第十一章
いんたぁみっしょん2

武器多種多用、準弩級戦艦薩摩




S:さて、ここらで戦艦の武装、それも主砲以外を考えてみよう
☆:主砲を除くと、副砲、高角砲、それに魚雷ですねっ

S:まずは、主砲以外の武器の役割だ
★:ドレッドノート以前は、全ての武器を敵艦に向けたと記憶しています
S:正確に言うと違う
  ドレッドノート以前の戦艦、つまり前弩級や準弩級の戦艦は
  主砲(中間砲)副砲、それに水雷艇撃退砲を備えていた
  最後のは補助砲とも呼ぶ事がある
  今の漁船やモーターボートよりは立派な物だったりするのが突っ込んでくるので
  それを始末できる武器として、25mm〜47mm級の第二次大戦時の対戦車砲級の武器が搭載されていた
  日露戦争ぐらいになると、水雷艇よりは駆逐艦が主要対象となって、76mm級の速射砲が搭載される事が多くなる
☆:副砲以上の武器が、つまりは敵艦を攻撃する武器で
  補助砲は軽艦艇からの防衛用だったんですね
S:ドレッドノートは主砲と76mmの補助砲しか搭載していない
  つまり、ここで明確に武器の方向性が判るね
★:以降、補助砲が大型化して再度副砲となりますね
  これは何が理由なのですか?
S:駆逐艦とかが大型化して有力化したのが理由だ
  76mm級だと威力の面で駆逐艦を始末するのに足りない
  砲を沢山積んでも命中数がそれに比例しないから
  一定の重量で砲を装備する場合
  小さい奴を山のように積むより適当に大きい奴を命中率の無難なレベル分搭載する方が良い
  もう一つは射程距離だ
☆:魚雷とかの射程が長くなったので、遠距離で撃破する必要が出てきたのですねっ
S:『魚雷』本編でも語ったけど
  撃たれたら回避運動を強いられる、これだけでも雷撃は一定の成功だ
  つまり副砲は魚雷を発射される前に突っ込んでくる駆逐艦を始末できないと困るわけだ
  そして、最後の理由が軽巡洋艦の登場と発達だね
★:本編では、あらゆる状況で軽巡洋艦が突入してくる可能性を言ってましたが・・・
S:つまり今までの主砲塔の上とかに補助砲を括りつけた場合
  主砲と一緒には使えないので、軽巡とかが突っ込んできた場合対応が出来ない
  そのためには主砲と一緒に使える場所に装備する必要があったんだな
  そして軽巡洋艦は装甲を持っている、貧弱な装甲とはいえ、防御されている
  これを小口径砲で短時間に始末できるのかどうか、それも遠距離で
☆:かなり困難ですねっ
S:それが副砲の威力が向上した理由だ
  そして重量は別の意味も持ってくる
  威力を上げていくと大きな副砲になる、そうなるとそれは人力で運用するのが困難になる
  機力装填にすると余計に重たくなる、重量はなるべく小さくしたい
  特にそれは主戦装備ではないので本来の用途には無駄だから軽量である事が望ましい
  数はある程度欲しい、威力も欲しい、でも軽くしたい
  人力装填で済ませられる限度が6インチ級だと言われているよね
  大抵の戦艦の副砲がこのレベルなのは、常識レベルの副砲の限界だったんだ

S:第一次大戦までの副砲は舷側に並べる形で装備されるのが普通だった
  砲廓式、英語だとケースメイト式と呼ばれるスタイルだな
★:この形式の利点はなんでしょうか?
S:なんといっても軽い
  舷側に大砲を載せただけみたいな物だから、大砲の重量だけで済む
  横須賀で三笠を見てもらえば判るけど、単に大砲を装備しただけに近い

  

  ところがこれだと近くに砲弾が突入した場合、一撃で複数の大砲というか要員が吹き飛ばされる

  

  つまり防御力が無い
  そこで次に各砲毎に仕切り板を置くようにした、これで突入した砲弾で破壊されるのは一つで済む

  

  だけどそれでも防御には問題が有る
  横の仕切り板は抜けないけど真後ろが空いていたんで、そこを経由して火災が流れる可能性があった

  

