Page 210 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/12(金) 12:49 ┣Re:単座急降下爆撃機構想の是非 73式 07/1/13(土) 10:00 ┃ ┗んでもね SUDO 07/1/13(土) 11:36 ┃ ┗Re:んでもね 73式 07/1/13(土) 19:45 ┣Re:単座急降下爆撃機構想の是非(続き) 73式 07/1/13(土) 10:16 ┣Re:単座急降下爆撃機構想の是非 おうる 07/1/13(土) 10:23 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/17(水) 13:40 ┃ ┣Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/17(水) 13:44 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 おうる 07/1/17(水) 21:17 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/18(木) 15:15 ┃ ┗「万能」は「無能」です おうる 07/1/18(木) 22:34 ┃ ┗Re:「万能」は「無能」です 高村 駿明 07/1/19(金) 12:19 ┃ ┗Re:「万能」は「無能」です おうる 07/1/19(金) 23:21 ┃ ┗Re:「万能」は「無能」です 高村 駿明 07/1/20(土) 12:19 ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/13(土) 12:20 ┣Re:単座急降下爆撃機構想の是非 片 07/1/13(土) 18:34 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 BUN 07/1/16(火) 7:18 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/17(水) 13:42 ┃ ┗単座艦爆案の本質 BUN 07/1/18(木) 6:11 ┃ ┗Re:単座艦爆案の本質 高村 駿明 07/1/18(木) 16:18 ┃ ┗艦爆のオルタナティブとは? BUN 07/1/19(金) 18:13 ┃ ┗Re:艦爆のオルタナティブとは? 高村 駿明 07/1/20(土) 12:15 ┣Re:単座急降下爆撃機構想の是非 73式 07/1/13(土) 19:59 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/17(水) 13:38 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 73式 07/1/17(水) 23:22 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/18(木) 15:35 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 73式 07/1/18(木) 23:10 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/19(金) 12:30 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 73式 07/1/19(金) 22:06 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/20(土) 12:21 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 73式 07/1/20(土) 21:39 ┃ ┗Re:単座急降下爆撃機構想の是非 高村 駿明 07/1/21(日) 15:28 ┗爆戦が実現できるなら全ては解決 BUN 07/1/14(日) 6:58 ┗Re:爆戦が実現できるなら全ては解決 高村 駿明 07/1/15(月) 12:38 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 単座急降下爆撃機構想の是非 ■名前 : 高村 駿明 ■日付 : 07/1/12(金) 12:49 -------------------------------------------------------------------------
いつもお世話になっております。 今回は、源田實海軍大尉が昭和8〜10年に主張したという、「単座急降下爆撃機構想」の是非について、皆様のご意見を伺えたらと思います。 源田大尉の構想とは、以下の内容です。 制空権の帰趨が戦闘の勝敗を決定することが明白である以上、制空権確保の必要性は重大である。日本海軍では戦闘機隊が主に艦隊の上空直衛などの防御的作戦に使用さけているが、これを改め、空母の戦闘機隊と攻撃機隊の半数を単座急降下爆撃機に変えてはどうか。 単座なら航続距離を伸ばせる上に、若干性能は劣るが単座戦闘機としても使用できる。航法上の問題は偵察機を同行させればいいし、偵察機が同行できなかったとしても、捜索列を展張すれば、単座でもある程度の航法は可能である。搭乗員育成も半数で済む利点がある。 素人考えですが、源田構想には多くの利点があるように思います。 現実に、太平洋戦争の展開は、戦闘機と搭乗員はいくらあっても足りない状況でしたし、艦爆の低速から、零戦が代用艦爆として使われたりしました。もし艦爆兼戦闘機が存在したなら、こうした問題も少しは軽減されますし、米国流の「急降下を使った戦闘機戦術」も発達したのではないかと。 山本五十六提督は、源田構想に対し「一応そのように考えられるが、搭乗員の安全性を考えるなら、海軍当局としては二座となると思う」という趣旨の返答をしたようです。 もし、昭和8年の時点でこの構想を実現に移したなら、終戦までの課程でどのような問題が起こったでしょうか。 諸賢らのご所見をお聞かせ頂ければ幸いです。 |
「単座急降下爆撃機構想」とは「単座機ニヨル急降下爆撃法ノ教育訓練ニ就テ」のことだと思います。アジ歴などで検索しましたが、その全文はわかりませんでした。 ですから完全に推測モードですが、お題の主張がされた時期は源田大尉が横空において「戦闘機無用論」を唱えていた時期と合致します。ですから、 > 制空権の帰趨が戦闘の勝敗を決定することが明白である以上、制空権確保の必要性は重大である。日本海軍では戦闘機隊が主に艦隊の上空直衛などの防御的作戦に使用さけているが、これを改め、空母の戦闘機隊と攻撃機隊の半数を単座急降下爆撃機に変えてはどうか。 この部分の趣旨は、防御的作戦でしか使用できない戦闘機はいらないから、攻撃兵力の単座急降下爆撃機を装備して、敵機発進源を攻撃覆滅して制空権を確保しよう、ということではないでしょうか? この構想で実現されるのは、まさしく「艦爆兼戦闘機」ですから純粋な戦闘機には「若干性能は劣る」わけです。史実の日華事変を考えると、このような航空機が使用されていたら、海軍航空隊の歴史は悲惨なものになっていたのではないでしょうか? 搭乗員育成に関しては、操縦員は半数ですむかもしれませんが、育成期間は長期になってしまいます。対戦闘機戦闘と対艦爆撃の両方に習熟しなければなりません。爆撃緒元の計算(複座の艦爆では爆撃緒元の計算は偵察員の仕事)も一人でしなければならず、命中率はかなり悪いものになるでしょう。 当時の航空機性能では、艦爆兼戦闘機を製造してもモノになる確率は低い。構想を実現しても、その後の戦訓で純粋な戦闘機を製造しなければならない。いたずらに航空施策を混乱させるだけに終わるでしょう。 |
艦爆操縦士は空戦訓練受けるんですよ。 実態としてはそんなに艦爆搭乗員の訓練期間は延びないのではないかな。 |
> 艦爆操縦士は空戦訓練受けるんですよ。 そうでしたね。すっかり失念しておりました(^^; > 実態としてはそんなに艦爆搭乗員の訓練期間は延びないのではないかな。 そうですね。戦闘機をやめて艦爆だけにするのが構想ですから、艦爆搭乗員の訓練期間は延びませんね。失礼しましたm(_ _)m |
後半の主張について。 > 現実に、太平洋戦争の展開は、戦闘機と搭乗員はいくらあっても足りない状況でしたし、艦爆の低速から、零戦が代用艦爆として使われたりしました。もし艦爆兼戦闘機が存在したなら、こうした問題も少しは軽減されますし、米国流の「急降下を使った戦闘機戦術」も発達したのではないかと。 零戦を代用艦爆として運用したのは、改装空母で彗星が運用できなかったからであって、艦爆が低速であったからではないでしょう。爆装した零戦も艦爆も、速度に大差があったとは思えません。 「米国流の急降下を使った戦闘機戦術」は一撃離脱戦法だと思いますが、本当に日本では発達しなかったのでしょうか?自分よりも劣位にいる目標機に対して、日本の搭乗員は格闘戦を挑んでいたのでしょうか?戦記をみても、自分の後方についた、または第一撃をかわした(かわされた)敵機とは格闘戦になっていますが、奇襲を実施できた場合はそれこそ「後方優位からの降下射撃」を実施しているように思うのですが。 |
> 制空権の帰趨が戦闘の勝敗を決定することが明白である以上、制空権確保の必要性は重大である。日本海軍では戦闘機隊が主に艦隊の上空直衛などの防御的作戦に使用さけているが、これを改め、空母の戦闘機隊と攻撃機隊の半数を単座急降下爆撃機に変えてはどうか。 > 単座なら航続距離を伸ばせる上に、若干性能は劣るが単座戦闘機としても使用できる。航法上の問題は偵察機を同行させればいいし、偵察機が同行できなかったとしても、捜索列を展張すれば、単座でもある程度の航法は可能である。搭乗員育成も半数で済む利点がある。 > > 素人考えですが、源田構想には多くの利点があるように思います。 > 現実に、太平洋戦争の展開は、戦闘機と搭乗員はいくらあっても足りない状況でしたし、艦爆の低速から、零戦が代用艦爆として使われたりしました。もし艦爆兼戦闘機が存在したなら、こうした問題も少しは軽減されますし、米国流の「急降下を使った戦闘機戦術」も発達したのではないかと。 出来上がるのは爆撃機よりは高速だが戦闘機よりは鈍足な戦闘爆撃機です。 戦闘機が迎撃できないくらい高速な爆撃機は実際に試みられてはいますが、これに戦闘機並みの火力を持たせれば単座化したとしても機銃と弾薬を余計に積む分だけ機体が重くなります。 米軍はWW2末期あたりから爆撃機と攻撃機を同一単座機に統合していますが戦闘機の役割までは統合していません。戦闘爆撃機や爆撃機には空戦能力はありますが、第一線の本職である純粋な戦闘機には及ばず、積極的に相手取れるのは敵の爆撃機や攻撃機ぐらいです。 制空権は敵の戦闘機を無力化しなければ確保できませんから、戦闘爆撃機が制空権の確保にどれだけ貢献できるかは少々疑問です。 敵攻撃機の迎撃に戦闘爆撃機が当たれるのであれば、戦闘機は敵戦闘機の駆逐に専念でき、味方上空の制空権の一時的な確保には大きく貢献できると思われます。しかし、それをすると今度は敵を攻撃する機体が減少し、結果的に敵航空基地や機動部隊に打撃を加えることが困難になります。 敵の航空戦力のプラットフォームが無傷であれば、敵航空機をどれだけ叩いても簡単に回復されてしまうし、作戦域の制空権を確保するという目的からすれば総合的な効率が低下する可能性が高いでしょう。 > 山本五十六提督は、源田構想に対し「一応そのように考えられるが、搭乗員の安全性を考えるなら、海軍当局としては二座となると思う」という趣旨の返答をしたようです。 シュトルモビクも初期は単座でしたが、結局複座になっています。 制空戦闘機で迎撃機を確実に掃討することも、爆装した状態でも回避運動ができるような十分な機動力を得ることもできないのであれば、防御火力を確保する必要はなくならないでしょう。 > もし、昭和8年の時点でこの構想を実現に移したなら、終戦までの課程でどのような問題が起こったでしょうか。 昭和8年の時点で実現するにはエンジンの性能が貧弱すぎるのではありませんか? 使い物にならない機体を無理に配備しても「ダメダメじゃん」「餅は餅屋」という戦訓しか得られないと思います。 |
>おうるさま > 出来上がるのは爆撃機よりは高速だが戦闘機よりは鈍足な戦闘爆撃機です。 戦闘機が迎撃できないくらい高速な爆撃機は実際に試みられてはいますが、これに戦闘機並みの火力を持たせれば単座化したとしても機銃と弾薬を余計に積む分だけ機体が重くなります。 73式さまへのレスで書きましたが、要求仕様次第ではないかと。 例えば彗星は零戦より高速です(九九艦爆は失敗機です)。彗星を戦闘爆撃機として構想したなら、速度で零戦に勝り、運動性と火力でやや劣り、航続力は大差ない戦闘機になるように思います。偵察席と旋回機銃がなくなる分、重量は軽減されますし、空力も向上するでしょう。胴体機銃が多少大型化しても、相殺できる程度ではないかと。 流星は20ミリを積んでいますが、艦爆艦攻として必要な性能は確保していますが。 > 米軍はWW2末期あたりから爆撃機と攻撃機を同一単座機に統合していますが戦闘機の役割までは統合していません。戦闘爆撃機や爆撃機には空戦能力はありますが、第一線の本職である純粋な戦闘機には及ばず、積極的に相手取れるのは敵の爆撃機や攻撃機ぐらいです。 九九艦爆も彗星もスカイレイダーも敵戦闘機を撃墜したことがありますし、機材の相対的な性能差次第ではないでしょうか。戦闘爆撃機は戦闘機には及ばないかもしれませんが、戦闘機が脅威を感じる存在であると思います。 例えばF/A-18はF-14には及ばないでしょうが、F-14が無視できる存在でもないでしょう(実際にF-14はF/A-18E/Fに更新されて退役しましたし、F8FはF4Uを飛行性能で上回りますが、爆撃能力を買われて生き残っています)。 > 制空権は敵の戦闘機を無力化しなければ確保できませんから、戦闘爆撃機が制空権の確保にどれだけ貢献できるかは少々疑問です。 敵攻撃機の迎撃に戦闘爆撃機が当たれるのであれば、戦闘機は敵戦闘機の駆逐に専念でき、味方上空の制空権の一時的な確保には大きく貢献できると思われます。しかし、それをすると今度は敵を攻撃する機体が減少し、結果的に敵航空基地や機動部隊に打撃を加えることが困難になります。 敵の航空戦力のプラットフォームが無傷であれば、敵航空機をどれだけ叩いても簡単に回復されてしまうし、作戦域の制空権を確保するという目的からすれば総合的な効率が低下する可能性が高いでしょう。 史実で、零戦が艦爆代わりに高速緩降下爆撃となっていますが……。 艦爆も高速と投弾後の空戦能力がなければ生き残れない証明だと思います。 > 昭和8年の時点で実現するにはエンジンの性能が貧弱すぎるのではありませんか? 使い物にならない機体を無理に配備しても「ダメダメじゃん」「餅は餅屋」という戦訓しか得られないと思います。 昭和8年から「実現に向けて動き出す」という話なのですが。また彗星三三型(563キロ)と零戦五四型(572キロ)は完全に同一エンジン機ですが、速度はほぼ同等です。 要求性能次第なのではないでしょうか。 |
