作戦要務令

第三部


第1篇 輸送

第2章 船舶

第1節 船舶輸送
要旨
  1. 第50
    船舶輸送は輸送の目的、海上危険の度、航路、上陸地の状態等に依り其の実施の方法を異にするも、危険海面の航行に方りては船隊を以って海軍護衛の下に行うを通常とす
  2. 第51
    船舶輸送は気象及び季節の交感、敵の妨害等予期せざる幾多の障害を受け、輸送計画に大なる齟齬を来すこと屡々なるべきを以って、之が計画には所要の弾力性を保有せしむると共に、軍事船舶機関及び軍隊は準備を周到にし万難を排し所期の目的を達成する如く勉めざるべからず
  3. 第52
    乗船区分は、輸送の目的、輸送船の性能、特に搭載力、通信装備、部隊の建制、海上の状況、上陸地の景況等を考慮し、通常輸送計画に任ずる軍事船舶機関の長、之を定む。而して、敵前上陸を企図する場合に於いては乗船区分をして上陸部署に合致せしむること緊要なり
    船内に於ける軍紀の維持及び内務の実行を容易ならしむる為、一輸送船に建制部隊を乗船せしむるを得ば有利なり。然れども、特に迅速に上陸するを要する部隊、一船舶の損害に依り全局に影響を及ぼすが如き部隊等は、適宜数船に分乗せしむるを要す
    船腹を遺憾なく利用する為、部隊を分割し数船に分乗せしむることあり
  4. 第53
    船舶輸送に於ける通信連絡は極めて緊要なり。敵前上陸を企図する場合に於いて特に然り。而して、海上に於ける通信連絡は陸上に比し遥かに困難なるを以って、予め計画を周密にし実行に遺漏なきを要す。又、無線は勉めて之を制限し、要すれば禁止し、以って我が行動を秘匿するの着意を必要とす
  5. 第54
    輸送船と関係艦船との連絡、船長の業務実行及び船員其の他乗組員の監督に任ぜしむる為、1名の監督将校輸送船に乗組ましめらるるを通常とす
  6. 第55
    輸送船自衛の為砲兵部隊、又輸送船相互及び海運地と輸送船との通信連絡に任ずる為通信部隊乗船せしめらるることあり。此等の部隊は対敵、保安上必要なる警戒、及び内務に関し輸送指揮官の区処を受けしむるを通常とす。但し、砲兵部隊に在りては状況に依り輸送指揮官の指揮を受けしむることあり