歩兵操典

第三篇 機関銃及び自動砲教練
第二章 射撃
第二節 自動砲

要旨
  1. 第273
    射撃は通常小隊長の命令に基き、分隊長之を号令す
    分隊長は射撃に方り、砲の固有修正量を修正せしむ
  2. 第274
    射撃を行うには、予め目標、射向修正量、要すれば照準点、射距離を号令し、発射せしむ。但し、対戦車射撃は別命なく500米の照尺を用う
    榴弾を用うるときは、予め之を示す
  3. 第275
    砲手は協力して機敏的確に動作し、特に目標(照準点)を速やかに了解すること、脚の修正を速やかに行うこと、距離分画の装定正しきこと、移動目標に対し正確迅速に照準すること、目標変換の速やかなること、及び装填の迅速確実なることに熟達するを要す

陣地に於ける分隊長以下の関係位置
  1. 第276
    陣地に於ける分隊長以下の関係位置は、状況、特に地形に依り異なるも、其の標準第八図の如し
    第八図
    分隊長は指揮に便なる如く、砲の右(左)後ろに位置す。四番は射手となり、両肘を床尾の両側に置き、体の方向概ね砲身の方向に平行する如く伏臥し、二番は概ね装填孔の前端と斉頭に両肘を置き左後ろに伏臥し、装填ならびに前脚の保持及び修正に任じ、三番は射手の予備となり四番の右(左)後方に、一番は小隊長との連絡に便なる如く適宜離れて伏臥す
    五番は概ね第八図の関係位置に伏臥し弾薬補充に任じ、六番は五番の附近に適宜離れて伏臥し空弾倉の装填に任じ、七、八番は弾薬補充に便なる如く適宜の距離に疎開して伏臥す

装填、照準、発射
  1. 第277
    発射法は指命射及び各個射とす
    指命射を為すには、撃テの号令にて四番は発射し、次発の準備を為す
    各個射を為すには、例えば撃テ 3発の号令にて所命の弾数を連続発射す
  2. 第278
    移動目標を射撃せしむるには、例えば左の号令を下す
    • 先頭戦車
    • 撃テ 4発
    四番は砲を目標に向け、槓桿を十分に引き之を旧に復し、装填口蓋板を開き、照尺を点検し照準す。二番は装填す
    • 装填するには、右手にて弾倉後壁を持ち、弾倉の口金前端を下げ、前方駐子を装填口前壁の横溝に嵌め、弾倉の後部を強く圧し弾倉止に鉤す
    発射の号令の後、好機を捉えて所命の弾数を発射す
    1弾倉を撃終れば、四番は弾倉止把子を押し、二番は左手にて後ろより弾倉を握りて脱し、次いで装填す
  3. 第279
    固定目標に対し射撃せしむるには、例えば左の号令を下す
    • 堆土ノ右ノ機関銃
    • 2ツ右へ
    • 400
    • 撃テ (撃テ 3発)
    四番は射向修正量を横尺に、射距離を照尺に装す
  4. 第280
    不発のときは直ちに槓桿を引き弾薬を抽出し、続いて射撃す

射向及び射角の修正、目標変換
  1. 第281
    射向及び射角の修正は、移動目標に対しては照準点の変換に依り、固定目標に対しては横尺及びに照尺、若しくは照準点の変換に依る。照準点の変換に依るときは、目標の幅及び高さを基準として修正量を示す
    目標変換に方り、横尺に依り射向を修正するには通常定位を基準として新たに号令す。此の際、旧目標に対する射撃諸元の修正量を利用するを可とす

射撃中止及び停止
  1. 第282
    射撃を中止するには撃方待テの号令にて、四番は安全装置にし、要すれば二番は直ちに弾倉を充実せるものと交換す
    射撃を止むるには撃方止メの号令にて、四番は槓桿を十分に引きて保ち、弾倉止把子を押し、二番は弾倉を取り、蹴出口蓋板を閉じ、前脚頭廻止を旧に復す。四番は残弾なきを確め、引鉄を引きて、砲尾機関を静かに進め、装填口蓋板を閉じ、照尺及び横尺を定位(照尺最低、横尺10)に復し、後棍を装す