第十四章
Hard Edge

サウスダコタ級




S:東の横綱が大和だとするなら、西の横綱
  世界最強を大和とするなら、第二位確定の戦艦、サウスダコタだっ!
☆:ふぇ?第二位はアイオワ級じゃないんですか?
S:サウスダコタの方が強い
☆:はえ〜
  また無茶苦茶言ってるような気がしますーっ

S:サウスダコタは条約型としては最後の戦艦だとも言える
  35,000tで16インチ砲という条件で何が出来るのか
  それを可能な限り突き詰めた艦だと言っても良い
☆:ノースカロライナ級の改良型なんですよね?
S:イエスでも有るしノーでもある
  ノースカロライナは14インチSHSを対象とした防御を持っていた
  これは他国の新型15インチにも対抗できる防御だからかなり充実している
  だけど16インチSHSを採用してしまった事から
  自己の火力に対する安全距離が殆ど無いと言う困った事態になってしまった
  サウスダコタはこれを改善するために徹底的な変更を施した戦艦だ

★:ざっと見ると、全長を減らして太らせていますね
S:まず徹底した集中防御をする事で無駄を削り、船体を小さくしている
  また機関出力を上げながら機関をコンパクトにまとめたところに注目だ
  これは当時の米国が持っていた機関技術だから出来た事だな
  高温高圧の最新ボイラーと高性能タービンで軽量小型でハイパワーな機関を作り上げたんだ
  船体を太短くした事によって来る抵抗増大は馬力で強引に覆した
☆:馬力でですか?
★:そういえばノースカロライナよりも馬力は大きいのですね
S:凄い技術だ
  これで、船体のかなりを占める機関部容積を圧縮できたんだ
  そうなると船体は小さくなるし、守るべき範囲も減少する、いいこと尽くめだな
★:そして、その主要防御帯に徹底した防御を施したんですね
S:うん、サウスダコタは傾斜した装甲を持っている
  これはノースカロライナと同じだけど、傾斜度は更に増えている
  厚さは310mmだから殆ど変わらないんだけど、傾斜がきつくなった分だけ耐弾性能は向上している
  そして中甲板に146mmの装甲を貼った、これもノースカロライナと比較して大して変わらない
  ただ、インターナル化した舷側装甲はその手前の外板を通るときに敵弾の被帽を破砕する事も期待されていた操舵し
  同様に甲板も上甲板を抜けてくる間に変形等を期待するつもりだったようだ
☆:それって効果有るんですか?
S:無いとは言い切れないけど、それほどの効果が有るとは思えないのも事実だな
  まあ、甲板のほうは160mm級の一枚板ぐらいの効果は発揮できただろう
  舷側のほうは、垂直換算で15インチ強ってところだな
  米軍では被帽による効果を大きく考えていたので、それを重視した構造だったんだな
★:ふと思ったのですが、その防御では足りないのでは?
S:うん、ノ−スカロライナよりはマシだけど自己の火力を基準とすると危険だね
  ただ、16インチSHSに匹敵するような火力の戦艦は他に居なかったんだから、必要充分だ

☆:でも、SHSってそんなに強力な武器なのですか?
S:まずはこんな物を見てみよう

  

S:これはメリーランド級戦艦と新型戦艦の16インチ45口径砲で比較した場合の凡その威力だ
  実際の意味が無い100mm以下の貫徹力は消してある
  多少ラインがデコボコしちゃってるけど
  従来型の砲弾だと
  150〜160mm級の甲板装甲を持つ米戦艦には27kmぐらいじゃないと通用しないのがわかるだろう
★:それがSHSだと25kmあれば貫徹しますね
S:大重量砲弾が高速で深い角度で落っこちてくると言う事の怖さだ
  そして砲弾のエネルギーが長く残っているから舷側に対する威力も大きい
  従来砲弾だと新戦艦の舷側は20km以下でないと貫徹しないけど、SHSなら22kmでも通用する
★:対応防御で見るなら
  従来型砲弾だと20〜27km、SHSだと22〜25kmになるんですね
S:つまりサウスダコタの防御能力はSHSを基準にしなければ充分なものが有るんだ
  SHSは射程が短いし米軍の戦艦は想定距離を比較的短い側に持ってきているから
  遠距離側の防御性能は重要視していないとも言えるんで、これだけあれば十分だろう
  舷側側は対敵姿勢の問題も有るんでそんなに深刻でもない
  特にSHSは落角が大きいから傾斜装甲には通常型砲弾よりも効果が有る
  つまりそんなに無体に防御能力が足りないわけではないんだよ
★:でも落角が大きいと舷側への命中率も悪化しますよね

  

