輜重兵操典

第二篇 輓(駄)馬教練

第二章 中隊教練
要則
  1. 第二百四十三
    中隊は中隊長を核心とせる志気結合の基礎なり故に中隊は如何なる場合に於いても中隊長の意図に従ひ衆心一致良く精神的団結を保ち有ゆる困難に耐克ちて輸送、補給を遂行するを要す此の趣旨に基づき良く訓練せられたる中隊は予め修得せざることと雖も制式及法則の活用に依り能く目的を達し得るものなり
  2. 第二百四十四
    小隊は独立して輸送、補給に任ずることあり故に小隊教練は此の趣旨に合する如く演練すること緊要なり
第一節 中、小、分隊の密集

第一款 隊形
  1. 第二百四十五
    一般分隊の隊形第四図の如し
  2. 第二百四十六
    分隊長は状況特に進路の状態、人馬の能力等を考慮し要すれば分隊を区分して其の一部を基幹兵に指揮せしむ
    分隊長は馭兵及馬の状態、積載品の種類等を考慮し補助兵の担任すべき車馬を定む
  3. 第二百四十七
    一般小隊の併立縦隊は分隊の一列縦隊時として併立縦隊を番号の順序に間隔五歩に併列したるものにして小隊長は小隊の中央前分隊長の線より二歩に位置す
    一般小隊の一列縦隊は分隊の一列縦隊を番号の順序に距離十歩に重畳したるものにして小隊長は小隊の前方五歩(伝令なきときは一歩)に位置す
    伝令は併立縦隊に在りては右翼分隊の先頭基幹兵の右側時として分隊長の後方一歩に、一列縦隊に在りては小隊長の後方一歩に位置するを通常とす」
    小隊長は時宜により各分隊の位置を変更し距離間隔を伸縮す
  4. 第二百四十八
    中隊の隊形は併立縦隊及一列縦隊とす併立縦隊は主として集合及短距離の運動に、一列縦隊は主として運動に用ふ
  5. 第二百四十九
    併立縦隊第五図の如し
  6. 第二百五十
    一列縦隊は通常指揮班、一般小隊の一列縦隊を其の順序に距離十歩に重畳す中隊長は中隊の先頭一歩に位置す
    中隊長は徒歩小隊及指揮班に属せざる各部将校以下の位置を定めまた時宜に依り前項の距離を伸縮す