  結果、真後ろも塞いだけど、それでもケースメイトとはつまりは狭い部屋に大砲を置いただけなので
  突入した砲弾が沢山ある予備弾薬の引火に繋がる可能性があった
  つまり、次は砲弾を撃つ奴だけしか置かないようにする方向に進む事になる
  結果的にそれなら砲塔にした方が良いって言うか、砲塔と変わらないよな
★:となると、単装砲塔よりも多連装砲塔のほうが重量とか配置上の利点が大きいですね
S:そう、だからケースメイト方式は以降の艦では採用されない方向に進む事になる

S:副砲に求められる機能は他にもある
  tackowさんに見せてもらった日本海軍の砲戦理論に関する資料によると
  敵主力艦への攻撃とか対空戦闘も重要な機能として上げられている
★:それっていつの時代の話ですか?
S:昭和6年だから1931年の奴だな
★:・・・・第二次大戦のちょっと前ですね
☆:主力艦への攻撃って・・・・15年ほど前の話だと思うんですけど・・・
S:これは軍縮条約の時期だからね
  日本軍は戦艦戦力で劣勢だ、たぶん戦場では敵の戦艦の方が数が多い
  そこで副砲でも戦艦を撃っちゃおうと考えたんだな
☆:でもそれってつまりは前弩級戦艦の時代の発想ですよーっ
S:撃つのは主砲とは別の目標だ
★:悲惨ですね、数で劣る結果、あぶれる敵艦が出てくる、だったら副砲でそいつを撃つ
  なんと言うか、非常識がまかり通る前提条件が・・・
S:敵戦艦はともかく、問題となったのは当時急速に増えてきた重巡洋艦だ
  それなりの装甲を持った重巡洋艦が突っ込んで雷撃してくると厄介な事になる
  そうなると副砲は重巡洋艦程度を始末できる火力も欲しい
  つまり、日本軍は最大で20サンチ級の副砲が必要になる可能性を真剣に考えていた
★:なんか、色んな意味で馬鹿っぽいですね
  そんな狂った重巡洋艦を持っているのは日本軍だけなのに
S:何処も自分のところを基準にして考えるからね
  そしてもう一つの方向性が対空射撃だ
  発展著しい航空機は大変な脅威になることが想像された
  これに対抗するために条約時代の各艦は熱心に対空火器を増強しているんだけど
  それと同時に、副砲に対空火力の提供を期待していた
  高角砲に求められる能力は射撃速度とか砲の迅速な運動性(旋回俯仰速度)だね
  これと、強力な威力を持った対水上打撃能力は中々上手く両立しない
★:そうなると、副砲と高角砲をそれぞれ別個に備えた上で
  両者にもう片方の能力を一定レベルで受け持たせるのが適当ではないでしょうか?
S:そうだね、結果的に日本軍の戦艦の副武装はその方向性に進んだ
  例えば大和型は片舷指向砲力で見ると、副砲9門に高角砲6門と高い戦力を持っている
  どっちの武器も対空対水上をある程度受け持つから、水上火力も対空火力も大きい
★:欧米ではどうだったのでしょう?
S:フランスの場合はダンケルク級は両用砲にしたね
  そしてそれは失敗だった
  つまり、優れた対水上火力と対空砲に必要な運動性を両立できなかったんだ
  結果、次のリシュリュー級では副砲と高角砲の両方を搭載した
  これは船体が大きくなって、それだけの武装の余裕が生まれた事も大きい
  だけど、二兎を追うのは難しいという事でもあるんだ
☆:イタリアやドイツも両方を搭載しましたね
  やっぱり技術的に難しいんですか?
S:欧州で一般的な高角砲が10サンチ級だったのも大きいと思う
  つまり対水上火力としてみた場合、射程と威力の両面で不足しているんだ
  軽巡級はこの時期に新型が出てきているから
  そいつらの新型15サンチ主砲を搭載して
  従来から開発運用してきた小口径対空砲を追加するのが無難だったんだと思うね
  勿論、個々の艦艇によって条件や状況は異なるんだが、大雑把に言うとそう言う事だと思う
  結果的に欧州の15インチ砲戦艦は
  副砲15サンチ、高角砲10サンチ級で揃っているね
☆:英国は新型砲を開発して搭載しましたーっ
S:133mm砲だね
  15サンチ級と10サンチ級の折衷として13サンチ級になったんだ
  米国の127mmやダンケルクの130mmも同じ位置付けだろう
  これは副砲に求められた能力を一つの大砲で賄う事で重量節約を図ったんだと思う
  連装砲を片舷4基だから、総重量は二種類搭載するよりはずっと軽くなる
  排水量制限のある条約型戦艦の場合、武装重量と武装スペースは大きな問題だ
  ベストは専門の武器だけど、それをする余裕が無かったんだろうね
★:でも133mmで水上打撃能力は足りるのですか?
S:まず、日本みたいに戦艦数で不足しているという状況ではない
  つまり極端に威力や射程を求める必要性は薄い
  次に雷撃艦艇の突進も軽巡洋艦や駆逐艦の支援が期待できるから、極端なものは要らない
  機動副砲として護衛艦艇に期待できるからあれで充分だ
  問題は対空火力だけど、これは失敗だった
★:失敗だったんですか?
S:あの大砲は人力装填だったんだ
  水上射撃用として考えた場合はあまり問題にならないんだが
  対空射撃の場合、なんと言っても射撃速度が欲しい、手数で弾幕を張るのが正道なんだが、それが難しい
★:人力装填だとやはり辛いですね
S:他国の高角砲よりも大口径だから当然だけど砲弾も重たい
  水上射撃だったらそんなに高い仰角にはならないけど、対空射撃だと仰角も高いから
  装填作業は砲弾を上に持ち上げながら押し込む事になる
  つまり砲弾の重さが大きな意味を持ってくる
  日本の駆逐艦なんかはそれが辛いから水平に戻して装填してるけど
  発砲するには仰角を戻さないといけないからやっぱり射撃速度は稼げない
★:なんで機械装填にしなかったのですかね?
S:この時期の英国の対空射撃可能な大砲の多くは人力装填だ
  どうもあんまり真剣に取り組んでいなかったようだな
  っていうか、彼らの主力雷撃機を見ると、つまりはあんなのが突っ込んでくるという前提だったんだろう
☆:ソードフィッシュですか・・・あははーっ、複葉機ーっ
S:あの時代の艦艇の対空装備なんて多かれ少なかれ、そんなものだ
  そして、米国も両用砲に走った
  彼らは元々5インチの副砲と、5インチの高角砲を搭載していた
  前者は51口径の長い奴、後者は25口径の短い奴
  この2つを38口径の新型砲に置き換える方向で進んだんだな
☆:なんで38なんて変な数字なんですか?
S:51と25を足すと?
★:76ですね
S:それを半分にすると何になる?
★:38です・・・え?
☆:うそ・・・
S:真実なんてそんな物
  つまり、両者の折衷としての存在を説明するのに判り易いでしょ
  だから38口径になったんだ、まあ本当のところは知らないけどね(笑)