S:距離別落角に基づく舷側装甲への直撃発生確率はこんな感じになる
  つまり、殆ど変わらないんだ
  確かに変わるんだが、気にするほどの違いではないな
  20〜25kmで交戦した場合、どちらの砲弾でも60%以上は甲板に向かう
  そしてこの条件では
  SHSだと大抵の艦の舷側や甲板に効果を期待できるけど従来型では中々そうも行かない
★:大抵の場合、この距離は一種の安全距離ですよね
S:ここで殴りあいながら、次に打つ手を考えるとかも有るよね
  優勢なら一気に突っ込むとか、不利なら別の距離に持ち込むとか
  一つの判断基準が20〜25kmと言えるし、中間戦闘での決戦距離もここを基準としている事が多い
★:その距離で殆どの砲弾が有効弾になるのですね、強力です
S:つまりカタログデータ以上にサウスダコタ級戦艦は実効戦力が大きいんだ
  これにマトモに対抗するのはかなり困難だと思うよ

☆:一般的な戦艦ですとSHSには対抗不能なんですか?
S:甲板側で言うと、長門が20cm級、大和も同じぐらい、つまり連中なら30km以内なら耐える
  他の日本戦艦が15cm以上、英米仏の新型戦艦が15cmちょっとだから25kmぐらいかな
  ビスマルクだと21km、ヴェネトだと19kmで貫徹される
  サウスダコタと殴り合いをしたいなら15cm以上の甲板装甲が一つの条件だろうな
★:舷側への威力も凄いですよね
S:そうだね、大和が50cm以上の評価になるから15kmぐらい、まあこれは別格だ
  日本戦艦が30cmだから28kmで貫徹する、英米の旧式艦やビスマルクで25km
  ヴェネトやリシュリューで20kmぐらい、KGVで22kmぐらいかな
★:表にするとこんな感じですね

  舷側側 甲板側 安全距離 甘く判定
大和 15 28 13 15
長門 29 28 -1 1
KGV 22 23 1 3
サウスダコタ 22 23 1 3
ビスマルク 25 20 -5 -3
ヴェネト 20 19 -1 1
リシュリュー 20 23 3 5

S:大抵の戦艦では安全範囲が殆ど確保できないんだな
☆:単に各艦の防御能力が足りないとか・・・あははーっ
S:んじゃあ、コレ

  舷側側 甲板側 安全距離 甘く判定
大和 12 31 19 21
長門 27 31 4 6
KGV 20 26 6 8
サウスダコタ 20 26 6 8
ビスマルク 24 23 -1 1
ヴェネト 17 21 4 6
リシュリュー 17 26 9 11

S:こっちは従来型砲弾に対する安全距離
  ビスマルク以外の各艦はそれなりの安全範囲を持っているのが判るだろう
  SHSは従来戦艦の設計の前提条件である16インチ砲弾の威力を思い切り覆してしまったんだ
  確かに射程は短くなったけど、実用上は充分な射程距離だったしね
  大和の18インチ砲を除外して考えるなら最強の大砲だろうな
☆:戦艦の存在意義がその大砲であるなら
  最強の大砲を備えたサウスダコタ級は最強の戦艦になるのですねっ
S:それに速度も27ノットが発揮できる、これも必要な分は有ると言える
  素晴らしいのはこれを35,000t級でまとめた事だね
  勿論、条約の制限はオーバーしちゃってるんだけどね
☆:27ノットって速くは無いですよーっ
S:でも、実用上は問題にならない
  射程距離もそうだけど
  サウスダコタは必要充分な性能を判断した上でリソースを切り詰めているんだ
  必要なのは火力だったんだ
  そして、それなりに充実した防御力を持っている
  彼女が大海原で警戒すべきは大和ぐらいだ、他には優位だと言える、最強戦艦の一つだ

S:サウスダコタ級のもう一つの特徴は多数が建造されたと言う事だ
★:4隻ですね
S:ノ−スカロライナ級と合わせて6隻
  この戦力が一気に建造された事にも注意する必要が有る
  42年8月までに6隻が一気に登場するんだ
  米戦艦は20ノットの旧式艦から27ノットの新型に一気に世代交代されることになるんだ
  これが持つ意義は大きい、機動力を武器としてあらゆる戦場に急行する事が可能になったんだ
  結果としてサウスダコタ級は色んな戦場で活動する事になった
  それはサウスダコタの機動力と数量がもたらした恩恵だ
  大和の様に投入に躊躇いが生じるのは数量の問題がある
  米新型戦艦のアグレッシブな運用は機動力と数量があって初めて可能になったんだ
☆:でも、それって結局は国力の問題ですよねーっ
S:まあ、そういっちゃえばそれまでだけどね(^^;;


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