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作戦要務令
第三部
第2篇 補給及び給養
第4章 行李の行動
第174
行李の行動の大部は行軍にして、各種の困難を克服し、屡々昼夜兼行せざるべからず。故に、行李の指揮官は部下の掌握を確実にし、絶えず周密なる注意と適切なる指導とを以って、如何なる場合に於いても所属部隊の需要を充たすこと緊要なり
第175
各部隊は其の行李中、糧秣其の他常時軍隊に必要なるもの(前方行李と謂う)は自ら之を携行し、爾余の荷物其の他にして各部隊自ら携行する能わざるもの(後方行李と謂う)は、師団命令に依り一時残置するか、若しくは輜重兵連隊長に依託するものとす
後方行李の輸送の時期、方法、要すれば掩護等に関しては、師団長的確なる指示を与うること緊要なり
第176
師団行李長は前方行李(以下、本章に於いて単に行李と称するは前方行李を謂う)の集合に関する師団命令を受くるや、集合場の数、位置、出発後の行軍部署等を考慮して、行李掛将校(行李要員たる参謀部附将校を謂う)以下に夫々任務を与う。此の際、集合場、道路等を偵察したる後任務を与うるを可とすることあり
第177
師団行李長は行李の集合に関し、勉めて師団命令の下達せらるるに先立ち偵察を行い、集合法に就き所要の意見を具申し、また、師団命令下達の際、要すれば命令受領者を介しを行李の集合上必要なる事項に関し、所要の連絡及び協定を行うの着意を必要とす
第178
各部隊長は行李の集合に関し、通常集合場、集合時刻、要すれば宿営地出発時刻、道路、集合の為考慮すべき他部隊の行動、積載品授受に関する事項等を命令し、齟齬なく集合場に到り、師団行李長の指揮を受けしむ
行李の集合に方り、師団行李長及び行李掛将校以下は各々任務に従い行李の集合を指導し、行軍縦隊に移らしむるを通常とす
第179
各部隊長は師団命令に依り、後方行李に所要の人員を附して積載又は保管に便なる如く自ら適宜集積し、行李掛将校の指揮を受けしむ
後方行李、輜重兵連隊長に依託せられたる場合に於いては、該行李掛将校は輜重兵連隊長の指揮を受くるものとす
第180
行李の行軍部署は、軍隊区分、建制の保持、集合区分等を考慮し、行李掛将校以下の人員に応じ之を決定す
後方行李の輸送に方りては、行李掛将校は其の積載区分、輸送順序、卸下地点等の細部に関し、必要なる事項を輸送に任ずる指揮官に明示すること緊要なり
第181
行軍中の師団、戦闘を開始せんとするに至れば、行李は師団命令に依り適当の地に停止す。此の際、為し得れば縦隊の大小に応じ通常数地に開進するを可とす
師団行李長未だ停止に関する師団命令を受領せざるも、師団既に戦闘を開始したるを察知せば一時行李を停止せしめ、速やかに師団長に報告す。若し、師団命令に基き行李後退して停止するを要するときは、退却と誤解せしめざるに注意すること緊要なり
第182
行李は常に其の行動を整斉にし、如何なる場合に於いても戦列部隊等の行動を妨害すべからず。夜間に於いて特に然り。此の際、行李の指揮官は部下を確実に掌握し、事故を生ぜしめざる如く予め処置すること緊要なり
第183
師団行李長より師団長の許に派遣せられたる連絡将校は、行李の分進に関し師団命令下達せらるるや、行李の行動、各部隊の行李誘導に関する処置等に就き各部隊の命令受領者と必要の協定を為し、速やかに之を師団行李長に報告し、行李の分進を円滑確実ならしむるを要す。而して、行李の到着迄に分進路を偵察し、又、各分進団の長の動作に所要の援助を為し得れば有利なり
第184
師団行李長は行李の分進に関し師団命令を受領せば、諸隊の配置、道路網の状態等を考慮し、若干の分進団に区分し分進を命ず
分進団の長は、分進団を指揮し、所要の偵察を行い、所属部隊の位置附近に誘導したる後分進せしむ
第185
後方行李の分進は前方行李に準ずるも、時として其の大部、若しくは一部を一地に卸下し、各部隊の車馬等をして前送せしむることあり
第186
師団の行李独立して行動するときは、師団長は所要に応じ給養及び衛生の為、必要の人員を派遣するものとす
第187
行李糧秣を所属部隊に交付したる後、行李独立して宿営する場合に於いては、師団行李長は師団の糧秣交付に任ずる主任者と連絡し、速やかに行李糧秣の補充を終了せしむるを要す。但し、補充すべき品種、数量は、行李所属部隊長の命令に依る
第188
各縦隊毎に其の所属行李を合して行進せしむる場合に於いては、師団長は各縦隊の大小、其の任務、地形等を考慮し、適宜行李掛将校以下を各縦隊に配属し、其の行李を指揮せしむるを通常とす
各縦隊の行李長の動作は師団行李長に準ず
第189
行李の位置及び行動は、屡々軍の配置、企図等を暴露するの端緒となることあり。故に指揮官以下、敵の空中及び地上捜索、ならびに諜報に対し、常に周密なる注意を払わざるべからず
行李は我が企図及び行動を秘匿する為、夜間のみを利用して行動することあり。此の場合に於いては、特に薄暮又は払暁時、其の初動、終動を敵に暴露せざるを要す。時として欺騙行動を行うを可とすることあり
第190
行李は常に警戒、自衛の処置を講じ、敵に乗ずるの機会なからしむるを要す。之が為、適宜進路附近を捜索し、関係部隊との連絡を密にし、敵の妨害に方りては進んで之を排除する等、勉めて積極的に行動するを要す
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