第二款 密集の動作
  1. 第二百五十一
    中隊の併立縦隊を整頓せしむるには通常目標を示し予め嚮導(指揮班の曹長、徒歩小隊の第一分隊長及一般小隊の各分隊長)を整頓線に、指揮班長及小隊長を整頓線の前方所定の位置に就かしめ左の号令を下す
    • 「準へ」
    • 「直れ」
    「準へ」の号令にて中隊は行進し整頓線の少しく後方に止まり頭を右に廻はし(指揮班及徒歩小隊の第一列並びに各小隊の右翼分隊は其の儘)整頓線に就き馬の頭を整頓線に揃ふ後ろの者は先ず正しく前の者に重なりて距離を取り整頓す
    小隊長(指揮班長)は要すれば其の小隊(指揮班)の整頓を正す
    「直れ」の号令にて頭を正面に復し不動の姿勢を取る
    其の位置に於いて整頓せしむる場合に於いては前諸項に準ず
  2. 第二百五十二
    併立縦隊の行進に在りては中隊長は通常基準小隊、要すればその行進目標を示す
    基準小隊は正しき方向と速度とを以て行進し他の小隊は関係位置を保ちて行進す此の際基準小隊長は通常基準分隊を示す
  3. 第二百五十三
    中(小)隊を停止せしむるには「中(小)隊止れ」の号令を下す中(小)隊は漸次に停止す
  4. 第二百五十四
    一列縦隊の方向を換えしむるには左の号令を下す
    • 伍々右(左)へ進め」
    先頭に在る者は右(左)に方向を換へ新方向に行進し停止間に在りては行進を起すと同時に方向を換へ続いて行進す他の者は先頭の方向を換へたる所に到り方向を換ふ
  5. 第二百五十五
    併立縦隊にて停止しあるとき方向を換へしむるには左の号令を下す
    • 右(左)に方向を換へ進め」
    軸翼に在る指揮班、分隊等は右(左)に方向を換へ中隊の深さだけ新方向に進みて停止し他の分隊、指揮班等は逐次斉頭面に到りて停止す
  6. 第二百五十六
    併立縦隊にて停止しあるとき同方向に一列縦隊を作らしむるには中隊長は要すれば行進目標、行進順序等を示し各小隊、指揮班毎に実施せしむ
  7. 第二百五十七
    小隊併立縦隊にて停止しあるとき同方向に一列縦隊を作らしむるには左の号令を下す
    • 右(左)より一列縦隊進め」
    右(左)翼分隊は行進を起し他の分隊は分隊長の指示に依り逐次先行分隊に続行す
    分隊に在りても亦前諸項に準ず
  8. 第二百五十八
    一列縦隊より同方向に併立縦隊を作らしむるには中隊長は所要の指示を与へ各小隊、指揮班毎に実施せしむ
  9. 第二百五十九
    小隊の一列縦隊より同方向に併立縦隊を作らしむるには左の号令を下す
    • 右(左)より併立縦隊進め」
    先頭分隊は動かざるか又は停止し他の分隊は逐次先頭分隊の左(右)方に所定の隊形及間隔を取りて停止す
  10. 第二百六十
    分隊の一列縦隊より同方向に横隊を作らしるには左の号令を下す
    • 左(右)へ並び進め」
    先頭に在る者は動かざるか又は停止し他の者は捷路を経逐次新位置に就き整頓す
  11. 第二百六十一
    分隊の横隊より同方向に一列縦隊を作らしむるには左の号令を下す
    • 右(左)より一列縦隊進め」
    右(左)翼に在る者は直進し他の者は逐次所定の距離を取りて続行す
  12. 第二百六十二
    一列縦隊に在る中隊疎開するには中隊長の「開け」の命令に基き小隊長の指示に依り一般小隊中中央小隊は進路の側方約百五十米に、各小隊の偶数位の分隊は其の進路の側方約五十米に疎開す
    指揮班及徒歩小隊は一般小隊に準ず
    停止間分隊を更に疎開するには分隊長は小隊長の命令に基き其の約半部を分隊の進路の側方約二十米に疎開せしむ
    状況特に地形に依り前諸項以外の方法を以て疎開せしむることあり
第二節 分隊

第一款 繋駕、脱駕
  1. 第二百六十三
    繋駕を為さしむるには分隊長は予め車輌の繋駕準備を行せ馬を車輌の位置に誘導し「馬を繋け」の号令を下す馭兵は繋駕し補助兵は要すれば繋駕を補助したる後所定の位置に就く
  2. 第二百六十四
    脱駕を為さしむるには「馬を解け」の号令を下す馭兵は脱駕す
  3. 第二百六十五
    繋駕、脱駕間分隊長は兵の動作を監視し基幹兵は要すれば兵の動作を補助す

第二款 梱包、積載、卸下
  1. 第二百六十六
    梱包を為さしむるには分隊長は分隊を梱包すべき兵器、物品の附近に集合せしめ各兵又は格組の梱包すべき兵器、物品の種類及員数並に作業用材料、作業の場所其の他必要の事項を示し作業せしむ
  2. 第二百六十七
    積載を為さしむるには分隊長は補助兵中馬を保持し又は監視する者を定め「積む用意」の号令を下す馭兵は馬の脚を縛り荷綱、附載品、装具等を通常車台の後端下(駄馬に在りては縛箱革條、駄装具等を準備し特に卸下するを要する附載品を横隊に在りては馬の後方約五歩其の他の隊形に在りては馬の側方約二歩)に卸下し補助兵と共に二列横隊に分隊長の前方に集合す
    分隊長は銃を整置せしめ所要に応じ更に積載品の後方に集合せしめたる後通常二名(駄馬に在りては四名)を一組とし其の担当区分、積載品種、要すれば各車の積載量及積載品取扱上の注意等を示し「積め」の号令を下す各組は其の先頭又は右翼の車馬より逐次積載を行ひ終れば附載品、装具を着け兵は武装を整へ定位に復し馬装及積載品を点検す
    担当区分を定むるに方りては各馭兵をして勉めて自己の車馬に積載せしむ」
    分隊長は積載終われば小隊長に報告す
  3. 第二百六十八
    卸下を為さしむるには分隊長は補助兵中馬を保持し又は監視する者を定め「卸す用意」の号令を下す兵は「積む用意」の場合に準じ動作すただし附載品を卸下することなし
    分隊長は銃を整置せしめ「積め」の場合に準じ卸下の要領を示し「卸せ」の号令を下す兵は「積め」の場合に準じ卸下す
    卸下位置は通常分隊長の前方二歩の線とす
  4. 第二百六十九
    梱包、積載及卸下間分隊長は兵の動作を監視し速やかに分隊の動作を完了するに勉む基幹兵は兵の動作を補助して其の過誤を予防す

