Page 212 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼日本の国力はどれだけ足らなかったか? おうる 06/12/29(金) 12:17 ┗空しい計算 SUDO 06/12/29(金) 13:53 ┗空しいお話 おうる 06/12/29(金) 20:08 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 日本の国力はどれだけ足らなかったか? ■名前 : おうる ■日付 : 06/12/29(金) 12:17 -------------------------------------------------------------------------
WW2の日本の敗因は結局のところ国力の不足に尽きると思います。 では、実際のところどれだけ足らなかったのか? 連合国の国力合計−枢軸国の国力合計=不足分・・・と考えることもできるのでしょうが、それだと米国をも上回る超大国である必要が出てきます。かといって「連合艦隊がもう一揃えあれば初戦で押し切れた」とか言い出したりするとキリがありません。また、戦局や外交等の要素も絡めるとどれだけ戦えば勝利を収められるか等解決不能な問題も際限なく沸いてきてしまいます。 そこで、以下の仮定から「日本に必要だった国力」を想定していただきたいと思います。 1.日本帝国陸海軍は史実上の1941年12月7日現在の時点で計画化されていたすべての軍備を有するものとする。 2.日本帝国陸海軍は初戦半年で資源地帯の制圧に成功するものと仮定し、日本経済は1年で極めて円滑に戦時経済体制へと移行するものとする(つまり輸送手段さえ確保すれば資源の調達に不都合は生じないものとします)。 3.戦時経済体制への移行が完成するまでに必要な資源は備蓄資源で賄うものとする。 4.日本帝国陸海軍は保有戦力のほぼ全力を投入する作戦(陸軍の場合は「大規模な作戦」程度想定)を、平均5ヶ月に一度実施するものとする。 5.すべての船腹は艦船・民需用とも艦種を問わず年間平均1/3ずつ喪失、航空機は事故・老朽化も含め年間平均2/3ずつ喪失するものとする。陸上戦力についてはどう仮定したらいいかわからないので諸兄にお任せします。 6.戦時経済に移行した後の国内生産力は、全力でそれらの消耗を何とか賄えるものとする。 7.資源および輸送手段は国力維持分および作戦遂行上必要分は前述の消耗分を加味してなお最低限度は確保されるものとする。 8.生産物の簡略化・生産の効率化等による必要生産工数の低減分(生産能力向上分)は新技術・新兵器導入や性能向上に振り向けられ、結果的に増減は生じないものとし、今回は考慮しない。 9.以上のような均衡を保って戦争を遂行するのに必要なインフラ設備・輸送手段は平時から確保されるか、開戦後1年以内に稼動するものとし、それらは平時の日本経済で維持できるものとする。 以上を「日本がWW2を戦い抜くために必要だった国力」の条件とし(あくまでも戦い抜くための国力で、戦争の決着そのものは無視してください)、これらの条件が成立する国力とはどの程度になるのでしょうか? なお、戦争遂行上に発生する消耗分の仮定(船腹の場合、年間平均1/3等)が不適当と思われる場合は修正していただいてかまいません。 個人的にはAns.Qに投稿したいネタですが、あちらでは不適当な内容なのでこちらで議論という形式をとります。残念なことに私には議論に提供できるような材料がほとんどありません。実質的に質問です(まことに申し訳ありません)。 退屈な正月特番を見る代わりに参加していただければ幸いです。 |
> 1.日本帝国陸海軍は史実上の1941年12月7日現在の時点で計画化されていたすべての軍備を有するものとする。 > 2.日本帝国陸海軍は初戦半年で資源地帯の制圧に成功するものと仮定し、日本経済は1年で極めて円滑に戦時経済体制へと移行するものとする(つまり輸送手段さえ確保すれば資源の調達に不都合は生じないものとします)。 > 3.戦時経済体制への移行が完成するまでに必要な資源は備蓄資源で賄うものとする。 > 4.日本帝国陸海軍は保有戦力のほぼ全力を投入する作戦(陸軍の場合は「大規模な作戦」程度想定)を、平均5ヶ月に一度実施するものとする。 > 5.すべての船腹は艦船・民需用とも艦種を問わず年間平均1/3ずつ喪失、航空機は事故・老朽化も含め年間平均2/3ずつ喪失するものとする。