Page 221 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼P51がこけてたら? しゃんでる 06/11/14(火) 16:42 ┗XP-60 という影 ささき 06/11/14(火) 22:04 ┗Re:XP-60 という影 しゃんでる 06/11/15(水) 9:07 ┗P-51 が特別な高性能機というより… ささき 06/11/16(木) 8:30 ┣Re:P-51 が特別な高性能機というより… [名前なし] 06/11/17(金) 0:30 ┃ ┗時期とコスト ささき 06/11/23(木) 15:22 ┗トータルコスト らいおん 06/11/17(金) 22:11 ┗少々お待ちください ささき 06/11/20(月) 22:06 ─────────────────────────────────────── ■題名 : P51がこけてたら? ■名前 : しゃんでる ■日付 : 06/11/14(火) 16:42 -------------------------------------------------------------------------
初めて投稿します。 WW2で最優秀戦闘機との評価も高いP51ですが、ちょっと思うところがあり、問題提起させて いただきました。 概略として、P51は皆さんご存知の通り、英国の要請によりノースアメリカン社(以後NA社)が 要求されたP40のライセンス生産を蹴って、オリジナルの機体を提示したところから生立ちがスタートし ております。 結果的には、どこかの論議ボードにありましたように、1)思いっきり野心的な設計が功を奏し、 2)英国空軍の駐米武官の提案によるRRマーリンの搭載、によってヨーロッパ戦線、太平洋戦線 でほとんどの日独戦闘機を駆逐してしまうパフォーマンスを発揮する訳ですが(ミクロなシチュエ ーションや、彼我のコンディションによっては、一方的に”駆逐”される訳ではないと思いますが) 、ここでふと疑問を感じました。なんてことはない、P51が野心的な設計が仇となって駄作機に なってたらどうなったのかいな、と。 もちろん、NA社のオリジナル機体であるNA73のパフォーマンスを確認していたからこそ、偶然 ではなく、必然的にP51が成功していくのは理解できるのですが、ifとしてNA73をミリタリースペックに 適合した場合に、「こりゃ使えんよー」ってな状況がもしかしたらありえたのでは?ということです。 大航続距離を実現した、主翼内燃料タンク等は、結果的には賞賛の対象になることが多いと 思いますが、被弾に対しての脆弱性を助長する意見も当然あり、もしこれを問題視されて 燃料タンクの撤去とこれに伴う採用時期の遅れの可能性はなかったのか、等と考えてしまい ます。博識な皆様のご意見を賜れれば恐縮です。 PS.同じような議題が過去にすでになされているのであれば、取り下げさせていただきます。 (ちょっと見たのですが、無かったようでしたので) |
はじめまして。 > 、ここでふと疑問を感じました。なんてことはない、P51が野心的な設計が仇となって駄作機に > なってたらどうなったのかいな、と。 カーチス XP-60 の経緯が参考になるかもしれません。 http://www.warbirds.jp/data/us/htm/p-60.htm http://home.att.net/~jbaugher1/p60.html 性能不振を伝えられる XP-60A の最高速度 387mph / 623Km/h で、関係者を狂喜させた高性能と伝えられる NA-73 の最高速度 390mph / 627Km/h と実は大差がありません。同等のエンジンを積んだ前世代機 P-40F, P-40E との性能差もそれぞれ +6.5% と +7.9% で、圧倒的といえる大差にはなっていません。しかし圧倒的に違うのは登場時期で、NA-73 初飛行が 1940 年 10 月、XP-60A が 1941 年 9 月と1年の差がついています。 > 大航続距離を実現した、主翼内燃料タンク等は、結果的には賞賛の対象になることが多いと > 思いますが、被弾に対しての脆弱性を助長する意見も当然あり、もしこれを問題視されて > 燃料タンクの撤去とこれに伴う採用時期の遅れの可能性はなかったのか、等と考えてしまい > ます。博識な皆様のご意見を賜れれば恐縮です。 