歩兵操典

第五篇 大隊教練
第三章 夜間戦闘
第三節 追撃、退却
  1. 第562
    夜間敵の退却を察知せば、大隊長は直ちに敵を急追すべし。此の際、一小部隊と雖も放胆なる行動に依り敵線深く突進せしむると共に、適時目標を示して確実に部下を掌握すること緊要なり
    敵情及び追撃の処置は速やかに上級指揮官に報告し、隣接部隊に通報す
  2. 第563
    夜間退却の為には、細心の注意を払い、極力我が企図を秘匿す。之が為、敵の捜索を妨害すると共に、勉めて日没前に於ける部隊の移動を避くるを要す。此の際、斥候を活動せしめ、時として小部隊の攻撃を行う等、積極的手段に依り敵を欺騙するを利とす
    退却に方りては、予め後方を整理し、退路其の他の偵察を行い所要の標示を為す等、準備を周密ならしむること緊要なり
  3. 第537
    夜間退却を為すに方り残置部隊を設くる場合に於いては、之に明確なる任務を与え、爾後の行動に関し所要の事項を示し、且つ、勉めて一指揮官をして之を指揮せしめ、残置部隊相互の連繋を密ならしむ
    夜間退却に方り、縦い軽易なる障碍と雖も進路上に之を設くるときは、敵の追撃を渋滞せしめ得るものなり