン AT-6 テキサン練習機)、スポーツ(最大 800hp 程度の高速レシプロ機)、ジェット(主に退役した軍用ジェット練習機)、アンリミテッド(レシプロエンジン無制限クラス)などのクラスに分かれており、ジェットやアンリミテッドの最高速度は 800Km/h に達します。
- エアレースについて、もう少し詳しく。
リノはタイムトライアルではなく、一斉スタートの抜きつ抜かれつのレースです。一回の出場機数は多くて 15 機。周回は 10 周未満で、1戦あたり長くても 10 分ほどです。機種ごとの「クラス」分けの他、速いものから順にゴールド、シルバー、ブロンズと呼ばれるグループに分かれ、朝から「フォーミュラ1ブロンズ準決勝」「バイプレーンブロンズ準決勝」「フォーミュラ1シルバー準決勝」のように何度もレースを繰り返しながら、最終日曜日の決勝戦で順位を確定するシステムです。
- エアレースって何が面白いの?
高度 10m そこらの低空を飛行機が集団で、しかも全速で抜きつ抜かれつのレースをやるというイベントは世界中でもリノでしか見ることができません。そしてレース一番の人気は第二次大戦時の戦闘機を改造した「アンリミテッド」クラスで、ゴールド優勝候補では定格出力3倍くらいの超高ブースト運転で飛びます。「フゥーン」という甲高い爆音はリノでしか聞くことができません。
そういった「技量とメカニックの限界に挑むモータースポーツ」としての魅力のほか、レーサー機ごと・パイロットごとに歴史もあれば事情も野望もあり「去年までは誰々の乗る××というレーサーが△連勝だったが、今年はオーナーが変わってパイロットが○○に代わり、一方去年欠場だった■■が参戦する。さぁ、今年勝つのは誰の乗るどの機体だ?」というようなヒューマンドラマとしての魅力もあります(これは何年か通ったり、ネットで情報を収拾しないとわかりにくい世界ですが、長年通っているファンにはむしろそっちが魅力になっています)。
- どうやって観戦するの?
レースは会場のリノ・ステッド空港北側の荒野で行われます。レース期間中、ステッド空港の滑走路南側には観客席が築かれますので、入場料を払って会場に入れば自由席で、あるいはより中央に近い指定席(追加料金)から観戦できます。レース期間中にはキャンピングカーで荒野に乗りつけ、キャンプを張ってタダ観戦する人達もいますが…。
- 入場料って幾らくらい?
日によって違いますが 2014 年自由席料金で $30〜$40 くらい。詳細はリノ・チャンピオンシップ・エアレース公式ページ(http://airrace.org/)を参照してください。
- 開催時間は?
最初のレース(フォーミュラ1)が 8:30AM、最後のアンリミテッド・ゴールドが 4:30PM くらい。エアショウとしてのメインイベントは 10:00AM 頃から始まります。
- 古い消防車が会場を走り回ってるのは何?
リノにある自動車博物館の宣伝を兼ねたもので、各レース終了後に勝利チームを乗せて観客席前を往復しています。手を振り拍手で迎えてあげましょう。
- 持って行けば良いものは?
カメラ・双眼鏡・サングラス・帽子・日焼け止め(日差しが強烈)・折り畳み傘(日傘に使えるほか、ネバダ名物の天候急変に備えて)、タオル(汗拭き用というより首に巻いて日焼け防止)・リップスティックやクリーム(リノは高地砂漠で物凄く乾燥している)・長袖の上着(早朝は冷える)といったところ。
- 宿は何処に取れば?どうやって会場まで行くの?
リノ・ダウンタウンには Harrah's, Circus Circus, Sands, El Dorado, Silver Legacy などのカジノホテルがあり、代表的なホテルからはリノ・エアレース会場までのシャトルバス(有料)が運行されています。これも詳しくは公式ページを参照してください。リノの玄関口・リノ=タホ国際空港(Reno-Taho International Airport)からホテルまでは、それなりに名のあるカジノホテルならば(モーテルでなければ)無料のシャトルバスが運行しています。
Travelodge や Motel8 などのモーテルを利用する場合は宿泊料は安上がりですが、移動はレンタカーが基本になります。アメリカ特に西海岸には、バスや電車などの公共交通機関がほとんどありません。
- エアレース以外の見所・名物は?
