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 ▼戦略爆撃は効率的か否か?  射命丸 文 10/4/24(土) 23:29
   ┣Re:戦略爆撃は効率的か否か?  おうる 10/4/25(日) 9:00
   ┣Re:戦略爆撃は効率的か否か?  ヒッチハイカー 10/4/25(日) 15:35
   ┣Re:戦略爆撃は効率的か否か?  超音速複葉機 10/4/26(月) 9:29
   ┃  ┗日本空襲は成功例のひとつ  BUN 10/4/26(月) 10:25
   ┃     ┗Re:日本空襲は成功例のひとつ  超音速複葉機 10/4/27(火) 6:45
   ┃        ┗Re:日本空襲は成功例のひとつ  BUN 10/4/28(水) 0:59
   ┃           ┗Re:日本空襲は成功例のひとつ  超音速複葉機 10/4/28(水) 21:16
   ┃              ┗Re:日本空襲は成功例のひとつ  BUN 10/4/29(木) 6:05
   ┗効率とはどういうことか  BUN 10/4/26(月) 11:49
      ┗Re:効率とはどういうことか  射命丸 文 10/4/27(火) 1:27
         ┣Re:効率とはどういうことか  超音速複葉機 10/4/27(火) 8:55
         ┃  ┣Re:効率とはどういうことか  とおり 10/4/27(火) 22:21
         ┃  ┣Re:効率とはどういうことか  BUN 10/4/28(水) 0:52
         ┃  ┗Re:効率とはどういうことか  片 10/4/29(木) 2:30
         ┣Re:効率とはどういうことか  おうる 10/4/27(火) 21:28
         ┃  ┗それで何を購ったか?  BUN 10/4/30(金) 9:34
         ┃     ┗Re:それで何を購ったか?  おうる 10/5/1(土) 2:30
         ┃        ┗何が戦略爆撃か?  BUN 10/5/1(土) 3:55
         ┃           ┗Re:何が戦略爆撃か?  おうる 10/5/1(土) 9:50
         ┃              ┗Re:何が戦略爆撃か?  BUN 10/5/2(日) 7:10
         ┗Re:効率とはどういうことか  片 10/4/28(水) 15:55

 ───────────────────────────────────────
 ■題名 : 戦略爆撃は効率的か否か?
 ■名前 : 射命丸 文
 ■日付 : 10/4/24(土) 23:29
 -------------------------------------------------------------------------
   過去の議論を読んでいたところ、
「大型爆撃機の大編隊による戦略爆撃は、実は極めて効率の悪い戦争手段」
という意見がいくつかあったのですが※1、
単純に、
・装備や兵器、燃料等を、戦場に出てくる前に叩き無効化でき(←これは凄まじく大きな意味があると思います)、
・場合によっては工員の生命、その住居等生活手段を破壊
・しかも国民士気等にも打撃を与えられる
のですから、払った機体やパイロットの犠牲、爆撃のための準備諸々を考慮しても、やはり何だかんだ言っても最高に効率の良い手段だったと思うのですが。みなさんの意見を伺いたく、議論をお願いします。


※1
「議論ボード過去ログ」−「議論ボード過去ログ大目次 2」−「ふと思う:「爆撃機無用論」(←極論)」での議論です。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.0; Trident/4.0; SLCC1; .NET CL...@softbank219038199022.bbtec.net>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:戦略爆撃は効率的か否か?  ■名前 : おうる  ■日付 : 10/4/25(日) 9:00  -------------------------------------------------------------------------
   > 過去の議論を読んでいたところ、
> 「大型爆撃機の大編隊による戦略爆撃は、実は極めて効率の悪い戦争手段」
> という意見がいくつかあったのですが※1、
> 単純に、
> ・装備や兵器、燃料等を、戦場に出てくる前に叩き無効化でき(←これは凄まじく大きな意味があると思います)、
> ・場合によっては工員の生命、その住居等生活手段を破壊
> ・しかも国民士気等にも打撃を与えられる
> のですから、払った機体やパイロットの犠牲、爆撃のための準備諸々を考慮しても、やはり何だかんだ言っても最高に効率の良い手段だったと思うのですが。みなさんの意見を伺いたく、議論をお願いします。

 戦略爆撃によって目標に壊滅的打撃を与えられるのであればその通りですが、実際はそれほどの打撃を与えることはできません。
 制空権を奪うために敵航空基地に爆撃や艦砲射撃を加えても、兵站に余力が残っていれば短期間のうちに復旧してしまいます。離島に孤立した基地ならばともかく、敵後方の生産拠点ともなればその生産拠点を支える兵站機能は付近に広範囲に分散しているわけですから、復旧は前線の基地よりもはるかに容易です。
 生産力を奪うために戦略爆撃が実施された都市において、爆撃されたことにより市民が発奮、却って士気を向上させ、結果的に生産力を増大させてしまった事例も戦略爆撃調査団の報告にあるのだそうです。
 よって、戦略爆撃という方法は、一般に思われているほど(そして当時の軍人たちが信じていたほど)効率的ではなかったと言えます。


> ※1
> 「議論ボード過去ログ」−「議論ボード過去ログ大目次 2」−「ふと思う:「爆撃機無用論」(←極論)」での議論です。

http://www.warbirds.jp/discussion/g0164.html#3921

<Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; ja; rv:1.9.2.3) Gecko/20100401 Firefo...@FL1-118-108-122-51.tcg.mesh.ad.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:戦略爆撃は効率的か否か?  ■名前 : ヒッチハイカー  ■日付 : 10/4/25(日) 15:35  -------------------------------------------------------------------------
   仕掛ける側の国の置かれた状況と環境によって変わります。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.0; .NET CLR 1.1.4322)@218.91.45.90>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:戦略爆撃は効率的か否か?  ■名前 : 超音速複葉機  ■日付 : 10/4/26(月) 9:29  -------------------------------------------------------------------------
   > 過去の議論を読んでいたところ、
> 「大型爆撃機の大編隊による戦略爆撃は、実は極めて効率の悪い戦争手段」
> という意見がいくつかあったのですが※1、
> 単純に、
> ・装備や兵器、燃料等を、戦場に出てくる前に叩き無効化でき(←これは凄まじく大きな意味があると思います)、
> ・場合によっては工員の生命、その住居等生活手段を破壊
> ・しかも国民士気等にも打撃を与えられる
> のですから、払った機体やパイロットの犠牲、爆撃のための準備諸々を考慮しても、やはり何だかんだ言っても最高に効率の良い手段だったと思うのですが。みなさんの意見を伺いたく、議論をお願いします。
>