S:さて、米軍のこの大砲は結果的に大成功だった
  半自動装填で射撃速度が高く、特に対空砲としての性能は優れている
  だけど対水上戦闘能力で見ると、あまり強力ではない
  特に射程距離で見劣りする
  駆逐艦級なら弾幕で粉砕できるけど、巡洋艦級には心もとない部分がある
  ただ、米軍は重巡洋艦の支援も期待できるし
  日本の水雷戦隊と重巡洋艦があそこまで凶悪なシロモノだとは想像もしていなかったからね
☆:大和が強力な副砲を搭載したのは、つまりは自分達の水雷戦隊が根底に有ったんですねっ
S:そうだろうね、あの連中から身を守ろうと思ったら、あの程度の副砲火力が欲しい
  日本軍の場合、駆逐艦や重巡洋艦は全部敵艦隊に突進するつもりだから誰も助けてくれない
  色んな意味で充実した副砲火力というのが要求されているんだ
★:それで対空火力が犠牲になったのですね
S:だけど自動装填装置のついた最新型高角砲が12門だ
  これは米国の新型戦艦以外と比較したら最も強力で、決して弱い物ではない
  勿論図体が大きいからそれだけ搭載できたんだが
  無理に両用化しなくてもそれなりの数を搭載する事は可能なんだよ
★:となると一種に絞るか、二種搭載かの判断は難しいですね
S:英国は対空火力を犠牲にしたし、米国は対水上火力を犠牲にしているから
  どちらも完全な成功とは言い切れない
  結果的には米国艦は弱点を露呈しないで済んだけど、それは結果でしかない
  他国より一歩進んでいたのは事実だけどね
☆:それが可能なだけの補助戦力の支援にも注意が必要なんですねっ