P-40E の機内タンクは 156 ガロン / 590 リッターで航続距離 650 マイル / 1046Km、P-51A の機内タンクは 180 ガロン / 681 リッターで航続距離 750 マイル / 1207Km と伝えられ、実は P-40 と比較する限りは大差ありません。P-51 の機内タンクは確かに欧米戦闘機として大きめではあるものの、長大な航続性能はむしろ大容量増槽の実用化に負うところが大きいのではないでしょうか。 XP-60A のタンク容量については数字が出てきませんでしたが、おそらく P-63 キングコブラと同等の 100 ガロン / 378 リッター前後、航続距離 450 マイル / 724Km 前後ではないかと思われます。 P-51 / NA-73 は 1940 年後半に初飛行した米軍戦闘機としてはむしろ平凡な性能だったのではないか、と思います。1939 年 1 月に初飛行した XP-38 は 413mph / 664Km/h, 4 月に初飛行した XP-39 は 390mph / 627Km/h の速度を既に記録しているのですから。米軍がアリソンの P-51A を戦闘機失格とし、急降下爆撃機 A-36A として採用した理由も何となく判るような気がします。 P-51 は寧ろその中途半端な性能仕様、それによる米空軍の無関心によりかえって積極的な発展型 - マーリン換装の B および D 型に発展することができたのではないかな、という気がします。それはコロコロ変わる軍の方針変更に振り回された XP-60 と照らし合わせるとより一層鮮明になるような気もします。 |
ささきさん、興味深いレスをいただき、ありがとうございます。 XP-60という機体を、実はよく知りませんでしたので、経緯などを 貼っていただいたリンクから見せていただきました。実に興味深い ですね。XP-60もP-51も試作段階ではどんぐりの背比べに見えますが、 これが片方はおお化けする訳ですね。 ところで、私の議題提起の目的にはもう一つあります。それは、NA社 が予定通りP-40をライセンス生産し、その後もP-51が採用されない、または 採用が遅れた場合の、その後の戦況の推移についてです。この場合、よく 言われる”爆撃機を援護して敵地深く進攻できる”機体が、既存の P-38位になってしまうと思うのですが、その場合のドイツ空軍の戦力漸減 が史実よりやや緩やかになるとか、その辺はどのようになるのでしょうか。 大勢は変わらないとしても、例えば米軍戦略爆撃隊の損害は史実より 大幅に増えるとか、空戦性能では歯が立たないP-51ではなく、P-47、P-38 、スピ9等が相手となると、少し状況が変わってくるのでは?等と考えます。 |
> ですね。XP-60もP-51も試作段階ではどんぐりの背比べに見えますが、 > これが片方はおお化けする訳ですね。 まぁ、素性の良し悪しもあったと思いますけどね(^^; > ところで、私の議題提起の目的にはもう一つあります。それは、NA社 > が予定通りP-40をライセンス生産し、その後もP-51が採用されない、または > 採用が遅れた場合の、その後の戦況の推移についてです。この場合、よく > 言われる”爆撃機を援護して敵地深く進攻できる”機体が、既存の > P-38位になってしまうと思うのですが、その場合のドイツ空軍の戦力漸減 > が史実よりやや緩やかになるとか、その辺はどのようになるのでしょうか。 P-51 が無ければ P-40 の大幅改良型(史実の XP-40Q) や P-47 の長航続距離型 (史実の P-47N)の量産が早まり、また P-38 の量産梃入れなどで乗り切ったの ではないかと思います。 > 大勢は変わらないとしても、例えば米軍戦略爆撃隊の損害は史実より > 大幅に増えるとか、空戦性能では歯が立たないP-51ではなく、P-47、P-38 > 、スピ9等が相手となると、少し状況が変わってくるのでは?等と考えます。 P-38 も P-47 もドイツ機にとっては手強い敵であることに違いはなく、 米戦闘機隊の主力が P-51 に変わったのはむしろ価格面の差…P-47 の約半額、 P-38 の 1/3 の値段(だったと思います)で同等以上の性能という点が買われて のことだと思いますが、如何でしょうか。 機種性能の差というよりも戦術方針の転換(戦闘機の大量投入による ファイタースイープ作戦の断行)が肝であり、P-51 はたまたま時期的 性能的に間に合った手ごろな機体であったから使われたものの、P-51 が 無くても他の機体(P-38, P-47)で同等の作戦が行われれば、やはり独空軍 戦力は大差ない打撃を受けていたのではないかと思います。 |