こんにちは
過去ログを10年もさかのぼってチェックされてとても勉強熱心な方と存じます。
しかしスレを読ませて頂くと件の過去ログをよく読んで出された結論とは到底思えません。
御主張されている理論は、爆撃で民間人を殺す側の自己正当化論にすぎません。
日本の兵器生産量は1945年2月をピークに急速に落ち込みますが、これはシーレーン破壊による資源の枯渇が決定的原因です。日本が降伏に至った経緯もソ連参戦や天皇制崩壊の危惧などが理由で、御主張される理論のような効果があったとしても過大評価できるものではなく単に複合的要因のひとつに過ぎません。
議論するまでもなく結論は出ていると思われます。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; ...@r-118-105-226-39.g105.commufa.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : 日本空襲は成功例のひとつ  ■名前 : BUN  ■日付 : 10/4/26(月) 10:25  -------------------------------------------------------------------------
    日本本土爆撃は戦略爆撃の成功例の一つの観ることもできます。

 19年12月からの航空工業に対する爆撃は開始当初に三菱重工名古屋発動機製作所を壊滅させ、再起不能の損害を与えています。日本最大の発動機工場は作戦開始時に片付けられてしまっているのです。

 その後半年の間に破壊された主要工場を数え上げて行けば、計画通りの効果を上げていたことが理解できます。また航空工業への空襲だけではなく、それがもたらした工場疎開による混乱の効果は絶大です。

 そして主要都市に対する空襲も5月中には完了していますし、その後に開始された地方都市への虱潰しの空襲は大都市空襲よりも国民の士気に打撃を与えたと評することもできます。

 さらに本土沿岸航路を事実上壊滅させた港湾の機雷封鎖も極めて大きな効果を上げています。地味ですが都市爆撃よりも重要な作戦です。
 そして最後の原爆投下は戦略爆撃作戦の完成形態であると共に日本を降伏に導いた主要因であることは間違いありません。

 いろいろ文句のつけどころはありますが、日本本土への戦略爆撃はドイツ本土爆撃の戦訓によって洗練された分だけ、そして日本側の対応が積極的でなかった分だけ、短期間で計画に近い成果を上げた作戦です。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; GTB6.4; SLCC1; .NET CLR 2.0...@c180.92.52.142.c3-net.ne.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:日本空襲は成功例のひとつ  ■名前 : 超音速複葉機  ■日付 : 10/4/27(火) 6:45  -------------------------------------------------------------------------
   BUN様、レスありがとうございます。
おっしゃるとおりで、なるほど対日戦略爆撃はドイツに対するそれよりはるかに少ない投弾量で同じぐらいの効果をあげており、もっとも成功した戦略爆撃として評価できます。それはB29の完成、マリアナ諸島・硫黄島の確保、日本軍の防空能力の低さなど好条件ばかりが重なった例外的な成功例とも言えるのではないでしょうか。

日本は空襲によって100万人前後の膨大な死傷者を出し、世界初の原爆投下というインパクトをともなったため戦略爆撃の効果にだけ目を奪われがちです。私は戦略爆撃の効果そのものは否定しませんが、敵国を降伏に追い込むのはあくまで輸送路破壊や外交圧力などあらゆる手段の組み合わせであるはずで、例外的な成功例だけをとりあげて戦略爆撃そのものの評価をすることはできないと思います。

工場の破壊に成功すれば確かに兵器生産に打撃を与えますが、B29が工場を破壊する前にシーレーン破壊によってすでに鉄鋼生産量は落ち込みを見せ始めていたようです。1943年には780万トンであった鉄鋼生産量は翌44年には鉄鉱石・石炭の輸入減少を受け590万トンに減ります。全製鉄所をフル操業すると1360万トンの生産能力があるそうなので、空爆だけで鉄鋼生産を減らそうとしたら半分以上の製鉄所を破壊しなければならない計算です。船舶攻撃がなければ鉄鋼産業の破壊はもっと遅れたものになっただろうと、戦略爆撃調査団は報告しています。さらに、都市や産業への直接空爆がなくても日本の戦時生産全体の水準は45年8月までに、44年のピーク水準から4〜5割減ったであろうとも報告書にあります。

スレの主題は、戦略爆撃は効率的か否かということですが、効率という観点で純粋に継戦能力に与えた影響力で考えてみるとシーレーン破壊作戦のほうがはるかに効率的ということになると思います。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; ...@r-118-105-201-110.g105.commufa.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:日本空襲は成功例のひとつ  ■名前 : BUN  ■日付 : 10/4/28(水) 0:59  -------------------------------------------------------------------------
   日本本土への戦略爆撃が、
どんな目標に対して
どんな効果を狙って実施されたのか、

それをちゃんと調べることが先ではないかと思います。

欧州戦線の戦略爆撃も日本本土爆撃もその根底にある論理は
ほとんど変わりません。
戦略爆撃を行う側は何を望んでいたか、
どんな成果を求めていたか、
それは達成できたのかどうか、