S:さて、最後は魚雷だな
  第一次大戦ぐらいまでの戦艦は魚雷を装備していた
  だけど、それは軍縮時代に撤去される事が多く、第二次大戦時に魚雷を残していた艦は凄く少ない
☆:敵艦を攻撃する手段としての重要性が低下していたんですねーっ
S:魚雷が戦艦から下ろされる理由は二つある
  一つは被弾時の危険性だ、誘爆したら大変な事になる
★:大砲だって弾薬の誘爆という可能性が有りますよ
S:魚雷発射装置は一般に水線より下にある水中発射式と
  第二次大戦型の巡洋艦や駆逐艦で一般的な水上発射式がある
  どちらも、筒の中に魚雷を入れておいて、吹き矢の要領で後から押し出す形で飛び出させる
  発射管自体は簡単な構造の筒でしか無いから被弾したら簡単に壊れるし、そうなったら魚雷が爆発する可能性が有る
  これは強固に防御された砲塔や弾薬庫に砲弾を置く大砲と比べるとかなり虚弱な存在だ
  水中式の場合は被弾の危険性は小さくなるけど
  水線より下に開口部があるのは船体の水密性や防御上マイナスだ
☆:つまり、魚雷は防御面から見たら良くないんですねっ
S:言い換えるなら、装備する事のマイナスとプラスで、マイナスの方が大きいと判断されたんだ
★:魚雷の持つ破壊力は大きなプラスだと思いますが?
S:もう一つの問題が射程距離だ
  戦艦の戦闘距離は1〜3万mに達する
  酸素魚雷でも持ってこない限り魚雷はこんな距離では撃てない
  となると通常の条件では発射チャンスが得られないんだ
★:いくら強力でも撃つ機会が無いのでは無駄ですね
S:英独では霧の多い北海という気象条件が
  不意の近距離戦闘の可能性に繋がったので、魚雷装備が残っていたね
  そしてそれ以外の国では魚雷は廃止される傾向にあった
  米軍では巡洋艦からも魚雷を撤去する方向に向かった
  これも使用機会と条約制限の重量、それに防御上の問題が、彼らにはマイナス要素だったんだ

S:んじゃ、次に多重防御の功罪を考えてみよう
  多重防御方式は強烈な耐久力を持つのが利点だけど
  それは近距離でしか成立しない
★:上から砲弾が降ってくると駄目ですよね

  
S:この絵を見て考えてみよう
  超遠距離から突っ込んでくる砲弾が舷側装甲に当たる確率は見てのように20%ぐらい
  8割は甲板コースだ
  だけど、多重防御の艦の場合、大事なところが艦のかなり奥に有るので
  命中弾の7割ぐらいしか主要部には行かない
  そして、その主要部に行く砲弾の3割ぐらいは舷側経由になる
★:最大射程でも3割ぐらいは舷側で食い止められる可能性が有るのですね
S:この確率は、船体の幅とか内部構造とか、そして舷側装甲の高さによって変化する
  つまり、距離のある射撃から身を守る手段として
  高さのある舷側装甲というのはかなり有効な場合がある

  
S:こっちは落角30度
  つまり25〜30kmぐらいでの場合だ
★:大体半分の砲弾は主要防御範囲外に行きますね
☆:有効弾の1/3強が舷側装甲経由ですねっ
S:もし船体最上部まで舷側装甲を張ったなら
  殆どの有効弾に影響を与える事が出来る
  第一次大戦型の戦艦の多くは比較的広い範囲に舷側装甲を張っていたけど
  それは、こうやって遠距離からの砲撃に対しても有効な防御として成立する側面が有るんだ
  遠距離なら砲弾の対舷側威力は低くなってるので薄い装甲でもかなり威力を殺せるので
  そうすれば甲板へ突っ込まれてもたぶん抜かれないだろう
★:では多重式は強力な防御手段なんですね・・・
S:もっと近距離になると話は変わってくる
  被弾の多くは薄い舷側上部に当たっても有効弾にはならない

