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輜重兵操典
第二篇 輓(駄)馬教練
第二章 中隊教練
第三節 小隊
第一款 繋駕、脱駕、積載、卸下
第三百二
繋駕、脱駕は小隊長の命令に基き通常分隊毎に行ふ
第三百三
小隊の積載、卸下を為さしむるには小隊長は分隊の占むべき位置、積載品の集積所、品種及数量、協同動作等所要の事項を示し通常分隊毎に実施せしむ
第二款 各種地形の通過
第三百四
小隊長は小隊を確実に掌握し中隊長の意図に基き遅滞なく各種地形を通過するを要す之が為通過すべき地形を明らかにし之が通過法を定め且各分隊の協同動作を適切ならしめ要すれば小隊の集結すべき地点を示す
第三百五
小隊長は局地通過を整斉円滑にし且事故を予防し通過を迅速ならしむる為分隊の諸準備に遺憾なからしむると共に要すれば補修作業を行ひ所要の地点に兵を配置し適宜分隊の距離を増加し分隊毎に通過線を変更し又分隊の能力を考慮して其の行進順序を変更す
第三百六
通過困難なる小局地の連続せる地域、急峻なる長坂路、長き砂地、湿地、泥濘地等を通過するには小隊長は速度を適切にし要すれば馬装、積載品等を修正し人馬の呼吸恢復の為短時間の休止を行ふ等人馬の過労を防ぎ且通過の整斉を図る
第三百七
急峻なる坂路、狭小路、屈曲路、積雪地、徒渉場、氷上、橋梁等にして通過危険なる場合及森林通過に在りては小隊長は要すれば速度を調節して制動の処置、通過線の標示、誘導者又は援助人員の配置、事故車馬に対する処置を定め氷上に在りては氷面の変化に注意せしめ不慮の危害を予防す
第三百八
舟筏に依る渡河に方り小隊長は中隊長の命令に基き所要の分隊長以下を集合所、乗船、上陸点等に配置し人馬、車輌の誘導、乗船及上陸を整斉せしむ
第三百九
脱駕後向を行ふときは小隊長は通常分隊毎に実施せしめ要すれば他分隊をして援助せしむ
第三百十
脱駕通過に方り小隊長は通過法、補助兵の用法等を定め要すれば分隊長又は兵を所要の地点に配置して車馬の発進、局地通過、通過後の停止等を区処せしむ
第三百十一
副駕して局地を通過するには通常小隊毎に実施す之が為小隊長は初めに通過する分隊と次に通過する分隊とを定め副駕の地点、通過法、通過後の位置等を示す
次に通過する分隊長は脱駕し速かに馬を誘導し之を初めに通過する分隊長の指揮下に入らしむ初めに通過する分隊長は副駕し局地を通過せば適宜の位置に到り前、後馬共脱駕し之を次に通過する分隊の位置に誘導し該分隊長の指揮下に入らしむ次に通過する分隊長は分隊の馬を固有の車輌に繋駕し他の馬を副駕せしめ全車輌の通過後固有の分隊に復帰せしむ
輓馬を副駕するには其の輓鎖に適宜の綱を継ぎ綱の長さを約一米五〇とし其の後端を後馬の輓索にかけ袴革端革を以て輓索を適度の高さに控ふ 小隊の全部若くは一部を他の小隊に副駕して通過するには小隊長は中隊長の意図に基き前諸項に準じ実施す
第三款 車廠、馬繋場
第三百十二
車廠、馬繋場は通常中隊長の命令に依り小隊毎に之を設く
第三百十三
車廠、馬繋場に選定に方り考慮すべき事項概ね左の如し
地上及上空の敵に遮蔽し警戒及掩護に便なること
地積十分にして進入、進出容易なること
地面平坦堅硬にして気象の影響少なきこと
休宿地に近く給養に便なること
馬繋場に在りては水を得易く且
馬を損傷する危険物なきこと等
第三百十四
小隊長は各分隊に、車廠、馬繋場を配当し要すれば進入路、進入順序等を示し通常分隊毎に車廠、馬繋場の動作を実施せしむ此の際車馬の手入、積載の修正程度等は行軍の状態及使用し得べき時間の長短に応じて之を示し爾後の行動に遺憾なからしむ
第四款 輸送、補給
第三百十五
小隊長は分隊の現況を詳知し行軍の実施を適切にし所定外の増加積載を戒むる等手段を尽くして人馬、車輌の保全に勉め中隊長の意図の如く行動し輸送能力発揮に遺憾なからしむ
第三百十六
狭小なる地域に於て軍需品の授受を行ふ場合に於ては小隊長は状況に応じ進入、進出、授受等に関する部署を適切にし各分隊をして整斉円滑に実施せしむること緊要なり
第三百十七
弾薬を交付するには小隊長は到着する弾薬班、段列等に受領すべき分隊を指定し該分隊をして所命の弾薬を交付せしむ
小隊長は弾薬の現況を詳知し且中隊長と密に連絡し爾後の補給に支障なからしむ
第五款 戦闘
第三百十八
戦闘準備の命を受けたる小隊長は小隊を適宜の位置に集結せしめたる後「戦闘準備集れ」の号令を下し小隊の車馬の掩護に任ずる分隊を指定し中隊長と速かに連絡し且附近の敵情、地形を明かにし中隊長に報告す
状況に依り小隊長は全小隊車馬の集結を待つことなく分隊毎に逐次部署し又行軍隊勢の儘戦闘準備を整へしむことあり
第三百十九
中隊の一部敵に衝突せることを知りたる小隊長は適宜の位置に小隊を集結し戦闘準備を命ずると共に中隊長と連絡し自ら所要の捜索を行ひ要すれば独断敵を攻撃し或は要点を占領する等機宜の処置を講ず此の際徒に命令を待つことなく神速果敢に行動すること緊要なり
第三百二十
小隊不意に敵と衝突し命を待つの遑なきときは小隊長は為し得る限り車馬を安全なる位置に待避せしむると共に速かに分隊長以下を掌握し果敢に敵を攻撃すべし
第三百二十一
戦闘間中隊の車馬の掩護に任ずる指揮官は速かに各小隊の掩護部隊を掌握して所要の捜索、警戒の処置を講じ且常に中隊長と密接なる連絡を保持するを要す
戦闘の推移に伴ひ車馬を安全なる位置に移動せしむることあり
第三百二十二
敵飛行機を射撃する場合に於ては小隊長は予め所要の準備を整へ敵機我が有効射界内に入るや各分隊毎に機を失せず射撃せしむ
第三百二十三
瓦斯雨下を受けたる場合に於ては小隊長は速かに汚毒部隊を汚毒地域外に脱出せしめ要すれば消(除)毒材料を配当し消(除)毒せしむ
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