リノの自動車博物館は世界屈指の規模を誇り、主に米国産の珍車名車が並べられています。それ以外は…はっきり言って、リノ・ダウンタウンにはラスベガスほどのアトラクションは無いんですよねぇ。レンタカーで足を伸ばして西南へ行けば別荘リゾート地として有名な、青い水をたたえる高地カルデラ湖、レイク・タホがあります。
食べ物については…典型的なアメリカの片田舎です。日本食も中華料理も探せば大抵何でもあるけれど、あまり高望みはしないように。みたいな感じ。
リノ・エアレース観戦記
リンク
気まぐれ用語集
- ホームパイロン
観客席前に立つ、「RENO」の赤文字の入った白と水色のチェッカーのパイロン。公式にはスポンサーの名を関して「ブライトリング・ホームパイロン」と呼ぶ。
- ホームストレッチ、バックストレッチ
リノレースのコースはおおむね楕円形で、観客席前と反対側に直線(に近い)ところがあり、前者をホームストレッチ、後者をバックストレッチと呼んでいる。
- フーバー・ガルチ
Hoover's Gulch。観客席右手にある、観客席からは見にくい窪地。エアショウの神様ボブ・フーバーが愛機 P-51 で離陸直後にこの窪地に入り、「消えた?墜落?!」と観客を焦らせておいて急上昇するという演技を定番にしていた事にちなんで名付けられた。
- バレイ・オブ・スピード
速度の谷(Valley of speed)。バックストレッチの別の名前。地形が緩い下りになっており、突っ込みをかけて速度を稼げるのでこの名が付いた。
- ホワイトフラッグ
「あと1周」を示すためホームパイロンから振られる白旗。かつては最終1ラップのことをガン・ラップ(Gun Lap)と読んでいたが、いつの頃から呼ばなくなった。
- チェッカーフラッグ
「ラップ完了」を示すためホームパイロンから振られる白黒旗。ただし先頭でチェッカーを切った機体が優勝と限るわけではなく、レース終了後のパイロン審判からの報告によってペナルティが課され順位が下がることもある。会場アナウンスではチェッカーを切った順位を「アンオフィシャル・リザルト」と呼ぶ。
- カット
パイロンカット。パイロンの内側、あるいはパイロン頂上より低い場所を飛んだ場合や、相手機より低高度や内側から抜いた場合に課せられるペナルティ。
- プルアウト
レース中に何か異常や危険を感じたパイロットが、急上昇してコースから離脱すること。
- ブロー
エンジンブロー(Engine Blow)あるいはブローアウト(Blow Out)。コンロッド折損、クランクケース破断、シリンダヘッド吹き抜け、ピストン溶解など、エンジンが「吹っ飛ぶ」ほどの損傷。
- デッドスティック
Dead Stick (Landing)。エンジン停止状態での不時着。
- ラップアウト
周回遅れで抜かれた機体は、先行機がチェッカーを切ったあとは規定周回未了でもレースを中断する権利がある。時間や燃料・エンジン負担を節約するため、大抵の機体は周回遅れで抜かれるとラップアウトする。「あれ?あの機体さっき抜かれた筈なのに、なんで2位になってるの?」と、何の解説もなくリノ・エアレースを見ていれば最初に疑問に感じるところかもしれない(僕はそうでした)。
- DNF
Do Not Finish。トラブルでのリタイヤ、あるいはラップアウトによって規定周回未了でレースを中断したことを差す。スタートできなかった場合は DNS になる。
- ピット
会場に入って左側の、レースチームが駐機しているエリア。レース期間中に入るためには追加料金を払ってピットパスを買う必要がある。機体写真を間近に見ることができ、チームメンバーやパイロットと話ができ、チーム直販グッズが買えるなどのメリットがある。
- ヘリテイジ
会場に入って右側の地上展示コーナー。オーナーが自慢の機体を持ち寄っての人気投票が行われている。米軍機の地上展示コーナーやジェットクラスのピットに隣接。
- グランドスタンド
会場に築かれた観客席。左から順番にセクション番号が振られており、セクション1、2は予約席。
- セクション3
リノ・エアレース非公式ファンクラブ。オレンジ色のTシャツを着用、自由席のセクション3に固まっており、飛行機やレースチームが前を通るたび手を振り拍手し鳴り物を鳴らして応援するキチガイ集団。
- スタック・マイク
Stuck Mic あるいは Dead Mic。会場に航空無線機を持ち込んだ人が送信ボタンを押しっ放しにしてしまい、無線管制に支障をきたすこと。会場アナウンスが「We have stuck mic, stuck mic, please check your radio!」と叫んだら無線機を(持っていれば)チェック!可能なら電源を切ろう!
