第二十章
夜は静かに流れて
S:さて、これで一応代表的な超一級の戦艦たちは出したね
★:あとは未成艦や、既存艦艇になりますね・・・
S:まあ、未成のフネはどうでもいーやな
☆:じゃあ、既存戦力は?
S:改装とかは扱ったよね
じゃあ、英国を例にして
戦艦戦力とはどういった意味が有ったのかを考えてみよう
S:まずは第一次大戦時の英国の戦力を考えてみよう
連中は戦艦級を70隻も持っていて
これは彼らが保有していた軽巡洋艦の総数よりも多いぐらいだった
勿論、中にはオンボロも沢山有るんだけど
よって、彼らの艦隊戦力の役割としては
雑用を軽巡洋艦が、殴り合いを戦艦が行う事で
まあバランスの取れた運用が可能だった
★:これは程度次第では有りますが、各国とも似たような感じですよね
S:軍縮で戦艦が大量に削減され
ロンドン条約で英国の保有数は15隻になってしまった
★:1/5ですね
S:仮想敵国とかも少なくなってるのは事実だけど
ある程度の数が無いと運用に支障が有るのは判るよね
英国の場合、本国、地中海、そして東洋艦隊に分散させるから
単純に5隻ずつ置くと、常時1乃至2隻は何らかの理由で使えない事があるから
各方面で確実に使える戦力は3隻か4隻になってしまう
★:戦隊を一つか二つ構成するのがやっとですね
S:つまり、どの方面でも、ローテーションに苦労するわけだ
そうなると戦艦を単艦で使いまわしたりして穴埋めする
★:敵が複数の戦艦を投入する可能性が有る場合には危険ですね
S:最新鋭戦艦でも倍の戦艦に当たったら危険だ
どの方面でもそうなんだけど、結局は数隻の戦艦しか投入できず
数が無いから積極運用に足かせが入るし
入念な包囲網を構成できないから敵艦に逃げられ易くもなる
★:つまり、戦艦は役に立たない戦力になってしまいますね
S:勿論、これらは各国の戦力バランスの問題も有るんだが
日米が艦隊決戦主義に走った側面の一つがコレだったのかもしれないと思う
各方面で色々やるにはそれこそ20隻とか30隻の戦艦が必要なんだ
10隻しか無い場合、それをばらして使ったら各個撃破に繋がる
もう一つの側面は機動力だ
数を補うには機動力しかないし、そして大半の戦艦にはその機動力も足りなかった
各方面で数隻しか居ない戦艦に併せてゆっくり走るより
戦艦を無視して高速で突っ走ったほうが色々と有効だ
☆:敵に戦艦が出てこない限り問題無いですよねっ
S:そう、そして、敵味方双方の戦艦は殆ど出てこないから
つまり戦艦を気にする必要性も弱い
★:そしてその運用に追随できる高速な新型戦艦や巡洋戦艦だけが
活躍の余地を与えられるに留まったと
S:こうした問題点は前から多分判っていたんだろう
だから基本的に何処の国の新型戦艦も高速になっている
そうしないと使い道が無いというわけだ
日米は決戦という前提条件があるから速度に対する要求は比較的低いけど
他の国の場合、つまり強力な巡洋艦として使う側面が有ったともいえるし
見方を変えるなら、日米は強力な巡洋艦戦力を持っていたので
そういった高速な戦艦に対する要求順位が低かったのかもね
★:日本は金剛を持っていましたし
米国は、それに対抗する意味も有ってアイオワを建造しましたが・・・
S:汎用戦力としてみた場合
高速戦艦や巡洋戦艦というのは中々に使える存在だ
もう一つのスタイルが、そこそこ高速な強力な戦艦という方向
★:大和やサウスダコタですね
S:そして、何でも出来る汎用高速戦艦
☆:ヴァンガードやアイオワっ
S:問題は、汎用高速戦艦はえらくデカイって事だね
敵の殴り合い専門のバケモノとも戦えないと困るし
かといって汎用性も欲しい、図体がでかいと汎用性も下がってしまうし数も揃わない
☆:はぇ〜、何が正解だったのでしょう?
S:相手が居る事だから正解は無いと思うよ
ただ、大事なのは、一つの艦で全てを満足させるのは無理に近いって事だな
限りなく正解に近いのはヴァンガードなんだが
あれって、つまり旧式のR級戦艦から主砲を召し上げて
新造船体に載せるという形で数を揃えるつもりだったから
居なくても困らない旧式戦艦という
言わば一級品として通用する主砲ストックが有ったから出来る技で
☆:あははーっ、他の国では真似できませんねーっ
S:だろ、別の見方をすると、R級の大規模近代化改装だとも言える
どっかの貧乏な国は既存戦艦を作り直ししたけど
時間と予算と条約なんかの政治的問題をクリア出来るなら
英国のやった方法は最高だろーな
新造時のR級
第二次大戦時
★:・・・・バルジがついて、細かい装備が増えて、後は対空火器とかが増えたぐらいですね
何らかの抜本的な大規模改装は行ってないような感じがします
☆:手の打ち様が無いほどボロい艦だったのですか?
S:火力は15インチ8門だし、防御力もちゃんと備わってるよ
だけど最初から低速な戦艦だったので
改装して馬力を上げたくても大出力エンジンを入れる場所が無かったんだな
☆:それで見切りをつけちゃったんですねっ
★:ですが、いつでも通用するという技ではないです
S:だから正解はその国の数だけあるし、時期や条件でも変わってくると思う
今回取り上げた連中は、そういった側面でも見て欲しい
彼らがどういった役割を求められていたのか、どうしてそうなったのか
☆:でも・・・
なんか、聞いてると・・・
早い話巡洋戦艦をいっぱい作るのが正解だってほざいてるように感じますけどーっ
S:るせいやい(笑)
俺は装甲巡洋艦とか、軽巡洋艦とか、巡洋戦艦とかが大好きなんだーっ
★:自称大艦巨砲主義者、その実は機動力命のオヤジだったと・・・
愛しの美姫 HMSレナウン
たいとる
第19章
あとがき