第三款 各種地形の通過
  1. 第二百七十
    分隊長は分隊を確実に掌握し一団となりて行動し小隊長の意図の如く之を誘導し要すれば細部の部署を定め遅滞なく各種地形を通過するを要す
    基幹兵は分隊長の号令、命令を徹底せしめ要すれば兵の動作を補助し率先事に当り独断機宜の処置を為し行進を整斉ならしむ
  2. 第二百七十一
    分隊長は部下を督励して諸準備を整へ事故の発生を予防すること緊要なり之が為人馬の能力を考慮して其の行進順序を変更し或は積載量を増減し或は特に馬装、積載の点検等を行はしむ
  3. 第二百七十二
    難路其の他困難なる地形を通過するには分隊長は特に速度を適切にし通過容易なる部を選びて誘導し遅滞なく行進せしめ又部下を督励し其の馭法並びに人馬、車輌及積載の状態等を監視す之が為適当なる地点に停止するを要することあり
  4. 第二百七十三
    輓鞍に駄載して難路を通過する場合に於ては特に馬装、積載に注意し鞍傷を予防すること緊要なり
  5. 第二百七十四
    行進間兵の為すべき要件概ね左の如し
    1. 1. 兵は分隊長に注意す
    2. 2. 馭兵は先行車馬及其の積載に注意し異状を認めたるときは直ちに之を先行者に告ぐ
    3. 3. 馭兵は馬装、積載に異状を来たしたるときは(キョウ・きずな)を先行車馬に繋ぎ直ちに応急処置を為し休止時を待ちて修正す補助兵は馭兵を補助す
    4. 4. 馭兵事故の為停止するときは分隊長に報告し速やかに必要の処置を為す此の際後続車馬の行進を妨げざるに注意し補助兵は馭兵を補助す
    5. 5. 補助兵は担任車馬及其の積載に注意し異状を認めたるときは直ちに其の馭兵に告ぐ又所要に応じ輓曳を補助す
  6. 第二百七十五
    登坂路通過中一車馬と雖も停止し或は後退するときは後続車馬に危害を及すを以て分隊長は間断なく行進を継続せしむ然れども人馬の体力を考慮し要すれば短時間停止し人馬の呼吸を恢復せしむ此の際後続部隊の行動を妨げざるに注意す短き登坂路に在りては各車馬の速度を伸ばし一挙に通過するを利とすること少なからず
    急なる降坂路に在りては所要に応じ制動を実施す
    坂路の通過に方りては分隊長は輪止を準備すること必要なり
  7. 第二百七十六
    湿地、泥濘地、積雪地、砂地等の通過に方りては分隊長は附近の地質、傾斜、積雪、樹木又は雑草の状態等を考慮して通過線の選定を適切にし且誘導法に注意すると共に所要に応じ各馬の行進順序を変更する等人馬の過労を防ぐの処置を講ず
  8. 第二百七十七
    脱駕後向を為さしむるには分隊長は補助兵を後尾に集め二、三名より成る組に分ち後尾より逐次に実施せしむ
    馭兵は確実に馬を保持し補助兵は両側の袴革端革を解き輓索を遊動棍より脱して馬背に懸け轅木受金のみを以て車輌を支ふ又予備馬の馭兵は馬を後向せしむ
    補助兵は同時に両側の轅木受金を脱し馭兵は馬を後向せしめ補助兵は車輌を通常右より廻はして直後に在りし馬に繋駕す
    予備馬を有せざる分隊の新先頭車は通常新なる前方分隊の馬に繋駕す
  9. 第二百七十八
    道路の幅狭きか或は通過の為危険なるときは脱駕して通過す
    脱駕通過を行ふには分隊長は補助兵を先頭に集め若干名より成る組に分ち之を各車に配当し先頭より逐次に脱駕すべき位置に到り脱駕して通過せしむ此の際馭兵は馬を、補助兵は車輌を通過せしめ通過終われば繋駕す
    脱駕及繋駕の要領は脱駕後向に準ず
  10. 第二百七十九
    危険の度大なる橋梁を通過するには分隊長は規定せられたる速度、各車馬の距離を確実に保たしめ且馬を沈静せしむ此の際先行車馬通過の為橋梁逐次脆弱となることあるに注意す
    舟橋、吊橋又は欄干なき橋梁は人馬に不安の念を懐かしめ意外の危険を惹起することあり
  11. 第二百八十
    徒渉場を通過するには分隊長は河底の状況に注意して速度と進路とを適切ならしめ各兵をして先行車馬に続行する如く誘導すると共に途中に於て停止せしめざること緊要なり
  12. 第二百八十一
    輓馬を船に搭載するには分隊長は小隊長の示す位置に於て逐次に脱駕し臂力に依り搭載す而して一船に二車以上を搭載するときは通常馬と車輌とを交互に位置せしむ駄馬に在りては小隊長の指示に依り積載の儘之を搭載するか或は積載品、要すれば駄鞍をも卸下せしむ
    搭載せる車輌に輪止を施し船中に藁を敷く等滑走を予防す
  13. 第二百八十二
    氷上通過に方り氷の抗力十分ならざるときは分隊長は予め各車馬の距離を増大し且馬を沈静せしめ通過に方りては氷上に停止せしめざること緊要なり此の際先行分隊と進路を変更し或は分隊を区分して異なる進路を取らしむることあり
    亀裂、湧水等を認めたるときは沈着して分隊を危険区域外に移す