- ADI
防爆噴射(Anti Detonation Injection)。いわゆる水メタノール噴射。高ブースト運転に伴うノッキング防止用に、50% メタノール水溶液を混合気に混ぜてエンジンに噴射すること。自動車レースでは更に強烈な ADI としてニトロ(亜酸化窒素、N2O)も使われるが、エンジンを傷めるため現在のリノ・エアレースは殆ど使用されていない。
- スプレー・バー
Spray Bar。ラジエターやオイルクーラーに水を散布して冷やすシステム。エンジン吸気に水を噴射する ADI、いわゆる「水噴射」とは意味も機能も異なることに注意。
- ボイルオフ・クーリング
Boil-Off Cooling。蒸発冷却方式。ラジエターやオイルクーラーを完全な内装式にして加圧した冷却水を循環させ、外部で冷却水を減圧蒸発させることで冷却するシステム。水蒸気を放出する小穴だけを残して冷却吸気口のインテイクが閉塞される。一部のレーサーが採用している。
- クリップド・ウィング
Cilpped Wing。戦闘機改造のアンリミテッド・レーサーで、原型機よりも翼端を切り詰めること。
- R-1820
カーチス・ライト R-1820。定格約 1200 馬力の空冷星型 9 気筒エンジン。B-17 爆撃機を初めとして多くの機種に搭載された傑作エンジン。リノでは FM-2 (グラマン F4F ワイルドキャットの発展型)に搭載されている程度。
- R-1830
プラット&ホイットニー R-1830。定格約 1200 馬力の空冷星型 14 気筒エンジン。DC-3 旅客機 (C-47 輸送機)を初めとして多くの機種に搭載された傑作エンジン。リノではロシア製 Yak-11 練習機に搭載している場合が多い。
- R-2000
プラット&ホイットニー R-2000。定格約 1500 馬力の空冷星型 14 気筒エンジン。大口の採用例は DC-4 旅客機(C-54 輸送機)のみ。リノではロシア製 Yak-11 練習機に搭載しているものがある。
- V-1710
アリソン V-1710。定格約 1300 馬力の液冷V型 12 気筒エンジン。P-38, P-39, P-40 などに搭載された。リノではロシア製の Yak-3 / Yak-9 に搭載している場合が多い。
- R-2800
プラット&ホイットニー R-2800。定格約 2000 馬力の空冷星型 18 気筒エンジン。F4U コルセア、F6F ヘルキャット、P-47 サンダーボルト、DC-6 旅客機などに搭載された。レースエンジンとしては安定しているが馬力が今ひとつ物足りない印象。「チェックメイト」は原型 800hp の小柄な Yak-11 に R-2800 を積むという無茶をやっている機体。
- R-3350
カーチス・ライト R-3350。定格約 2500 馬力の空冷星型 18 気筒エンジン。B-29、A-1 スカイレイダー、DC-7 旅客機、P-2 対潜哨戒機などに搭載された。レースエンジンとしては「レア・ベア」の心臓として大きな実績を誇り、シーフューリーの多くも搭載しているが、安定度は R-2800 より若干劣る印象。
- R-4360
プラット&ホイットニー R-4360。定格約 3000 馬力の空冷星型 28 気筒エンジン。B-377 旅客機、C-124 輸送機などに搭載された。レースエンジンとしてはいささか大きすぎ・重すぎるのだが安定して大出力が得られるため、これを搭載した「ドレッドノート」が安定した上位入賞成績を収める理由と言われる。
- セントーラス
ブリストル・セントーラス。定格約 2500 馬力の空冷星型 18 気筒エンジン。「スリーブバルブ」という独特の吸排気機構を持つ。ホーカー・シーフューリーのオリジナルエンジン。これを積んだシーフュリーは前から見て時計回りに回転する5枚羽のプロペラを付けていることで識別できる。
- マーリン
ロールスロイス・マーリン。定格約 1600 馬力の液冷V型 12 気筒エンジン。アメリカではパッカード V-1650 としてライセンス生産された。P-51, スピットファイヤなどに搭載された。レースエンジンとしては軽量高出力、無茶をすれば 4000 馬力ほどを引き出せるが、一線を超えるとあえなく破裂して不時着となる「ガラスの心臓」でもある。
- グリフォン
ロールスロイス・グリフォン。定格約 1800 馬力の液冷V型 12 気筒エンジン。スピットファイヤ後期型、シャックルトン哨戒機などに搭載された。シャックルトンは戦後も長く現役だったため二重反転プロペラ付きグリフォンが比較的入手しやすく、パンクしがちなマーリンに換えてこれを P-51 に搭載したレーサーが3機種存在した(現存するのは「プレシャス・メタル」のみ)。
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