陸上戦力についてはどう仮定したらいいかわからないので諸兄にお任せします。 史実の商船建造総トン数は 17年度合計(17年4-18年3)68万トン 18年度合計(18年4-19年3)121万トン 19年度合計(19年4-20年3)162万トン 17年度は5万総トン/月、18年度10万/月、19年度13.5万/月とい建造ペース。 仮に1年前倒しに戦時体制に完全移行できたとしても、17年度中の建造が60万総トン程度増加するだけでしょう。また開戦前の既存の造船所ではフル回転させても80万総トン/年が限度と目されており、18年度以降の大量建造の背景には、新規に作られた造船所とその新設備による急速建造システムが大きな影響を齎しております。造船所の建造には時間が掛かるものですから、いきなり1年で完全体勢移行というのは無理ですから、1年目に史実の2年目以降のペースでの建造をさせるには史実の倍程度の既存造船所が必要ということになります。 まあ、つまりは国力2倍。 そして史実の商船喪失総トン数を年度別に見ると 16年度合計(16年12-17年3)17万トン(月平均4.3万) 17年度合計(17年4-18年3)141万トン(月平均11.8万) 18年度合計(18年4-19年3)309万トン(月平均25.8万) 19年度合計(19年4-20年3)349万トン(月平均29.1万) 20年度合計(20年4-20年8) 66万トン(月平均13.2万) 総計45ヶ月で883万トン、月平均19.6万トン。まあどの程度を見積もるかでしょうけど、開戦時保有量から毎年1/3を喪失(約210万)するならば月17.5万ですから史実より甘いわけですが。210万を建造するだけならば、史実のピーク(19年度)の1.3倍ということになります。また史実の激戦を潜り抜けるならば20〜25万総トンの喪失を補填できる程度は欲しいわけで、この場合は2倍弱程度が欲しい。また史実の19年度は建造能力こそ年180万総トン級に達しましたが、鋼材供給能力の関係でここに達することが出来ませんでした。 次に日本が必要とする船の量は何トンだったのかというと、18年度初頭で170万総トンが不足+損害分を建造しないといけないとされていますが、この時点で保有量は約540万総トンですから、開戦時の638万でも足りず、最低でも710万総トンが必要ということになります。いろんな組織が色々な要望や計算で色々と出しているのですが、どれも開戦時+100万程度は必要というところが共通しているあたりに泣けるものがありますが。 また638万総トンを維持する造船能力が、そのままでは年80万がいいとこ、平時で40〜50万しか作ってないという程度であったというのにも注意が必要です。これを210総トンの喪失に耐えつつ、国力増進と維持に必要と目される750万総トン級保有と維持に拡大するには、年間250万総トンの建造が必要ですが、鋼材供給量はその65%程度がいっぱいのようです。 軍艦等もあるので単純にはいえませんが、一番いっぱい鋼鉄使った造船を見るに、鋼材供給能力1.5倍が最低限の必要規模では無いかと。 またこれで鋼材供給量が1.5倍になれば、例えば工場の建造資材等も増えますし、必然的にコークス生産が増えるので火薬等の生産にも助けになるでしょう。 また造船所の拡充がどうしても必要であるという点から、平時40-50万が戦時80万程度(つまり2倍)新規建造で+100万で、頑張れば180〜200万級というような造船規模拡充は1年目程度からという条件に足りません。+100万以上の造船所増築は当然行うとしても、既存造船所のフル操業で150〜200万総トンまでなら狙えそうな規模は欲しいわけで、こうなると史実の倍以上の平時需要があることが条件になります(ある程度は中古や輸入船舶等を国産新造船舶におき変えるとかで賄えますが)640万噸級を維持し、徐々に国産新造船に置き換えるという場合で45万総トン/年程度の建造量だったわけですから、15年程度で置き換える計算になります(実際にはもっと長期に渡って以下略なので、開戦前数年間の40〜50万建造は、急速に旧式旧世代商船をまともな船に置換していくダイナミックな動きの最中に合ったというだったという点にも注目が必要です。つまりは普通は、こんなにいっぱい作りません)また80万程度が可能な造船所で40〜50万作って好景気だっていうんですから、ここで倍規模(160万)の造船所を抱え、何とか飢えない程度の回転率でとなると、年60万〜70トン程度の建造需要は必要という事になります。日本全体では40〜50万でやりすぎなんですから20〜30万トン程度の輸出需要が必要ということになります。 でもね、これだけ輸出できるだけの技術とブランドがあれば、別に戦争いらないよね・・・。 |