おうるさまにお礼を書き損ねました。申し訳ありません。ご教授ありがとうございます。 |
> 例えば彗星は零戦より高速です(九九艦爆は失敗機です)。彗星を戦闘爆撃機として構想したなら、速度で零戦に勝り、運動性と火力でやや劣り、航続力は大差ない戦闘機になるように思います。偵察席と旋回機銃がなくなる分、重量は軽減されますし、空力も向上するでしょう。胴体機銃が多少大型化しても、相殺できる程度ではないかと。 > 流星は20ミリを積んでいますが、艦爆艦攻として必要な性能は確保していますが。 火力さえ積めば空戦能力を有したことにはなりません。 「戦闘機に護衛してもらわなければならない戦闘機」といわれるHe110だって強武装と高速力を誇っています。 > 九九艦爆も彗星もスカイレイダーも敵戦闘機を撃墜したことがありますし、機材の相対的な性能差次第ではないでしょうか。戦闘爆撃機は戦闘機には及ばないかもしれませんが、戦闘機が脅威を感じる存在であると思います。 それらの事例はそれほど頻繁に起こりえたものでしょうか?九九艦爆や彗星やスカイレイダーに乗った撃墜王がいたわけでもありませんし、戦闘機を撃墜した実績のある爆撃機搭乗員にしても常日頃から積極的に戦闘機に挑みかかっているわけでも、対戦闘機戦闘を主任務としていたわけでもありません。 > 例えばF/A-18はF-14には及ばないでしょうが、F-14が無視できる存在でもないでしょう(実際にF-14はF/A-18E/Fに更新されて退役しましたし、F8FはF4Uを飛行性能で上回りますが、爆撃能力を買われて生き残っています)。 どちらの例も開発時期が全然違います。エンジンの換装等の改良によって発展する余地の無い機体ならば新しい設計の機体に取って代わられてしまうのは当然の結果です。それらの機体を同列で語ること自体が間違っています。それぞれの機体の設計時期を調べ、その時期に実用化されていたエンジンの性能を比較して下さい。 > 史実で、零戦が艦爆代わりに高速緩降下爆撃となっていますが……。 戦闘機が爆撃能力を有するのはどの国でも同じです(むしろ爆撃能力の全く無い戦闘機なんてほとんど無いくらい)。 しかし、それらの戦闘機は爆撃を主任務とはしていませんし、あくまでも爆撃機(専門部隊)の戦力(または爆撃機の能力)の不足を補うための応急的な任務です。 > 艦爆も高速と投弾後の空戦能力がなければ生き残れない証明だと思います。 一定程度の空戦能力は爆撃機には要求されるものです。 彗星その他WW2当時に存在した高速爆撃機が何故高速であることを求められたのかを考えてみてください。決して戦闘機と空戦して勝利するためではありません。 > 昭和8年から「実現に向けて動き出す」という話なのですが。また彗星三三型(563キロ)と零戦五四型(572キロ)は完全に同一エンジン機ですが、速度はほぼ同等です。 > 要求性能次第なのではないでしょうか。 「動き出す」ということは実際に機体を研究してみることになります。昭和8年で戦闘爆撃機を研究してみるということは500〜800馬力程度のエンジンで単発単座の戦闘爆撃機を研究してみるということです。 まだ実現するかどうかわからない(将来的には実現するだろうけど、いつ実現するのかわからないし、実現したとしてどのような形状・特性を持つか分からない)ような超1000馬力級の高出力エンジンを前提に機体を研究することはできません。 航空機の性能・能力はエンジンに依存するものです。どれほど設計技術が優れていてもエンジン出力以上の性能を機体に持たせることは出来ません。あとはエンジンが供給してくれる出力をどう割り振るかというバランスの問題になります。 機体強度、防弾性能、積載量、乗員数、火力、航続力、それらのどれかを伸ばせば必ずどれかが犠牲になります。すべてにバランスよく割り振った戦闘爆撃機は、爆撃専門で割り切った設計の爆撃機に爆撃能力で劣り、空戦専門で割り切った設計の戦闘機に空戦能力で劣ってしまうものなのです。特に、エンジンの能力がプアであればその傾向はより顕著になります。 爆撃能力を有しながら戦闘機を上回る高速力を持った彗星が何の問題も無く運用できるような機体でしたか?整備性・生産性・信頼性を除いたとしても艦爆としての運用上大きな問題を抱えた機体でした。その問題が九九艦爆の引退を引き伸ばし、爆装零戦を生み出す一因にもなっています。 それに空戦能力は最高速度だけで優劣が決するようなものではありませんし、艦爆の例に漏れず一定程度の空戦能力を要求されていたとはいえ、専門の戦闘機に課せられた空戦性能の要求と同じ要求をされていたわけでもありません。 WW2末期あたりから戦闘機としても爆撃機としても非常に優れた性能を発揮する戦闘爆撃機が登場するようになります。これはエンジン出力を推力へと変換するプロペラが持つ空力的限界にエンジン性能が届いてしまっているから生じた余裕ゆえに成し得たものであって、エンジンが2000馬力を発揮するどころか1000馬力にも届いていないWW2開戦以前の段階では成立しないものです。 成立し得ないものを無理に成立させようとしても「ダメダメじゃん」という評価しかもらえないのです。 |
> 火力さえ積めば空戦能力を有したことにはなりません。 > 「戦闘機に護衛してもらわなければならない戦闘機」といわれるHe110だって強武装と高速力を誇っています。 例えばF4F-4の翼面加重は149、F6F-3は181です。154の彗星と大差ないか、むしろ上回っています。少なくとも単座で、より戦闘機的設計を考慮した彗星のような機体が存在すれば、F4Fには脅威でしょうし、もちろんSBDとか、TBDにとっても脅威でしょう。 F6Fとて、鎧袖一触と片づけられるような性能でもないと思いますが。翼面加重だけが運動性の全てではないでしょうが、彗星そのものではなく、単座でより戦闘機に近い設計になるであろう、戦闘爆撃機が、まったく対抗できないというお考えには賛同しかねます。 > それらの事例はそれほど頻繁に起こりえたものでしょうか?九九艦爆や彗星やスカイレイダーに乗った撃墜王がいたわけでもありませんし、戦闘機を撃墜した実績のある爆撃機搭乗員にしても常日頃から積極的に戦闘機に挑みかかっているわけでも、対戦闘機戦闘を主任務としていたわけでもありません。 九九艦爆のエースがいないのは、艦爆であり、戦闘爆撃機ではないのですから、当然のことでしょう。揚げられている事例は艦爆の場合ですよね。 戦闘爆撃機は艦爆ではありません。訓練方法も艦爆とは異ってくるように思います(艦爆搭乗員も空戦訓練を受けていますが)。 > どちらの例も開発時期が全然違います。エンジンの換装等の改良によって発展する余地の無い機体ならば新しい設計の機体に取って代わられてしまうのは当然の結果です。それらの機体を同列で語ること自体が間違っています。それぞれの機体の設計時期を調べ、その時期に実用化されていたエンジンの性能を比較して下さい。 F8FとF4Uなら、F8Fのほうが後の機体ですが、F4Uの汎用性が上ということで、F8Fの退役のほうが早かったという話なのですが、史実に反しているのでしょうか。この場合、F4Uが搭載量1.8トンを誇る戦闘爆撃機であり、F8Fはより戦闘機に近い機体です。 F-14とF/A-18の関係も、同列に語るのは間違いとも言い切れないでしょう。自分と同世代の敵としか戦わないというルールはないわけですから。空戦能力のない機体にとって見れば、どちらであろうと重大な脅威になるのではないかと思いますが。 少なくとも、戦闘爆撃機の空戦能力は、米軍の艦爆を圧倒すると思います。 > 戦闘機が爆撃能力を有するのはどの国でも同じです(むしろ爆撃能力の全く無い戦闘機なんてほとんど無いくらい)。 > しかし、それらの戦闘機は爆撃を主任務とはしていませんし、あくまでも爆撃機(専門部隊)の戦力(または爆撃機の能力)の不足を補うための応急的な任務です。 それはドクトリンの問題です(源田構想もドクトリンの一種でしょう)。 例えば零戦六二型は爆撃兵装が標準化された九九艦爆の代用機です。それはあくまでも、と言い切れるような絶対的な共通認識なのでしょうか。 > 一定程度の空戦能力は爆撃機には要求されるものです。 > 彗星その他WW2当時に存在した高速爆撃機が何故高速であることを求められたのかを考えてみてください。決して戦闘機と空戦して勝利するためではありません。 前にも書きましたが、源田構想とは母艦の防空や、投弾後に追撃してくる敵戦闘機との空戦も、戦闘爆撃機の任務として想定している構想です。 このスレッドの議題は「実現したら、どうなるか」ということの考察ですから、戦闘爆撃機と艦爆が同列の運用構想に基づいて使用されるという想定は、違うのではないかと。 > 「動き出す」ということは実際に機体を研究してみることになります。昭和8年で戦闘爆撃機を研究してみるということは500〜800馬力程度のエンジンで単発単座の戦闘爆撃機を研究してみるということです。 > まだ実現するかどうかわからない(将来的には実現するだろうけど、いつ実現するのかわからないし、実現したとしてどのような形状・特性を持つか分からない)ような超1000馬力級の高出力エンジンを前提に機体を研究することはできません。 > 機体強度、防弾性能、積載量、乗員数、火力、航続力、それらのどれかを伸ばせば必ずどれかが犠牲になります。すべてにバランスよく割り振った戦闘爆撃機は、爆撃専門で割り切った設計の爆撃機に爆撃能力で劣り、空戦専門で割り切った設計の戦闘機に空戦能力で劣ってしまうものなのです。特に、エンジンの能力がプアであればその傾向はより顕著になります。 「1000馬力ないと実現できない」という前提が、私にはわかりません。 具体的な事例をご教授頂ければと思います。 戦闘機であれ、戦闘爆撃機であれ、いつの時代も使用できるエンジンは大差ないのですから、設計条件も大差ないのではないかと。ですから性能差も相対的に大差ないと思います。 現実に同一エンジンの艦戦・艦爆で、大差ない速度・航続力の機体が実現できているのですから、時代が前倒しになったなら実現できないと言い切れるものでしょうか(そもそも飛行甲板を破壊して、発着艦能力を奪うだけなら、二五番より爆弾が軽くてもできるような。爆弾を軽くすればいいのではありませんか?) そして、例えば九九艦爆と零戦の航続力要求は同じでしょうか。 艦上戦闘爆撃機が実現したとしても、それに九九艦爆並みの航続力しか求めないのであれば、零戦よりもそのリソースでは有利になります。 爆撃能力の劣るという指摘は納得できますが、では史実において、日本艦爆が記録した命中率は、決定的なものだったのでしょうか。また、高速緩降下爆撃法など、戦闘方法の研究でにより、単座での命中率向上を求めることは不可能なのでしょうか。 どちらにせよ、二五番では中型以上の空母も戦艦も沈まないのです(五〇番であっても変わらないという話がAns.Qにありましたが)。「実現した場合」を想定してみるに、艦爆が多少命中率を低下させたとしても、空戦能力のほうが損失減少に役立ち、結果的に戦力向上を果たせたように思います(日本艦爆・艦攻ともF4Fに結構食われているわけで)。 > 爆撃能力を有しながら戦闘機を上回る高速力を持った彗星が何の問題も無く運用できるような機体でしたか?整備性・生産性・信頼性を除いたとしても艦爆としての運用上大きな問題を抱えた機体でした。その問題が九九艦爆の引退を引き伸ばし、爆装零戦を生み出す一因にもなっています。 その問題がないとは言えませんが、彗星問題の根本はミッドウェーの敗戦ではないかと。ミッドウェーで大型空母が全滅しなければ、赤城・加賀でも彗星の運用は制限なく可能ですし、蒼龍・飛龍でもロケット発艦を併用すれば可能でしょう。 そして同海戦で試作機が失われたことも、彗星完成の妨げになったと記憶しておりますが。 > それに空戦能力は最高速度だけで優劣が決するようなものではありませんし、艦爆の例に漏れず一定程度の空戦能力を要求されていたとはいえ、専門の戦闘機に課せられた空戦性能の要求と同じ要求をされていたわけでもありません。 例えば零戦と雷電に要求された空戦性能は異なります。雷電は零戦に旋回性能で劣りますが、雷電は零戦に絶対勝てない機体ではないでしょう。 旋回性能で劣るなら、速度と降下能力で対抗する機体にすればいいのではないかと。零戦二一型の急降下制限速度は629キロ。零戦に近い速度を発揮するはずの急降下可能な戦闘爆撃機は、これを確実に上回ると思うのですが。双発復座のMe110や月光ほど、単発単座機である戦闘爆撃機は鈍重になるのでしょうか。 また、爆弾投下後の零戦戦闘爆撃機は、爆弾投下後に「戦闘機と同じ空戦能力」を持っていると思うのですが。こうした機体がなぜ不可能なのでしょうか。 |