第四款 車廠、馬繋場
  1. 第二百八十三
    行動間輓馬に在りては通常車廠を利用し車輌を制動して馬繋す状況に依り車廠と馬繋場とを分離することあり駄馬に在りては積載品を適宜の位置に卸下したる後馬繋す
    車廠の動作は通常馬繋場の動作終了後実施す時として分隊長は基幹兵に所要の事項を示し補助兵を附して馬繋場の動作と同時に実施せしむ
    車廠、馬繋場の動作は順序正しく且静粛に行ふを要す夜間に於て特に然り
  2. 第二百八十四
    分隊長は車馬の手入、積載の修正、要すれば積載品の手入等を実施せしむると共に自ら其の状態を点検し以て爾後の行動に支障なからしむ又綱傷及蹴傷の予防に注意し夜暗に於ける各馬の識別等の処置を為すこと緊要なり故障車馬等の状況は速かに小隊長に報告す
    車廠、馬繋場の動作終れば分隊長は馬具を馬の近傍にて掩蔽下或は車上に整置し夜間の出発に際しても混雑なからしめ且防湿に注意す又積載品防湿の為雨覆を装す
  3. 第二百八十五
    馬繋場に於て兵の為すべき要件概ね左の如し
    1. 1. 控綱又は(キョウ・きずな)の長さは馬をして地上の草を食し得しむるを度とし弛解せざる如く之を結着し所要に応じ速かに解脱し得る如くす
    2. 2. 馬を点検し釘節の異状、落鉄、蹄熱或は負傷、疾病の徴候あるときは速かに分隊長に報告す
    3. 3. 馬の手入は丁寧に行ひ時間少き場合に於ても四肢、背、胸及帯径は藁等を以て十分に摩擦す
    4. 4. 水与、飼与に遺漏なからしむ
    5. 5. 馬具は成るべく綿密に手入し馬に不適合なるか又は破損等あるときは速かに所要の処置を為す

