作戦要務令

第四部


特種陣地の攻撃

第4章 重砲兵の戦闘

第1節 攻撃準備
  1. 第62
    重砲兵の陣地は、任務に基き攻略すべき敵陣地の縦深に亙り遺漏なく其の威力を発揮し得る如く、勉めて敵に近接せしめ、且つ、之が遮蔽、就中陣地作業の秘匿、ならびに進入、弾薬補充に便なる如く選定すること必要なり
  2. 第63
    装匡部隊展開の為、高級指揮官は機を失せず所要の運搬機関を砲兵指揮官に配属するを要す
  3. 第64
    重砲兵の陣地作業は通常夜間実施するものにして、之に要する時日の標準左の如し
    特二十四榴
    3乃至4夜
    特二十四榴(長)
    4乃至5夜
    二十四榴及び十五榴(装匡)
    2夜
    二十四榴及び十五榴(装輪)
    1夜
    二十八榴
    3乃至4夜
    既設の準備を有するときは陣地作業の時間を短縮し得べく、又、酷寒時の作業は著しく時間を要するものとす
  4. 第65
    重砲兵の展開に方りては、高級指揮官は交通に関し所要の統制を行うこと必要なり。此の際、勉めて重砲兵の為夜間専用し得る道路を配当し、展開を整斉ならしむるを可とす
  5. 第66
    重砲兵の展開、特に陣地作業を秘匿し、且つ掩護する為、飛行機其の他の防空機関を使用することあり。昼間展開作業を強行せざるべからざる場合に於いて特に然り
  6. 第67
    重砲兵の指揮官は、成るべく速やかに野戦砲兵の指揮官、要すれば第一線歩兵、戦車、己隊等の関係指揮官と所要の協定を遂ぐるを要す
    前項の協定は其の戦域に従い異なるも、各担任すべき特火点、攻撃(射撃)の順序、時機及び要領、特火点攻撃隊、戦車、及び己隊の行動、之と砲兵射撃との関係、臨機の協同等に関し、勉めて現場に就き之を行うこと緊要なり
  7. 第68
    友軍歩兵に危害を及ぼさざる為、最近表尺の射弾の平均点と歩兵最前線との離隔度は状況に依り異なるも平坦地に於いて大口径榴弾砲の低射界射撃に在りては300米を標準とし、側方に対しては更に増大す。然れども、軽易なる掩蓋を利用し得るときは其の距離を短縮し得るものとす
  8. 第69
    特火点破壊の為各部隊に目標を配当するに方りては、特火点の景況、砲種、射距離等を考慮すること緊要なり
    特火点を破壊するには通常目標毎に1中隊を配当するものとす。此の際、其の外壁に正対して射撃し得る如く之を配当するの着意緊要なり
    特二十四榴に在りては7〜8000米、二十四榴及び二十八榴に在りては4〜5000米、十五加に在りては5〜6000米以上の射撃距離に在りては所要弾数著しく増加するに注意するを要す
  9. 第70
    特火点破壊の程度は其の戦術的価値、及び強度、砲種、準備弾薬等を考慮し、戦記に適合する如く之を定むるを要す
    特火点の外壁に大破壊口を成形し其の機能を失わしむるには、中等距離に於いて通常1中隊1目標に対し約1時間を要し、之に要する有効命中弾数の標準左の如し
    壁厚(鉄筋を有す)(米)
    1.0 1.5 2.0

    特二十四榴
    二十四榴 一三
    十五加 二〇 三五  
    特火点の外壁に小破壊口を成形せしむるときは一時其の機能を失わしむ。又、外壁に命中弾を得るときは制圧の目的を達し得ることあり