> 例えばF4F-4の翼面加重は149、F6F-3は181です。154の彗星と大差ないか、むしろ上回っています。少なくとも単座で、より戦闘機的設計を考慮した彗星のような機体が存在すれば、F4Fには脅威でしょうし、もちろんSBDとか、TBDにとっても脅威でしょう。 出撃時から空戦のみを睨んで爆装せずに出撃すれば脅威になりうるでしょう。 > 九九艦爆のエースがいないのは、艦爆であり、戦闘爆撃機ではないのですから、当然のことでしょう。揚げられている事例は艦爆の場合ですよね。 つまり一種例外的な成功例なのです。 たまたま成し得た成功を恒常的に実現すべき任務の新たな可能性と安易に結びつけるのはどうかと思います。 > F8FとF4Uなら、F8Fのほうが後の機体ですが、F4Uの汎用性が上ということで、F8Fの退役のほうが早かったという話なのですが、史実に反しているのでしょうか。この場合、F4Uが搭載量1.8トンを誇る戦闘爆撃機であり、F8Fはより戦闘機に近い機体です。 F4Uは爆撃機として生き残ったのであって戦闘機として現役でい続けたわけではありません。F8Fは戦闘機として純化させた機体であり、戦闘機以外の活路がない以上、戦闘機として第一線で戦えなくなれば現役を退かざるを得ません。爆撃機としてなら、目的地まで爆弾を運ぶことさえできれば任務を達成できるのですから多少旧式化しても第一線で空戦を戦えなくても現役にとどまれます。 > F-14とF/A-18の関係も、同列に語るのは間違いとも言い切れないでしょう。自分と同世代の敵としか戦わないというルールはないわけですから。空戦能力のない機体にとって見れば、どちらであろうと重大な脅威になるのではないかと思いますが。 世代が違う敵とでも戦場で会えば戦わねばならないのは当然のことです。そんなことは問題にしてません。開発時期が違えば機体の開発、性格に決定的な影響が及ぶものであり、それを無視して同列で語ることには無理があるといっているのです。 F-14が何故重量増を看過してまでVG翼を装備して戦闘機として純化しなければならなかったか、F/A-18が十分な搭載能力を維持しながら馬鹿でかい特徴的なストレーキを設けて空中機動力を向上させることができるようになったかを考えてみてください。 両者の世代の違いがそれぞれの開発にどんな影響を与えたかを考えれば「同列で語るのは間違いではない」などとはいえないはずです。 > 少なくとも、戦闘爆撃機の空戦能力は、米軍の艦爆を圧倒すると思います。 戦闘爆撃機は攻撃的に用いてこそ活きるものです。艦爆と空戦させるということは防御的に用いることであり、それが無駄とは言いませんが本来あるべき艦上戦闘爆撃機の使い方ではないでしょう。少なくとも源田案はそのような使い方を趣旨とはしてないように思われます。 > 例えば零戦六二型は爆撃兵装が標準化された九九艦爆の代用機です。それはあくまでも、と言い切れるような絶対的な共通認識なのでしょうか。 ご自身が「代用機」と言って居るように、「あくまでも」だと思います。 > 前にも書きましたが、源田構想とは母艦の防空や、投弾後に追撃してくる敵戦闘機との空戦も、戦闘爆撃機の任務として想定している構想です。 > このスレッドの議題は「実現したら、どうなるか」ということの考察ですから、戦闘爆撃機と艦爆が同列の運用構想に基づいて使用されるという想定は、違うのではないかと。 投弾後に追撃してくる敵戦闘機との空戦は「任務」として積極的に行うことは非現実的だと考えます。理由は後記します。 戦闘爆撃機とは爆撃機としての任務を主として初めて成立するものです。特に艦上戦闘爆撃機は先ず敵空母を撃破することで制空権を奪取するものです。つまり、まずは既存の艦上爆撃機と同列の任務をこなした上で、副次的に空戦能力を発揮するものであって、艦上爆撃機と同列の任務に就かせないのであれば存在意義がないのです。 > 「1000馬力ないと実現できない」という前提が、私にはわかりません。 1000馬力未満のエンジンでどんな単発単座戦闘爆撃機が実現できるかを考えてみてください。「ダメダメじゃん」な結果しか出てこないと思います。 > 戦闘機であれ、戦闘爆撃機であれ、いつの時代も使用できるエンジンは大差ないのですから、設計条件も大差ないのではないかと。ですから性能差も相対的に大差ないと思います。 戦争末期のような3000馬力級の高出力エンジンがあれば戦闘機と遜色ない戦闘爆撃機を実現できるでしょう。 繰り返しになりますが航空機の機動力はエンジン出力(推力)に依存します。800馬力のエンジンを持った機体にとっての250kg爆弾と3000馬力のエンジンを持った機体にとっての500kg爆弾を比較した場合、どちらが「軽い」でしょうか? まず、敵艦に十分な威力を発揮できる爆弾を搭載せねばならず、爆弾の重量は必然的に250kgとか500kgといったある程度重たいものになります。 重たい爆弾を運ぶために必要な出力を差し引いた分が、戦闘機としての性能に割り振られます。 話を単純化して爆弾を運ぶのに200馬力必要だとすると、800馬力エンジン機であれば600馬力分の空戦能力を持たせることが出来、3000馬力機であれば2800馬力分の空戦能力を持たせることができるわけです。エンジンが800馬力ならば戦闘機に25%劣り、3000馬力であれば戦闘機に7%劣るのが戦闘爆撃機です。「エンジンの出力がプアなほど傾向は顕著になる」と言いましたが、そういうことなのです。 そしてエンジンは既存の(あるいは実現見込みのある)ラインナップから選ばなければなりません。昭和8年はもちろん、WW2半ばあたりまでは高村様のイメージするような戦闘爆撃機を実現させることのできる単発機用高出力エンジンは実用化されないのです。 > 現実に同一エンジンの艦戦・艦爆で、大差ない速度・航続力の機体が実現できているのですから、時代が前倒しになったなら実現できないと言い切れるものでしょうか(そもそも飛行甲板を破壊して、発着艦能力を奪うだけなら、二五番より爆弾が軽くてもできるような。爆弾を軽くすればいいのではありませんか?) 敵航空戦力のプラットフォームである航空母艦を撃破することで制空権を確保することが艦爆・艦攻に求められています。 容易に所在位置をつかめない洋上の機動部隊は反復攻撃を期待できるような攻撃目標では有りません。一度の会敵で仕留めるつもりで攻撃せねばなりません。最初の攻撃で沈めてしまわなければ、味方が危険に晒されてしまいます。 わざわざ爆弾を小型化して味方の攻撃力を減少させ、結果的に敵空母に致命傷を与えることが出来なくしてしまうのは本末転倒です。 > そして、例えば九九艦爆と零戦の航続力要求は同じでしょうか。 > 艦上戦闘爆撃機が実現したとしても、それに九九艦爆並みの航続力しか求めないのであれば、零戦よりもそのリソースでは有利になります。 > 爆撃能力の劣るという指摘は納得できますが、では史実において、日本艦爆が記録した命中率は、決定的なものだったのでしょうか。また、高速緩降下爆撃法など、戦闘方法の研究でにより、単座での命中率向上を求めることは不可能なのでしょうか。 命中率というものは目標に対して爆弾を投下することで初めてあがるものです。目標を発見できなければ爆弾を目標に向けて投下することはできませんし、爆弾を目標に向けて投下できなければ命中率以前の問題ということになります。徒に航続距離だけあっても敵艦にたどり着けるとは限りませんし、敵艦隊上空の修羅場の混乱から離脱して母艦の方向を見失わずに帰ることも考えねばなりません。 目的地上空に達しても爆撃諸元を算出せねば爆撃しても命中は期待できません。 爆撃照準機の自動化やら誘導装置云々という話は昭和8年ではまだ雲を掴むような話でしょう。 > その問題がないとは言えませんが、彗星問題の根本はミッドウェーの敗戦ではないかと。ミッドウェーで大型空母が全滅しなければ、赤城・加賀でも彗星の運用は制限なく可能ですし、蒼龍・飛龍でもロケット発艦を併用すれば可能でしょう。 > そして同海戦で試作機が失われたことも、彗星完成の妨げになったと記憶しておりますが。 発言の趣旨が誤って伝わってしまっているようです。私の不手際であれば謝罪します。 私の発言は、彗星が零戦匹敵する可能性を主張されているので彗星を一例として挙げたものです。彗星を挙げることで説明したかったのは、彗星が「何かを犠牲にすることで他の性能を実現している」機体であり、戦闘機と同じ性能に爆装能力まで付加させた機体を実現しようとすれば、彗星と同様に必ず無理が出るということです。そして彗星の場合は、出てしまった「無理」が他機種の運用にまで影響を及ぼすほど大きなものだったということです。 これは特に彗星が悪かったというものではなく、彗星のような性能を要求されれば当然起こる事なのです。 > 例えば零戦と雷電に要求された空戦性能は異なります。雷電は零戦に旋回性能で劣りますが、雷電は零戦に絶対勝てない機体ではないでしょう。 > 旋回性能で劣るなら、速度と降下能力で対抗する機体にすればいいのではないかと。零戦二一型の急降下制限速度は629キロ。零戦に近い速度を発揮するはずの急降下可能な戦闘爆撃機は、これを確実に上回ると思うのですが。双発復座のMe110や月光ほど、単発単座機である戦闘爆撃機は鈍重になるのでしょうか。 > また、爆弾投下後の零戦戦闘爆撃機は、爆弾投下後に「戦闘機と同じ空戦能力」を持っていると思うのですが。こうした機体がなぜ不可能なのでしょうか。 空戦しようとすれば旋回しなければなりません(一撃離脱に徹したとしても)。航空機は大気を翼で受けて、気流のベクトルを曲げることで旋回しますが、その間空気抵抗が増大するため機速は低下します。旋回しようとすればするほど空気抵抗は大きくなり、それだけ速度が低下します。 速度が低下すれば航空機は機動力が低下します。機動力を回復するには速度を回復せねばならず、速度を回復するには降下することで位置エネルギー(高度)を運動エネルギー(速度)に変えるしかありません。十分な推力があるならば強引に加速することもできるでしょうが、爆撃能力も対空攻撃用の火力も航続力も備えた上に戦闘機を振り切れるだけの推力(加速力)まで期待できるような機体など作れるものではありません。 戦闘機並みの火力、戦闘機並みの最高速度、爆撃機として十分な搭載量と航続力と機体強度を保持させた機体は残りの要素で戦闘機に劣ることになります。上昇力と旋回性能です。旋回性能も上昇性能も翼で受けた大気のベクトルを変えることで成り立つ性能で、どちらかを切り離したりはできないものです。旋回性能を低くして上昇力を維持するとか、上昇力を犠牲にして旋回性能を向上させるということはまずできません。 水平爆撃をしたのならともかく、急降下/緩降下爆撃を行った後の爆撃機には運動エネルギーに変換できるだけの位置エネルギーがありません。投弾した時点で敵迎撃機は頭上にいるものと考えてよいでしょう(敵迎撃戦闘機は味方艦隊の防空火力担当空域まで追っては来ませんから)。 下手に旋回すれば機速が落ちて追撃してくる敵戦闘機に確実に追いつかれます。上昇力の貧弱な機体で、おまけに被られた状態では不用意に上昇することもできません(頭上で待ち構えてますから)。そのまま高速で離脱するしかありません(しかし低空では最大速度の制限があるのでこれも・・・)。その状況でいったい誰が積極的に空戦を挑もうというのでしょうか? 戦闘爆撃機が投弾後に空戦・・・というのは追撃してきた敵戦闘機の攻撃から生き残るための自衛手段であって、投弾後に制空任務に就くというようなものではありません。 上で「爆装せずに出撃すれば」といったのはそういうことです。 |
ご教授ありがとうございます。 > つまり一種例外的な成功例なのです。 たまたま成し得た成功を恒常的に実現すべき任務の新たな可能性と安易に結びつけるのはどうかと思います。 源田氏は少なくとも「恒常的に実現すべき任務」として、戦闘機に近い空戦重視の単座艦爆を主張されていたようですが。 それが妥当でなかったというご指摘については、そうした任務に向いた機材と訓練方法が実現できるか否か、ではないかと思います。 > F4Uは爆撃機として生き残ったのであって戦闘機として現役でい続けたわけではありません。F8Fは戦闘機として純化させた機体であり、戦闘機以外の活路がない以上、戦闘機として第一線で戦えなくなれば現役を退かざるを得ません。爆撃機としてなら、目的地まで爆弾を運ぶことさえできれば任務を達成できるのですから多少旧式化しても第一線で空戦を戦えなくても現役にとどまれます。 実際、F4Uは朝鮮で何度も空戦に巻き込まれましたし、その空戦能力を活かしてある程度の自衛戦闘を遂行しています。もしF4Uではなく、純粋な艦爆や艦攻だったなら、より被害は大きなものになったのではないでしょうか。 空戦能力を評価していないなら、爆撃専門のより爆撃能力の高い機体を投入すればいいわけですが、例えば全部スカイレイダーでいいじゃん、という話にはなっていないようですが。 > 両者の世代の違いがそれぞれの開発にどんな影響を与えたかを考えれば「同列で語るのは間違いではない」などとはいえないはずです。 ご指摘は理解しますが、私が言いたいことは「米軍機から見て、遭遇した敵機が九九艦爆であるのと、戦闘爆撃機であることでは、脅威度・対応が異なるのではありませんか」ということです。九九艦爆は逃げてくれるでしょうが、戦闘爆撃機の場合は爆弾を捨てて立ち向かってくる可能性がありますし、場合によっては味方攻撃機の脅威になりえるのですから。 開発の世代や開発思想がどうこうというのは、現実の戦場で、しかも敵側にとっては何の関係もないことだと思います。 > 戦闘爆撃機は攻撃的に用いてこそ活きるものです。艦爆と空戦させるということは防御的に用いることであり、それが無駄とは言いませんが本来あるべき艦上戦闘爆撃機の使い方ではないでしょう。少なくとも源田案はそのような使い方を趣旨とはしてないように思われます。 源田氏は「局面によっては防空にも使える」ことを明記されています。 力点が、空母搭載機の敵艦隊に対する攻撃力増強、特に空母に対する先制攻撃にあったとしても、艦爆と戦闘爆撃機に期待されるものが同じではないと思いますが。 戦闘爆撃機は艦爆に対して生存率とコスト面(特に人材育成)で有利です。命中率の低下は、投入機数を増やすこと(生き残る味方機が多い、そもそも同じ予算で多くの機数を投入できる)で補えると思います。 > 1000馬力未満のエンジンでどんな単発単座戦闘爆撃機が実現できるかを考えてみてください。「ダメダメじゃん」な結果しか出てこないと思います。 > 敵航空戦力のプラットフォームである航空母艦を撃破することで制空権を確保することが艦爆・艦攻に求められています。 容易に所在位置をつかめない洋上の機動部隊は反復攻撃を期待できるような攻撃目標では有りません。一度の会敵で仕留めるつもりで攻撃せねばなりません。最初の攻撃で沈めてしまわなければ、味方が危険に晒されてしまいます。 わざわざ爆弾を小型化して味方の攻撃力を減少させ、結果的に敵空母に致命傷を与えることが出来なくしてしまうのは本末転倒です。 エンジンの出力についてのご教授、ありがとうございます。 ただ、前にも書きましたが、良質なエンジンに恵まれるまでは、爆弾を軽くすればいいのではないかと。仮に史実の半分の125キロとしたとしても(零戦の60キロ×2と同じですね)、8インチ砲弾と同じ重量です。