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歩兵操典
第三篇 機関銃及び自動砲教練
第二章 射撃
第一節 機関銃
要旨
第256
射撃は通常直接照準に依り、時として間接照準に依る
照準は通常眼鏡照準具に依る
間接照準に於ける射向は通常垂球に、射角は眼鏡の水準器に依り之を附与す
第257
射撃は通常小隊長の号令に依る。分隊長は要すれば復令す
分隊長は射撃に方り、銃の固有修正量を修正せしむ
第258
射法は主として点射(てんしゃ)及び薙射(ちしゃ)を用い、時として追射(ついしゃ)を用う
射撃を行うには、予め目標又は照準点、射向修正量、射法、射距離、高低修正量、発射連数を号令し、発射せしむ
第259
銃手は目標(照準点)を速やかに発見すること、諸分画の装定正しきこと、観え難き目標或は不意に現出する目標又は移動目標を正確迅速に照準すること、目標変換の速やかなること、装填の迅速確実なること、ならびに故障の予防及び排除適切なることに熟達し、又、自ら弾着を観測修正し得るを要す
陣地に於ける分隊長以下の関係位置
第260
陣地に於ける分隊長以下の関係位置は、状況、特に地形に依り異なるも、其の標準第七図の如し
分隊長は指揮に便なる如く、銃の右(左)後ろに位置す。四番は射手となり、両肘を握把の両側に置き、体の方向銃身の方向に一致する如く伏臥し、二番は概ね装填孔の後端と斉頭に伏臥し、通常弾薬箱の底部を左前に蓋止を上にして置き、装填に任じ、三番は射手の予備となり四番の右(左)後方に、一番は小隊長との連絡に便なる如く適宜離れて位置す
五番は銃側に対する弾薬の補充に便なる如く、二番の左後方に適宜離れて(利用すべき地物なきときは約30歩)伏臥し、六番以下は弾薬補充に便なる如く適宜の距離に疎開して伏臥す
四番は、銃の最高姿勢に在りては両膝を地に着け上体を前に傾け、中間姿勢に在りては体格に応じ適宜の姿勢を取る
装填、照準、発射
第261
直接目標を照準し射撃せしむるには、例えば左の号令を下す
「
第一基点ノ左50ノ機関銃(斜右黒イ堆土ヨリ右1分画ニ亙ル敵)
」
「
点射(薙射)
」
「
400
」
(よんひゃく)
「
3連
」
「
撃テ
」
四番は銃を目標に向け、槓桿を十分に引き之を旧に復し、二番は装填す
装填するには、右手にて紙函の頭部に近く四指を上にして持ち、活塞後退しありやを検したる後、保弾板を送弾輪に載せ、其の尾端を少しく上げ、頭端を正しく準溝に向わしめ、一挙に短切なる力を加え、活音を聞くまで挿入す
四番は射距離を距離分画環若しくは照尺に装し、其の結果を分隊長に報告し、照準終われば両手にて握把を握り、両拇指を軽く押鉄(おしがね)に接し
「
宜シ
」
と唱う。射撃準備終わるや分隊長は
「
準備終リ
」
と報告す
「
撃テ
」
の号令にて四番は発射す。二番は所命の連数を連続装填し、撃終れば
「
撃終リ
」
(うちおわり)と報告し、続いて装填す
連続装填するには前保弾板の弾薬を撃ち尽くしたる後行う
非緊定点射を為さしむるには、号令中
「
点射
」
の次に
「
非緊定
」
と号令す
第262
補助照準点に依り射撃せしむるには、例えば左の号令を下す
「
照準点 左前方堆土ノ右下際(頂上)
」
「
20右へ
」
「
点射
」
「
700
」
(ななひゃく)
「
高低4増セ(減ケ)
」
(ませ(ひけ))
「
4連
」
「
撃テ
」
四番は射向および高低修正量を装し、其の結果を分隊長に報告し、照準す
第263
間接照準に依り射撃せしむるには、例えば左の号令を下す
「
垂球
」
「
森ノ右端ノ機関銃
」
「
点射
」
「
900
」
(きゅうひゃく)
「
高低6増セ(減ケ)
」
「
2連
」
「
撃テ
」
