1936年発布

赤軍臨時野外教令


第七章 攻撃
  1. 其の二 対峙状態より行う攻撃
    1. 第206
      対峙状態より行う攻撃に在りては、攻者は一層詳細に、敵陣地帯、陣地帯前縁の径始、火網組織、人工障碍物、砲兵、及び予備隊の配置を探求し、且つ敵の配備の接合部を査定することを得べし。敵の配備に関する情報は、通常敵陣地帯の計画的写真撮影に依りて確定せらる。地上捜索は不断に之を行い、主として夜間小奇襲に依り敵の配備を確かめ、兵団接合部を査定し、敵状監察の為俘虜を獲得す
      敵陣地帯第一線の捜索は第26(ロ項)の要領に依る
    2. 第207
      準備の秘匿は成功の主要なる条件なり。之が為、攻撃及び突撃準備は、現に敵と触接しある部隊及び新たに加入すべき攻撃部隊の指揮官に依りて実施せられ、新たに到着する兵団、其の他の特科部隊は、指揮官の偵察後展開し、攻撃(突撃)前夜攻撃(突撃)発起位置に就くものとす
    3. 第208
      増加砲兵は隠蔽して直接敵の妨害を受けざる所定の陣地に進入し、指揮官の捜索に依り適時射撃開始の為の諸元を準備す。(火力表、射撃板其の他)陣地進入及び其の設備作業は原則として夜間之を行い、あらゆる偽装遮蔽の手段を講ずるものとす。観測所は各部隊任務受領後、直ちに之を決定し其の位置に就く
    4. 第209
      増加の為到着する戦車(機械化兵団)は、敵砲兵の火力奇襲を避け、敵航空部隊の観察に遮蔽し得る如く、遠隔せる待機陣地に集結す。前進路、出発陣地、及び攻撃地域の偵察、ならびに砲兵及び歩兵との協同の為の諸作業は、指揮官の偵察に依り適時之を行う。前進路ならびに出発陣地は技術作業に依り所要の設備を加えらる
      戦車は攻撃(突撃)前夜、はじめて其の出発陣地に進出す。戦車及び機械化牽引砲兵の集中に際しては発動機の音響消殺の手段を講ずること肝要なり。航空部隊は攻撃兵力の集結地域に対し敵の空中捜索を許さざるを以って根本的任務とす
    5. 第210
      対峙状態より行う攻撃は、以上の外第7章其の一(行軍より行う攻撃)に示す所に拠る
    6. 第211
      敵が後方陣地帯を有する場合に於ける其の攻略計画は、第一陣地帯の攻撃計画と同時に之を策定す。航空部隊は敵予備隊の後方陣地帯占領着手時期を監視し、其の近接途中に於いて之を襲撃せざるべからず。長射程砲は空中観測に依り敵の組織的後方陣地帯占領を妨害するを要す