米空母の飛行甲板に風穴を空けて、無力化するには充分ではないのですか? どうせ、爆弾が250キロや500キロであっても米空母は撃沈できず、空母撃沈が必要なら艦攻か水上艦に沈めてもらうないのですから。 逆に、空母ハーミスや英重巡2隻に与えたような、命中弾多数の状況であれば、爆弾が125キロでも致命傷になったでしょう。 60キロ爆弾2発程度の搭載余力であれば、九五式艦戦でも実現しているのですが。 > 命中率というものは目標に対して爆弾を投下することで初めてあがるものです。目標を発見できなければ爆弾を目標に向けて投下することはできませんし、爆弾を目標に向けて投下できなければ命中率以前の問題ということになります。徒に航続距離だけあっても敵艦にたどり着けるとは限りませんし、敵艦隊上空の修羅場の混乱から離脱して母艦の方向を見失わずに帰ることも考えねばなりません。 目的地上空に達しても爆撃諸元を算出せねば爆撃しても命中は期待できません。 爆撃照準機の自動化やら誘導装置云々という話は昭和8年ではまだ雲を掴むような話でしょう。 味方艦上偵察機(攻撃機かもしれませんが)が誘導して、敵空母を空襲するという構想なのに、なぜ目標を発見できないという話になるのでしょうか。 味方母艦を見失うと言われますが、艦戦・艦爆・艦攻だとしても、艦戦は艦爆や艦攻の航法支援がなければ、味方母艦に帰り着けるか怪しいのです。艦戦・戦爆・艦攻になったとして、それが無理というなら、瑞鳳などの「搭載機は艦戦多数と艦攻だけ」空母は使用不能になるのではないかと(また、おうるさまの見解が全面的に妥当だというなら、なぜ十試単座艦爆構想や、彗星の単座型が存在するのでしょうか)。 艦上戦闘爆撃機単体で論じられるのは、違うのではないかと感じます。 また、昭和8年では無理と言われますが「源田構想が実現した場合」であって、「八試で単座艦爆を作った場合」ではありません。 将来的に発動機の出力が向上することは、昭和8年の時点でも容易に想像できますし「大出力発動機の見込みが付いた時点で実現すべき構想」として研究・試作を促進し、十三試辺りでまともな機体が実現するという流れも、それほどおかしくはないと思うのですが。 現実に七試の試作機はほとんど失敗していますが、それでも九試で再度挑戦しているのですから。 > 発言の趣旨が誤って伝わってしまっているようです。私の不手際であれば謝罪します。 私の発言は、彗星が零戦匹敵する可能性を主張されているので彗星を一例として挙げたものです。彗星を挙げることで説明したかったのは、彗星が「何かを犠牲にすることで他の性能を実現している」機体であり、戦闘機と同じ性能に爆装能力まで付加させた機体を実現しようとすれば、彗星と同様に必ず無理が出るということです。そして彗星の場合は、出てしまった「無理」が他機種の運用にまで影響を及ぼすほど大きなものだったということです。 彗星が何を犠牲にした機体だと言われるのでしょうか。 元より小型空母での運用を想定していない機体なのですから、小型空母で運用できないことは「何かを犠牲にした」わけではありませんよね? 誤算があるとしたら、運用可能を見込んでいた大型空母が早々に沈んでしまったことではないのでしょうか。 彗星でさえ、爆撃状態の航続力は零戦を下回ります。私は戦闘爆撃機があり得たとして、その空戦能力や火力、航続力が「零戦に完全匹敵する」必要はないと思うのですが(例えば航続力は敵艦上機の攻撃範囲をアウトレンジできれば充分でしょう)。 例えば零戦をやや上回る速度、縦の空戦が可能な空戦能力、13ミリ2門程度の前方火力、彗星程度の航続力を持つ機体が、一三試で実現不可能だったとは、やはり思えません。 > 速度が低下すれば航空機は機動力が低下します。機動力を回復するには速度を回復せねばならず、速度を回復するには降下することで位置エネルギー(高度)を運動エネルギー(速度)に変えるしかありません。十分な推力があるならば強引に加速することもできるでしょうが、爆撃能力も対空攻撃用の火力も航続力も備えた上に戦闘機を振り切れるだけの推力(加速力)まで期待できるような機体など作れるものではありません。 急降下爆撃と違い、高速緩降下爆撃では、位置エネルギーを速度に変えた状態で投弾しますし、重量物(爆弾)は投下してなくなってしまうのですから、そこまで速度が落ちるでしょうか。 どちらにせよ、投弾時点で敵戦闘機が頭上にいると言われますが、米機動部隊の輪型陣内に、どうして戦闘機がいるのでしょうか。味方艦艇に撃墜されるのではないでしょうか。 投弾後、輪型陣を脱出するころには速度もある程度回復していますし、空戦の邪魔になる爆弾も保持していません。どうして、戦闘爆撃機が敵戦闘機の追撃から自衛するだけの空戦能力を発揮できなくなるのか、私にはわかりかねます(また戦闘爆撃機の投弾後に零戦並みの速度があるなら、敵戦闘機は何撃もかけることもできないでしょうし)。 海面近くを飛行すると速度は落ちるでしょうが、攻撃するために降下した敵機は「海面に激突すること」を心配して空戦する必要があります。これを避けるために、高度の有利を捨てれば、米戦闘機も「海面近くの低空で水平飛行」する必要があり、条件は変わらないのでは? 少なくとも、艦爆より生存率が上がることは間違いないと思いますが。 |
> 源田氏は少なくとも「恒常的に実現すべき任務」として、戦闘機に近い空戦重視の単座艦爆を主張されていたようですが。 > それが妥当でなかったというご指摘については、そうした任務に向いた機材と訓練方法が実現できるか否か、ではないかと思います。 機材が実現できなければ机上の空論に終わります。そして、実際に机上の空論に終わってしまっています。 > 実際、F4Uは朝鮮で何度も空戦に巻き込まれましたし、その空戦能力を活かしてある程度の自衛戦闘を遂行しています。もしF4Uではなく、純粋な艦爆や艦攻だったなら、より被害は大きなものになったのではないでしょうか。 > 空戦能力を評価していないなら、爆撃専門のより爆撃能力の高い機体を投入すればいいわけですが、例えば全部スカイレイダーでいいじゃん、という話にはなっていないようですが。 「巻き込まれた」というのは積極的に空戦を挑んだ結果ではないでしょう。あくまでも爆撃を主任務として活動しています。 スカイレイダーの多量投入が可能であれば投入したのではないでしょうか? WW2終戦直後で本来ならば速やかに兵力を引き上げねねばならず、制空権は肝心の主力戦闘機が敵に圧倒されて確保できず・・・という状況です。 > ご指摘は理解しますが、私が言いたいことは「米軍機から見て、遭遇した敵機が九九艦爆であるのと、戦闘爆撃機であることでは、脅威度・対応が異なるのではありませんか」ということです。九九艦爆は逃げてくれるでしょうが、戦闘爆撃機の場合は爆弾を捨てて立ち向かってくる可能性がありますし、場合によっては味方攻撃機の脅威になりえるのですから。 それこそ敵側にとっては艦爆だろうが戦爆だろうが関係有りません。 味方に爆弾を落とそうとしている以上は何者であろうと攻撃せねばなりませんし、他に味方を攻撃しようとしている敵機がいないのであれば、投弾後であっても攻撃すべき相手であることには変わりありません。 相手が空戦能力を持っているかどうかは迎撃機の攻撃目標選択に影響することはまずありません。むしろ、自機にとって危険な戦爆であるならば優先的に攻撃するかもしれませんし、敵にとっての脅威度云々は生残性とは関係ない話です。 戦爆に爆弾を捨てさせたなら、それは迎撃機の勝利です。 > 源田氏は「局面によっては防空にも使える」ことを明記されています。 > 力点が、空母搭載機の敵艦隊に対する攻撃力増強、特に空母に対する先制攻撃にあったとしても、艦爆と戦闘爆撃機に期待されるものが同じではないと思いますが。 「局面によっては」というのは主任務以外でも柔軟に活用できるという意味ではないですか? 柔軟性を期待されてはいますが、本来任務はあくまでも艦爆のそれです。ただの単能機より汎用機の方が効率的というだけであって、本業である爆撃をおろそかにしては本末転倒です。 > 戦闘爆撃機は艦爆に対して生存率とコスト面(特に人材育成)で有利です。命中率の低下は、投入機数を増やすこと(生き残る味方機が多い、そもそも同じ予算で多くの機数を投入できる)で補えると思います。 人材育成の点で有利という話は安直かも知れません。艦爆搭乗員も空戦の訓練を受けますが、高村様のイメージする戦爆搭乗員を仕立て上げるには空戦訓練と航法訓練の徹底が必要です。カリキュラムを増やす必要があるかもしれません。 搭乗員の大量養成体制が確立し、同体制の第1期生が卒業するまでの期間に限って言えば、搭乗員養成が遅延してしまう可能性すらあります。 また、彗星のように離着陸性能を犠牲にして強引に成立させれば、運用できる空母が限られてしまいます。小型空母用の機材はそれように別に手配せねばなりませんから、機体調達コストの削減効果も期待するほど見込めないかもしれません。 > ただ、前にも書きましたが、良質なエンジンに恵まれるまでは、爆弾を軽くすればいいのではないかと。仮に史実の半分の125キロとしたとしても(零戦の60キロ×2と同じですね)、8インチ砲弾と同じ重量です。米空母の飛行甲板に風穴を空けて、無力化するには充分ではないのですか? どうせ、爆弾が250キロや500キロであっても米空母は撃沈できず、空母撃沈が必要なら艦攻か水上艦に沈めてもらうないのですから。 ですからそれは理由にならないのです。 正規空母はどの国でも対8インチ砲程度の防御は持っています。飛行甲板に装甲がなくても、一時的に飛行甲板を傷つける程度では直ぐに修理されてしまうし、被害が軽微なら被弾箇所を避けて発着艦できてしまう可能性もあります。敵空母を沈められないのであれば制空権を確保できないのと同じであり、制空権がなければ水上艦も思い切った活動ができません。 それに多少爆弾を軽くしたところでどれ程命中率があがりますか? 敵空母は見つけるだけでも難しく、投弾できる機会は正に千載一遇のチャンスです。1ラウンド限定K.Oのみで勝負をつけなければ負けてしまうボクシングみたいなもので、悠長にジャブで戦うなど全く論外なのです。 > 味方艦上偵察機(攻撃機かもしれませんが)が誘導して、敵空母を空襲するという構想なのに、なぜ目標を発見できないという話になるのでしょうか。 > 味方母艦を見失うと言われますが、艦戦・艦爆・艦攻だとしても、艦戦は艦爆や艦攻の航法支援がなければ、味方母艦に帰り着けるか怪しいのです。艦戦・戦爆・艦攻になったとして、それが無理というなら、瑞鳳などの「搭載機は艦戦多数と艦攻だけ」空母は使用不能になるのではないかと(また、おうるさまの見解が全面的に妥当だというなら、なぜ十試単座艦爆構想や、彗星の単座型が存在するのでしょうか)。 偵察機が敵空母を発見でき、接敵を保てる確証がありません。艦上機は索敵攻撃を想定せねばなりません。複座機・三座機の減少は索敵攻撃の成功率(目標への到達率)の減少につながります。 航法を担当する誘導機が少なければ、敵の迎撃によって攻撃隊が盲目化してしまう恐れもあります。復路の誘導にあたる機体が艦攻・艦爆だったのが艦攻のみに減り、しかも誘導を必要とする機体は艦戦と戦爆に増えるのです。 米海軍が艦攻と艦爆を統合した上に単座化まで果たした技術的背景を忘れてはいけません。 > 将来的に発動機の出力が向上することは、昭和8年の時点でも容易に想像できますし「大出力発動機の見込みが付いた時点で実現すべき構想」として研究・試作を促進し、十三試辺りでまともな機体が実現するという流れも、それほどおかしくはないと思うのですが。 個人が私的にコツコツやるなら問題ありませんが、勤務時間中に、ましてや他人の協力をとりつけたり実験やら何やらとせねばならぬとしたら予算が必要になります。 やりたいこと(この場合、250kg爆弾での対艦洋上攻撃と空戦ができる戦爆の開発)が明確であり、その研究をある程度積めば、実現のためにどんな条件が必要なのかがわかってきます。 その実現には少なくとも2000馬力程度の出力を発揮できるエンジンが必要です(本気で戦闘機と渡り合えるようにするなら2000でも不足)。 必要な条件が整わなければ成立せず、しかもその条件が整う目処もつかないのであれば、状況が変化するまで研究を一時中断するのは自然なことです。 > 彗星が何を犠牲にした機体だと言われるのでしょうか。 > 彗星でさえ、爆撃状態の航続力は零戦を下回ります。私は戦闘爆撃機があり得たとして、その空戦能力や火力、航続力が「零戦に完全匹敵する」必要はないと思うのですが(例えば航続力は敵艦上機の攻撃範囲をアウトレンジできれば充分でしょう)。 > 例えば零戦をやや上回る速度、縦の空戦が可能な空戦能力、13ミリ2門程度の前方火力、彗星程度の航続力を持つ機体が、一三試で実現不可能だったとは、やはり思えません。 犠牲になっているのは上昇力、低速安定性、旋回性能です。艦爆だから割り切れたものであって、戦爆としてなら看過できない犠牲です。 > 急降下爆撃と違い、高速緩降下爆撃では、位置エネルギーを速度に変えた状態で投弾しますし、重量物(爆弾)は投下してなくなってしまうのですから、そこまで速度が落ちるでしょうか。 速度が低下するのは空戦、あるいは投弾から空戦に移行する上昇においてです。 複数機同士が入り乱れての空戦では、攻撃を反復する必要があります。一撃離脱に徹したとしても旋回はしなければなりませんし、敵に狙われて降下で離脱すれば再び上昇しなければなりません。 繰り返しになりますが、上昇性能と旋回性能は切り離せないものです。上昇力の劣る機体が空戦性能に優れることはありません。Me262のように別次元の速度で圧倒するならともかく、最高速度が多少高い程度では優位どころか同列にすら立てなません。どのみち低空では最高速度に制限がありますから、上昇性能や旋回性能の低い機体では勝てる要素は何もなくなってしまいます(Me262だって離着陸の際には護衛が必要でした)。 > どちらにせよ、投弾時点で敵戦闘機が頭上にいると言われますが、米機動部隊の輪型陣内に、どうして戦闘機がいるのでしょうか。味方艦艇に撃墜されるのではないでしょうか。 > 投弾後、輪型陣を脱出するころには速度もある程度回復していますし、空戦の邪魔になる爆弾も保持していません。どうして、戦闘爆撃機が敵戦闘機の追撃から自衛するだけの空戦能力を発揮できなくなるのか、私にはわかりかねます(また戦闘爆撃機の投弾後に零戦並みの速度があるなら、敵戦闘機は何撃もかけることもできないでしょうし)。 > 海面近くを飛行すると速度は落ちるでしょうが、攻撃するために降下した敵機は「海面に激突すること」を心配して空戦する必要があります。これを避けるために、高度の有利を捨てれば、米戦闘機も「海面近くの低空で水平飛行」する必要があり、条件は変わらないのでは? 少なくとも、艦爆より生存率が上がることは間違いないと思いますが。 迎撃機は輪形陣の外に居るわけではありません。 レーダーが発達したから艦隊から離れた会敵ポイントに迎撃機を誘導できるようになったのであって、迎撃機はあくまでも艦隊防空火力圏外全体を担当します。艦隊の防空火力は輪形陣上空を完全にカバーしているわけでもありません。 ミッドウェイ以前の海戦で防空戦闘機がどこを飛んでいたか考えてください。 投弾で高度を下げてしまった以上、空戦するためにも、帰還するためにも上昇しなければなりません(低空を高速で飛べば燃料を急速に消費します)。 敵に頭を抑えられている状態で速度を落とすことは危険です。上昇力で劣る機体が速度を保とうとすれば緩慢な上昇しかできませんし、一度敵機が頭上からいなくなるまで離脱しなければ戦闘空域に舞い戻ることなどできません。 味方が波状攻撃をかけていれば迎撃機はそちらに忙殺されるでしょうが、迎撃機がいなくなるまで攻撃を継続することは不可能ですし、低空を離脱しようとする戦爆の撃墜を試みる迎撃機は必ず出ます。 |