分隊長は銃の後ろに位置し、四番をして脚を移動せしめ、先ず概略の射向を附与し、後脚を堅固に据えしむ。次いで、四番をして床尾を移動せしめつつ垂糸と目標(照準点)とを含む垂直面に銃身軸を一致せしむ
四番は方向緊定桿を緊め、標定点を選び、射向を換うることなく方向転輪を廻わして之を照準し、標定点及び現在の分画を分隊長に報告し、距離分画、高低分画を装し、其の結果を分隊長に報告し、射角を附与し、方向を正す
照準点に対し射向を附与せるときは、標定点を取り、次いで射向修正量を号令す
標定点は射線に近く、発見及び照準容易にして、消滅、移動の虞なく、銃の位置と概ね同高なるを可とす。適当の標定点なきときは適宜之を設く
射向及び射角の修正、目標変換
第264
射向の修正は通常方向分画(横尺)に依るも、鏡内方向分画若しくは照準点の変更に依ることあり
例えば、
「
二ツ右ヘ
」
の号令にて、四番は方向分画(横尺)に之を修正し、其の結果を分隊長に報告す。鏡内方向分画を用うるときは、例えば
「
鏡内五ツ右へ
」
の号令にて、四番は左5密位の目盛にて照準し
「
左五ツ
」
と報告す
第265
射角の修正は通常距離分画(照尺)に依るも、高低分画若しくは鏡内高低分画に依ることあり。又、100米以下の修正は、歯弧転輪に依るか、或は照準点の変換に依る。歯弧転輪に依るときは、例えば
「
一ツ伸バセ (二ツ縮メ)
」
(のばせ (つめ))の号令にて、四番は歯弧転輪の分画に依り修正す
第266
目標変換に方り後脚の移動を要するときは、四番は
「
後脚右(左)
」
と唱え、銃身を概ね後脚の方向に緊定し、脚を概ね新方向に向かしむ
第267
目標変換に方り、分画に依り射向及び射角を修正するには、通常定位を基準として新たに号令す。状況に依り射向修正の要領に依ることあり
目標変換に方りては旧目標に対する射撃諸元の修正量を利用するを可とす
射撃中止及び停止
第268
射撃を中止するには
「
撃方待テ
」
の号令にて、四番は拇指を押鉄より放つ。弾薬を射尽くしあるときは二番は装填す
射撃を止むるには
「
撃方止メ
」
の号令にて、四番は拇指を押鉄より放ち、右手にて槓桿を引きて保ち、二番は右手の食指にて碍子を左方に引きたる侭、左手にて保弾板を抽出す。四番は残弾なきを確め、左手の拇指にて押鉄を押し、槓桿握把の前端照準具托坐の前端に達せんとするとき、左手にて先ず送弾輪、次いで薬莢蹴出窓蓋(たまだしまどおおい)を閉じ槓桿を旧に、諸分画を定位(方向、高低及び距離分画は0、照尺は300、横尺は30)に復し、銃身の方向を但し、方向緊定桿を緊め、解脱子を旧に復し、四番は後棍を装す。二番は昇降軸を最低にし、前棍を脱しあるときは之を装す
対空射撃
第269
対空射撃に在りては特に動作を敏活にし、各種飛行方向の目標に対する照準、及び好機に投ずる撃発に習熟するを要す
第270
高射用意を為さしむるには、左の号令を下す
「
高射用意
」
二、四番は銃を三脚架より脱す。此の際、四番は先ず歯弧を十分に上ぐ
一番は托架緊定桿を前にして高射托架を三脚架の相当部に嵌め、銃耳蓋を閉じ、托架緊定桿を緊む。三番は昇降軸を約10糎上げ、将校軸緊定桿を緊む
二、四番は銃を托架上に組み、二番は高射照門を四番に渡し、次いで照準環の駐子を内方にする如く托環の穴に挿し、四番は高射照門を横尺に装し、照尺に高射用600の分画を装し、射撃姿勢を取る
第271
高射用意を解くには
「
用意ヲ解ケ
」
の号令にて、
「
高射用意
」
と概ね反対の順序に操作す
第272
対空射撃を行うには、予め目標、航速、射法、射距離を号令し、発射せしむ。例えば左の号令を下す
「
右前方先頭ノ飛行機
」
「
300粁
」
「
追射(点射)
」
「
600、800
」
「
撃テ
」
四番は好機を捉えて発射す
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