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ロッキード XP-49 P-38 の発展型

 いつの世でもエンジニアは技術の限界に挑み、現状の壁を破る夢に取り憑かれるものです。日本では数々の無理を重ねて実用化した「誉」エンジンの功罪についてよく議論されますが、アメリカにも「夢のエンジン」はありました。XP-49 は「夢のエンジン」の犠牲となった数多い試作機の一つです。

 事の発端は 1939 年 3 月、米空軍が発令した「Circular Proposal 39-775」計画にあります。この計画の目的は高性能双発迎撃戦闘機にあり、ロッキードには P-38 のエンジンを液冷24気筒スリーヴ・バルブ形式のプラット&ホイットニー XH-2600 H型対向 2000hp に換装した発展型を作ることを指示されました。XH-2600 は通称 X-1800 ともいい、構造的はイギリスのネイピア(Napir)社における新型エンジン(のちのダガー(Dagger)やセイバー(Sabre))に強く影響されたもので、小型軽量で正面面積が小さい割に大出力、という虫の良いことばかりのスペックを歌っていました。結局 X-1800 の開発は失敗し多くの米軍機がその道連れとなるのですが、それはまた後のこと。
 ロッキードはこの提案を退けたので X-1800 失敗を見抜く慧眼があったのかと思いきや、彼らが代替案として提示したのは究極のゲテモノエンジン・ライト R-2160 だったのです。R-2160「トーネード(Tornado)」は液冷星型6列42気筒 2500hp という意欲的というか常識外れのスペックを持ち、数多い「夢のエンジン」の中でも最も過激な代物でした。ロッキードの提案によれば XP-49 は排気タービン付き R-2160 双発で高度 20000ft(6096m) において 500mph(805Km/h) を出すはずでした。
 軍はこの夢のようなスペックに満足したのか競作の XP-50 を退けて 39-775 開発計画にロッキードを指名したのですが、丸一年経った 1940 年 3 月になっても肝心のエンジン開発がちっとも進みません。新鋭戦闘機の開発を急ぐ軍は「夢のエンジン」を見限り、もっと堅実なコンチネンタル XIV-1430(離昇 1350hp, 1600hp/25000ft)への換装を指示します。1500hp 級を狙って開発された XIV-1430 はアメリカでは珍しい倒立V型12気筒の液冷エンジンで、ロッキードのエンジニアが再計算したところ XIV-1430 双発でも高度 25000ft(7620m) において 458mph(737Km/h) を達成できると推測されました。

 XP-49 試作機は 1942 年 11 月に初飛行を迎えましたが、テストの結果は散々でした。何より肝心のエンジンが離昇 1000hp くらいでアップアップしてしまい、最高速度は高度 15000ft(4572m) において 406mph(653Km/h) と P-38 初号機にも劣る性能しか出なかったのです。加えて必要以上に複雑な XIV-1430 エンジンは動かすたびにトラブル続出の有様で、愛想を尽かした軍は XP-49 を見捨てて開発を打ち切ってしまいました。X-1800 や R-2160 に比べれば堅実に思えた XIV-1430 も「夢のエンジン」の一つだったのです。XP-49 以外にも マグダネル XP-67 が XIV-1430 の犠牲になっており、計画だけですが、ベル XP-52カーチス XP-53ロッキード XP-58 の運命も狂わせています。

 XP-49 は P-38 の機体構造を丸々流用しただけに外見はそっくりで、左右のエンジンが逆回転で「外回り」にプロペラを駆動する点も P-38 譲りです。大型のエンジンを搭載したためエンジンナセルは延長されており、方向安定性を向上するため垂直尾翼の高さが P-38 に対し約 20cm 増加されていました。
(文・ささき)


緒元(XP-49)
製作1942年
生産数1
乗員1
全幅52ft(15.85m)
全長40ft 1in(12.22m)
全高10ft 5in(3.18m)
主翼面積327.5ft2(30.4m2)
乾燥重量15475LBs(7019Kg)
全備重量18750LBs(8505Kg)
武装12.7mm 機銃×4+20mm 機銃×2(機首)
発動機コンチネンタル XIV-1430-13/15 液冷12気筒+排気タービン 1350hp
最高速度406mph(653Km/h) 高度 15000ft(4572m)
実用上昇限度37500ft(11430m)
航続距離1800ml(2896Km) 増槽使用時


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