ご教授ありがとうございます。 納得致しました。お手数をおかけして申し訳ありません。 |
ご指摘ありがとうございます。 個々のレスは後ほど行います。誤解があるようなので、1点のみ。 源田大尉の主張は著書「海軍航空隊、発進」の中で、「当時、何度も具申した」という記述として登場します。主張内容は要約し、最初にまとめた通りです。 なお、源田氏は自身が主張していたはずの戦闘機無用論について、この本の中ではほとんど触れられていないので、関連性についてはわかりません。 ただ、この本では昭和七年暮れに行われた九〇式艦戦と三式艦戦の模擬対決で、速度と上昇力に勝る九〇式が、運動性に優れる三式に勝てない問題を取り上げており、これに対して九〇式は上昇降下の縦運動を用いることで、勝機を見いだせるようになった。しかし、中島飛行機がブリストル・ブルドックを元に開発した急降下爆撃機の実験機「特爆」は、速度で九〇式と同等、運動性で勝るため、九〇式には勝機がなかったというエピソードを紹介しています。 なお九〇式など、当時の戦闘機は機体強度の関係で、ターミナル・ヴェロシティ(垂直降下で達することができる最終速度)に達せなかったが、特爆は何ら問題なかったとも言われています。つまり、少なくとも当時の技術では戦闘機も急降下爆撃機も、速度に大差はなかったということを言われたいのでしょう(例えば九五式艦戦352キロ、九四式艦爆が281キロですが、九四艦爆が二座でないなら、差は縮まるでしょうから。実際、彗星も零戦より高速ですし、流星も翼内20ミリを持つ戦闘機的な機体です)。 また特爆を使った急降下爆撃の研究は、横空の戦闘機パイロットによって始められたものであり、九五式射爆照準器や弾着修正を行う爆撃方法も、(戦闘機乗りである)源田大尉らが昭和10年に編み出したと書かれているのです。 こうした観点から「急降下爆撃可能を要求された戦闘機」が実現したなら、それは「上昇降下の縦空戦にも対応する戦闘機」となるでしょうから、その機材による縦空戦の研究・対応も史実よりは進んでのではないかと考えた次第です。 |
お題のタイトルが「是非」ということでしたので、なぜそのような構想が実現されなかったのか、について。 単座機による急降下爆撃に関する源田大尉の論文は昭和9年度の恩賜研学資金を受賞たほどですし、同大尉が龍驤から横空に転任した10年以降にも戦闘機による急降下爆撃の実験訓練は継続されています。 しかし、支那事変の勃発とともにそれは尻すぼみになっていってしまいます。それ以前には理論的にばかり論じられてきた戦闘機の用法が、実地に立ってみると想定されていた以上に重要なものであることが認識されたこと、ここに関係しているようです。したがって、艦戦を急降下爆撃機として使おうという機運は育ちません。 一方、艦爆はなぜ複座が望ましいとされたのか。それは、制空権下における艦隊決戦が想定されるようになって以来、すなわち艦爆の実物をまだ入手する以前から、海軍は艦爆には夜間空襲を期待するようになっていたからです。敵空母に対する先制空襲は「先制」である以上、天象的な隙を狙って実施されるべきものと考えられていたのです。中間攻撃だけでなく、黎明、薄暮、夜間においても攻撃を仕掛けるためには、操縦員以外に選任の航法員が搭乗している必要があるのです。 日本海軍が最初に運用した二座艦爆は九〇式二号水偵三型です。この機体は降爆ができる水偵に艦上への降着装置をつけたものですが、そのため着艦時の視界が悪く「夜間運用訓練に適さない」とされています。それが昭和9年頃のことです。 単座機では航法上の問題から夜間進撃を期待できません。 |
>一方、艦爆はなぜ複座が望ましいとされたのか。それは、制空権下における艦隊決戦が想定されるようになって以来、すなわち艦爆の実物をまだ入手する以前から、海軍は艦爆には夜間空襲を期待するようになっていたからです。 夜間攻撃はあり得てもさすがに夜間急降下爆撃までは考えていないと思いますが・・。 夜間急降下爆撃まで本気で考えていたならば雷爆優劣論は生まれないでしょう。 |
>片さま ご教授ありがとうございます。大変勉強になりました。 当時の海軍の考えは理解しましたが、では演習で「敵艦隊への艦爆夜間空襲」は成功していたのでしょうか。また、成功したとして、どのように戦果を確認したのでしょうか。 実戦では台湾沖航空戦でのT攻撃隊の惨敗など、ほとんど失敗に終わっているように思います。沖縄戦での夜間雷撃例もありますが、照射攻撃は失敗しているとのことで、電探装備の銀河あっての戦術のように思います(九九艦爆は夜間攻撃例がないとのことですし)。私には、高速で動き回る目標に対しての夜間爆撃は「構想自体に無理があり、実現困難」に思えます。構想自体への反対意見はなかったのでしょうか。 >BUNさま ご教授ありがとうございます。大変勉強になります。 >急降下爆撃にしても、元々横須賀で実験していた級降下爆撃は戦闘機によるものですし、昭和七年には複座の専用機による方法が主流となっています。既に結論の出ている問題について今さら戦闘機の転用を主張しても影響は限られてしまいます。 これはよくわからないのですが、戦闘機による急降下爆撃自体が断念されたのでしょうか。昭和15年に高速緩降下爆撃法が提案されたとのことですから、単座機による爆撃方法自体を研究する動きは途切れず、あるのだと思っておりました。 >艦爆が複座化される背景には、この時代にまだ単発複座戦闘機という概念が生きていて試作が継続されていることがあり、もう一つ、航法の問題があります。 単座機の航法能力は複座機に劣るということで、先制攻撃を実施するために長距離洋上飛行を行い、夜間攻撃まで構想している中で単座機の導入は考え難いものがあります。 同じ機体で単座、複座のある彗星四三型では単座機と複座機で航法能力の差から実戦での行動半径が大きく異なるとされています。それを補うのは誘導機の役割ですが、誘導機は往路はともかくも復路で編隊を再集合させて整然と帰還することはまず望めません。 単座機では機動部隊での運用は困難なのです。 彗星単体を見ればそうでしょうが、実際に零戦隊は単独でガダルカナルへの長距離攻撃を行っていますし、機動部隊同士の戦いでも、零戦は艦爆や艦攻について帰還していると思います。源田構想は、艦攻を廃止するというものではありませんから、艦爆が単座機になっても、艦攻について帰ればいいのではないでしょうか(艦攻が全滅するなら無理ですが、それは艦爆・艦攻がやられたら零戦単体で帰投できるのか、という話ではないかと)。 夜間攻撃については片さまに対してレスを書きましたが、演習で成功し。見込みがあったのでしょうか。もしあったなら、なぜもっと多用されなかったのでしょうか。 >そして単座戦闘機を転用した際にも、搭乗員の養成に時間が掛かるという問題が生じます。単独で戦闘、爆撃、航法をこなせる万能選手を育成しなければならないからです。 航法は偵察機(もしくは艦攻)について行くという構想ですから、不要ではないでしょうか。また、必要だとしても「単座艦爆」が実現するような流れがあるなら、クルシー無線帰投方位測定器のような航法機器が史実より重視され、より積極的な開発が行われたのではないかと思います。 >しかし、いわゆる爆戦を実現できるような機体、すなわち、重防御化する敵空母に打撃を与えられるだけの爆装と長大な航続力を両立できるような機体が実現できるのであれば、それは戦闘機用の大馬力発動機の試作に成功したということです。 彗星とはそれを狙った機体だと思うのですが、海軍からは失敗したと考えられていたのでしょうか。昭和15年に初飛行した試作機でも552キロの高速、爆撃過荷で2,593キロもの航続力、五〇番の搭載能力がありますが、これは同時期の零戦一一型を上回る高性能だと思います。ですが、試作機の好成績を聞いて戦備自体の見直しを行ったという話は聞きませんので。 これだけの機材を復座単発機で実現できるなら、単座戦闘爆撃機も可能だと思うのですが。彗星は翼面加重が高いですが、艦上機型紫電改と代わりませんし。 |
源田案とは、戦闘機を艦爆化すればいいという話よりも、ニ座艦爆の後席を潰せばそれだけ燃料を増加搭載できるので遠距離先制攻撃が可能という点のみに当時の海軍が検討すべき部分があります。戦闘機としての機能を艦爆が発揮するようなことは源田案の評価ポイントではないのです。そこを評価され、そして立ち消えている訳ですが、単座案が採用されなかった理由は主に航法の問題です。 また単座艦爆は二座艦爆の燃料増加搭載型ですから飛行性能はさほど向上しません。戦闘機の艦爆転用は当時の戦闘機の機体規模が必要な爆装に適していないために中止されています。緩降下爆撃と単座艦爆の研究は一旦途切れてしまいます。 源田案が注目されたのは遠距離先制攻撃という海軍にとって将来実現したい戦術について見通しをつけるものであった点で、当時行われていた空中給油実験等と同じ方向にあります。源田案で言う制空権とは敵母艦を先制攻撃することで得られるもので、戦闘爆撃機が空中戦闘で獲得するものではないのです。戦闘機転用の爆撃機がどれだけの性能かといった技術的な予想をパイロットの源田実から聞こうとする人々は部内にはいなかったことでしょう。 単座案を葬った航法問題は重要なポイントで、単座の零戦がガダルカナル空襲のような島づたいの地文航法併用で飛ぶ場合と比島空襲のような洋上の長距離進攻とでは大きな違いがあり、比島空襲は零戦にとって相当な綱渡りであったことが戦記からも読み取れることでしょう。この二つはまったく意味が異なるのです。機動部隊に求められたのは後者です。 夜間攻撃については年度ごとに演習のテーマとなっていますが、夜間急降下爆撃は保安上実施することができないとされ、技量の点からも不十分なまま未消化のテーマとして開戦を迎えているというのが実態です。夜間はより緩い角度での降下爆撃または水平爆撃を実施しますが、夜間攻撃そのものは実現はできないものの諦められていません。 さて、最初から単座艦爆ありきで「出来たはずだ」「良かったはずだ」と話されても、史実で単座艦爆が否定された問題は何一つ解消できないではないか、といった否定的な話を続けても面白くありませんから幻の単座艦爆への分岐点があるとしたらそれは何処かという話題に切り替えましょう。 試作計画中の艦爆を単座で進めるという案は昭和十年に存在します。 それは次期高性能艦爆をドイツに発注するという十試艦爆案です。 九四式艦爆で応急的に実現した艦上軽爆機の後継機を全金属製単葉の高性能機とする理由はまさに敵空母先制攻撃にあるのですが、この艦爆の日本側からの要求仕様は単座または複座なのです。ドイツ再軍備と予算上の問題から新規設計案を引き受ける航空機製造会社が無くその代案としHe118の購入が進み、交渉にあたった同じ人々がDB600のライセンス購入交渉をも続ける訳ですが、彗星計画の発起点のような十試艦爆に単座案があったことは見逃せないでしょう。戦闘機より速いかもしれない高性能艦爆が単座であった場合、艦攻の誘導機はつけられません。天山艦攻は相手が低性能の零戦爆装機だからこそ誘導できたのです。高性能機である十試艦爆を誘導できる高速の艦攻、艦偵は当時まったく望めません。 それなら十試艦爆単座案はどう対応するのか、そこを考えてみては如何でしょうか。 |
