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砲兵操典
第二篇 銃教練
第一章 基本
第三節 重機関銃
第六十二
重機関銃には銃長一名、銃手三名を属し銃長には一番より三番に至る番号を附す
第六十三
重機関銃の隊形第三図の如し
銃は最低姿勢とし銃覆を脱し銃身を正しく前方に向かわしめ此を概ね水平にし握把は折畳まざるものとす
眼鏡照準具は嚢に納め一番釣革を以て左肩より右肩に懸けて携行す
高射照準具及高射托架は各々嚢に納め高射照準具は二番此を帯革に通して携行し高射托架は銃長負革にて右肩より左肩に懸けて携行す
第六十四
行進に方りては予令にて銃長は右手を以て属品箱を提げ一番は後棍を、二番は前棍を握り一番は「宜し」と唱え両銃手協力して銃を提げ三番は弾薬箱を右肩に担い同令にて発進す此の際歩調を取るを要せず
停止せば整頓したる後銃、属品箱及弾薬箱を其の場に置く
第六十五
射撃の位置に於ける銃長以下の定位第四図の如し
第六十六
射撃姿勢を取らしむるには銃の方向(目標)、位置要すれば銃の姿勢等を示したる後左の号令を下す
銃を据え
銃長は示されたる位置付近に於て銃の位置及其の方向を決定し属品箱を置き万能鋏を出して其の上に載せたる後定位に就き伏臥し銃手の姿勢を監視す
一番及二番は銃を示されたる位置に置き一番は後棍を脱し後脚を堅固に据えたる後両肘を握把の両側に置き体の方向銃身と一致する如く銃の後方に伏臥す
前棍を脱するの要あるときは銃長の指示により二番此を脱し身辺に置く
三番は銃を据え終わらんとするに先だち弾薬箱を二番の身辺に搬送す
二番は定位に就き概ね装填孔の後端と斉頭に伏臥し通常弾薬箱の底部を左前方に、止鉄を上方にする如く置きたる後蓋を開き装填の準備を為す
三番は銃手の予備となり且つ銃長と指揮官との連絡に便なる如く適宜離隔して伏臥す
昇降軸を上下するには二番は昇降軸緊定桿を緩め転把を廻わし一番と協力して銃を一番の希望する高さに為したる後二番は緊定桿を緊む
一番は最低姿勢に在りては伏臥し最高姿勢に在りては両膝を地に著け上体を前に傾く中間姿勢に在りては体格に応じ適宜の姿勢を取るものとす
眼鏡照準具に依り射撃を行う場合に於ては通常射撃姿勢を取らしむるに先だち此を銃に装着せしむ
眼鏡照準具を装着するには一番は照準具托座蓋を脱して此を後脚踵鉄の上に置きたる後照準具を照準具托座に確実に装し照準具托座蓋を嚢に納め次で諸分畫を零に装す
第六十七
銃を撤去せしむるには左の号令を下す
撤去
銃長以下
第六十六
と概ね反対に操作す
第六十八
高射用意を為さしむるには左の号令を下す
高射用意
銃長は銃手の操作を監視す
一番及び二番は銃を三脚架より脱す
銃を三脚架より脱するには二番は後ろに向きて左足と銃身を左前棍との中間に踏み入れ銃耳蓋を開き左(右)手にて銃後部(「ガスポンプ」中央部)を握り一番は左足を約1歩踏み出し左手にて左方握把を握り右手にて砲熕緊定桿を緩め床尾を左に移したる後左手にて解脱子を前方に倒し歯弧を十分上げたる後解脱子を旧に復し次で左方握把を保持し右手にて歯弧の駐栓を抽き歯弧と歯弧駐子との結合を解き駐栓を挿し次で逆鉤駐子室の前部を握り両銃手協力して銃を銃耳托架より脱し左側に移り膝を屈指各々内側の股に銃を託して之を保つ
三番は昇降軸を約十糎上げ昇降軸緊定桿を緊めたる後(三年式機関銃 次で駐螺桿を廻わす)高射托架の銃耳蓋を開く
銃長は托架緊定桿を前方にして高射托架を三脚架の相当部に挿入し銃耳蓋を閉じ駐栓を挿し托架緊定桿を十分に緊めたる後嚢を負う
