歩兵操典

第三篇 機関銃及び自動砲教練
第一章 密集
第二節 密集の動作
  1. 第249
    密集の動作は一般歩兵中隊に準ず。但し、卸下せるときの整頓は、予令にて属品箱、銃《砲》、弾薬箱を提げ、直レの号令にて地に置く
  2. 第250
    卸下せる分隊を駄載せしむるには、左の号令を下す
    • 載セ
    分隊長は兵の動作を監視す
    銃《砲》馬馭兵は、馬を後脚踵鉄《床尾》の後方7歩に導き、弾薬馬馭兵は馬を導きて銃《砲》馬馭兵の後方約5歩に到り、共に馬の正面に立ち、之を保つ
    馬の両側に駄載するときは、馭兵は両側の準備終わるを見て宜シと唱え、左右同時に載せしむ
    • 機関銃
      七(八)番は弾薬箱を弾薬馬の右(左)に運びて置き、七番は銃馬の右に到り、銃被を取りて六番に渡し、銃馬右側の縛革、次いで弾薬馬右側の縛革を解き、八番は銃馬の左側に到り縛革を解き、次いで弾薬馬左側の縛革を解く。五(六)番は弾薬箱を弾薬馬の右(左)に運びて置き、六番は銃被を銃の位置に運ぶ。五番は属品箱を銃馬の右に運び、蓋止を外にして属品箱托架に載せ、縛革を属品箱の托環に通して縛る
      二番は左足を銃身と左前棍との間に踏入れ、銃耳蓋を開き、左(右)手にて銃口部(「ガスポンプ」中央付近)を握り、四番は左足を約1歩踏出し、左手にて左握把を握り、右手にて方向緊定桿を緩め、銃耳托架の後端を左端に移して緊め、両手にて握把を折畳み、左手にて左握把を持ち、右手にて歯弧と歯弧駐梁(しこどめ)との結合を解き、止栓を挿し、次いで逆鉤駐子室の前を持ち、両銃手と協同して銃を脱し、約1歩左に移りつつ右膝を着き、装填孔を下にし、二番は「ガスポンプ」の後端に近き部を、四番は尾筒の後端を左股に托す。二、四、六番は協同して銃被を装し、二、四番は銃を、六番は後棍を銃馬の左に運び、6番は後棍を穹鉄(きゅうてつ)上方より各穹臂(きゅうひ)の外側に沿いて懸く
      一番は両前棍の中間前に右足を踏入れ、両前棍を脱して銃の右に置き、三番は左足を後棍の間に踏入れ、後棍を脱して左後ろに置き、一番は銃耳蓋を閉じ、前脚止栓を廻わし、両前脚の下部を握り、三番は左手にて後脚止栓を廻わし、後脚を右手にて銃耳托架右上端を握り、協同して三脚架を折畳み、三(一)番は三脚架(両前棍)を銃馬の右に運ぶ
      二、四番は協同して銃を銃身托架に銃口を後方にして、前方托架の前端と逆鉤駐子室との間に約10糎を間して載せ、後棍及び銃を、共に托架の外方を通して縛る
      三番は後脚の前(後)部を三脚架の前(後)部托架に載せ、一番は前棍の駐子を上にし、其の後端を概ね踵鉄の後端と斉頭にし、前、後脚の間に並置し、協同して三脚架及び前棍を共に縛る
      七、八番は弾薬箱各1つを蓋止を内にし載せて縛り、更に各1つを重ねて縛る
      高射托架を卸下せるときは、一番は之を銃の左に置き、六番は之を後棍と共に銃馬の左に運び、後棍を懸けたる後、高射托架を其の上部を後方にして、銃身托架の下に縛る
    • 自動砲
      七(八)番は弾薬箱を弾薬馬の右(左)に運びて置き、七番は弾薬馬両側の縛革を解く。八番は砲馬の左に到り縛革を解き、尾筒揺架被、砲身被をとり、尾筒揺架被(砲身被)を三(二)番に渡す