> 源田案とは、戦闘機を艦爆化すればいいという話よりも、ニ座艦爆の後席を潰せばそれだけ燃料を増加搭載できるので遠距離先制攻撃が可能という点のみに当時の海軍が検討すべき部分があります。戦闘機としての機能を艦爆が発揮するようなことは源田案の評価ポイントではないのです。そこを評価され、そして立ち消えている訳ですが、単座案が採用されなかった理由は主に航法の問題です。 そうなのですね。著書を見る限り、源田氏の力点は「戦闘機でもあること」にもかなりおかれており、その点は判断が付きませんでした。 > また単座艦爆は二座艦爆の燃料増加搭載型ですから飛行性能はさほど向上しません。戦闘機の艦爆転用は当時の戦闘機の機体規模が必要な爆装に適していないために中止されています。緩降下爆撃と単座艦爆の研究は一旦途切れてしまいます。 そうなのですか。素人目には、二五番では大型艦は撃沈できないのだから、爆弾を軽くすればいいように思いますが、爆弾が二五番となったのも相手の防御力を想定した、確固たる理由があるということなのでしょぅか。 > 源田案が注目されたのは遠距離先制攻撃という海軍にとって将来実現したい戦術について見通しをつけるものであった点で、当時行われていた空中給油実験等と同じ方向にあります。源田案で言う制空権とは敵母艦を先制攻撃することで得られるもので、戦闘爆撃機が空中戦闘で獲得するものではないのです。戦闘機転用の爆撃機がどれだけの性能かといった技術的な予想をパイロットの源田実から聞こうとする人々は部内にはいなかったことでしょう。 ご教授ありがとうございます。 長距離先制攻撃とは、そんなに早い時期に真剣な検討をされていたのですね。九九艦爆や九七艦攻(それ以前の艦爆艦攻もですが)の航続力が、敵攻撃機の攻撃範囲をさして上回っていないのは、長い航続力が技術的に実現不能という目算からなのでしょうか。 > 単座案を葬った航法問題は重要なポイントで、単座の零戦がガダルカナル空襲のような島づたいの地文航法併用で飛ぶ場合と比島空襲のような洋上の長距離進攻とでは大きな違いがあり、比島空襲は零戦にとって相当な綱渡りであったことが戦記からも読み取れることでしょう。この二つはまったく意味が異なるのです。機動部隊に求められたのは後者です。 その部分ですが、陸攻や艦攻に航法を任せて、零戦隊が進撃するというのは戦記でも見られる記述ではないかと。源田氏のいう「偵察機に航法を任せて、戦闘機・戦闘爆撃機隊が進撃する」という構想と、どこが違うのか、私にはわからないのですが。 > 夜間攻撃については年度ごとに演習のテーマとなっていますが、夜間急降下爆撃は保安上実施することができないとされ、技量の点からも不十分なまま未消化のテーマとして開戦を迎えているというのが実態です。夜間はより緩い角度での降下爆撃または水平爆撃を実施しますが、夜間攻撃そのものは実現はできないものの諦められていません。 なるほど。その研究成果がT攻撃隊などの夜間攻撃に活かされたということなのでしょうか。 > さて、最初から単座艦爆ありきで「出来たはずだ」「良かったはずだ」と話されても、史実で単座艦爆が否定された問題は何一つ解消できないではないか、といった否定的な話を続けても面白くありませんから幻の単座艦爆への分岐点があるとしたらそれは何処かという話題に切り替えましょう。 建設的な観点、どうもありがとうございます。 > 試作計画中の艦爆を単座で進めるという案は昭和十年に存在します。 > それは次期高性能艦爆をドイツに発注するという十試艦爆案です。 > 九四式艦爆で応急的に実現した艦上軽爆機の後継機を全金属製単葉の高性能機とする理由はまさに敵空母先制攻撃にあるのですが、この艦爆の日本側からの要求仕様は単座または複座なのです。ドイツ再軍備と予算上の問題から新規設計案を引き受ける航空機製造会社が無くその代案としHe118の購入が進み、交渉にあたった同じ人々がDB600のライセンス購入交渉をも続ける訳ですが、彗星計画の発起点のような十試艦爆に単座案があったことは見逃せないでしょう。戦闘機より速いかもしれない高性能艦爆が単座であった場合、艦攻の誘導機はつけられません。天山艦攻は相手が低性能の零戦爆装機だからこそ誘導できたのです。高性能機である十試艦爆を誘導できる高速の艦攻、艦偵は当時まったく望めません。 > それなら十試艦爆単座案はどう対応するのか、そこを考えてみては如何でしょうか。 なるほど。単座にして燃料を増やし、遠距離攻撃に対応した、十試単座高速艦爆が実現するなら、航法担当として彩雲のような高速艦上偵察機を同時に実現する必要がありますね。 なぜご教授頂いたような理由がありつつも、十試で単座を可としたのか。 単座高速艦爆が実現した場合の「彩雲」とは、十試で予定された九七式艦上偵察機ではないでしょうか。最高速度387キロと、あまり速くはありませんが、九九艦爆、九七艦攻よりは速いですし。何より九七艦偵が持つ、当時の艦上機としては異例に長い航続距離2278キロが、その証拠のように感じます(彗星に近い数値ですし)。 艦上機・水上機パーフェクトガイドには十試艦爆について「結果的にハインケル社製機は技術参考程度にとどめられ、機体を発注することはなかった」とありますが、このハインケル社製機とはHe118のことですよね。最高速度420キロ、搭載量500キロは九九艦爆より上ですが、航続距離1050キロでは、長距離先制攻撃は無理です。だから、DB600系発動機を活かす形で、日本向け仕様に再設計したのが十三試艦爆彗星ということなのでしょうか。 この系譜を見るかぎりだと、艦爆の本命は十試からの高速遠距離艦爆であり、十一試の九九艦爆ですら「本命への間つなぎ」の機種のように感じられます。 以上、すべて推測ですが「そこを考えて」みました。いかがなものでしょうか。 ただ、上記が正しかったとしても、十試でなぜ単座も可としたのかはわかりません(航続距離確保のためでしょうか)。最初からハインケル機を参考にするつもりしかなかったとしても、復座で発注したほうが構造などはより参考にできるでしょうし。 やはりこれは十試艦上偵察機を教導機として、アウトレンジで零戦や単座高速艦爆を放つつもりだったということでしょうか。 |
・二五番爆弾とはどんな存在だったか? 昭和10年前後、二五番爆弾とは実用域にある最大クラスの爆弾です。 これを用いて敵空母の発着能力を一気に奪うことが急降下爆撃機に期待された能力で、急降下爆撃とは突き詰めて言えば「一発の二五番爆弾で敵空母の甲板を容易に修復できない程度まで破壊する」ことなのです。当時の海軍も被弾時の損傷修復をシミュレーションしていますから、修復が容易で複数命中を必要とするより小型の爆弾を装備することは考えられません。複数命中の期待とはすなわち攻撃力が数分の1に低下することだからです。 戦闘機による爆撃研究が中止された裏にはこうした事情があります。 ・単座艦爆案はなぜ生まれたか? 十試艦爆に期待された性能を発揮するためには後席を犠牲にする必要が生じる場合もあり得ると思われていたからです。単座にして戦闘機として使うためではありません。単座艦爆が戦闘機と遭遇した際に爆弾を捨てて空戦を挑むということは、攻撃隊の任務が放棄されたことを意味しますから、攻撃隊の全滅と同じことなのです。そして先制攻撃の失敗は洋上航空戦の敗北につながりますから艦隊決戦そのものが負けということで、戦争もそこで終わってしまいます。 不便な単座機にしてまで艦爆を作る理由は空戦のためではないのです。 ・航法を艦偵に任せられるか? 「航法能力に劣る」ということは長距離を飛べないということではなく、「同じ距離を飛ぶのに余計に燃料を使ってしまう」ことを意味します。爆装零戦は確かに往路を艦攻に誘導されますが、突撃後の復路にそれは期待できません。しかも往路でさえ誘導機からはぐれれば攻撃は失敗してしまいます。マリアナ沖海戦での三航戦の攻撃隊は、前衛に配置されて、しかも往復にリスクを抱える特殊な戦法であることから「特殊攻撃」なのです。 通常の零戦が長距離攻撃から帰還できると考えられたのも航続力に余裕があったからで、確実性の無い艦攻の誘導があるからではありません。 後席を潰して航続力を延長しようという単座艦爆にはそれが期待し難いということです。 ・彗星単座型の出現と廃止の理由 彗星四三型は19年秋に現れた数々の体当たり専用機計画の一つが実現したものです。 体当たり機ですから往路を誘導すればよく、航法能力は必要無いと考えられていましたが、実際には出撃即会敵という訳にはゆかず何度も出撃を繰返す必要があり、単座機はその点で行動半径が小さくなるため、D4Y4改として後席が復活します。空戦能力はまったく考慮されていません。 このように単座艦爆とは「実際にやってみたけれど駄目だった」アイデアなのです。 ・艦爆の発達に別の道筋があるとしたら? 日本の艦爆が別の形で進化して行く可能性としては単座艦爆よりもむしろ複座戦闘機兼艦爆といった機体への発展が考えやすいのではないでしょうか。 73式さんも触れたフルマー、ファイアフライのような機体が日本に育つ可能性は単座艦爆よりも有力なように思います。 英海軍はこのような機種に対して、 「哨戒線の先端で敵哨戒機を撃墜して味方艦隊の発見を妨害できればよく、敵の高性能艦戦は単座であるために行動半径が小さく、複座戦闘機が敵単座戦闘機と遭遇する確立は低い。」 といった考えを持っています。英海軍も複座機と単座機の航法能力の違いを日本海軍と同じように認識していたことがわかります。 日本海軍も昭和10年の一般向けの解説で非爆装時の艦爆は複座戦闘機に匹敵すると述べていますし、当時まだ複座艦戦の構想が存在することからも単座艦爆よりも複座戦闘機兼艦爆の方がまだ発達する余地があるようです。もしからしたら日の丸フルマー、日の丸ファイアフライが「日本の迷機」として解説される世界もあり得たかも・・という話です。 |
皆様にご教授頂いたことで、単座艦上戦闘爆撃機が少なくとも太平洋戦争では無理だということは、納得がいきました。どうもありがとうございます。 あとは、議論ではなく、質問をさせて頂ければと思います。 > ・二五番爆弾とはどんな存在だったか? > > 昭和10年前後、二五番爆弾とは実用域にある最大クラスの爆弾です。 > これを用いて敵空母の発着能力を一気に奪うことが急降下爆撃機に期待された能力で、急降下爆撃とは突き詰めて言えば「一発の二五番爆弾で敵空母の甲板を容易に修復できない程度まで破壊する」ことなのです。当時の海軍も被弾時の損傷修復をシミュレーションしていますから、修復が容易で複数命中を必要とするより小型の爆弾を装備することは考えられません。複数命中の期待とはすなわち攻撃力が数分の1に低下することだからです。 > 戦闘機による爆撃研究が中止された裏にはこうした事情があります。 米海軍では225キロ爆弾に対しては38ミリ、450キロ爆弾では63.5ミリ、日本海軍では500キロ爆弾に対して95ミリの装甲が必要と考えたという話は読んだことがあります。 初期の日本艦爆がエンジン出力に対して重い二五番を装備したのは、レキシントン級の32ミリ水平装甲や、ヨークタウン級の38ミリ水平装甲を貫通し、艦内にダメージを与えるためにも、必要であったということでしょうか。 現実には、二五番を持ってしても、完全に発着能力を奪うことができず、米空母の水平装甲貫通も難しかったのですから、爆弾を軽くすることは論外というのは納得がいきました。 本来は五〇番を搭載したかったのでしょうね。爆弾自体は九二艦攻用として、五〇番も存在したようですが、当時の艦爆に搭載するのは無理だということは理解できました。 > ・単座艦爆案はなぜ生まれたか? > > 十試艦爆に期待された性能を発揮するためには後席を犠牲にする必要が生じる場合もあり得ると思われていたからです。単座にして戦闘機として使うためではありません。単座艦爆が戦闘機と遭遇した際に爆弾を捨てて空戦を挑むということは、攻撃隊の任務が放棄されたことを意味しますから、攻撃隊の全滅と同じことなのです。そして先制攻撃の失敗は洋上航空戦の敗北につながりますから艦隊決戦そのものが負けということで、戦争もそこで終わってしまいます。 > 不便な単座機にしてまで艦爆を作る理由は空戦のためではないのです。 > > ・航法を艦偵に任せられるか? > > 「航法能力に劣る」ということは長距離を飛べないということではなく、「同じ距離を飛ぶのに余計に燃料を使ってしまう」ことを意味します。爆装零戦は確かに往路を艦攻に誘導されますが、突撃後の復路にそれは期待できません。しかも往路でさえ誘導機からはぐれれば攻撃は失敗してしまいます。マリアナ沖海戦での三航戦の攻撃隊は、前衛に配置されて、しかも往復にリスクを抱える特殊な戦法であることから「特殊攻撃」なのです。 > 通常の零戦が長距離攻撃から帰還できると考えられたのも航続力に余裕があったからで、確実性の無い艦攻の誘導があるからではありません。 > 後席を潰して航続力を延長しようという単座艦爆にはそれが期待し難いということです。 よくわかりました。十試艦爆の単座案(航続力延長案)は、上記で述べられたような航法の不便があると考えられ、実現しなかったのでしょうか。 浅学にして、十試艦爆の要求性能を知らないのですが、十一試九九艦爆よりも高度な性能を要求されていたということですか? 関連ですが、中島十試艦上偵察機とは、どういう使用方法を想定された機体なのでしょうか。単座艦爆と関わりないとしたら、艦攻でも可能な偵察を別機で作られたことが見えてきません。 > ・彗星単座型の出現と廃止の理由 > > 彗星四三型は19年秋に現れた数々の体当たり専用機計画の一つが実現したものです。 > 体当たり機ですから往路を誘導すればよく、航法能力は必要無いと考えられていましたが、実際には出撃即会敵という訳にはゆかず何度も出撃を繰返す必要があり、単座機はその点で行動半径が小さくなるため、D4Y4改として後席が復活します。空戦能力はまったく考慮されていません。 > このように単座艦爆とは「実際にやってみたけれど駄目だった」アイデアなのです。 彗星四三型の「爆弾は八〇番が標準となり」という記述から、敵大型艦の撃沈を可能とする急降下(高速緩効果かもしれませんが)爆撃機と考えておりましたが、特攻機なのですね。八〇番での通常攻撃は考えられていなかったのでしょぅか。 > ・艦爆の発達に別の道筋があるとしたら? > > 日本の艦爆が別の形で進化して行く可能性としては単座艦爆よりもむしろ複座戦闘機兼艦爆といった機体への発展が考えやすいのではないでしょうか。 > 73式さんも触れたフルマー、ファイアフライのような機体が日本に育つ可能性は単座艦爆よりも有力なように思います。 > 英海軍はこのような機種に対して、 > 「哨戒線の先端で敵哨戒機を撃墜して味方艦隊の発見を妨害できればよく、敵の高性能艦戦は単座であるために行動半径が小さく、複座戦闘機が敵単座戦闘機と遭遇する確立は低い。」 > といった考えを持っています。英海軍も複座機と単座機の航法能力の違いを日本海軍と同じように認識していたことがわかります。 > 日本海軍も昭和10年の一般向けの解説で非爆装時の艦爆は複座戦闘機に匹敵すると述べていますし、当時まだ複座艦戦の構想が存在することからも単座艦爆よりも複座戦闘機兼艦爆の方がまだ発達する余地があるようです。もしからしたら日の丸フルマー、日の丸ファイアフライが「日本の迷機」として解説される世界もあり得たかも・・という話です。 ご教授ありがとうございます。復座艦戦ですか……月光の艦上機型みたいなものを想像してしまいますが、確かに「日本の迷機」ですね。 |
出典は「海軍航空隊、発進」でしたか。今度購入して読みたいと思います。 > こうした観点から「急降下爆撃可能を要求された戦闘機」が実現したなら、そ>れは「上昇降下の縦空戦にも対応する戦闘機」となるでしょうから、その機材に>よる縦空戦の研究・対応も史実よりは進んでのではないかと考えた次第です。 この部分について。 「急降下爆撃可能を要求された戦闘機」じゃなくても「上昇降下の縦空戦にも対応する戦闘機」はいくらでもある、というか戦闘機はもともと縦空戦に対応しているものでしょう。別のレスにも書いていますが、本当に日本海軍は縦空戦の研究・対応が遅れていたのでしょうか?格闘戦だけに固執していたのでしょうか? 私は日本海軍は縦空戦の研究・対応に遅れていたのではなく、機材の開発に失敗しやりたくてもできなかった、のだと思います。 |