こうしたことがとても重要です。
それを知るのが第一なのではないかと思います。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; ...@s61.BMT-e1.vectant.ne.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:日本空襲は成功例のひとつ  ■名前 : 超音速複葉機  ■日付 : 10/4/28(水) 21:16  -------------------------------------------------------------------------
   > 日本本土への戦略爆撃が、
> どんな目標に対して
> どんな効果を狙って実施されたのか、
>
> それをちゃんと調べることが先ではないかと思います。
>
> 欧州戦線の戦略爆撃も日本本土爆撃もその根底にある論理は
> ほとんど変わりません。
> 戦略爆撃を行う側は何を望んでいたか、
> どんな成果を求めていたか、
> それは達成できたのかどうか、
>
> こうしたことがとても重要です。
> それを知るのが第一なのではないかと思います。

ご教示ありがとうございます
もう少しべんきょうしてみます。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; ...@r-118-105-201-110.g105.commufa.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:日本空襲は成功例のひとつ  ■名前 : BUN  ■日付 : 10/4/29(木) 6:05  -------------------------------------------------------------------------
   対日戦略爆撃作戦は、1944年前半の計画段階で既に三つのテーマを持っています。

1.海運の破壊(航空機雷敷設)
2.航空工業の破壊
3.六大工業地域への飽和爆撃(火災に弱い日本の市街地への焼夷弾攻撃)

機雷敷設は日本への戦略爆撃作戦の三本柱の筆頭なんです。

ところが実施される段階で航空工業への攻撃が優先され、
残り二つが後回しにされます。
その理由は日本本土侵攻による戦争終結が選択されたためです。
欧州の作戦と同じように上陸作戦、地上侵攻が重視されると
そのために最も効果の大きい航空工業の破壊が優先されているということで
残る二つの作戦が遅れて開始されたのは戦訓による変化ではなく
計画上の調整でしかありません。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; GTB6.4; SLCC1; .NET CLR 2.0...@c114.134.224.176.c3-net.ne.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : 効率とはどういうことか  ■名前 : BUN  ■日付 : 10/4/26(月) 11:49  -------------------------------------------------------------------------
    まさにそうした効果が見込めるから戦略爆撃作戦が計画されるんです。

 その背景にはもう二度と第一次世界大戦のような地上戦で国家にとって最良の人材を浪費したくないという発想があります。

 ところが実施面では、当初計画されていた新鋭装備は揃わず、数も足りず、敵国の戦争経済そのものを破壊する意図も縮小されてしまい、ターゲッティングは妥協の産物に変容してしまいます。

 敵の抵抗が大きい、距離が遠い、破壊が難しい、といった様々な否定論が本来爆撃して破戒すべき目標を戦争終結まで温存してしまう、といった理解し難い事態も発生しています。
 たとえば戦略爆撃計画が当初、最重要目標に数えていたドイツの電力施設はほとんど損害を受けないまま残されていました。

 誰もが納得できる自明の重要目標が爆撃されなかったのはその後のターゲッティングが効果が早く上がると考えられた航空機工場等への爆撃を優先したからです。
考えに考えて、分析を繰り返した末に選定されたシュバインフルトのベアリング工場は理屈の上では完璧なターゲッティングでしたが、実際には大した効果が上がっていません。

 史実がそんな展開で、実際にドイツの軍需生産は1944年にピークを迎えていたことから、戦略爆撃否定論が1960年代のアメリカで注目を集めるようになります。

こうした評価は、最初に書いた通り、戦略爆撃作戦が計画を下回る規模で、性能不十分な旧式機によって実施された結果です。

 ただし、戦史的に見れば、計画よりも小規模で実績も上がらなかった初期のドイツ本土への戦略爆撃作戦がそれを邀撃するドイツ空軍を大きく消耗させてその作戦能力を奪ったことは否定し難い事実で、航空戦の勝利には欠かせない役割を果たしています。
 ドイツ空軍は本土防空作戦の負担で壊滅したようなものなのですから。

 戦略爆撃一般、を論じる前に個々の作戦の大枠を眺め直してみることが大切ではないかと思います。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; GTB6.4; SLCC1; .NET CLR 2.0...@c180.92.52.142.c3-net.ne.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:効率とはどういうことか  ■名前 : 射命丸 文  ■日付 : 10/4/27(火) 1:27  -------------------------------------------------------------------------
   ご意見ありがとうございます。


>おうる さん
工作機械を壊されたらかなり困りそうだけど、意外と早く立ち直れちゃうものなのかな?
工場の「ダメージコントロール」状況ってどんなだったのですかね。洋上の船ですら、とりあえず直せるくらいなら「復旧は前線の基地よりもはるかに容易」も頷けるのかもしれないですね。


>超音速複葉機 さん
新参者ですが、面白くてためになるので過去のものから読んでました。
意見を総合すると、「(日本に関しては)結果的に戦略爆撃をやる必要無かった。無くても干上がった」ということでしょうか。確かにそうですね。
ただ、戦争は、ただ勝つだけではなく、「自軍の損害を少なく」「早く」というのが求められるものですし、当時は日本が降伏する保障もなく、本土上陸も視野に入れてたので、
結局米軍にとってベストの方法だったと思います。(日本人としてはそりゃ嫌ですけど、歴史の研究としては。)
※機雷封鎖≒シーレーン破壊は、戦略爆撃の範疇かなと思ってます。違うのかな?


>BUN さん
BUNさんの文を見て「戦略爆撃は、自軍の損害が少なく、成功すれば非常に効率的だが、そうでないと非効率」と思いました。いや、当たり前といえば当たり前のことなのですが。
戦略爆撃の失敗例がドイツのイギリス空襲なんでしょうね。どう考えても損耗ばかりで元は取れていないと思います。

>戦略爆撃否定論が1960年代のアメリカで注目を集めるようになります。
なるほど。ただ少なくとも「戦後の目線ではなく当時では」効果が大きいと思っていたからこそ戦略爆撃をやった、というのは間違いないと考えて良いのですよね?
(たとえば硫黄島占領の一番の目的も、結局、戦略爆撃の為で、あの犠牲も十分元が取れたと考えてたみたいですし)

>計画よりも小規模で実績も上がらなかった初期のドイツ本土への戦略爆撃作戦
影響効果を見ず、ドイツのこれ単体だけで見ると、確かに「戦略爆撃は効率はよくない」となりそうですね。


