[ BACK to Index ]
砲兵射撃教範
第一篇 射撃に関する定説
第一章 弾道の形状及名称
第十二
弾道とは発射せられたる弾丸の重心の過ぐる線を謂い 其形状は重力、空気抗力、弾丸の速度及
旋動
センドウ
並びに砲身の傾度等に関係す
第十三
重力は飛行する弾丸を落下せしむるものにして其量は時間の経過と共に増加す 空気抗力は弾丸の飛行速度を減じ同距離を経過するに漸次長時間を費すに至らしむ 此等の交感に依り弾道は曲線状を成す 又弾丸は
腔綫
コウセン
により弾軸周に旋動を付与せらるるを以って 絶えず弾頭を前方に向かわしむるも 砲身軸を含む垂直面の一側に偏出するものとす
第十四
射線
シャセン
とは発射の為準備せられたる砲身軸の延線を謂う
射角
シャカク
とは射線と水平面とにて成す角を謂う
射面
シャメン
とは射線を含む垂直面を謂う
射向
シャコウ
とは射面の砲口を謂う
擲線
テキセン
とは砲口を通過する時に於ける弾丸の飛行方向の延線を謂う
擲角
テキカク
とは擲線と水平面とに成す角を謂う
擲面
テキメン
とは擲線を含む垂直面を謂う
定起角
テイキカク
とは擲角と射角との差を謂う
初速
ショソク
とは砲口に於ける弾丸の速度を謂う
落点
ラクテン
とは砲口を含む水平面と弾道との第二の交会点を謂う
落角
ラクカク
とは落点に於ける
弾道切線
ダンドウセッセン
と落点を通ずる水平面とにて成す角を謂い 通常射角より大なり
落速
ラクソク
とは落点に於ける弾丸の速度を謂う
(第一図)
第十五
偏流
ヘンリュウ
とは砲口と落点とを含む垂直面と射面とにて成す角を
密位
ミリヰ
を以って示したるものを謂う
(第二図)
第十六
最高点
サイカウテン
とは弾道中最も高き点を謂い 常に砲口よりも落点に近し
弾道高
ダンダウカウ
とは弾道の某点より砲口を含む水平面に至る距離を謂う
最大弾道高
サイダイダンダウカウ
とは最高点に於ける弾道高を謂う
昇弧
ショウコ
とは砲口より最高点に至る弾道の部分を謂う
降弧
カウコ
とは最高点より落点に至る弾道の部分を謂う
存速
ゾンソク
とは弾道の某点に於ける弾丸の速度を謂う
弾着点
ダンチャクテン
とは弾丸の落達する点を謂う
射距離
シャキョリ
とは砲口より弾着点に至る距離を謂う
経過時間
ケイクワジカン
とは発射せられたる弾丸 砲口より弾着点に至るに要する時間を謂う
砲目距離
ハウモクキョリ
とは砲口より目標に至る距離を謂う
砲目高低線
ハウモクカウテイセン
とは砲口と目標とを連ぬる線を謂う
砲目高低面
ハウモクカウテイメン
とは砲目高低線を含み且該線を含む垂直面に直交する平面を謂う
砲目高低角
ハウモクカウテイカク
とは砲目高低線と砲口を含む水平面とにて成す角を謂い 目標砲口を含む水平面の上方に在るときは正、之に反するときは負なり
高角
カウカク
とは射角より砲目高低角を減じたる角を謂う
着角
チャクカク
とは砲目高低面と弾着点に於ける弾道切線とにて成す角を謂う
(第三図)
第十七
命中角
メイチュウカク
とは弾着点に於ける弾道切線と地面又は目標表面とにて成す角を謂う
(第四図)
傾斜地に於ける着角、砲目高低角及土地の傾斜と命中角との関係 第四図の如し
第十八
着発
チャクハツ
とは弾丸弾着点に於て破裂するを謂う
曳火
エイクワ
とは弾丸空中の某点に於て破裂するを謂い この点を破裂点と謂う
破裂高
ハレツカウ
とは破裂点より砲目高低面に至る距離を謂う
破裂距離
ハレツキョリ
とは弾道の降弧と砲目高低面との交会点より破裂点を含み 砲目高低線に垂直なる平面に至る距離を謂う
破裂目標距離
ハレツモクヘウキョリ
とは破裂点を含み砲目高低線に垂直なる平面との距離を謂う
基高
キコウ
とは最も効力を期待し得べき破裂高を謂う
(第五図)
第十九
跳飛
テウヒ
とは弾着後更に第二弾道を描きて弾丸の飛行するを謂う
跳飛角
テウヒカク
とは第二弾道の発起点に於ける弾道切線と弾着点に於ける地面又は目標表面とにて成す角を謂う
(第六図)
第二十
水平地に於て一定の初速を以って射撃するに方り 射角大なるに従い射距離増大す 然れども一定の限界(約四十五度)を超ゆれば之に反す 此限界より小なる射角を以って発射するを
低射界射撃
テイシャカイシャゲキ
、之より大なる射角を以って発射するを
高射界射撃
カウシャカイシャゲキ
と謂う
(第七図)
高射界射撃に在りて射角一定の限界を超ゆるときは弾丸反転し弾尾を先にして弾着するものを生ずるに至る 此射角を限界射角と謂い、初速、風向、風速等に依り異なるも約七十度を標準とす
[ BACK to Index ]
[ Prev ]
[ Next ]
This Page Is Valid XHTML 1.1!