Page 175 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼軍用機操縦士について 仕倉 07/6/9(土) 9:30 ┗軍用機の操縦は将校の仕事 BUN 07/6/9(土) 19:48 ┗Re:軍用機の操縦は将校の仕事 仕倉 07/6/10(日) 20:36 ┗逆に考えるとわかりやすい BUN 07/6/10(日) 21:21 ┗Re:逆に考えるとわかりやすい 仕倉 07/6/12(火) 21:41 ┣いえ、 BUN 07/6/12(火) 23:27 ┗補足 BUN 07/6/13(水) 11:33 ┗Re:補足 ラインバッカー 07/6/15(金) 17:29 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 軍用機操縦士について ■名前 : 仕倉 ■日付 : 07/6/9(土) 9:30 -------------------------------------------------------------------------
Ans,Qに於いて、私の愚問にお答えいただきありがとうございます。 しかし、皆さんの回答を聞いていると不思議に思ってきます。 兵・下士官などの航空兵は年下の士官に命令されるのが士気に係わるというなら、下士官・兵を士官に任じてから戦場に出せば良かったんではなかったんですか? そうすれば、優秀な人材が戦場で輝かしい戦果を出せるのではないではありませんか! どうなんですかね? |
飛行機が軍用に使われ始めた頃の軍用飛行機の操縦者はそれまでの軍隊組織の中で特異な存在でした。前線で敵と直接戦う兵器の操作者としては最も複雑で高度で高価なものを単独で扱う職種であることも前代未聞のことでしたし、まさに単独で行動することが多いためにそれまでの常識よりもより高度な戦術的判断を下せる能力が要求されるという今までに無い職種でしたから、各国の軍隊はその教育養成に悩むことになります。 軍隊という組織の中で自分で高度な判断下すことがを許される存在とは、すなわち将校のことですから飛行機の操縦者は必然的に将校でなければならないということになります。軍隊組織の建前としては判断を下すのは将校で、下士官兵は命令を聞くだけの存在です。自分で高度な判断を許されない下士官や兵が第一線で飛行機を操縦して戦うということは軍隊の建前上あり得ないことなのです。 けれども実際に第一次世界大戦を経験し、航空軍備拡大に向かった各国軍隊は飛行機搭乗員の養成で悩むことになります。高度な判断を下すことは将校にしか許されないにもかかわらず、強力な航空兵力を作り上げるために軍用飛行機の操縦者は従来の常識を超えて大量に必要なのです。 将校は基本的に職業軍人ですからそれまでの人事行政上の常識では年を経れば昇進させより上級の幹部へと育成しなければなりませんが、新しく生まれた航空という兵種では操縦者は全て自分で高度な戦術的判断を下す将校ですから全員を順当に昇進させて組織を維持することが大変難しいのです。しかも第一線機の操縦者は年齢が進めば役に立ちません。 そのために軍用飛行機を操縦する将校の数を補う目的で下士官を用いる制度が誕生します。そうした制度は若く専門知識と技量を身につけた下級将校代用者の育成手段として創設されたもので、近代空軍を建設するためにはこうした下士官の操縦者への登用制度や、用が済めば退役させて民間に戻す予備士官を育成する制度を導入して操縦者を大量養成する必要があったのです。 軍用機の操縦者が原則的に将校であるのは、空軍という軍隊の性格によるもので、それ以外の下士官操縦者が大量に存在するのは大雑把な言い方をすれば人事行政上の問題ということになります。 士気だとか、将校出身と下士官出身のどちらに適性、素養があるかといったことはあまり重要な問題ではありません。 |
> 士気だとか、将校出身と下士官出身のどちらに適性、素養があるかといったことはあまり重要な問題ではありません。 そうですか、自分としてはすべてを求められる士官にパイロットをやらせるのは負担を鑑みると如何なものかと思ったのですが、意外とそういうものでもないんですね。 しかし、やはり操縦テクと判断力云々を言うのであれば、単独といえども編隊行動が基本だし、指揮官たる士官が指揮を執ればそれでいいのでは? |
