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歩兵操典
第一篇 各個教練
第一章 基本
第四節 射撃
要旨
第31
射撃は兵の動作中特に緊要なり。故に綿密周到に教育し、戦闘の為確乎たる基礎を作るを要す。但し、逆射の姿勢は其の要領を、立射の姿勢は単に其の概要を習得せしむるを以って足る
射撃教育に方りては、装面して演練すること亦必要なり
第32
良好なる射撃姿勢は、精熟せる据銃、照準、撃発と共に、命中を良好ならしむるの基礎なり
射撃姿勢は兵の体格に良く適応し、常に堅確にして而も凝ることなく自然の状態に在るを要す
小銃
第33
射撃姿勢を取らしむるには、目標を示し左の号令を下す。但し、対空射撃に在りては方向を示し、射撃姿勢を取らしめたる後目標を示すことあり
「
伏射
」
(ねうち) (
「
膝射
」
(ひざうち)
「
逆射
」
(さかうち)
「
立射
」
(たちうち))
不動の姿勢に在るとき目標(方向)を示さるるや、先ず之に正対す
伏射の姿勢を取るには、頭を目標の方向に保ち、左手にて弾薬盒を左右に開き、左足を約半歩右足尖の前に踏出すと同時に上体を半ば右に向け、右膝より地に着け、左手を前に出し地に着け、体を射撃方向に対し約30度に伏臥し、同時に右手にて銃を前に出し左手にて概ね銃の重心の所を握り指を銃床の溝に置き、装填したる後、右手にて稍々下より銃把を握り、之を腮(あご)の稍々前にし、両肘を地に支え目標に注目す
膝射の姿勢を取るには、頭を目標の方向に保ち、左手にて弾薬盒を左右に開き、左足を伏射に於ける如く踏出すと同時に上体を半ば右に向け、左手にて剣鞘を前に払い、右脚を曲げ其の股を目標の方向と概ね直角に平らに地に着け、臀を右足の後ろにて地に着け、左脚を立て、同時に右手にて銃を前に倒し、左手にて概ね銃の重心の所を握り指を銃床の溝に置き、其の前臂を左膝の上に置き、床尾板を右股の内側に当て装填したる後、右手にて概ね右側面より銃把を握り、上体を自然の方向に概ね真直ぐに保ち目標に注目す
逆射の姿勢を取るには、膝射に準じ臀を地に着けつつ、左手にて概ね銃の重心の所を握り指を銃床の溝に置き、仰臥し、床尾を右腋下にし床嘴(しょうし)を地に着け銃口を上にし装填したる後、右手にて概ね右側面より銃把を握り、銃を地面に対し約60度に保つ。後盒を有する時は先ず左手にて左に廻す
立射の姿勢を取るには、頭を目標の方向に保ち、右足尖にて半ば右に向きつつ左足を約半歩左前に踏出し、同時に右手にて銃を上げつつ前に倒し、左手にて概ね膝射の如く保ち、床鼻を右乳より少しく下にし、床尾を体に接し装填したる後、右手にて概ね右側面より銃把を握り目標に注目す
射撃姿勢を取りたるとき、逆射姿勢に在りては銃口を概ね眼の高さにす。何れの姿勢に在りても右手の食指を用心鉄の内に入れて伸ばし、装填しあるときは撃発装置にす。又、姿勢を取りたる後不具合を感ずるときは速やかに修正す。膝射に在りては体格に依り臀を右足の上に載す
第34
狙撃眼鏡を銃に装するには、眼鏡を取出し眼鏡緊定把を「脱」に位置せしめ、左手に銃を持ち右手にて眼鏡を握り、銃の眼鏡止バネに装着部の鉤する迄静かに推し進め、緊定把を「装」に位置せしむ
眼鏡を銃より脱すには前項と反対の順序に操作す
第35
射撃せしむるには、予め照尺(射距離)を示し、左の号令を下す
「
撃テ
」
連続して射撃を行なう。而して装填する毎に弾薬盒を閉じ留革を掛く
第36
射撃を中止せしむるには左の号令を下す
「
撃方待テ
」
(うちかたまて)
据銃前の姿勢に復し、次発の準備を為す
射撃を止めしむるには左の号令を下す
「
撃方止メ
」
(うちかたやめ)
注目して安全装置にし、照尺を旧に復し、頭を目標の方向にし、伏射に在りては姿勢を取りたるときと概ね反対の順序にて上体を起こし、左足を約一歩前に踏出して起ち、右足を引きつけ、弾薬盒を旧に復し、膝射に在りては右手にて木被の所を握りて起ち、目標の方向に向きつつ右足を左足に引きつけ、弾薬盒を旧に復し、逆射に在りては右手にて体を起こし、姿勢を取りたるときと概ね反対の順序にて起ち右足を左足に引きつけ、立射に在りては右手にて木被の所を握り、左踵にて目標の方向に向きつつ右足を左足に引きつけ、不動の姿勢に復す
軽機関銃
第37
射撃姿勢を取らしむるには、目標を示し左の号令を下す。但し、高射に在りては方向を示し、射撃姿勢を取らしめたる後目標を示すことあり
「
伏射
」
(ねうち) (
「
高射
」
(こうしゃ))
不動の姿勢に在るとき目標(方向)を示さるるや、先ず之に正対す
