Warbirds Banner(2.9K)
カーチス YP-37 P-36 の発展型 排気タービン付きアリソン搭載

YP-37(6.8K)YP-37
この写真ではわかりにくいが、排気タービンは機首左下面に装備している。地上での前方視界は非常に悪く(当たり前だ)テストパイロットからも文句が出たほど。


 1930 年代、ヨーロッパにおける新世代戦闘機はダイムラーベンツ(Bf109)、ロールスロイス(スピットファイヤ)、イスパノイザ(M.S.406)等、大馬力の液冷エンジンを搭載するのが流行していました。この流行に乗り遅れまじと、米軍は 50 万ドルの巨費を投じて国産の大馬力液冷エンジンを開発しました。これがアリソン V-1710 V型対向12気筒です。
 アリソン・エンジンの完成をみた米軍は、これを搭載した戦闘機の開発を各社に命じました。その中で最も対応が早かったのが戦闘機の名門カーチスです。カーチスは 1937 年に既に完成していた空冷エンジンの P-36 を改造し、排気タービンを備えたアリソン V-1710-11 を搭載した XP-37 を送り出しました。
 しかし、その手法はあまりに安直なものでした。液冷エンジンや排気タービン、中間冷却器などの補機類を納めるスペースを確保するため、安直に操縦席の位置を後退したのです。一見エアレーサーと見紛うような異様なスタイルですが、前方視界の不良は言うまでもなく操縦性・安定性ともに不足し、改良型 YP-37 では後部胴体を 56cm 延長したものの根本的解決には至らず、排気タービンの不具合も頻発したことから結局試作のみに終わりました。

 しかし XP-37, XP-38, XP-39 と三連続でアリソン・エンジン搭載の戦闘機がいずれも排気タービン付きで試作されているのは興味深いですね。アリソンは機械式過給器の性能が悪くて全開高度が低く、これを搭載した P-39, P-40, P-51A のいずれも高々度性能の低下に悩まされていますが、もともとアリソン V-1710 は排気タービンとの組み合わせを前提に設計されていたのかも知れません。P-38 だけが成功したのはタービンの装着位置に秘密がありそうです。比較的後部にタービンを置いた P-38 では配管ダクトが排気冷却器の役割を果たすのに対し、XP-37, XP-39 のタービンはエンジンの位置に近すぎて過熱しやすいように思えます。


緒元(YP-37)
製作1938年
生産数13機+1機(YP-37+XP-37)
全幅37ft 4in(11.38m)
全長32ft 10in(10.01m)
全高9ft 6in(2.90m)
主翼面積235ft2(21.8m2)
乾燥重量5723LBs(2596Kg)
全備重量6890LBs(3125Kg)
武装7.62mm 機銃×1+12.7mm機銃×1(機首)
発動機アリソン V-1710-11 液冷14気筒+排気タービン 1150hp
最高速度340mph(547Km/h) 高度 20000ft(3200m)
航続距離870ml(1400Km)

[戻る]