>  まさにそうした効果が見込めるから戦略爆撃作戦が計画されるんです。
>
>  その背景にはもう二度と第一次世界大戦のような地上戦で国家にとって最良の人材を浪費したくないという発想があります。
>
>  ところが実施面では、当初計画されていた新鋭装備は揃わず、数も足りず、敵国の戦争経済そのものを破壊する意図も縮小されてしまい、ターゲッティングは妥協の産物に変容してしまいます。
>
>  敵の抵抗が大きい、距離が遠い、破壊が難しい、といった様々な否定論が本来爆撃して破戒すべき目標を戦争終結まで温存してしまう、といった理解し難い事態も発生しています。
>  たとえば戦略爆撃計画が当初、最重要目標に数えていたドイツの電力施設はほとんど損害を受けないまま残されていました。
>
>  誰もが納得できる自明の重要目標が爆撃されなかったのはその後のターゲッティングが効果が早く上がると考えられた航空機工場等への爆撃を優先したからです。
> 考えに考えて、分析を繰り返した末に選定されたシュバインフルトのベアリング工場は理屈の上では完璧なターゲッティングでしたが、実際には大した効果が上がっていません。
>
>  史実がそんな展開で、実際にドイツの軍需生産は1944年にピークを迎えていたことから、戦略爆撃否定論が1960年代のアメリカで注目を集めるようになります。
>
> こうした評価は、最初に書いた通り、戦略爆撃作戦が計画を下回る規模で、性能不十分な旧式機によって実施された結果です。
>
>  ただし、戦史的に見れば、計画よりも小規模で実績も上がらなかった初期のドイツ本土への戦略爆撃作戦がそれを邀撃するドイツ空軍を大きく消耗させてその作戦能力を奪ったことは否定し難い事実で、航空戦の勝利には欠かせない役割を果たしています。
>  ドイツ空軍は本土防空作戦の負担で壊滅したようなものなのですから。
>
>  戦略爆撃一般、を論じる前に個々の作戦の大枠を眺め直してみることが大切ではないかと思います。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.0; Trident/4.0; SLCC1; .NET CL...@softbank219038199022.bbtec.net>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:効率とはどういうことか  ■名前 : 超音速複葉機  ■日付 : 10/4/27(火) 8:55  -------------------------------------------------------------------------
   思ったより広い視野の認識を持たれている様子です。
最初のレスに失礼があったらお詫びします。

文面から誤解を与えたかもしれませんが、私は対日戦略爆撃が不要だった、とまでは申しておりません。戦略爆撃そのものは否定しません。

船舶攻撃は資源輸入の妨害だけでなく兵力・戦力の戦地への輸送も妨害します。シーレーン破壊だけでも日本は相当干上がったであろうことは戦略爆撃調査団の報告書にも意見されてますが、船舶攻撃だけでは沈めた船の積荷が何だったのかわかりませんし、日本国内の兵器生産量が実際に減っているか確認できません。いっぽう空爆による破壊は写真偵察によってわかりやすい戦果として報告できます。
また、日本国民も政治家も軍人も全国に及ぶ大空襲被害を見せ付けられなければ大本営発表を真に受けてしまい無条件降伏の受け入れなどありえなかったでしょう。

さまざまな要因のどれかが欠けても日本を降伏へ追いやることは非常に難しくなると思うので、戦略爆撃の効果だけを強調するべきではない、というのが私の考えです。

航空機雷による港湾封鎖は「爆撃」ではないので、ここでは戦略爆撃とは分けて扱うことにしましょう。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; ...@r-118-105-201-110.g105.commufa.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:効率とはどういうことか  ■名前 : とおり  ■日付 : 10/4/27(火) 22:21  -------------------------------------------------------------------------
   > 思ったより広い視野の認識を持たれている様子です。
> 最初のレスに失礼があったらお詫びします。
>
> 文面から誤解を与えたかもしれませんが、私は対日戦略爆撃が不要だった、とまでは申しておりません。戦略爆撃そのものは否定しません。
>
> 船舶攻撃は資源輸入の妨害だけでなく兵力・戦力の戦地への輸送も妨害します。シーレーン破壊だけでも日本は相当干上がったであろうことは戦略爆撃調査団の報告書にも意見されてますが、船舶攻撃だけでは沈めた船の積荷が何だったのかわかりませんし、日本国内の兵器生産量が実際に減っているか確認できません。いっぽう空爆による破壊は写真偵察によってわかりやすい戦果として報告できます。
> また、日本国民も政治家も軍人も全国に及ぶ大空襲被害を見せ付けられなければ大本営発表を真に受けてしまい無条件降伏の受け入れなどありえなかったでしょう。
>
> さまざまな要因のどれかが欠けても日本を降伏へ追いやることは非常に難しくなると思うので、戦略爆撃の効果だけを強調するべきではない、というのが私の考えです。
>
> 航空機雷による港湾封鎖は「爆撃」ではないので、ここでは戦略爆撃とは分けて扱うことにしましょう。

対独戦略爆撃は効率が悪く、失敗例であるというご認識かと思いますが、もっと効
率が良く、史実よりも早く対独戦を終わらせられる方法論ってどんなやり方なので
しょうか。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 2.0.5...@74.122.30.125.dy.iij4u.or.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:効率とはどういうことか  ■名前 : BUN  ■日付 : 10/4/28(水) 0:52  -------------------------------------------------------------------------
   なんだか、あるべき戦略爆撃の姿、といったものを無条件に描き過ぎているように思います。

戦略爆撃によってある期間に何を成し遂げようとしていたか、
その為に何をしようとしていたか、
こうしたことを無視しては何も語れません。
日本近海に機雷を投下したB29の作戦を戦略爆撃ではないとするならば、
戦略爆撃機B29はなぜ、そのような作戦を実施したのでしょう。