伏射の姿勢を取るには、銃に注目して之を体に托し、両手にて脚桿を開き、右手にて提把を握ると同時に左足を約一歩前に踏出し、銃把を概ね左足尖の右傍に在らしむる如く目標に対し銃を据え、床尾の両側に両手を着き、概ね銃身の方向に一致する如く伏臥し、右手にて握把を握り装填したる後、左手にて銃把を下より握り、目標に注目す
高射は二名協同して行う。高射の姿勢を取るには、射手は伏射に於ける如く、脚桿を開き、右手にて提把を握り、銃を前に差し出して他の兵に保持せしめ、両膝を開きて地に着け、伏射に準じ銃を保ちて装填し、左手にて銃把を下より握る。又、他の兵は射手の前方約二歩に正対し、両膝を開きて地に着け、射手の差し出す銃の脚桿の踵鉄部(しょうてつぶ)を両手にて握り、両肘を外方に張り之を保つ
第38
眼鏡を銃に装するには、眼鏡を取出し右手にて遮光筒を前にして上より握り、之を眼鏡托坐(たくざ)に装し左手にて支え、右手にて緊定す
眼鏡を銃より脱すには前項と反対の順序に操作す
第39
弾薬を弾倉に充填するには、装弾器を取出し吊紐を首に掛け、弾倉を取出して装弾器に装し、押鉄を開き弾薬を撮み出し、次いで左手にて弾倉を握り、右手にて弾薬を装弾器内に込め、左手の食指にて弾薬を下方に圧し、右手にて押鉄を一挙に内方に圧して充填す
第40
射撃は通常点射(3乃至5発)を用い、時として連続点射を用う
射撃せしむるには、予め射距離(照尺)、要すれば射向修正量、照準点を号令す。照尺、横尺に依るときは射手は之を装し、其の結果を報告す
点射を反復〔移動〕せしむるには発数を示し、左の号令を下す
「
撃テ
」
〔
「
右(左)ヨリ撃テ
」
〕
射手は概ね示されたる発数宛発射す
連続点射を為さしむるには
「
連続撃テ
」
の号令を下す
第41
射撃を中止するには
「
撃方待テ
」
の号令にて据銃前の姿勢に復す
射撃を止むるには
「
撃方止メ
」
の号令にて、射手は床尾を肩より下ろし、槓桿を引き之を旧に復し、注目して安全装置にし、照尺、横尺を旧に復したる後、伏射に在りては頭を目標の方向にし、銃を置きたる侭、右足を曲げ両手を着き左足を約一歩前に踏出し床尾の左側に起ち、高射に在りては、左手にて銃把を握り右手にて提把を握り銃を地に置きて起ち、脚桿を保持する兵は、射手提把を握るや、姿勢を取りたるときと概ね反対の順序にて起ち、不動の姿勢に復す
擲弾筒
第42
射撃姿勢を取らしむるには、目標(方向)を示し左の号令を下す
「
伏射
」
(
「
膝射
」
)
不動の姿勢に在るとき目標(方向)を示さるるや、先ず之に正対す
伏射の姿勢を取るには、頭を目標の方向に保ち、小銃手の伏射に準じ、体を射撃方向に対し約10度に伏臥し、右手にて筒を前に据え、右肘を地に着け、左手にて左上より筒身の略々中央を、右手にて柄桿下部を握り、左臂を伸ばして筒を水平面に対し45度に保ち、右手にて引革を握り、目標に注目す
膝射の姿勢を取るには、頭を目標の方向に保ち、小銃手の膝射に準じ、右膝を地に着け臀を右踵の上に落着け、止板(とめばん)前端概ね左足の内側中央に在る如く筒を据うるの外、伏射に準ず
第43
装填は発射の直前に行なう
装填するには弾薬手は弾薬を取り、安全栓を抜き、装薬室を下にし、弾軸を筒身に一致せしめて筒口に嵌め、食指にて肩部を圧して筒内に押込む
射手自ら装填するには、右手にて弾薬を取り安全栓の紐を咥えて抜きたる後装填す
第44
擲弾筒の射撃は指命射及び各個射とす
射撃せしむるには、予め距離分画を、榴弾以外の弾種を使用するときは距離分画の前に弾種を号令す。射手は所命の分画を装し、其の結果を報告し、装填終れば
「
準備終リ
」
と報告す
指命射を為さしむるには、例えば左の号令を下す
「
第一 撃テ
」
射手は引革を引きて発射し、射弾の方向を観測す
各個射を為さしむるには、例えば左の号令を下す
「
各個ニ3発 撃テ
」
射手は最大の速度にて所命の弾数を発射す。終れば
「
撃終リ
」
(うちおわり)と報告す
第45
不発の時は、射手は数回引革を引き、尚発火せざるときは
「
不発
」
と唱え弾薬を抽出す
弾薬を抽出するには、射手は転輪を廻し、筒口より弾薬現るるや弾薬手は信管に触れざる如く確実に之を握り、徐(おもむろ)に抽出し安全栓を挿す
第46
射撃を中止するには
「
撃方待テ
」
の号令を下す
射撃を止むるには
「
撃方止メ
」
の号令にて、残弾あるときは之を抽出したる後、射手は距離分画を略々中央に復し、右手にて柄桿上部を握り、小銃手の射撃を止むるときに準じ不動の姿勢に復す
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