第五款 輸送、補給
  1. 第二百八十六
    分隊長は分隊を確実に掌握し率先垂範して挙止一体の実を挙げ兵の志気を振起し其の責務を完遂せしめ以て小隊長の意図の如く行動するを要す
  2. 第二百八十七
    行進間道路の一側を開放せしむるは分隊長の任とす而して分隊を道路の一側より他側に移らしむるには成るべく分隊同時に行はしむ又後方より超越せんとする自動車部隊等に対しては速かに道路の一側を開放し其の通過を容易ならしむ
  3. 第二百八十八
    行進間故障車馬を生じたるときは分隊長は予備車馬と交換するか又は積載品及車輌を他に分載する等の方法に依り勉めて牽連し休止時に於て適宜処置す然れども事故の程度に応じ小隊長の命令に依り之を中隊収容機関に依託す
  4. 第二百八十九
    軍需品の受領に方り分隊長の注意すべき事項概ね左の如し
    1. 1. 品種及数量を正確にす
    2. 2. 危険若くは破損の虞あるものは兵をして其の取扱に注意せしむ之が為取扱法不明なるものあるときは係員に質す
    3. 3. 損傷せる軍需品を発見したるときは之が代品を係員に請求し且小隊長に報告す
  5. 第二百九十
    弾薬を交付するには分隊長は受領者に授受位置、援助人員、要すれば空箱の卸下位置其の他交付に関する細部の事項を示し所命の弾薬を交付す
    弾薬を交付せば分隊長は其の都度残弾の品種及数量を小隊長に報告す
    弾薬の交付に方りては特に信管、装薬等弾丸に附随せるものの交付に遺漏なきを要す
  6. 第二百九十一
    弾薬の交付は卸下して行ひ若くは車上より行ふ
    卸下して交付を行ふときは分隊長は地形地物を利用して掩護に便なる位置に所命の弾薬を卸下し交付に便なる如く弾種を区分して整置し空車馬は適宜の位置に待機せしむ
    車上交付を行ふときは各車の附載品を卸下し荷綱を解き交付を準備す
    分隊長は逐次弾薬の異状の有無を点検し授受の為必要なる兵を準備す
  7. 第二百九十二
    分隊長は弾薬を弾薬班、段列時として直接第一線又は放列迄前送交付することあり此の際此等連絡し為し得れば其の誘導に依り敵眼敵火に遮蔽し且其の進路を誤らざるを要す而して敵火に暴露して前進せざるべからざるときは適宜疎開し或は地形地物及敵火の間隙を利用して一乃至数車馬宛躍進す要すれば輓鞍に駄載し或は臂力に依り輸送す
  8. 第二百九十三
    分隊長糧秣交付所に到着せば小隊長の命令に依り品種毎に区分し且数量の計算に便なる如く卸下す

第六款 戦闘
  1. 第二百九十四
    分隊の先頭準備を整ふるには分隊長の「戦闘準備集れ」の号令に依り兵は戦闘準備を整へ速かに分隊長の許に集合す兵集合せば分隊長は若干の車馬監視兵を残置し他の兵を指揮して直ちに小隊長の許に集合す監視兵は車馬の掩護に任ずる分隊長の指揮を受く
  2. 第二百九十五
    分隊敵の攻撃を受け小隊長の許に集合し得ざる場合或は其の集合間敵の為車馬を攻撃せらるるの虞ある場合に於ては分隊長は独断敵を攻撃し或は要地を占領し以て小隊の戦闘を容易ならしむる等機宜に応じ行動す此の際速かに小隊長に報告す
  3. 第二百九十六
    戦闘準備に方り小隊の車馬の掩護を命ぜられたる分隊長は速かに要点に警戒兵を配置し残余の兵を適宜の地点に集結し小隊の車馬監視兵を指揮し且中隊車馬の掩護に任ずる指揮官と連絡し其の指揮下に入る
  4. 第二百九十七
    不意に敵と衝突し命を待つの遑なきときは分隊長は為し得る限り車馬を安全なる地点に位置せしめ「戦闘準備集れ」の号令を下し止むを得ざれば直ちに附近に在る兵を集め果敢に戦闘す
  5. 第二百九十八
    行軍間分隊長は所要の兵を指定し上空及地上の敵に対し主として警戒すべき方向を示し警戒せしむ
  6. 第二百九十九
    敵飛行機の攻撃を予期するときは分隊長は小隊長の命令に依り分隊を疎開し或は遮蔽下に入るる当機宜に応じ行動す此の際分隊長は特に沈着して部下を確実に掌握し且目視等に依り絶えず小隊長と連絡を保持す
    飛行機射撃の為には分隊長は「対空射撃開け」の号令に依り兵をして対空射撃の準備を為さしめ適時射撃を実施す此の際兵をして各個に射撃を開始せしむる如く予め指示することあり
  7. 第三百
    敵戦車の攻撃を受くるときは分隊長は所要の兵を以て肉薄攻撃を実施し為し得れば車馬を敵火の損害より避けしむ
  8. 第三百一
    瓦斯雨下を受けたるときは分隊長は速かに分隊を汚毒地域外に脱出せしめ所要の消(除)毒を実施し其の任務に邁進す此の際分隊長は瓦斯兵を区処し自ら格人馬、車輌を詳細に点検し消(除)毒法に就き指示す