うーむ、つまるところは圧倒されるに違いないですが、もう少し粘れるかもとか 考えたりもするんですが。P47Nの投入前倒しはともかく、P38の機体価格なんか も多少のネガティブ要因(US/GBにとって)になるかな、とは思うんですが。 いや、色々とご教授いただきありがとうございました。勉強になりました。 |
USAF Museum のページで調達価格を調べてみました。() 内は P-51 を 1 とした場合の比率です。 P-38L $115,000 (2.1) P-47D $85,000 (1.5) P-51D $54,000 (1) P-40E $45,000 (0.83) P-39Q $46,000 (0.85) 以前に挙げた「P-38 が3倍、P-47 が2倍」というのは少々大袈裟でした。しかし P-51 がお買い得な戦闘機である様子は判ると思います。 ちなみに爆撃機のお値段。 B-25B $96,000 (1.78) B-26G $227,000 (4.20) B-24D $336,000 (6.22) B-17G $276,000 (5.11) B-29 $639,000 (11.8) > うーむ、つまるところは圧倒されるに違いないですが、もう少し粘れるかもとか > 考えたりもするんですが。P47Nの投入前倒しはともかく、P38の機体価格なんか > も多少のネガティブ要因(US/GBにとって)になるかな、とは思うんですが。 ざっと調べてみると、時系列はこういう感じになります。 1942 年 8 月 対独戦略爆撃作戦開始 1943 年 8 月 P-47 護衛出撃開始 1943 年 9 月 P-38 護衛出撃開始 1944 年 3 月 P-51 護衛出撃開始 1944 年 6 月 ノルマンディ上陸 重爆が 10〜15% に達する被害に苦しめられていたのは主に 1943 年 4 月から 1944 年 2 月までの間ですが、P-51 投入後の 1944 年 3 月 4 日のベルリン初爆撃では全行程で援護が付いたにも関わらず、600 機出撃中 69 機未帰還で被害率 11.5% を記録しています。 確かに P-47 は航続距離の不足に、P-38 は稼働率の低さに悩まされ充分な護衛を提供できない欠点があり、それゆえ P-51 配備が始まると急速に機種改変が進んだと思いますが、P-51 が無ければ無いで凌げないこともなかったのではないかと思います。 また P-47N の開発開始は 1944 年 6 月、量産機の出荷開始は 1944 年 12 月とされていますので、量産・配備の注力次第では史実の P-51 と同時期に欧州戦線に投入させることは充分可能ではないかと考えます。 > いや、色々とご教授いただきありがとうございました。勉強になりました。 こちらこそ。 |
便乗質問お許しください。 「戦闘機隊の主力が P-51 に変わったのはむしろ価格面の差…P-47 の約半額、 P-38 の 1/3 の値段(だったと思います)で同等以上の性能という点が買われて」 P-51やスピットファイアに搭載されたマリーンエンジンは寿命が70時間以下と ききましたが、トータル的にはコスト高にならないのでしょうか? |
> 便乗質問お許しください。 > 「戦闘機隊の主力が P-51 に変わったのはむしろ価格面の差…P-47 の約半額、 > P-38 の 1/3 の値段(だったと思います)で同等以上の性能という点が買われて」 > > P-51やスピットファイアに搭載されたマリーンエンジンは寿命が70時間以下と > ききましたが、トータル的にはコスト高にならないのでしょうか? 現在出張中でまとまった調べ物ができない状態です。あと2〜3日お待ちください。 P-51 が「無かった場合」の欧州航空戦の様相については、B-17 被害率と P-51B/D 投入時期、P-38 の生産数、稼働率などを調べてみたいと思っています。 P-51 のエンジン寿命については、そもそも WW2 戦闘機の機体寿命が 100 時間そこそこだったと思うのですが、これもちょっと調べてみたいと思っています。 |