作戦要務令

第三部


第7篇 憲兵
  1. 第280
    憲兵は戦地に於いて軍の任務達成を容易ならしむるを主眼とし、概ね左の任務に服するものとす
    • 軍機の保護
    • 間諜の検索
    • 敵の宣伝及び謀略の警防
    • 治安上必要なる情報の収集
    • 通信及び言論機関の検閲、取締
    • 敵意を有する住民の抑圧
    • 非違及び犯則の取締
    • 酒保及び用達人等、軍従属者の監視
    • 旅舎、郵便局、停車場等の監察
    憲兵は前項の外、臨機の任務に服するものとす
  2. 第281
    高級指揮官は憲兵をして遺憾なく其の特性を発揮せしむる如く、之を統一して使用するを通常とす。状況に依り、其の一部を部下指揮官に配属し、又は区処せしむることあり
  3. 第282
    憲兵部隊長は高級指揮官の企図に基き、作戦の推移、軍隊の配置及び行動、治安の状況等を考慮し、憲兵の服務の重点を確定し、之を部署す
    憲兵部隊長は其の主管事項に関し、高級指揮官の諮問に応え、且つ適時意見を具申するものとす
  4. 第283
    憲兵は常に各部隊と緊密なる連繋を保ち、軍の必要と戦地の実相とに即応する如く任務を遂行し、特に軍人、軍属、及び軍従属者の非違及び犯則の取締に方りては之が警防及び処理を適正にし、各部隊の軍紀確立に協力し、以って軍の威信発揚に遺憾なきを期せざるべからず
  5. 第284
    憲兵は軍人、軍属の非違を認めたる場合に於いて、同級者以下に対しては直ちに之を矯正し、上級者に対しては其の旨を告げ、要すれば所属部隊、官等級、氏名等の告知を受け、其の顛末を所属上官に通報するものとす
  6. 第285
    軍隊及び軍人、軍属は、憲兵より援助の請求あるときは任務に支障なき限り之に応ずべきものとす
  7. 第286
    憲兵の勤務上の越権を矯正し得るは、憲兵将校及び其の所属上官の外、佐官以上ならびに中隊長及び之に準ずる職務を有するものとす
  8. 第287
    憲兵の分遣隊長以上の部隊長は、状況特に之を要すれば、其の地に在る部隊の高級先任の指揮官に対し、補助憲兵配属の請求を為すことを得。此の際、請求を受けたる指揮官は、状況の許す限り之に応ずべきものとす
    補助憲兵は憲兵の指揮下に在りて其の勤務を補助するものとす
    補助憲兵は白地に赤色を以って「憲兵」の二字を記したる腕章を左腕に纏うものとす