要は、何が戦略爆撃かといった議論ではなく、
日本本土への空襲によって何をいつまでに実現しよとしていたか、
といった問題についての検証が先ではないかと思います。

日本本土空襲の目的は、
具体的になんなんだろう、それはどう決められていたか、
どんな作戦計画が策定されていたのか、その達成率はどうなんだろう、
こういったことを調べなければ、成功、不成功をはかることなどできないのではないでしょうか。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; ...@s61.BMT-e1.vectant.ne.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:効率とはどういうことか  ■名前 : 片  ■日付 : 10/4/29(木) 2:30  -------------------------------------------------------------------------
   > いっぽう空爆による破壊は写真偵察によってわかりやすい戦果として報告できます。

工場の屋根が落ちていても生産が続けられていた例なども、戦略爆撃調査団報告書で報告されていますが、そんなこと以上に同調査団が微に入り細に入り調べ上げようとしていたのは、例えば、発動機のどの部品の納品が滞ったら主力航空発動機生産、さらにはその発動機を搭載する機体の生産量がどのように低下したか、のようなことだったりします。

敵空軍の航空戦力を阻むには、発動機補機の供給を停めるだけでもかなりの効果があるのではないか、そう確信犯的に考えて爆撃を行ったのでなければ、あんな報告書にはなかなかならないはずと思います。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4...@nttkyo013112.tkyo.nt.ngn.ppp.infoweb.ne.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:効率とはどういうことか  ■名前 : おうる  ■日付 : 10/4/27(火) 21:28  -------------------------------------------------------------------------
   > >おうる さん
> 工作機械を壊されたらかなり困りそうだけど、意外と早く立ち直れちゃうものなのかな?
> 工場の「ダメージコントロール」状況ってどんなだったのですかね。洋上の船ですら、とりあえず直せるくらいなら「復旧は前線の基地よりもはるかに容易」も頷けるのかもしれないですね。

 敵の継戦能力を奪う、あるいは一時的に麻痺させるのが戦略爆撃の目的です。
 戦略爆撃の攻撃対象となる目標物は恐ろしく多岐にわたっています。兵器や物資の生産拠点や資源・物資の集積地、部隊や物資の輸送手段や経路、発電所等のエネルギー供給、通信手段・・・これら全てに短期間で壊滅的打撃を与え得るほどの航空戦力はさすがにどこの軍隊も持ち合わせていません(全面核戦争となれば別かもしれませんが)。
 当然ながら限られた戦力で敵に最大の被害を与えること・・・つまり効率が求められます。そのためには、どれだけの戦力でどの目標を叩くか?が重要になってきます。

 工作機械を破壊されれば・・・とおっしゃいますが、工作機械と言ってもピンからキリまであります。
 たとえば大和型戦艦の主砲を生産する際に使われた巨大旋盤はドイツ製で、日本に2台しかない貴重なものだったそうですから、これを破壊されれば大和型戦艦は新たな予備砲身を調達できなくなります。
 しかし、戦艦が予備砲身を調達できなくなったからといって、日本海軍が早期に継戦能力を喪失するかと言うとそんな事はありません。砲身交換が必要になるほど発砲することもありませんでしたし、結果だけから極論いえば日本海軍に戦艦用予備砲身を生産する必要性はなかったし、戦艦用砲身の生産が不可能になったとしても日本海軍は全く困らないことになります。
 では、戦争遂行する上でどうしても絶対に必要な工作機械は?というと、それなりに数が揃っていて簡単には破壊しつくすことなど出来ないものである場合が大半なのです。
 それをあえて破壊しつくそうと思えば、限られた戦力での生産拠点への精密爆撃ではまず不可能で、結局大戦力を投入せねばならなくなります。(実際、WW2末期の都市部への絨毯爆撃はこのためでしたし)

 敵にとって重要な物資の生産手段であり、消耗が激しい等必要な生産頻度が高く、かつ生産手段の数が限られ、それでいて再調達が難しいモノを攻撃目標に選択できるのであれば、確かに限られた戦力でも敵に甚大な被害を与えることができます。しかし、そのような目標を絞り込むこと自体がまず困難であり、仮に目標を絞り込めたとしてもその目標を撃破するための戦力を整えることもまた困難です。
 戦略爆撃を成功させるための大戦力を平時から整えるのは経済的に不可能と言ってよく、開戦時から戦力増強に励んだとしても機材や人員の調達にはどうしても数年の時間が必要になります。そして開戦当初ならともかく、戦争が数年もたてば敵も防備を固めていくので、それを突破することも考えるとより優れた機材と大きな戦力が必要になっていきます。
 当然、その間も別の戦場で別の戦いが行われているわけですから、そこへも国力を投入しなければなりません。
 当面は戦力にならず、戦力になったとしても攻撃の結果が実際の成果に結び付くまでに比較的大きなタイムラグがあるのが戦略爆撃です。正面戦力への国力投入をある程度犠牲にし、戦略爆撃用のまとまった戦力を準備するのは、やはりそれなりに大きな国力を持った国でなければ困難です。
 がっぷり四つに組んで、じっくりと長期戦を戦えるのなら「効率が良い」と言えるかもしれませんが、国力の問題や政治的な事情から短期決戦をしなければならない国にとっては、ともかく今すぐ役に立つ正面戦力に国力を全力投入した方が良く、手間も時間もコストも必要な戦略爆撃が効率のよい戦い方とは評価できないでしょう。
 仮にWW2当時の日本軍が早期に富嶽の実戦配備に成功したとしても、米英連合軍相手に効率のよい戦い方など出来るはずもありません。むしろ、国力の無駄な浪費にしかならないでしょう。

 戦略爆撃は効率が良い・・・と言うためには、かなりハードルの高い前提条件を満足する必要があるのです。

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 ───────────────────────────────────────  ■題名 : それで何を購ったか?  ■名前 : BUN  ■日付 : 10/4/30(金) 9:34  -------------------------------------------------------------------------
   戦略爆撃という手法が大兵力を誇る大国だけでなく
ポーランドのような小国空軍にまで採用されていた理由は
「効率が良い」からです。

