Page 284 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼「機名の区切り」と「あるチームの出せる答え」 はたの 09/2/5(木) 0:12 ┣Re:「機名の区切り」と「あるチームの出せる答え」 片 09/2/5(木) 1:14 ┗それは見る人の心の中に ささき 09/2/5(木) 23:47 ┗Re:それは見る人の心の中に はたの 09/2/6(金) 10:04 ┣極端な例3つ ささき 09/2/6(金) 13:54 ┃ ┗Re:極端な例3つ はたの 09/2/7(土) 15:48 ┗Re:それは見る人の心の中に 片 09/2/9(月) 11:44 ┗Re:それは見る人の心の中に はたの 09/2/12(木) 10:20 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 「機名の区切り」と「あるチームの出せる答え」 ■名前 : はたの ■日付 : 09/2/5(木) 0:12 -------------------------------------------------------------------------
ホーカー・ハートとホーカー・シーフューリーを「同じ飛行機だ」と言えばお叱りを受けると思いますが、変化を辿ってもなかなか明確な区切りが見いだせません。 これは、疾風と鍾馗、F4FとF6F、セバスキーの楕円機シリーズあたりにも通底いたしましょう。 他方、Me109系やスピット、P51系はエンジンを換え主翼を換えても機種名は基本変わらず、F4Fに至っては単葉と複葉とがあります。 第一義的には制式名や社内名を論拠とすべきは当然ですが、試作機やプランやら含めると追いつかなくなります。 「答えが出るものに限る」でないからこちらにお題を立てさせていただいたので、もとより結論を求めるつもりはありませんが、みなさま、どんな感じで「機種名」をくくっておられますでしょうか? 二式練戦は「96艦戦ベースの別機種」なのか「名前は違うが96艦戦のバリエーション」なのか。 関連して、ある設計者ないしチームが発想し得た「方策の数」にもご意見いただければと存じます。ミッチェル氏でいえば(これもやたらと名前が変わる)双発飛行艇とスピットとは別作品(スピットとレーサーが別かは微妙ですが)といえましょうが、カム卿においては、小型単発機についちゃネタはひとつだけだった気がしないでもありません。 ギュンター兄弟も、要はぬるっとした胴体を持つ楕円翼機というアイディアのみではなかったかと。キ43、44、84、その他にも例はありそうです。 堀越氏のように3ないし4タイプを提示したほうがかえって例外的な気もしております。 この両点について多様なご意見を頂戴できれば幸いです。 <Monazilla/1.00 (cockcrow/2.5.5.6)@p57e282.ngnont01.ap.so-net.ne.jp> |
>「機名の区切り」 九六戦を改造した十五試練戦は二式練戦ですが、零戦を改造した十七試練戦は零練戦です。 この差には、時期によって採用者である海軍が名称の付与法を変えただけ、という理由があるに過ぎません。 要は、命名者がそのときどきでどんな命名法を採っていたかという問題であり、機体自体に由来する本質的な問題ではないのではないでしょうか。 >「あるチームの出せる答え」 堀越さんの方法は、「翼型を軸に沿って回転させた立体を胴体の基本形とし、必要ならば縦鰭をその上に載せてその前端を操縦席とする」という設計で、全機種共通しています。九試単戦、十二試艦戦、十七試艦戦の各機種で鰭付と鰭なしの両設計案が作られています。 さらにいえば、このプランは三菱製の機体の多くに共通しているものであることも見て取れるはずと思います。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)@nttkyo006194.tkyo.nt.ngn.ppp.infoweb.ne.jp> |
> ホーカー・ハートとホーカー・シーフューリーを「同じ飛行機だ」と言えばお叱りを受けると思いますが、変化を辿ってもなかなか明確な区切りが見いだせません。 > これは、疾風と鍾馗、F4FとF6F、セバスキーの楕円機シリーズあたりにも通底いたしましょう。 > 他方、Me109系やスピット、P51系はエンジンを換え主翼を換えても機種名は基本変わらず、F4Fに至っては単葉と複葉とがあります。 > 第一義的には制式名や社内名を論拠とすべきは当然ですが、試作機やプランやら含めると追いつかなくなります。 仰しゃることは判るようでもあり、判らないようでもあります。 P51を例に出すなら、マーリン換装型は別系統の新型機として当初「P78」の型番が割り当てられていました。それが「P51B」になったのは発注者側の事務的な事情で、機能や形態上の類似ないし飛躍とは殆ど無関係でしょう。 機能形態上の「系譜」という話であれば、確かにP51はA型からH型に至るまで数度の「殆ど互換性のない大改良」を重ねつつ、そのデザインには一連の類似性が認められます。しかし、P82ツイン・ムスタングは如何でしょう。あるいは、直線翼ジェット機のFJフューリーはどうでしょう。FJが「P51系の機体」であるならば、それを後退翼化したF86はどうなるでしょう。 