>73式さま ご教授ありがとうございます。大変遅くなりましたが、まとめてレス致します。 > この部分の趣旨は、防御的作戦でしか使用できない戦闘機はいらないから、攻撃兵力の単座急降下爆撃機を装備して、敵機発進源を攻撃覆滅して制空権を確保しよう、ということではないでしょうか? 源田氏はそこまでは言ってないようですが、投弾後に戦闘機になるので生存性が高くなり、また必要とあれば、艦爆ではなく艦戦として使用できるので、運用の柔軟性が増すというような趣旨のことは書かれています。 > この構想で実現されるのは、まさしく「艦爆兼戦闘機」ですから純粋な戦闘機には「若干性能は劣る」わけです。史実の日華事変を考えると、このような航空機が使用されていたら、海軍航空隊の歴史は悲惨なものになっていたのではないでしょうか? > そうですね。戦闘機をやめて艦爆だけにするのが構想ですから、艦爆搭乗員の訓練期間は延びませんね。失礼しましたm(_ _)m 源田構想は艦上戦闘機を作らないという構想ではなく、艦戦半数、艦攻半数を戦闘爆撃機にするというものです(明記されていませんが、艦爆は作らないのでしょう)。 また日中戦争において、調べた限りでは中国軍戦闘機に、日本軍の戦闘機が性能面で決定的に遅れを取ったという話は聞いておりません。そのような事実があったのでしょうか。 源田構想が実現した場合ですが(もちろん、史実のドクトリンが変更されるという前提の話です)としても、九六艦戦も零戦も史実通り存在するでしょうから、ご説のような事態にはならないのではないでしょうか。生産配分については、戦闘爆撃機の実現した性能次第でしょう。確かに十一試の九九艦爆と十二試の零戦を比較するなら「艦爆的な機体では艦戦に勝ち目はない」と思えます(愛知は全金属製航空機に慣れておらず、九九艦爆はツメが甘い機体と認めているようですが)。しかし、十二試の零戦に対し、十三試の彗星は速度で大きく上回り、航続力も大差ありません。要求性能次第ではないでしょぅか。 例えば十一試で航続力要求が九九艦爆なみで(増加タンクなしでも零戦に500キロ程度劣る)単座、機銃13ミリ×2くらいの機体であれば、成功作になった可能性はあるのではないかと。元より九九艦爆の翼面加重は零戦と大差なく、空戦能力としては速度と武装が問題なだけなのですから。 もちろん、彗星を当初から単座にし、機銃を強化した(7.7ミリを13ミリにし、偵察席の旋回機銃は廃止する)機体も成立し得るように思います。 > 搭乗員育成に関しては、操縦員は半数ですむかもしれませんが、育成期間は長期になってしまいます。対戦闘機戦闘と対艦爆撃の両方に習熟しなければなりません。爆撃緒元の計算(複座の艦爆では爆撃緒元の計算は偵察員の仕事)も一人でしなければならず、命中率はかなり悪いものになるでしょう。 時代は違うかもしれませんが、彗星三三、四三型の一部やスカイレイダーは単座です。また、単座急降下爆撃の命中率が問題となった場合、史実よりも早く昭和15年から研究された高速緩降下爆撃法が研究され、機材に反映されるのではないでしょぅか。 高速緩降下爆撃は、爆弾投下高度を低くとることができるため、降下速度を急降下爆撃より低く取れます。ですから命中率は向上しますし、降下速度も大きくなるために爆弾の撃速も高くなるそうです。大戦末期では上記の利点から、専門の急降下爆撃機でも45度程度の高速緩降下爆撃に移行していたそうですし、単座の零戦もこの爆撃方法で戦闘爆撃機として活躍しています。機材の性能より、理論が問題となる爆撃方法のように思えますから、前倒しにできる可能性はあるのではないでしょうか。 >当時の航空機性能では、艦爆兼戦闘機を製造してもモノになる確率は低い。構想を実現しても、その後の戦訓で純粋な戦闘機を製造しなければならない。いたずらに航空施策を混乱させるだけに終わるでしょう。 上記で書いたように「命中率の低さが問題となる」→「高速緩降下爆撃法が研究される」→「艦戦に高速緩降下爆撃能力が要求される(艦戦と艦爆の統合)」という流れで移行するように思えます。 > 零戦を代用艦爆として運用したのは、改装空母で彗星が運用できなかったからであって、艦爆が低速であったからではないでしょう。爆装した零戦も艦爆も、速度に大差があったとは思えません。 前述したように、高速緩降下爆撃を行う上で、機材の速力は撃速の関係上、重要です。零戦と九九艦爆では、爆装でも速度に大差があります。急降下爆撃と違い、引き起こしが楽な緩降下爆撃は速度を落とさずに爆撃できるのが長所ですし。 また、九九艦爆の低速は敵戦闘機・対空放火による被害の面と合わせて問題視されていたことが伺えます。実際に昭和19年4月の零戦への二五番爆弾搭載、両翼下面に贈漕を振り分ける軍令部要求(=零戦六二型)は、損害の大きい九九艦爆の代用機として零戦を使用する意図によるものです。 >「米国流の急降下を使った戦闘機戦術」は一撃離脱戦法だと思いますが、本当に日本では発達しなかったのでしょうか?自分よりも劣位にいる目標機に対して、日本の搭乗員は格闘戦を挑んでいたのでしょうか?戦記をみても、自分の後方についた、または第一撃をかわした(かわされた)敵機とは格闘戦になっていますが、奇襲を実施できた場合はそれこそ「後方優位からの降下射撃」を実施しているように思うのですが。 >私は日本海軍は縦空戦の研究・対応に遅れていたのではなく、機材の開発に失敗しやりたくてもできなかった、のだと思います。 それは仰る通りです。しかしドクトリンがあっても、敵味方の機材の性能次第で運用方法を現実に合わせるのが実戦ではないかと思います(例えば零戦は、味方艦隊の直衛時間を多く取れるように長い飛行時間を要求されましたが、結果的に長く飛べることで、爆撃機の長距離護衛に使われるようになりました)。 零戦は敵戦闘機の「一撃離脱対象」となり、また「一撃離脱の敵を追えない」仕様の戦闘機だから、奇襲以外では「格闘戦を挑むしかない」わけですが、低速の敵には一撃離脱も行ったわけですし。またご説のように、日本でも運動性に劣り、速度で勝る機体は一撃離脱により対抗することは認識されていたわけですから、実際に敵戦闘機に対して一撃離脱が可能な戦闘爆撃機が存在したなら、それを行ったのではないかと思います。 「どういった目的で作られたのか」より「それがあったらどう使われるか」ではないかと。妥当な機材があれば縦の空戦を行ったのではないかと思います。 |
詳細なレス、ありがとうございますm(_ _)m > 源田氏はそこまでは言ってないようですが、投弾後に戦闘機になるので生存性が高くなり、また必要とあれば、艦爆ではなく艦戦として使用できるので、運用の柔軟性が増すというような趣旨のことは書かれています。 > > 源田構想は艦上戦闘機を作らないという構想ではなく、艦戦半数、艦攻半数を戦闘爆撃機にするというものです(明記されていませんが、艦爆は作らないのでしょう)。 この部分は誤読しておりました。私は「艦戦全部と艦攻の半数」だと勘違いしていました。 源田構想では、仮に艦戦、艦爆、艦攻を各1隊搭載している空母航空隊の編成を艦戦と艦攻を各半隊、爆戦2隊を搭載するということですね。 > また日中戦争において、調べた限りでは中国軍戦闘機に、日本軍の戦闘機が性能面で決定的に遅れを取ったという話は聞いておりません。そのような事実があったのでしょうか。 戦闘機対戦闘機ではなく、護衛機を伴わない日本攻撃隊vs中国軍戦闘機隊の話のつもりでしたが、言葉が足りませんでした。爆戦が採用されていれば、爆戦だけで侵攻することも十分考えられると思ったので、上のように書きました。 > 源田構想が実現した場合ですが(もちろん、史実のドクトリンが変更されるという前提の話です)としても、九六艦戦も零戦も史実通り存在するでしょうから、ご説のような事態にはならないのではないでしょうか。生産配分については、戦闘爆撃機の実現した性能次第でしょう。確かに十一試の九九艦爆と十二試の零戦を比較するなら「艦爆的な機体では艦戦に勝ち目はない」と思えます(愛知は全金属製航空機に慣れておらず、九九艦爆はツメが甘い機体と認めているようですが)。しかし、十二試の零戦に対し、十三試の彗星は速度で大きく上回り、航続力も大差ありません。要求性能次第ではないでしょぅか。 彗星の性能をだいぶ買っているようですが、彗星の上昇力は零戦よりもかなり劣っていますよ(零戦11型は6000mまで7分22秒、彗星11型は5000mまで8分57秒)。速度で勝っていても、上昇力で劣っていては攻撃位置につくことは難しいのではないですか? > 例えば十一試で航続力要求が九九艦爆なみで(増加タンクなしでも零戦に500キロ程度劣る)単座、機銃13ミリ×2くらいの機体であれば、成功作になった可能性はあるのではないかと。元より九九艦爆の翼面加重は零戦と大差なく、空戦能力としては速度と武装が問題なだけなのですから。 > もちろん、彗星を当初から単座にし、機銃を強化した(7.7ミリを13ミリにし、偵察席の旋回機銃は廃止する)機体も成立し得るように思います。 > 私が上の例からイメージしたのは一式戦の艦爆版といった感じですが、高村さんはどうでしょうか?胴体下に250kg爆弾、両翼下に増槽を吊るが攻撃時の兵装になると思いますが、十一試当時のエンジンで実現できるのかな?と疑問に思います。 > 時代は違うかもしれませんが、彗星三三、四三型の一部やスカイレイダーは単座です。また、単座急降下爆撃の命中率が問題となった場合、史実よりも早く昭和15年から研究された高速緩降下爆撃法が研究され、機材に反映されるのではないでしょぅか。 単座急降下爆撃の命中率が低い場合は、複座艦爆に戻るのが一番早道では? 彗星の単座型については、後席部分に簡易座席を追加できますから、単座機だけで進撃する場合には、指揮官機等には後席員が搭乗すると思います(今、手元に無いのですが、世傑の彗星にそんな記述があったような・・・。記憶モードなので、間違っていたらすみません)。 > 高速緩降下爆撃は、爆弾投下高度を低くとることができるため、降下速度を急降下爆撃より低く取れます。ですから命中率は向上しますし、降下速度も大きくなるために爆弾の撃速も高くなるそうです。大戦末期では上記の利点から、専門の急降下爆撃機でも45度程度の高速緩降下爆撃に移行していたそうですし、単座の零戦もこの爆撃方法で戦闘爆撃機として活躍しています。機材の性能より、理論が問題となる爆撃方法のように思えますから、前倒しにできる可能性はあるのではないでしょうか。 この部分は、早めに研究していればこのとおりだと思います。 > 上記で書いたように「命中率の低さが問題となる」→「高速緩降下爆撃法が研究される」→「艦戦に高速緩降下爆撃能力が要求される(艦戦と艦爆の統合)」という流れで移行するように思えます。 私は「命中率の低さが問題となる」→「複座艦爆に戻る」という流れが一番可能性があると思います。 > 前述したように、高速緩降下爆撃を行う上で、機材の速力は撃速の関係上、重要です。零戦と九九艦爆では、爆装でも速度に大差があります。急降下爆撃と違い、引き起こしが楽な緩降下爆撃は速度を落とさずに爆撃できるのが長所ですし。 > また、九九艦爆の低速は敵戦闘機・対空放火による被害の面と合わせて問題視されていたことが伺えます。実際に昭和19年4月の零戦への二五番爆弾搭載、両翼下面に贈漕を振り分ける軍令部要求(=零戦六二型)は、損害の大きい九九艦爆の代用機として零戦を使用する意図によるものです。 > 高速緩降下爆撃が実用されれば、このようになるでしょう。 「零戦と九九艦爆では、爆装でも速度に大差があります」ということであれば、私の知識不足と思い込みでしたので、発言は訂正します。 > それは仰る通りです。しかしドクトリンがあっても、敵味方の機材の性能次第で運用方法を現実に合わせるのが実戦ではないかと思います(例えば零戦は、味方艦隊の直衛時間を多く取れるように長い飛行時間を要求されましたが、結果的に長く飛べることで、爆撃機の長距離護衛に使われるようになりました)。 > 零戦は敵戦闘機の「一撃離脱対象」となり、また「一撃離脱の敵を追えない」仕様の戦闘機だから、奇襲以外では「格闘戦を挑むしかない」わけですが、低速の敵には一撃離脱も行ったわけですし。またご説のように、日本でも運動性に劣り、速度で勝る機体は一撃離脱により対抗することは認識されていたわけですから、実際に敵戦闘機に対して一撃離脱が可能な戦闘爆撃機が存在したなら、それを行ったのではないかと思います。 > 「どういった目的で作られたのか」より「それがあったらどう使われるか」ではないかと。妥当な機材があれば縦の空戦を行ったのではないかと思います。 多分、この部分で私と高村さんの思う「妥当な機材」の想像図が違っているのだと思います。高村さんはスカイレーダーや彗星、流星の単座型を想像しているのに対し、私が想像するのはフルマーの単座型なんですよね(^^; |