回答ありがとうございます。 > でもね、これだけ輸出できるだけの技術とブランドがあれば、別に戦争いらないよね・・・。 WW2自体からして枢軸国が困窮からの強引な脱出を試みた結果として起こった戦争と捉えて良いだろうと思います。 日本の明治以前の人口はおおよそ3千万人でほぼ横ばいに推移しており、明治以後の開国と海外貿易の本格化によって急速に人口を増やしています。海外との貿易無しには江戸時代以前の国力しか維持することは出来ず、日露戦争で抱えてしまった巨大な負債(その後の経済的困窮)が足かせとなって経済成長が伸び悩み、貿易を盛んにしようにも当時の日本でも競争力を発揮できそうな海外市場の多くは他の列強が抑えている。列強国を直接相手にしたんじゃ、それこそWW1のような状況にでもならないかぎり競争力がなくて商品は売れない。むしろ逆に日本の企業が食いつぶされてしまいかねない。 日本の重工業はかなりの部分で軍主導で発展してきたようなところがあります。生産能力が成長するための需要を軍が作りだし、製造業を育てる。産業を強引に成長させる点では成功していますが、民間企業としての健全さを失ってしまう事例もあり、そうした企業の軍需への依存は容易にクラウディングアウトを引き起こし、民間経済の健全な成長を阻害する要因にもなった・・・というような指摘を本で読んだことがあります。しかし、重工業の投資額に対する利益率は軽工業(紡績業)に比べて低く、国や軍が主導してやらねば重工業が発達しないのは当然だったというのも一つの事実であり、おそらく良かった悪かったというのは一概に言えるようなものではないのでしょう。 軽工業(紡績業)は国際競争力がありましたが、軍備で互いを牽制しあう国際情勢の中で軽工業のみに依存することはできない。どうしても軍備を支えるに足る重工業が必要であり、重工業が存続するためには国内市場だけでは圧倒的に不足している。国際競争力のない日本の重工業が軍需に依存することなく存続するためには日本が独占できる市場・・・つまり植民地が必要になる。 そもそも日本経済に国際競争力と市場があれば起こす必要のない戦争であったとしみじみ思えます。 日本の敗戦について戦後あれこれ言われています。いろいろ戦争当事者たちの間でさえ、あーすればよかっただのこーすればよかっただのといった無念と悔恨に満ちた声が絶えません。あーすれば勝てた、こーすれば勝てたといった仮想戦記もこうした不満の表れなのでしょう。 こうしたフラストレーションは単に負けたからというよりは、日本軍は存分に戦えたわけではなかったという考えが底辺にあるものと個人的に考えています。しかし、史実がそうであったように、日本には単に敵国に対して国力が劣っていたという以上に、せっかく整えた軍備を存分に活躍させるだけの国力がそもそもありませんでした。 では、せめて戦争当事者たちが自分たちは存分に戦ったと納得するだけの戦いを日本軍にさせようとするならば、日本の国力はどれだけ必要だったのだろうか?というのを根底にして「日本がWW2を戦い抜くのに必要な国力」の条件を定めてみました(相変わらず本末が転倒した発想をしています)。 船舶の損害(平均で年間1/3)というのは、一時期注目を集めていた戦前の総力戦研究を元に「だいたいこれぐらい」と考えてみました。海上護衛に関する認識の甘さを指摘され安い日本海軍なので、若干それより悪いかも知れないぐらいには考えていましたが、「想定」としてはおおむね適当であったろうと思ってます。 航空機については、正確な集計結果はどの国にもないようなのですが、航空機の半数〜6割は事故で失われていたらしいという何かの本で読んだ内容を元に、やはりやや甘いかなと思いつつ平均年間2/3の喪失と想定してみました。 国力が無いために軍備を活用しきれずに敗戦してしまった日本、日本が保有していた軍備を存分に活用するために必要であったであろう国力・・・それさえあれば、そもそも戦争の必要がなかったというのは、皮肉というのも悲しいくらい空しい話です。 |