F86もA型とD型は殆ど別の飛行機ですが(実際F86Dは当初YF95の型番が与えられており、「予算獲得の都合上」86シリーズの改良型という扱いなった経緯がありますが)これは同じく「86系」の機体なのでしょうか。F100スーパーセイバーやYF107はどうでしょう、型番は違っても「同系の飛行機」なのか、あるいはどこかに系譜の断絶があるのでしょうか。 グラマンF4FとF6Fを「似た飛行機である」と評することも、「ちっとも似ていない全然違う飛行機」と評することも同じようにできてしまうと思います。私にとっては、F6FよりもブリュースターF2AのほうがよほどF4Fによく似ていますし、その類似は「設計者の方策」やデザインポリシーよりも、機能要求上の必然(同じエンジン、同じ引き込み脚、同じ要求仕様)に由来するところが強いのではないでしょうか。 また、グラマンF9FパンサーはFFからF8Fに至る「グラマン艦戦の系譜」と全く異質の突然変異に見えます。しかしF9FとマグダネルFHファントムやF2Hバンシーが類似しているのは何故でしょうか。F9Fを後退翼化したF9F−8クーガーと無尾翼のダグラスF4Dスカイレイが類似しているのは偶然なのでしょうか、必然なのでしょうか。クーガーの次がビヤ樽みたいな胴体のF10Fになり、研ぎ澄ました鉛筆みたいなF11Fになり、XF12Fを経てF14になった過程に「系譜」を見ることはできるでしょうか? F10FはメッサーシュミットP1011を始祖とする可変翼実験機で、他のいかなるグラマン機よりも従兄弟のベルX−5に似ていると言うこともできます。F11FとF9Fの類似性を求めるより、同時代に似たような仕様で作られたF8クルセイダーやF100スーパーセイバーの類似を求めるほうが容易な気がします。XF12FがF4ファントムに似ているのは単純に要求仕様が似ているからでしょうし、F14が「可変後退翼」という一点を除けばF15に類似しているのも同様でしょう。そう言ってしまえば、「系譜」などというものは見えません。 しかし、F11の後退翼設計には確実にF9Fクーガーの経験が活かされています。XF12FはF11を大型化して双発化した機体と言うこともできますし、そこにF10Fで経験した可変後退翼技術を投入し洗練した機体がF14である、と言うことも不自然ではありません。すると、やっぱりそこには「系譜」があるような気がしてきます。 結局、「デザイン上の系譜」なるものは主観的なものだと思います。断絶を見ようと思えば幾らでも見つけることができるし、連続性を見ようと思えばこれもまた幾らでも見つけることができるものではないでしょうか。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 2.0.50727; .N...@adsl-75-62-140-228.dsl.lsan03.sbcglobal.net> |
お二方ともありがとうございます。 名称や型番は機体それ自体の系譜とは異なる理由が関わる事が多い、としてしばし横においておくとしまして・・・ 関連して考えるのが、たとえば、昨年亡くなったSF作家の野田さんが今日泊さんの言として紹介していた、「テーマ、モティーフ、プロット、ストーリィ」の違いです。これは野田さんではなく私の例示になりますが、たとえば、パニックや勇気を描く、タコ型宇宙人侵略ものであり人類は自分たちの力でなく助かる、火星から宇宙船がきて大騒ぎになって風邪で滅びる、前者が神視点で時系列に沿うのに対して、話者の視点の制限や語り順を工夫したもの・・・とでもなりましょうか。さらにスタイル(文体)も加わりそうです。 こうした階層的な手がかりを使うと、たんなる印象批評よりは妥当性を帯びて語れるのではないかと。 さしずめ、テーマは仕様にある「目的」、モティーフは指定されたエンジンやゴンの要請としての時代の流れなどでしょうか。飛行機の設計の場合、その下位にいくつぐらいの階層を置いて考えるのがよいのかなあと考えたりいたします。 「堀越さんの方法」(や、土井さんの「前進翼」、ギュンター兄弟のぬめぬめ大好きなど)は、「逆ガル楕円翼と前後テーパー翼の違い」などと比べた場合に、どのレベルの「クセ」なのだろうか? ここてもうひとつ連想しているのが、北島マヤちゃんの、「同じ設定でいくつでも別の芝居ができる」でもあります。 逆に、どんなお話でも、ジョン・ウェインは彼にしか見えなかったりもしますよね(反対去るかたもおられましょうけれど)。 <Monazilla/1.00 (cockcrow/2.5.5.6)@p57e282.ngnont01.ap.so-net.ne.jp> |
> こうした階層的な手がかりを使うと、たんなる印象批評よりは妥当性を帯びて語れるのではないかと。 > さしずめ、テーマは仕様にある「目的」、モティーフは指定されたエンジンやゴンの要請としての時代の流れなどでしょうか。飛行機の設計の場合、その下位にいくつぐらいの階層を置いて考えるのがよいのかなあと考えたりいたします。 「要求された仕様」「設計時点で知られていた新技術要素」「そのチームが実績として持っている設計手法」というあたりではないでしょうか。優先順位についてもおおむねこの順番ではないかと思います。 > 「堀越さんの方法」(や、土井さんの「前進翼」、ギュンター兄弟のぬめぬめ大好きなど)は、「逆ガル楕円翼と前後テーパー翼の違い」などと比べた場合に、どのレベルの「クセ」なのだろうか? キ-115「剣」に、キ-27からキ-87 まで通じる「中島の系譜」をどこまで認めることができるでしょうか。