      五(六)番は弾薬箱を弾薬馬の右(左)に運びて置き、五番は砲馬右側の縛革を解き、前、後棍を、六番は属品箱を砲馬の右に運び、五番は先ず前棍を砲身托架に載せ、五、六番は実弾倉入弾薬嚢を載せ、次いで六番は属品箱を蓋止を外にして載せ、五番は後棍を載せ、協同して属品箱、前、後棍を其の順序に縛る
      一番は砲身の右に右膝を着き、前棍を脱し砲の右に置く
      三番は左膝を後棍の中央に着き、後棍を脱し砲の右に置く
      四番は砲の左に右膝を着き、連結ネジ廻止を起こし、三番の槓桿操作を妨げざる如く両手にて尾筒を圧し、二番は右に廻わり砲身「スパナ」を出し、連結ネジを分解位置に廻わしたる後、之を携帯嚢に納む
      三番は槓桿を装填口の中央迄引き、一番は右手にて砲口部を、左手にて砲身後部を握り、三、四番と協同して砲身を分解し、三番は槓桿を旧に復す
      一番は砲口を下にし、二番と協同して砲身被に挿入し、砲身後方被を装し、砲尾を砲身被にて包み、締紐にて縛り、一番は砲身後部を、二番は砲口部を持ち、砲馬の右に運ぶ
      四番は活塞被を受取りて装し、三番は尾筒揺架被を装し、四番の右に右膝を着き、協同して槓桿を下にし尾筒及び揺架を左股に乗せ、三(四)番は後脚(前脚)を畳み、尾筒揺架被にて尾筒及び揺架を包み、砲馬の左に運ぶ
      一、二番は砲口を後方にし「ガスポンプ」を上にし第三連結管の前端を前方托架に接して載せ、前棍と共に縛る
      三番は右(左)手にて後脚中央(床尾)を、四番は右(左)手にて前棍口(前脚基部)を持ち、砲身結合部を後方にし、握把後端を前方托架に接して尾筒托架に載せて縛る
      七、八番は弾薬箱各1を蓋止を内にし載せて縛り、更に各1を重ねて縛る
    動作終われば、分隊長以下定位に就く
  3. 第251
    駄載せる分隊を卸下せしむるには、左の号令を下す
    • 卸セ
    駄載と概ね反対の順序に依るの外、左の如く動作す
    • 機関銃の七、八番は、銃馬の縛革を居木の托環に、弾薬馬の縛革を両頭縛革の尾錠に通し、定位に就く。高射托架は別命なければ卸下せず
    • 自動砲の五、八番は砲馬の縛革を居木の托環に、七番は弾薬馬の縛革を両頭縛革の尾錠に通し、定位に就く
  4. 第252
    卸下の行進に在りては、予令にて分隊長は属品箱を提げ、一乃至四番は前、後棍を握り、四番の宜シの合図にて銃《砲》を提げ、五乃至八番は弾薬箱を右肩に担う。要すれば銃《砲》、属品箱を担い、弾薬箱を負い、又、銃《砲》手の手、或は肩を換えしむ
    停止せば整頓し、次いで銃《砲》、属品箱、弾薬箱を置く
  5. 第253
    卸下に在りて折敷するには、右足を後ろに引き、伏臥するには両手を前に就き稍々外方に姿勢を取る。行進間に在りては銃《砲》、弾薬箱を置き、動作す
    折敷、伏臥より行進するには、予令にて起ちつつ銃《砲》、属品箱を提げ、弾薬箱を担う
  6. 第254
    分隊及び縦隊の方向変換に方り、駄載に在りては馭兵は馬を概ね外側の兵の後方を行進せしめ、新正面にて定位に入り、卸下に在りては内側の者は半径約2歩の円形を描く如く行進す
  7. 第255
    縦隊より同方向に横隊を作らしむるには、左の号令を下す
    • 左(右)ヘ並ビ 進メ(ひだり(みぎ)へならび すすめ)
    戦闘の指揮班又は分隊は動くことなく(行進間に在りては停止し)、に方向を換え、他は速歩(行進間に在りては駈歩)にて捷路を経、逐次新位置に就き、各々整頓す