歩兵操典

第四篇 歩兵砲教練
通則
  1. 第341
    歩兵砲は常に犠牲的精神を発揮して第一線に活躍し、歩兵戦闘の機微に投じて火力を発揚し、戦闘の要求を遺憾なく充足するを要す。状況之を要すれば、自ら突撃を敢行するの概なかるべからず
  2. 第342
    連隊砲、大隊砲の主要なる任務は、敵の重火器を撲滅若しくは制圧し、第一線歩兵の近距離に於ける戦闘に協同するに在り。状況に依り連隊砲は対戦車射撃に任ずることあり
    速射砲の主要なる任務は敵の戦車を撲滅するに在り。状況に依り側防機能、特に銃眼に対する射撃等に任ずることあり
  3. 第343
    適切なる指揮、厳粛なる射撃軍紀、精熟せる射撃動作、及び敏活なる行動は、歩兵砲の任務達成の為、重要なる素因なり
    射撃の要訣は、好機に投じ不意に射撃を開始し、至短時間に効果を収むるに在り。之が為、陣地を秘匿し、射撃準備、特に射撃諸元の決定を適切にし、且つ射法の選定、射弾の観測修正を適正ならしむること緊要なり
  4. 第344
    歩兵砲は有ゆる障害を克服し、常に一般歩兵と行動を共にするを要す。之が為、困難なる地形及び夜間に於ける行動、特に臂力に依る長距離の搬送に習熟すること緊要なり
  5. 第345
    歩兵砲は、戦闘間と雖も兵器の点検、手入を励行し、常に砲及び観測具の精度を良好に維持すると共に、特に弾薬の節用を図り其の補充に留意し、緊要の時期、威力の発揚に遺憾なきを要す
  6. 第346
    歩兵砲は多数の損傷を生ずるも手段を尽くして戦闘し、縦い最後の一兵となるも飽く迄奮闘し、砲と運命を倶にすべし
  7. 第347
    歩兵砲は自衛の為所要の警戒法を講じ、対戦車肉薄攻撃を準備し、要すれば捜索を行い、又、馬、車輌の処置を適切にし、特に砲(爆)撃等に対し混乱を予防し、損害を減少すること緊要なり
  8. 第348
    中隊長は准尉を長とする若干の人馬、器材を以って指揮班を編成す
  9. 第349
    本編中、《 》は大隊砲に、【 】は速射砲に関することを示す