一番及び二番は銃を托架上に組みたる後二番は高射托架照門(三年式機関銃 高射照門板)を一番にわたし次で照準桿を其の駐子を内方にする如く托桿の孔に挿し一番は高射照門を横尺に装し照尺を高射用六百の分畫に装したる後握把を保持す(三年式機関銃 高射照門板を装したる後握把を保持す)
高射用意を解くには「用意を解け」の号令にて銃長以下高射用意と概ね反対に操作す「
第六十九
高射用意を為したる場合に於て射撃姿勢を取らしむるには
第六十六
に順ずるの他左の要領に依る
二番は前棍、三番は後棍、一番は握把を保持し協力し銃を据え二(三)番は前(後)棍を脱して一番の動作を妨害せざる位置に置く
第七十
射撃は直接照準環に依り射法は主として点射を用い時として地上の目標に対しては薙射若くは追射を、対空射撃に於ては追射を用うることあり
第七十一
地上の目標に対して射撃を為さしむるには予定目標、方向修正量、射法、射距離、発射連数などに関し所要の事項を示したる後発射せしむるものにして例えば左の号令を下す
目標一本松の左二十の機関銃
点射
四百
三連
撃て
銃長は銃手の操作を監視し射弾の景況に注意し要すれば照準点の修正を命ず又射撃の準備終われば「準備宜し」と、所命の連数を撃ち終われば「撃終わり」と報告す
一番は銃を目標に指向し右手にて槓桿を十分に引きたる後之を旧に復し二番は装填す
装填するには右手にて紙箱の頭部に近く四指を上方にして握り活塞後退しありやを検したる後保弾板 装弾輪状に載せ其の尾端を少しく上げ頭端を正しく準溝に向かわしめ一挙に短切なる力を加え活音を聞く迄挿入す
一番は射距離を号令せらるるや之を距離分畫板(照尺)に装して其の結果を銃長に報告し照準終わりたる後両手にて握把を握り両拇指を軽く押鉄に接し(三年式機関銃 両手の食指を用心鉄の内側に入れて伸ばし)「宜し」と唱う
「撃て」の号令にて一番は発射し二番は所命の連数を連続装填し撃終われば「撃終わり」と銃長に報告して続きて装填す
連続装填を為すには前保弾板の弾薬を撃尽したる後行うものとす
第七十二
対空射撃を為さしむるには予め目標、航速、射法、射距離を示したる後発射せしむるものにして例えば左の号令を下す
目標右前方先頭の飛行機
三百粁
点射
五百
撃て
銃長は銃手の操作特に照準を監視す
「撃て」の号令にて一番は好機を捉えて発射し二番は連続装填す
以上の外銃長以下
第七十一
に準じ操作す
第七十三
方向分畫(横尺)に依り射高を修正せしむるには例えば左の号令を下す
二つ右へ
一番は方向分畫(横尺)に所命の修正を行いその結果を銃長に報告す
第七十四
射撃を中止せしむるには左の号令を下す
撃方待て
一番は押鉄を放つ(三年式機関銃 引鉄を放つ)但し弾薬を射尽くしあるときには二番は直ちに装填す
第七十五
射撃を止めしむるには左の号令を下す
撃方止め
銃長は銃手の操作特に弾薬の抽出を監視す
一番は押鉄を放ち(三年式機関銃 引鉄を放ち)右手を以て槓桿を引き二番は右手の食指を以て碍子を左方に引きたる侭左手を以て保弾板を抽出し(三年式機関銃 引鉄を引き)槓桿握把の前短照準具托座の前端(三年式機関銃照尺坐)に達せんとするとき左手にて先ず装弾輪を次で薬莢蹴出窓蓋を閉じ槓桿を旧に復し照尺を三百、横尺を三十、其の他の分畫を零に復したる後銃の方向を正して砲熕緊定桿を緊め概ね水平にし解脱子を旧に復す
二番は弾薬を弾薬箱に収め其の蓋を閉ず
操作終われば銃長以下定位に立つ
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