  
S:もっと距離が接近した場合
  もし高い舷側装甲で砲弾に影響を与えても
  そこに当たった砲弾は別に致命部へ行く可能性が有ったわけではない
★:近距離ですと貫徹力が大きいので
  下手に薄い装甲を張っても防御効果としては弱いですね
S:役に立たない装甲は無いのと同じだ
  近距離になると、食い止めるのは難しいし、致命部には行かない
  よって、守るべきかどうかは難しい問題になる
  まあ、例え舷側装甲を張ってあっても
  それは薄いから、戦艦主砲に対しては無防御とあまり変わらない
★:つまり、過半数の砲弾は非防御部分に当たるのですね
S:高い舷側装甲を持っていて中距離ぐらいだったら
  過半数は装甲経由なので、火力と装甲の比較条件では防御範囲は広いといえるけど
  まあ、一般的に、過半数は非防御か弱防御に当たる事になるね
  実際には砲塔とかにも当たるので、本当に半分とはいえないけど
  防御された部分以外に約半分が行ってしまうってのは重要な事だよ
  つまり、そういった場所には大事な物は置けないし
  夥しい被弾を受けた場合
  その半分は装甲で食い止めても
  残る半分は船体の各所を食い荒らし、次第に戦闘能力を奪っていくんだ
☆:装甲範囲を広げるのは?
S:この近距離の例を見れば判るように
  これよりも上に装甲を張っても、致命部には敵弾が行かない以上、重量の無駄かも
  多重化式は見てのとおり、中遠距離と小口径砲弾対応で舷側上部に薄い装甲を張り
  致命部へのルートは各距離の落角に応じて水線部を厚く、上に行くほど薄くして
  どの条件でも防御が成立するようにしてある、良く出来ている構造なんだが
  それで守れる部分は精々半分強の砲弾までで、被害の発生を完全阻止は出来ない
★:・・・・この絵・・・甲板の高さを上げたら防御範囲が広がりますね?
S:そう、よく気がついたね

  
  
  
S:防御甲板を一層上げると、被弾に対してかなりの部分が防御範囲になる
  勿論、それでも甲板より上で炸裂されてしまうんだけど
  突っ込んできた砲弾が炸裂する場所を限定できるのは意味が大きいし
  当然だけど防御される範囲が増えるから有効活用容積は増えるし
  被弾する事で受ける能力損失も最小限に食い止めることが可能だ
★:でも、甲板が高いところに有ると舷側を抜かせて甲板で食い止めるという手段が成立しません
S:砲弾の破壊力の強化もあって
  炸裂されるとその被害を食い止めるのも大変になりつつあったんだ
  つまり多重化で食い止めるのは難しくなってきていたのも重要だ
  甲板で食い止めても船体内部はズタズタになるし
  それを防ぐには隔壁等の強度をもっと上げないといけない、つまり重量とスペースが必要
  だったら外側で食い止めてしまったほうが有利では?

S:双方の防御方式で、主要防御部に突入を食い止めた場合
  どこで砲弾が炸裂するかを比べてみた
  多重化
  外側阻止
★:多重化は倍の範囲を「壊される」事前提で使うのですね
S:そして、大口径砲弾の炸裂によって発生する弾片を食い止めるには
  50mm程度の厚さを持った鋼板が必要だと言われている
★:ちょっとした装甲並ですね
S:大型艦艇の各部の板厚は0.5〜1インチ程度が普通だ
  砲弾を主要装甲の外側で炸裂させたとしても、その破壊効果を食い止められないと危険だ
  となると、壊される範囲にも一定の、つまり弾片防御程度はしておかないといけない
  そして、それは船体の基礎構造の要求
  つまり重量と強度の要求する必要量以上の板厚を各部に施さないといけないと言う事になる
★:では、今までの艦艇が多重式だったのは?
S:第一次大戦までの戦艦主砲は12インチ砲が一般的だった
  これなら1インチあれば弾片はそれなりに食い止められる
☆:1インチ、約25mmで防げるなら
  船体の基礎構造を多少頑丈にしておく事で成立しますねっ
S:そう、つまり重量の追加は最低限でよかったんだ
  だけど、15インチや16インチになると2インチ級が欲しい
  単純に考えても、船体の重量は倍になっちゃうな
★:これに、大落角砲弾対策に水中防御と・・・
  重量がどんどん嵩みますね
☆:大砲の威力の増強に、戦闘距離の延伸、排水量制限なんかの要因が
  つまり多重化で食い止めようと言う方向性を否定していくのですねっ
S:高い層に設けた甲板装甲で食い止めることのほうが
  防御できる範囲もそして防御能力も、結果的には高くなると言えるね


たいとる
第10章
第12章