作戦要務令

第三部


第3篇 衛生

第1章 人衛生

要則
  1. 第191
    衛生は軍隊の戦闘力を保持増進する為、極めて重要なり。故に、各級指揮官は常に衛生機関の部署を適切にすると共に、状況之を要すれば機宜の処置を講じ、又、幹部以下周密なる注意を以って衛生勤務を良好ならしむるを要す。極寒又は酷熱の地、或は衛生状態不良なる地方に於いて特に然り
  2. 第192
    衛生勤務に於いては、保健、防疫、傷病者の収療及び後送、敵の科(化)学戦に対する衛生、衛生に関する情報収集、衛生材料の補給等の業務を行うものとす
  3. 第193
    保健の目的を達せんが為には、将兵の体力、気力を増強し、特に持久力を増進し得る如く、衛生に関する諸般の指導及び施設に遺憾なからしむること緊要なり
  4. 第194
    伝染病は未然に其の発生を防止すること緊要なり。之が為、防疫に関する軍紀の振作及び教育の徹底を図り、関係情報を収集し、必要なる防疫施設を完備するを要す。一度伝染病発生せば、如何なる場合に於いても速やかに隔離、消毒、検索、診療等の処置を講じ、続発、伝播を防遏せざるべからず
  5. 第195
    傷病者の収療及び後送に方りては、速やかに傷病者に対し適切なる処置を施し、成るべく戦場に於いて治癒回復せしめ、以って軍隊の戦闘力減耗を防止すること緊要なり
  6. 第196
    敵の行う科(化)学戦に対しては、之に関する情報収集、防護及び収療に関し遺憾なからしむると共に、衛生施設を整え、特に検知及び衛生的鑑査を行うを要す
  7. 第197
    原隊に復帰する治癒患者は、所属部隊等の受領者若しくは兵站地区司令部等に引継ぎ、爾後の行動を確実ならしむるを要す。又、患者に属する兵器、被服等は、現地治癒見込患者に必要なるものを除き、師団兵器部、関係補給廠、又は兵站地区司令部等に引継ぎ、之が処理を的確ならしむるを要す