開戦前まで、戦略爆撃はドイツ以外の国々にとって
抑止力として機能することを期待されて準備されていたからで、
敵の国境陣地を突破せずともその中枢を破壊できる手段として有効と考えられ、
事実、そのように扱われています。

戦略爆撃部隊の整備は敵国中枢に地上侵攻できる兵力を整えるよりも簡単でしたし、
ポーランド国内からベルリン、フランス国内からルール地方といった、
ごく短い距離で考えられていた手の届きやすい爆撃作戦だったからです。

逆にナチスドイツにとっても戦略爆撃は隣国に与える最大の脅威として
その実力以上の効果を発揮しています。
戦前のナチスドイツが持っていた軍事的脅威とは
まだ何の実績もない機甲部隊による機動戦能力などではなく、
その実態はともかくとして他国が目をみはる速度で再建された、
欧州最大規模の爆撃部隊だったからです。

弱小空軍ですら戦略爆撃を選択した理由はこのようなものです。


そして第二次世界大戦で行われた実際の戦略爆撃は
第一次世界大戦のような地上戦を避けて戦争を終結させられる、
最も見込みのある選択肢として計画され、ほぼその目的を果たしています。
地上戦での膨大な出血を二度と経験したくないという、
戦略爆撃の根底にある発想がそのまま受け継がれているのです。

ですから工作機械がどうした、といった各論はあまり重要ではありませんし、
工作機械を破壊し尽くすことが必要なわけでもありません。
しかも破壊すべき機械の予備が工場の隣に積んであるはずもありませんから
精密爆撃が駄目なので無差別爆撃に切り替える必要があったという事実もありません。

そしてその破壊が最も効果的な目標を絞り込む作業自体が困難、といった
それこそ戦略爆撃そのものの根本に関わる問題に疑念が呈されたこともありませんし、
それが困難だと認識されたこともありません。
対ドイツ戦略爆撃のターゲッティングは前大戦中から四半世紀にわたって
各国空軍が研究を重ねて来た、最も古いテーマだったからです。

連合軍の対ドイツ戦略爆撃がかつてない膨大な兵力を必要としたのは
ターゲッティングが困難だとか、復旧能力がどうだという問題ではなくて
地上侵攻による出血を最小限に抑えながら戦争に勝利するための手段として
欧州上陸作戦以前にドイツ軍全体を無力化することが求められたからです。

そのために既に完成していたターゲッティングに変更が加えられ、
より川下の方に目標をシフトして航空工業への攻撃が優先されているのです。
戦略爆撃作戦前半の七転八倒は、戦略爆撃そのものの問題ではなく、
重要作戦実施のために納期を早められ人工を削られた結果です。

その結果、1944年初頭には
本土防空のために各戦線からの兵力引き上げが行われたことで
ドイツ野戦軍はエアカバーを失って全戦域で攻勢転換が不可能になり、
さらに空軍を維持するための乗員養成は消耗に追い付かず、
新人操縦者の飛行時間は沖縄戦の頃の日本海軍のように100時間を切る程となり、
加えて燃料供給の逼迫は乗員養成どころか作戦そのものまで圧迫します。

ここまで追い込んだからこそ大陸反攻が実施できた訳で、
それを地上軍同士が対峙する前線での戦闘を通じて実現することは
教科書通りの理想的な戦略爆撃を実施すること以上に困難です。

対ドイツ戦略爆撃作戦は、その実施面では上手く行かない事ばかりでしたが、
戦争全体を通じて果たした役割は極めて大きく、
大出血を伴う地上戦にとって代わるものとして、
「効率が良かった」という評価につながるのです。

大切なのは膨大なリソースが費やされたこと自体ではなく、
それが何を実現するために、
それによって何をしないで済むために、
その対価が支払われたか、という点ではないでしょうか。

何を買ったかわからないのにその投資の効率は問えませんから。

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 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:それで何を購ったか?  ■名前 : おうる  ■日付 : 10/5/1(土) 2:30  -------------------------------------------------------------------------
    私としては戦略爆撃の効果を否定するつもりはありませんし、史実で行われた戦略爆撃が無駄だったとか失敗だったとかやらない方がましだったとか言うつもりはありません。
 「戦略爆撃が効率が良い」という認識は間違っているとも思っていませんが、ではその効率の良さとはどの程度か?史実よりも戦略爆撃に力を注ぎさえすればマシな戦いになるのか?という点で、「それほどでもない」と主張するものです。

 戦略爆撃は敵の後方を直接叩き、それによって敵から自由を奪い、味方の時間を稼ぐことができます。その効果自体は否定のしようがありません。
 しかし、戦略攻撃は敵の後方にある目標に弾を届けたいだけなのですから、弾を届けることができるのであればそれが本格的な戦略爆撃機である必要はありません。届くのであれば、手段は戦術爆撃機でもロケットやミサイルでも長距離砲でも目的は達成できるはずです。
 にもかかわらず航空機による戦略爆撃が取りざたされるのは、攻撃すべき目標が他の手段では届かない遠い位置にあるからです。その距離にある目標を攻撃するには爆撃機を使うしかない、または爆撃機を使うのがもっとも効率が良い。
 しかし、航空機と言えども常に効率が良いかと言うと決してそんなことは無く、近すぎる目標に防御火力や防弾装備を備えた本格的な大型爆撃機を投入しても効率が悪くなりますし、いかな航空機と言えども遠すぎる目標を爆撃しようとすれば採算が悪くなって来ます。

 欧州の場合、戦争と言えば大概が隣国との戦争であり、前線〜敵生産拠点の距離を考えると小型の戦術爆撃機や中型爆撃機でも効果的な戦略爆撃が実施できます。しかし、その距離がもっと開いた別の地域に舞台を移した場合、それなりに足の長い本格的な爆撃機が必要になり、戦略爆撃に要するコストが上昇していきます。
 そして、そのコストが上昇していく過程で、どこかで必ず採算が合わなくなる点に到達します。
 戦争はどこか一つの部分で勝てさえすれば、他でも勝てるというものではなく、どこかで必ずバランスを取らねばなりません。戦略攻撃が効果的なのはわかっていても、コストが見合わなければ実施せず、他にリソースを回すことを検討しなければならなくなります。

