砲兵射撃教範


  1. 第一篇 射撃に関する定説

    第六章 射撃の修正に関する原理

    第六十八
    射撃の修正の目的は主として平均点の目標に通する公算最大なる表尺を求むるに在り 而して求めたる表尺は修正の方法に依り其精度を異にす
    表尺の精度を表すには表尺の公算誤差を以ってす 表尺の公算誤差とは目標に対し其表尺を以って射撃する場合に於て目標を中心として射弾の平均点の公算二分の一なる地帯を取りたるとき其幅の半量を謂い 通常射弾散布の換算躱避の単位として示すものとす
    目標に対し決定したる表尺を以って射撃するとき 射弾の平均点を中心とし目標の存在する公算二分の一なる地帯の幅の半量を目標存在の公算誤差と謂う 而して其量は表尺の公算誤差に等し
  2. 第六十九
    目標を遠近両射弾の間に夾叉し 逐次夾叉闊度を短縮するに従い表尺の精度を増進し得るも 誤夾叉の公算亦増大す 而して夾叉闊度を射距離公算躱避(r)の二倍以下とするときは 誤夾叉の公算を著しく増加するを以って 夾叉闊度短縮の限度は2rを標準とす
    4rまでは夾叉闊度を短縮するに従い概ね之に比例して表尺の精度を増進す 而して4rに夾叉したる後 其中数表尺を以って射撃するときは遠近弾を混ずる公算大なり 故に4rに夾叉したる後は其中数表尺にして発射せる遠近弾数の係数に依り修正するを有利とす
    夾叉闊度を4rに短縮し其両極限を各ゝ二射弾を以って決定せるとき 其中数表尺の精度は約1rなり 又其中数表尺を以って更に六射弾以上を決定せる表尺の精度は0.5r以内となるものとす 而して其精度を一層増進する為には著しく多数の射弾を必要とす( 附表第五)
  3. 第七十
    同一表尺を以って発射せる各射弾の目標に関する偏差を測定し 其平均偏差を修正して得たる表尺は偏差測定の誤差なき場合に於て左式に示す公算誤差を伴うものなり 故に射弾の偏差を修正するに方りては発射弾数を増加するに従いその平方根に正比して精度を増進し得るものとす
    • r/√n
    • 射弾散布の公算躱避
      観測し得たる弾数