作戦要務令

第三部


第1篇 輸送

第1章 鉄道

第3節 鉄道の掩護及び遮断
  1. 第44
    鉄道は施設完全にして始めて能く其の能力を発揮し得べく、而も故障の復旧には通常長時日を要するを以って、之が掩護に関し深く注意すると共に、之を愛護すること緊要なり。又、常に敵の遮断に対し復旧の準備に欠くる所なきを要す
  2. 第45
    鉄道掩護に使用する部隊の兵力、編組は、鉄道の要度、施設の状態、危険の大小等に依り異なるも、通常歩兵及び防空機関を主とし、状況に依り之に装甲列車、装甲軌道車、応急列車、修理列車其の他の必要の部隊を加う
    鉄道の近傍に在る軍隊は、任務の遂行に支障なき限り我が軍の使用しある鉄道及び将来使用すべき鉄道の掩護に任ずべきものとす
  3. 第46
    鉄道掩護の要領は状況に依り異なるも、之に任ずる部隊は小なる兵力を以って長延なる区域を担任するを通常とす。故に、主要なる停車場、橋梁、隧道、給水設備等の重要施設には所要の兵力を直接配置し地上及び上空に対して援護し、爾余の兵力を要地に控置するを可とす。此の際、輸送の状況、鉄道施設の配置及び状態、鉄道機関の行う自衛等に関し軍事鉄道機関と密に連絡し、此等を詳かにするの外、所要の列車等を準備し、且つ捜索及び諜報機関の活用に勉むること緊要なり
    装甲列車、装甲軌道車、応急列車、修理列車等の運行に関しては、予め軍事鉄道機関と協定するを要す
  4. 第47
    機に応じて敵の鉄道を遮断し其の運行を妨害するは、作戦上の価値極めて大なり
    鉄道の遮断は破壊に依るを通常とす。而して、長時日に亙り敵の鉄道を遮断する為には勉めて大なる破壊を数箇所に於いて実施す。状況に依り、小なる破壊を数次に亙り反復実施するを有利とすることあり。時として大なる距離に亙り徹底的に鉄道を破壊す
  5. 第48
    戦場附近に於ける鉄道の大なる破壊は、独立して作戦する師団長以上の命令に依り之を行うものとす
    数時間又は一、二日間の運行を遮断するに過ぎざる小なる破壊は、前項の指揮官より下級の指揮官之を実行することを得。但し、之を実行したる地点、日時、方法、及び程度は速やかに所属指揮官に報告するを要す
    我が軍に属する鉄道を破壊する場合に於いても前諸項に準ず
  6. 第49
    鉄道の破壊は、爆破、爆撃、焼夷、毀壊等の方法に依る。此の際、各種鉄道術工物、輪転材料、通信施設、給水設備等をも併せ破壊するを有利とす
    通信施設、給水設備等の破壊は軽易なる方法に依り屡々大なる効果を収め得るものとす
    鉄道の一時的遮断の為には、機関車若しくは列車を衝突せしむる等の方法に依り線路を阻塞するを有利とすることあり