この機体が三菱や川崎に発注されていたら、どのような相違が生まれたでしょうか。 > ここてもうひとつ連想しているのが、北島マヤちゃんの、「同じ設定でいくつでも別の芝居ができる」でもあります。 ノースロップ B-35 とコンベア B-36 は同じエンジン、同じ要求性能で発注された機体ですが、「とにかくでかい」「エンジン6個でプロペラ推進式」という以上の共通点を認めるのは難しいですね。これはジャック・ノースロップの全翼機に賭ける信念がなさしめたことなのか、それとも「超高性能が期待できる革新的なノースロップ案」と「大きく外しはしないであろう堅実なコンベア案」を意図的に発注しわけた軍の意図なのでしょうか。 それを、どちらか一方だと言い切ることはできないような気がします。全翼機こそ究極の最適設計である、という信念がなければあんな奇抜な案を大真面目に提案はしないでしょうし、いっぽう軍のほうもノースロップが全翼機に賭ける情熱や、各種の実験を重ねてきた実績を知っていたからこそ「もし実現すれば革命的高性能機が得られる」という期待を抱いて実機発注に至ったのではないでしょうか。 B-35 と B-36 は極端な例ですが、同じ要求仕様・同じ技術要件で作られた機体がみな見分けが付かないほど細部に至るまで酷似しているわけでもありません。日本機の例で言うなら、競作となったキ-27, キ-28, キ-33 の3機種には中島(小山)・川崎(土井)・三菱(堀越)それぞれの企業的・設計者的な特徴を見ることができます。しかし同時に、「全金属・低翼単葉・単発単座戦闘機」という括りで見ればドングリの背比べ程度の違いしかない、とも言えます。それは要求仕様に由来するものか、あるいは当時の日本で実現可能な設計・製造手法の限界という技術要件上の由来なのでしょうか。 > 逆に、どんなお話でも、ジョン・ウェインは彼にしか見えなかったりもしますよね(反対去るかたもおられましょうけれど)。 バート・ルタン氏の設計した有機的デザインの機体の多くは、その機能要件上の相違(安価な高速スポーツ機、高級ビジネス機、リノのアンリミテッドレーサー、世界一周無着陸機、宇宙ロケットの空中母機)にも関わらず、同じデザインポリシーが貫かれているように感じますね。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 2.0.50727; .N...@adsl-99-175-135-49.dsl.irvnca.sbcglobal.net> |
レスありがとうございます。ゴン→軍 去る→される 土井さんの「前進翼」→小山さんの「前進翼」など、ミスごめんなさい。 同じ要求・背景に対する複数チームの答えの異同もそうなのですが、同じ要求・背景に対する同じチームからの別な発想による(翼面積の大小程度ではない)複数の答えの事例を数多く思い浮かべられる知識を得るべきなのかもしれないなあと思いもします。SD2D/BTDとAD-1などはそれに近い気もしますが、その他の逆提案例は「要求や背景も変えてよ」が多いような・・・ >バート・ルタン氏 面白い設計者をご紹介くださりありがとうございます。 尾翼に負の揚力を積むのが嫌いなりかなあとか、模型飛行機好きかなあなどと感じると同時に、「文体」が伝わってきました。 <Monazilla/1.00 (cockcrow/2.5.5.6)@p57e282.ngnont01.ap.so-net.ne.jp> |
> 「堀越さんの方法」 > 「逆ガル楕円翼と前後テーパー翼の違い」 九試単戦が逆ガル翼だったのは、片持ち式固定脚の脚長を出来るだけ短縮する目的で採用された手法なのであって、合理的な理由があります。 三菱の艦上戦闘機は、九試単戦で採用した楕円翼から引き続き、十二試艦戦でも翼端の最大翼幅部分が最大翼厚部分と一致せず前後対照的な形状になっている、と見ることも出来ます。あるいは、九試単戦のデータを流用できるから、という事情があったのかもしれませんが、この点に関しては未検証です。しかし、堀越氏の設計班だけでなく、同時期の三菱設計機にも一定範囲で良く似た翼端形状が採用されていることは間違いありません。 中島太田設計機の翼平面形状などは、明らかに糸川氏の空力設計がその後も延長されているわけです。 デザイナーの好き嫌い、癖などというと美学的な範疇のことにもなってしまいかねませんが、経験的に得られたデータはどの程度まで延長して使っているのだろうか、と見る方が「もっともらしい」ように私などは思ってしまいます。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)@p7037-ipad606marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp> |
ありがとうございます。なるほど、そうしてみるとあの翼端形状は不思議ですね。 使えるデータが設計者個人の「勘や経験」→会社などのチームとしての準体系的なデータ群→より体系的(無理っぽそうなものでもデータ化しておく)なNACAデータベースと変化していくのを背景に考えるべきなのでしょう。 <Monazilla/1.00 (cockcrow/2.5.5.6)@p57e282.ngnont01.ap.so-net.ne.jp> |