作戦要務令

第三部


第1篇 輸送

第1章 鉄道

第1節 鉄道輸送
第3款 給養及び衛生
  1. 第36
    輸送中の給養は軍事鉄道機関の定むる給養停車場に於いて之を行い、当該停車場司令官若しくは特に設置せられたる機関、之を担任す。之が為、輸送指揮官は通常乗車前又は輸送中、停車場司令官を経て給養担任機関に給養人馬数及び給養区分(人員に在りては朝、昼、夕食、馬に在りては飼与、水与の区分)を通報すると共に、給養実施後右に対する證表を交付するものとす
    前項の給養担任機関なきときは、軍隊は自ら給養の処置を講ず。之が為、通常所要の人員を先遣して準備せしむ。状況に依り、列車内に於いて炊事することあり
  2. 第37
    輸送中人員の給養は特に設備せる食堂に於いてするか、又は出発前若しくは途中の停車場に於いて弁当を支給し車内に於いて食事せしむ。此の際、特に食中毒の予防に注意するを要す
  3. 第38
    輸送指揮官は衛生部員を適宜分乗せしめ、状況に依り休養車を定むることあり。又、輸送中下車療養を要する患者発生せば最寄衛生機関に委託し、最寄兵站地区司令部又は関係軍医部等に通報するものとす
    伝染病発生せる場合に於いては、速やかに最寄軍事鉄道機関に通報するものとす
  4. 第39
    馬糧は通常出発の際若干を携行せしめ、其の他は途中の停車場に於いて之を支給す。而して、飼与及び水与は通常車内に於いて麦袋、水嚢等を以って之を行う
    輸送中は飼料の配合を適切にし、水及び干草の飼与を励行し、以って馬の保健を図るを要す。暑熱烈しき季節に於いて特に然り。之が為、水桶等を車内に準備するを可とす
    長時間の輸送に在りては、将校以下馬衛生に注意すること特に緊要なり。之が為、換気、清潔、及び病馬の早期発見に注意すると共に、為し得る限り四肢を摩擦し、或は車内に於いて前進、後退等の運動を行うこと必要なり。下車前に於いて特に然り。又、停車時間長き場合に於いては馬を一時卸下し牽馬運動を課するを可とす