 たとえば、仮想戦記やそれに類する読み物の中で、よくドイツ空軍は本格的な戦略爆撃機を実戦配備できなかった点を挙げてドイツ軍の失敗の一つとしているものがあります。
 ではドイツ空軍がウラル・ボマーやアメリカ・ボマーを実戦配備したとして、果たしてその戦力が実際にウラルやアメリカに向けられたとしたら?
 日本軍が富嶽を実戦配備してアメリカ大陸を直接戦略爆撃したら?
 この両者は間違いなく採算割れを免れないでしょう。
 アメリカ・ボマー、ウラル・ボマー、富嶽・・・といった採算を度外視した長距離機を無理やり開発する位なら、他にリソースを回して手の届く範囲で何とかするか、地上部隊を前進させて航空基地を敵に近づけた方がより現実的です(無論、それも限界があります)。
 WW2の米軍は本格的な足の長い戦略爆撃機の開発もしていますが、それより何より敵の生産拠点に手の届く位置に自軍の航空基地を確保することに成功しています。
 敵の生産拠点を叩ける機材と拠点を確保することは戦略爆撃を成功させる前提条件です。日本軍は連合軍の生産拠点を叩ける位置に地歩を得ることができませんでした。ドイツ軍は英軍の生産拠点にこそ手は届きましたが、米軍の生産拠点には手が出ませんでした。せいぜい策源地が精一杯でした。

 国力・地理という条件はいかんともしがたい宿命のようなものです。戦略爆撃機をそろえたとしても、その国が持つ宿命を克服しきることはできません。
 戦略爆撃が効率的と言えるのは、あくまでも自軍の手が届く(あるいは届きそうな)範囲に生産拠点がある敵と戦う場合に限った話であって、いかなる場合でも「効率が良い」と言いきれるような万能なものではありません。国内に生産拠点を持たない国に対しては、その効果も限定的なものになりかねません。

 誰かが戦略爆撃は万能と主張したと言う訳でもありませんが、私が言っているのはそういうことです。

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 ───────────────────────────────────────  ■題名 : 何が戦略爆撃か?  ■名前 : BUN  ■日付 : 10/5/1(土) 3:55  -------------------------------------------------------------------------
   >  しかし、戦略攻撃は敵の後方にある目標に弾を届けたいだけなのですから、弾を届けることができるのであればそれが本格的な戦略爆撃機である必要はありません。届くのであれば、手段は戦術爆撃機でもロケットやミサイルでも長距離砲でも目的は達成できるはずです。


やはり、そのあたりでかみ合っていないんだな、と解りました。

戦略爆撃はそれを実施する機種の問題ではないんです。
双発爆撃機でそれを行っても戦略爆撃は戦略爆撃です。
特別に用意した専用機種で実施するから戦略爆撃ではなく、
爆撃目標の選択と独立運用が戦略爆撃の特徴です。

四発爆撃が用いられた理由は単純に目標が遠いからなんです。
戦略爆撃の計画と実施でドイツに次ぐイギリスが四発爆撃機を試作し始めたのは
イギリスの仮想敵がフランスから再軍備に向かうドイツに変更されてからで
それ以前の1920年代から1930年代は双発機が戦略爆撃を担っています。
ランカスターが戦略爆撃機でウエリントンが戦術爆撃機という訳じゃないんです。
対独爆撃計画で生まれた機体と対仏爆撃計画で生まれた機体の違いです。

そして目標の遠近や破壊の難易を勘案するのは戦略爆撃計画のマネジメント面で
戦略爆撃そのもののを論じるベースではないんです。

目的とそれに費やすコストを検討するのは当たり前のことで
どんな作戦にも当然ついて回る話です。
けれども、その目的が何であるかを把握しないで
コストに見合うかどうかを検討することはできません。

論じるべき対象の定義が曖昧なのは困ったことですが
その目的を把握しないで効率を論じることもあまり意味がありません。

ウラルボマーが技術的失敗以上に無意味に見えてしまう理由は多分そこでしょう。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; GTB6.4; SLCC1; .NET CLR 2.0...@c118.87.158.211.c3-net.ne.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:何が戦略爆撃か?  ■名前 : おうる  ■日付 : 10/5/1(土) 9:50  -------------------------------------------------------------------------
   > やはり、そのあたりでかみ合っていないんだな、と解りました。
>
> 戦略爆撃はそれを実施する機種の問題ではないんです。
> 双発爆撃機でそれを行っても戦略爆撃は戦略爆撃です。
> 特別に用意した専用機種で実施するから戦略爆撃ではなく、
> 爆撃目標の選択と独立運用が戦略爆撃の特徴です。

 えぇ、いつぞや別のスレッドで話題にしていた潜水空母の水上機による米大陸爆撃も立派な戦略爆撃です。


> そして目標の遠近や破壊の難易を勘案するのは戦略爆撃計画のマネジメント面で
> 戦略爆撃そのもののを論じるベースではないんです。

 そこのところをどう考えるか?で意見が合わないのだろうとは分かっていました。正直、話題が漠然とし過ぎていたために、話題の対象である戦略爆撃そのものも漠然と考えざるを得ません。
 戦略目標への攻撃が無理なく可能であれば、それは実施した方が絶対に良いはずです。しかし無理が出てくる状況もあります。
 技術面で、あるいは採算の面で無理の出てくる状況でも戦略爆撃が実施された例はありますが、戦略爆撃を総括して考えるためにそうした作戦でも含んで考えると「必ずしも・・・」となるわけです。

