リノ・エアレース観戦記 2014年 9/13 土曜日

土曜日は早朝６時起き。開場の７時前にはゲート前に着き、少し並んでから開場に入ります。昨日はぜんぜん見ていなかった会場右手の地上展示機コーナーをチェック。ヘリテージ(個人所有の古典機展示・投票コーナー)が賑やか。ぴかぴかのFG-1コルセア(日曜日の人気投票で一位獲得)が追加で搬入される現場にも遭遇しました。でもミリタリー(米軍現用機)は昔にくらべると寂しい…A-10が２機とUH-60、CH-47、柵の向こうにF-22。昔はKC-135やC-130、F-16やらFA-18が柵もなくゴロゴロ停めてあったんだけどなぁ。2011年の9.11事件で少し変わって、でも決定的に変わったのは2011年の「ギャロッピング・ゴースト」墜落事故以来かなぁ。墜落地点がもう少し東寄りだったら、地上展示機コーナー直撃だったもんなぁ…。
８時頃にスタンドへ移動、その後ずっと「セクション３」にへばり付きでレースとエアショウを観戦します。時々頃合を見てはスタンドを降り、トイレに行ってビールとジャンクフードを買ってはまた上がってくるのを繰り返していると、近くのファン(「フライボーイ」ディック)から「あんた、さっきからずっと何か食ってるな。エアレースで体重が増えるんじゃないのか？」とからかわれました(彼とは互いのＴシャツにサインし合う仲になります)。
セクション３は非公式(と言いつつ半ば公認)のリノ・エアレースファン集団。スタンド自由席の一角にオレンジ色のＴシャツを来た連中が集まり、演技が決まったりスタンド前を飛行機がタキシングするたびに鳴り物盛大に吹き鳴らし旗を振って大騒ぎするという、野球で言うとトラキチみたいな、自他共に認めるエアレースキチガイの集団です。私も以前は眺めているだけだったのですが、昨年２０１３年に思い切って近づいて話を聞き、オレンジＴシャツを買ってからはセクション３を根城にするようになりました。

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正午のオープミングセレモニー前、月曜日の事故で亡くなったLee Bahel氏の追悼が行われます。スポーツクラス４機とジェットクラス４機が「ミッシング・マン・フォーメーション」でフライバイ、ジェットの１機が追悼を込めてスポーツクラスのコースを一周したあとスモークを曳いて上昇します。我らがセクション３も家族とチームに追悼の意を伝えるべく、Ｔシャツを回して全員の寄せ書きを集めました。私はGP-5の機影を描いて、その下に日本語で名前をサインしました。

土曜日の見所はアンリミテッド・ゴールド予選に集中しました。十数年の不調と不運が嘘のように快調に飛ばすNo.5ブードゥーを駆るスティーブン・ヒントン、そのスティーブンが２年前まで乗り４連勝を挙げたNo.7ストレガにオリジナルのオーナーパイロット、ビル「タイガー」ディスティファニーが乗り最下位からの挑戦。タイガーは例によってスタート後も高度を保ったまま半周ほど回り、ホームストレッチ前で急降下してブードゥーを急追、数機長後ろにまで迫ります。追撃を避わすべくフルブーストで逃げるブードゥー、本気チューンのレーシング・マーリンを積んだムスタング２機のガチバトルなんてもう何年ぶりだろう…私にとっては99年に観た「ダゴレッド」と「ストレガ」の戦い以来かも知れません。そのあと何度かこういうチャンスはあったけど、大抵は最終ラップまで持ちこたえずどちらかが煙を曳いてプルアウトしていました。特にストレガは昨日の予選で大分無理をしていたから、例によって途中で脱落するんじゃないか…興奮の坩堝となったセクション３の声援を聞きながら、私はたぶんダメだろうと思っていました。
しかしストレガは珍しく粘り、ホームパイロン前に白旗が立った最終ラップでなおもブードゥーを追撃します。そして最終コーナー、「タイガー」はストレガを限界まで押し込んで勝負を仕掛け、紫と白のムスタング２機はスピナーを並べてホームパイロン前を通過。グランドスタンド前のメインカメラ映像でも勝敗を判断しかねるほどの僅差！スタンドからは「やったぜ！」「タイガー！」「ストレガ！」と割れるような声援。
…が、その後ストレガはメイデイコール、上空周回してエンジンを冷やす「クーリング・ラップ」を回ることなく滑走路に滑り込んできます。タイガー爺さんまた無茶しやがって、ストレガ整備チームは今日も徹夜だな…と思いながら会場を歩いていると、再びＨさんたちと遭遇。「凄かったですねー」「さすがタイガーですね。…でも、あれ、失格判定らしいですよ」「え？！」「パイロンカットらしいです」「またですか！」あー、やっぱりタイガーはタイガー。恐れを知らぬ攻撃的なレーシングスタイルと、エンジンブロー・パイロンカットで彩られた華々しいレース歴。「メイデイかかってたみたいですが…」「戻ってきた機体を見ましたが、昨日よりはマシに見えましたよ。ヤバそうだったから早めに降りたみたいです」「じゃあ明日はまた最下位からの突撃ですね」と、日曜の対決に期待を残して土曜日が終わります。

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