> この部分は誤読しておりました。私は「艦戦全部と艦攻の半数」だと勘違いしていました。 > 源田構想では、仮に艦戦、艦爆、艦攻を各1隊搭載している空母航空隊の編成を艦戦と艦攻を各半隊、爆戦2隊を搭載するということですね。 そのようです。 > 彗星の性能をだいぶ買っているようですが、彗星の上昇力は零戦よりもかなり劣っていますよ(零戦11型は6000mまで7分22秒、彗星11型は5000mまで8分57秒)。速度で勝っていても、上昇力で劣っていては攻撃位置につくことは難しいのではないですか? 上昇力は彗星一一型とF4F-4で同じくらいですが、戦闘爆撃機は彗星そのものではありませんし、液冷ではなく空冷発動機を搭載しているなら、より向上するでしょう(最高速度が落ちますが)。 > 私が上の例からイメージしたのは一式戦の艦爆版といった感じですが、高村さんはどうでしょうか?胴体下に250kg爆弾、両翼下に増槽を吊るが攻撃時の兵装になると思いますが、十一試当時のエンジンで実現できるのかな?と疑問に思います。 私も同じですね。十一試当時の技術力で艦爆と艦戦の両立を図った機体が、開戦時に間に合ったかどうかは、疑問なしとはしませんが。 > 単座急降下爆撃の命中率が低い場合は、複座艦爆に戻るのが一番早道では? 源田構想が採用されたら、というのはドクトリンの変更を意味します。ですから、複座艦爆に戻ることは、再変更となり、航空行政の混乱を引き起こすのではないでしょうか。 高速緩降下爆撃のほうが、爆弾投下高度を低く取れるため、命中率の向上を期待できるのだそうです。引き起こし操作も楽になるため、投弾速度も高速にでき、爆弾の撃速も向上できるという意味で、急降下爆撃より有効と判定されているようです。 投弾後の離脱も、速度が落ちない分だけ容易でしょうから、生存率も上がるでしょう。 史実より早く、この爆撃方法が考案されていたなら、艦爆に対するものも変わってきたかもしれません。 > 彗星の単座型については、後席部分に簡易座席を追加できますから、単座機だけで進撃する場合には、指揮官機等には後席員が搭乗すると思います(今、手元に無いのですが、世傑の彗星にそんな記述があったような・・・。記憶モードなので、間違っていたらすみません)。 私の手持ち資料にはないことなので、わかりません。なぜ彗星の単座機が史実で企画されたのか自体がわからないので。ご教授の方がおられましたら、お教えください。 > 多分、この部分で私と高村さんの思う「妥当な機材」の想像図が違っているのだと思います。高村さんはスカイレーダーや彗星、流星の単座型を想像しているのに対し、私が想像するのはフルマーの単座型なんですよね(^^; そんな機体しか実現できず、大失敗という可能性もあるかとは思います。この辺り、どう考えても私より、皆様方のほうが航空機に詳しいと思います。 素人の私には確固たる観点から、妥当性を述べることはできません。本来はAns.Qで質問したいことなのですが「答えのない質問」なので、議論ボードをお借りしています。 |
> 上昇力は彗星一一型とF4F-4で同じくらいですが、戦闘爆撃機は彗星そのものではありませんし、液冷ではなく空冷発動機を搭載しているなら、より向上するでしょう(最高速度が落ちますが)。 > 空冷発動機を搭載すると、性能落ちませんか?昭和13年当時の発動機では熱田は1200hpですが、空冷発動機だと、金星40系の1080hpが最高ではないですか?火星系は艦載機に搭載するには無理がありますよね?液冷の発動機を搭載し、有害抵抗の除去を徹底してやっとF4Fを上回る性能を得た訳ですから、空冷にしたらちょっと無理じゃないですか? 彗星は十三試の機体なので、十一試ではどんな発動機を選択し得るのか?三菱の金星、瑞星系か中島の栄系ですよね?(栄はまだ試作中ではありますが)どれも1000馬力を超えていません。上の枝でおうるさんもおっしゃっていますが、この程度の馬力で「空中戦もできる艦爆」を実現するのは不可能だと思います。実現したにしても、空中戦も爆撃も専用機に劣る中途半端なモノしかできないでしょう。 (私の想像する「単座フルマー」はまさにこれです) 「だから高速緩降下爆撃を・・・」とおっしゃいますが、航法や爆撃突入時の操縦員の負担(照準器を覗きながら高度、速度を確認し投弾諸元を算出する:複座なら、高度、速度の読上げは後席員の役目)等を考えれば、高速緩降下爆撃でも複座が優位ですよね?マリアナ時の爆戦は「代用艦爆」であり、零戦六二/六三型も本命の爆撃機ではないように思います。 > 源田構想が採用されたら、というのはドクトリンの変更を意味します。ですから、複座艦爆に戻ることは、再変更となり、航空行政の混乱を引き起こすのではないでしょうか。 > 高速緩降下爆撃のほうが、爆弾投下高度を低く取れるため、命中率の向上を期待できるのだそうです。引き起こし操作も楽になるため、投弾速度も高速にでき、爆弾の撃速も向上できるという意味で、急降下爆撃より有効と判定されているようです。 > 投弾後の離脱も、速度が落ちない分だけ容易でしょうから、生存率も上がるでしょう。 > 史実より早く、この爆撃方法が考案されていたなら、艦爆に対するものも変わってきたかもしれません。 私の「急降下爆撃時の命中率に問題があるのでは?」に対し、高村さんは「高速緩降下爆撃で問題なし。源田ドクトリンが採用されれば、高速緩降下爆撃理論も前倒しで研究する。」とおっしゃっていますが、そうすると高速緩降下爆撃理論が確立されるまでの間、海軍は役に立たない航空機を抱えていなければならないわけですよね?その余裕が当時あるでしょうか? 確かに「空中戦もできる爆撃機」、現代のF/A−18やF−16のような機体が実現できればそれに越したことはありません。が、それを実現するためには「高出力発動機の開発」「航法装置の充実」「爆撃法の確立及びそれを実施するための訓練」が不可欠であり、源田大尉が論を唱えた当時、どれもありません。 |
> 空冷発動機を搭載すると、性能落ちませんか?昭和13年当時の発動機では熱田は1200hpですが、空冷発動機だと、金星40系の1080hpが最高ではないですか?火星系は艦載機に搭載するには無理がありますよね?液冷の発動機を搭載し、有害抵抗の除去を徹底してやっとF4Fを上回る性能を得た訳ですから、空冷にしたらちょっと無理じゃないですか? 上昇力不足が指摘されたら、空冷に載せ替えるということも検討されるのでは? という趣旨だったのですが、説明不足でした。お詫び致します。 > 彗星は十三試の機体なので、十一試ではどんな発動機を選択し得るのか?三菱の金星、瑞星系か中島の栄系ですよね?(栄はまだ試作中ではありますが)どれも1000馬力を超えていません。上の枝でおうるさんもおっしゃっていますが、この程度の馬力で「空中戦もできる艦爆」を実現するのは不可能だと思います。実現したにしても、空中戦も爆撃も専用機に劣る中途半端なモノしかできないでしょう。 > (私の想像する「単座フルマー」はまさにこれです) ご指摘のように、十一試では対した機体にはならなかったと思います。それでも九九艦爆よりは生存性の高い機体になったのではないかと考えております。 > 「だから高速緩降下爆撃を・・・」とおっしゃいますが、航法や爆撃突入時の操縦員の負担(照準器を覗きながら高度、速度を確認し投弾諸元を算出する:複座なら、高度、速度の読上げは後席員の役目)等を考えれば、高速緩降下爆撃でも複座が優位ですよね?マリアナ時の爆戦は「代用艦爆」であり、零戦六二/六三型も本命の爆撃機ではないように思います。 復座が当然有利ですが、おうるさまへのレスで書いた通り、生存率・コスト面で単座が有利ではないかと思います。命中率は機数の増加や、機材の研究で補ったのではないかと。 実際、日本艦爆の命中率が2/3になったとしても、戦局にそれほど影響はなかったのではないかと思いますが。 > 私の「急降下爆撃時の命中率に問題があるのでは?」に対し、高村さんは「高速緩降下爆撃で問題なし。源田ドクトリンが採用されれば、高速緩降下爆撃理論も前倒しで研究する。」とおっしゃっていますが、そうすると高速緩降下爆撃理論が確立されるまでの間、海軍は役に立たない航空機を抱えていなければならないわけですよね?その余裕が当時あるでしょうか? 「試作機が役に立たない」と「研究打ち切り」はイコールではないと思います。 源田氏の言われる構想が実現したとしても、夜間空襲の問題や、保険の意味からも、艦爆の開発も平行して行われると考えます。開発リソースの無駄はあるでしょうが。 > 確かに「空中戦もできる爆撃機」、現代のF/A−18やF−16のような機体が実現できればそれに越したことはありません。が、それを実現するためには「高出力発動機の開発」「航法装置の充実」「爆撃法の確立及びそれを実施するための訓練」が不可欠であり、源田大尉が論を唱えた当時、どれもありません。 「その当時ないこと」と「将来的に実現するかもしれないので、研究しておくこと」はイコールではないと思います。だから、昭和8年から実現に向けて研究し、実現した場合と書いているのです。 |
上の枝に、BUNさんの詳細なレス(私には完璧なレスに思えます)が付いた後で書くのもなんなんですが(^^; > ご指摘のように、十一試では対した機体にはならなかったと思います。それでも九九艦爆よりは生存性の高い機体になったのではないかと考えております。 > 復座が当然有利ですが、おうるさまへのレスで書いた通り、生存率・コスト面で単座が有利ではないかと思います。命中率は機数の増加や、機材の研究で補ったのではないかと。 > 実際、日本艦爆の命中率が2/3になったとしても、戦局にそれほど影響はなかったのではないかと思いますが。 生存率は・・・、とおっしゃいますが、生存率と命中率のどちらを取るか?となった場合、軍隊は確実に命中率を取ります。自軍が生き残って相手も生き残ったでは意味が無いのです。「自分が死んでも敵の侵攻を食い止める」、これが軍隊(兵隊)の精神基盤です(自衛隊もです)。確かに「敵は全滅、自軍の被害は皆無」がベストですが、最低「自軍は大損害を出したが、敵の侵攻を食い止めた」でないと駄目なんです。だから「命中率が2/3」は受け入れ難いことです。たとえ戦局に影響がなくとも、です。 > 「試作機が役に立たない」と「研究打ち切り」はイコールではないと思います。 > 源田氏の言われる構想が実現したとしても、夜間空襲の問題や、保険の意味からも、艦爆の開発も平行して行われると考えます。開発リソースの無駄はあるでしょうが。 > > 「その当時ないこと」と「将来的に実現するかもしれないので、研究しておくこと」はイコールではないと思います。だから、昭和8年から実現に向けて研究し、実現した場合と書いているのです。 『「試作機が役に立たない」と「研究打ち切り」はイコールではない』ですし、『「その当時ないこと」と「将来的に実現するかもしれないので、研究しておくこと」はイコールではない』でしょう。 でも、「源田氏の言われる構想が実現したとしても、夜間空襲の問題や、保険の意味からも、艦爆の開発も平行して行われる」とはならないでしょう。なるとしたら「艦爆の開発と平行し、単座艦爆の研究も実施しておく」ではないでしょうか?専用の戦闘爆撃機は開発せず、制式採用されている艦戦・艦爆を改造して空技廠や横空で試験・研究を実施し、実用の目処がたったら試作機発注。その結果は・・・やはり、フルマーかよくてファイアフライなんじゃないでしょうか? |
> 上の枝に、BUNさんの詳細なレス(私には完璧なレスに思えます)が付いた後で書くのもなんなんですが(^^; 議論という部分では、完結したと思います。浅学にして恥ずかしい限りです。 質問として、いくつか書きましたが、このスレッドの役割は終わったと思います。 お手数をおかけ致しましたが、色々とご教授頂き、ありがとうございました。 |
こちらこそ、ありがとうございました。 BUNさんに質問されている「彗星四三型の通常攻撃」についてですが、世傑の彗星に百里ヶ原に展開していた彗星隊(攻撃1か攻撃5のどちらかだったと思いますが、記憶が定かではありません)が昭和20年、宮城県金華山沖の米艦隊を攻撃したレポートが載っています。その中で「空母に対しては特攻、その他の艦艇には通常攻撃をするのが不文律であった。」と記載されています(本を手放してしまったので、記憶モードですが)。ですから「彗星四三型の通常攻撃」も可能性はあったということです。 |
> BUNさんに質問されている「彗星四三型の通常攻撃」についてですが、世傑の彗星に百里ヶ原に展開していた彗星隊(攻撃1か攻撃5のどちらかだったと思いますが、記憶が定かではありません)が昭和20年、宮城県金華山沖の米艦隊を攻撃したレポートが載っています。その中で「空母に対しては特攻、その他の艦艇には通常攻撃をするのが不文律であった。」と記載されています(本を手放してしまったので、記憶モードですが)。ですから「彗星四三型の通常攻撃」も可能性はあったということです。 ご教授どうもありがとうございます。今度その本に目を通してみますね。 |
源田実は強硬な格闘戦至上主義、機動部隊運用、高速戦闘機の配備促進、基地航空隊重視、体当り攻撃と数々の主張をその時々に行っていますが、個々の主張に一貫する明確な思想は無く、相互に矛盾する主張を時流に乗って発言するような傾向が見られます。源田実個人がどのような人物であるかはこの場で論じる必要はありませんが、源田実の著作を読む際、忘れてはならない注意点として「その主張の前に同じ主張を唱える者がいなかったか」をチェックするべきでしょう。 急降下爆撃にしても、元々横須賀で実験していた級降下爆撃は戦闘機によるものですし、昭和七年には複座の専用機による方法が主流となっています。既に結論の出ている問題について今さら戦闘機の転用を主張しても影響は限られてしまいます。 艦爆が複座化される背景には、この時代にまだ単発複座戦闘機という概念が生きていて試作が継続されていることがあり、もう一つ、航法の問題があります。 単座機の航法能力は複座機に劣るということで、先制攻撃を実施するために長距離洋上飛行を行い、夜間攻撃まで構想している中で単座機の導入は考え難いものがあります。 同じ機体で単座、複座のある彗星四三型では単座機と複座機で航法能力の差から実戦での行動半径が大きく異なるとされています。それを補うのは誘導機の役割ですが、誘導機は往路はともかくも復路で編隊を再集合させて整然と帰還することはまず望めません。 単座機では機動部隊での運用は困難なのです。 そして単座戦闘機を転用した際にも、搭乗員の養成に時間が掛かるという問題が生じます。単独で戦闘、爆撃、航法をこなせる万能選手を育成しなければならないからです。 ただし一般に軽快な戦闘機の方が母艦上での発着は容易ですから母艦搭乗員としての錬成は多少、容易になるのかもしれません。 どちらにしても、単座機を運用する場合、優れた航法機器が存在しなければなりませんし、それらに熟達する必要があるということでしょう。 戦闘機転用によって起こる「縦の空戦」の普及。 これは多分無いでしょう。旧思想が旋回戦闘で新思想が宙返り、上昇降下という訳ではないからです。旧式戦闘機が旋回半径に優れるが垂直面の機動では新型戦闘機が優れるという傾向は既に海軍の中でも把握されていることだからです。 しかし、いわゆる爆戦を実現できるような機体、すなわち、重防御化する敵空母に打撃を与えられるだけの爆装と長大な航続力を両立できるような機体が実現できるのであれば、それは戦闘機用の大馬力発動機の試作に成功したということです。 もしそうであるならば、爆装の有無にかかわらず戦闘機の戦術についても多少の変化が訪れるでしょう。日本の海軍戦闘機そのものが全く変るということです。 |
皆様からご教授頂き、大変恐縮です。 返信が遅くなり、申し訳ありません。頂いたご意見の斟酌のために、私なりに調べてから返信致しますので、もうしばらくお待ちください。 |