歩兵操典

第二篇 中隊教練
第二章 戦闘
第一節 分隊
第二款 防禦
  1. 第136
    分隊長は状況の許す限り綿密に地形を偵察し、射撃区域の地形、及び隣接部隊との関係を考慮し、火器、特に軽機関銃又は擲弾筒の威力を最も有効に発揚し得る如く配置を定む
  2. 第137
    分隊の配置を定むるには、射撃区域、特に至近距離に最も有効に火力を発揚すると共に、敵の攻撃を受くるの虞ある他の方向に対しても火力を指向し、且つ損害を減少し得る如く、地形に適合し疎開せしむ。此の際、通常分隊を数群に分ち、之を梯次に配置し、又、屡々(しばしば)軽機関銃を分離して配置す
    狙撃手、監視兵等は分隊の陣地と適宜離隔せしむるを利とすることあり
    射撃区域に代え主なる射撃方向を示されたるときは、分隊長は其の占領区域と射撃方向とを基礎とし、自ら射撃区域を定む
  3. 第138
    軽機関銃、擲弾筒の為には、各種の状況に応じ、十分なる火力を発揚し、且つ損害を避けんが為、数箇の射撃位置を設け、又、之に近く弾薬集積等の為、掩護の設備を設く
  4. 第139
    分隊長は、予め友軍の状況、分隊の射撃区域、所命の火力急襲地点(中隊長以上の計画に依り火力を急襲的に集中すべき地点を謂う)前地の地形等を示して兵に了解せしめ、射撃指揮を容易にし、又、状況の許す限り工事、偽装を十分ならしむ
  5. 第140
    擲弾分隊長は射撃準備を命ぜられたる地点に対し、各筒の射向、距離分画、射撃の要領等を示し、予め所要の準備を整えしむ
  6. 第141
    射撃を開始せざる間、分隊長は極力兵を掩蔽せしむ。然れども、敵の近接に伴い、機を失せず射撃位置に就き得るの準備、ならびに所要の小銃手をして随時有利なる目標を狙撃せしむるの準備に遺憾なきを要す
    分隊長は自ら敵情を監視すると共に、所要の兵をして敵情監視に任ぜしむ
  7. 第142
    射撃は小隊長の命令に依り開始し、射撃区域及び所命の地点に対して行う。爾余の地域に在りても、敵兵分隊に近迫するときは之を射撃す
    分隊長は射撃に際し、散兵をして巧みに隠顕し、或は射撃位置を変え、或は敵を欺騙せしむる等、敵に目標を捕捉せしめざるの着意を必要とす
    敵兵近迫し来るも、分隊長以下我が白兵の威力を信じ、自若として益々火力を発揚し、要すれば手榴弾を投じ、之を陣地前に破摧すべし。敵兵遂に突入し来たれば、敢然白兵を揮いて撃滅すべし。縦い我が陣地に進入するも、最後の一兵に至るまで奮闘し、飽く迄其の地を固守すべし
  8. 第143
    戦車を伴う敵の攻撃に対しては、分隊長は通常戦車に跟随する歩兵を射撃せしむ。然れども、戦車至近距離に近迫し来るときは、兵を指命して覘望孔等を射撃せしむることあり