> しかし、やはり操縦テクと判断力云々を言うのであれば、単独といえども編隊行動が基本だし、指揮官たる士官が指揮を執ればそれでいいのでは? これはいきなり納得しろと言う方に無理があるとは思うんですが、考え方が逆なんです。 「高度な機械兵器を単独で操作していろいろな判断を下すという仕事だからといって、正規の将校以外にだってできるだろう?」という疑問はもっともなことです。「下士官操縦者だって優秀な人材は現実に多く出現したし、彼等が能力的に劣る訳ではなく、むしろ将校の操縦者を凌ぐ面すらあった」という話も事実です。 けれども制度面からですと話は逆です。 第一線で軍用機を操縦する者は軍隊内で将校の仕事をしているということで、下士官であろうとなかろうと軍用機を飛ばして戦う仕事をする者は役割的に将校なんです。 この問題は、戦闘飛行任務=将校の仕事であるのに将校でない下士官の操縦者が歴史上、沢山見られるのは何故だろうか?という問題であって、能力的に十分であるから下士官が操縦者でも良いではないか、ということではありません。 本来は操縦者全員を将校としなけばならないのが伝統的な軍隊の原則なのに、操縦者を大量に必要とする世界大戦期の空軍は組織上、それが難しかったということなのです。そのために本来、将校であるべき人々が下士官として将校の代用を務めていた訳で、階級が下士官であるからすなわち能力的に優劣があるということではないのです。 たとえば予科練という制度について少し調べると「下級指揮官の代用」といった言葉が沢山目につくことでしょう。それはそうした制度が創設された目的が当時の各国空軍と変わらないことを示しています。 日本陸軍の特操や海軍の飛行予備学生などはこうした代用将校養成制度の一つですが、一般的にそうした制度を拡大し遅れたり、制度の裾野を広げられなかった国の空軍に下士官操縦者が誕生すると考えて良いと思います。 |
> 制度の裾野を広げられなかった国の空軍に下士官操縦者が誕生すると考えて良いと思います。 自分としては、士官とはすなわち「先導者であり、守るべき対象」であったので、一度に何人もが死んでいく空への投入は、伝統云々よりも避けるべき事態と考えておりました。 なにせ、優秀な士官を作るのと優秀な操縦士を作るのは、同じくらい難しくコストも掛かるそうではありませんか。自分は、建前より、判断力が必要なら洗練された人材を使うべきで、偉功も立ててないような新前に部隊の命運を預けるような、そんなことは矢張り自分のこれからを考えると不安がつのります。 自分的には、あまりあって欲しくない仕組みですが、どう思います? |
そうではなくて、歴史的にある仕事を果たす人々にに対する適切な称号と待遇が与えられていたか否という問題だということをわかって頂けると幸いです。 編隊の長が下士官であろうとなかろうと近代空軍では本質的な問題ではないということです。 |
もうちょっとくだいて話せば、例えば坂井三郎氏の回想にあるような、老練な下士官が新任の若手将校である指揮官の下で拙劣な指揮を受けざるを得なかったといった事態は操縦者を全員将校としたところで同じように発生するでしょう。 大東亜戦争期に陸軍海軍を問わず発生した指揮官クラス操縦者の不足は戦闘による消耗とそれ以上に航空兵力の規模が爆発的に拡大したことによります。組織の急速な拡大が行われている以上、指揮官要員も深刻に不足しますが、隊員クラスもまた経験者が不足する訳ですから、老練な下士官も組織全体を眺めれば数少ない存在になります。 急速拡大する組織の中では若手指揮官が未経験の若年隊員を率いるという状況の方がはるかに一般的で、その中に少数存在する老練な下士官を抜擢するかどうかは対症療法的な手段でしかありません。 大切なのは急速拡大する組織に見合った幹部要員をどれだけの規模でいつまでに養成するかということで、戦争の準備をいつから始めたかといった問題なのです。 正規プログラムで養成された幹部要員と速成プログラムで養成された要員の関係は後者が下士官であるかないかという程度ではあまり変化がないだろうということです。 仮に史実と違う制度が採用されていて操練出身の坂井氏がもっと早く昇進していたとしてもその回想の内容は変わらないかもしれません。 |
老練な下士官の戦闘機搭乗員坂井氏は一度たりとも列機を失ったことはありませんでした。一般論にしてしまうには惜しすぎる見事な操縦技能と指揮能力があったように思われます。 |