 
> 論じるべき対象の定義が曖昧なのは困ったことですが
> その目的を把握しないで効率を論じることもあまり意味がありません。

 そうですね。他の方々のレス内容がWW2の話題に限定されだしたころから、どうも自分が違う部分で話をしている気はしていました。

 たとえば「工作機械を破壊しつくさなくても、工場疎開に追い込ませたならそれだけ生産力を低下するのだから、十分効果があったと評価できる」という主張。これは結果論としては正にその通りなのです。生産が遅れた分だけ敵は前線を支える事が出来なくなり、稼げた時間で戦争に勝利できたのですから。
 しかし、同じような工場疎開がロシアや中国のように広大な縦深を持つ国で行われたら・・・と考えるとそうも言えなくなります。疎開するということは、疎開先は敵にとっては安全な場所であり、味方から見れば手の届かない、あるいは手の届きにくい場所なわけですから、疎開が完了すれば敵の生産力は向上し、こちらから生産力に打撃を加える事が困難になります。
 軍隊の行動の究極目標はあくまでも敵戦力の撃滅であり、潜在的戦力の要である生産能力は前線の敵戦力同様に撃滅しなければならない目標です。工場疎開に追い込んで生産力が低下するのは、あくまでも一時的なものであって撃滅とは異なります。無論、その「一時的な生産力の低下」を目標に爆撃を実施し、敵生産力が低下している間に何かをどうにかしようという腹積もりがあるならば、その作戦は十分に評価に値します。
 しかし、敵戦力を撃滅するという究極目標に沿って考える場合、そしてその究極目標達成のために敵生産力攻撃を担当する戦略爆撃部隊として考える場合、敵を工場疎開に追い込んだだけでは足らなくなります。日本のようにたいした縦深を持たない国ならともかく、ロシアや中国のように縦深を持つ国が相手であれば疎開を成功させることなく短期間で撃滅しなければなりません。
 そうなると一撃で、あるいは極短期間で手の届く範囲にある戦略目標を破壊しつくす必要があり、そのためには大戦力が必要になっていきます。あるいは短期間で破壊し尽くさないまでも、生産や工場疎開を妨害するためにある程度まとまった戦力での戦略爆撃を継続する必要が出て来ます。

 無論、これは漠然とした原則論であって、時代や国(敵国と自国)によって事情は様々です。WW2の枢軸国が米大陸に無理して戦略爆撃を実施することは、どう見ても「効率が良い」とは思えませんし、ドゥーリットル攻撃隊の爆撃も「敵生産力を破壊する」という純軍事的に限って評価すれば「効率が良い」とはとうてい言えません(あれは政治的なものなので純軍事的に評価する意味もないのですが)。欧州で行われたような戦略爆撃は実に「効率が良い」と言えますし、WW2後半の対日戦略爆撃も戦略爆撃の成功例、その筆頭に挙げるべきでしょう。ベトナムの北爆も実施されなければ、史実よりもひどい泥沼になっていたことは疑いようもありません。
 この国がこの時、あの国に対して行った戦略爆撃は効率が良かったか?という話であればそれにそった話になります。しかし、ただ「戦略爆撃は効率的か?」と漠然と問われれば、背景を無視した原則論で考えざるを得ません。そして、背景を無視して原則論で考えれば、それが何であれ「○○が成功するためには・・・」という前提条件無しには評価できません。前提条件が付くということは万能ではないということでもあり、結論として「一般で信じられている程でもない」とかいう答えを出さざるを得ないわけです。

 我ながら無意味な事を言っているなと、2レス目あたりから思ってはいましたが・・・

<Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; ja; rv:1.9.2.3) Gecko/20100401 Firefo...@FL1-118-108-122-51.tcg.mesh.ad.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:何が戦略爆撃か?  ■名前 : BUN  ■日付 : 10/5/2(日) 7:10  -------------------------------------------------------------------------
   兵器生産プラントが疎開することも十分に大きな成果であることは御理解戴けたと思います。
そして爆撃機の行動圏外に疎開した工場は安全ではあっても
そこから前線までの輸送という余計な負荷がかかることも想像戴けるでしょう。

爆撃に対応して工場を疎開する例は日本やソ連だけではありません。
ドイツもフランスも航空機工場の疎開を実施しています。
その手法は遠隔地への分散と地下工場の建設です。
どこの国でも爆撃されたら、あるいはされる前に
何らかの対策を採るものなのです。

だからといって、工場が逃げてしまったから・・・という理由で
爆撃作戦を放棄しては総司令部の爆撃スタッフは務まりません。

生産プラントに手が出ないのであれば、
その破壊と同等の効果をもたらす目標を選択して立案提出しなければなりません。
それは関連する分野のプラントを破壊することかもしれませんし
輸送網を破壊することかもしれません。
戦略爆撃のターゲッティングはもともとそうした発想なのです。

ウラル以東に手が出ないから、アメリカ本土に届かないから、
対ソ、対米戦略爆撃は「効率が悪い」という発想では
戦略爆撃計画は最初の一歩さえ踏み出せません。

おうるさんのお話では
四発大型爆撃機で生産プラント等を直接破壊するというような
「戦略爆撃というからにはかくあるべき」との、
とても狭い枠組みを自ら想定していらっしゃるように受け取れます。

それは何の基準にもなりませんし、
せっかく各論で良い部分に迫っていても、
根本の部分で台無しにしてしまいます。

<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; GTB6.4; SLCC1; .NET CLR 2.0...@c114.134.224.176.c3-net.ne.jp>
 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:効率とはどういうことか  ■名前 : 片  ■日付 : 10/4/28(水) 15:55  -------------------------------------------------------------------------
   空襲の効果は物理的に破壊することだけではありません。
実際に起こったのは、日本中の航空機産業が工場疎開に動いたことです。
疎開のために工作機械を荷造りしてしまえば、その工作機械を一定期間破壊したのと同じ効果が得られます。
それでなくとも、工場疎開には多大な手間がかかります。
そうしたことが、爆弾を投弾されもしない全国の工場で一斉に起こったのです。
このように、敵方に余計な負担を強いたのが、対日戦略爆撃の効果だったのです。
これを効率的といわずして、なんといいましょうか。

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