KANON in the AIR
Act.2 第二次世界大戦 欧州編



ウチュー人 ささき
crazy17@lanset.com





前回のあらすじ


第一次世界大戦で急激な発達を遂げた飛行機と機関銃は、大戦間機の平和な時代に穏やかな進歩を遂げていた。しかしナチスドイツのポーランド侵攻によって第二次世界大戦が勃発、世界は再び大戦争の悲劇にさらされる事になる。

恵地球のみなさーん、お元気でしたかー?ちょっぴりドジな 20 歳、コントラバス弾きが趣味の恵理子ですー!

彩ウチュー人の哀れな下僕、アシスタント兼メイドの彩華です。

さなーにが哀れな下僕だ、お前みたいに野蛮で狂暴な地球人を雇った方の身になってみろ。

彩誰が野蛮で狂暴なんですか、変態でロリコンのウチュー人にそんな口聞かれる筋合いはありませんっ!!

恵あーん、ケンカしないでください〜。

さほら、恵理子さんが泣いてしまったではないか。仕方ないから今日のところはこれくらいで勘弁してやる。

彩そっちこそ血を見ずに済んで良かったですね。

恵…ささきさんの血って何色かな…。

彩見たい?見せてあげようか?私は構わないわよ。

恵彩華さん、こわいです…。

さあーもう、しょっぱなから訳がわからん!おっ始めるぞ、前回の続きで第二次大戦欧州編、真っ先に血祭りに上げるのはドイツ航空機銃からだ!


第二次大戦:ドイツ編


願いを秘めた鳥の夢

彩それでは、狂気と正気が背中合わせた危険な工業技術の国・ドイツの機銃のお話です。

恵彩華さん、その表現ナイスですー!

さとりあえず時系列に沿って見て行こう。そもそもドイツは第一次大戦の敗北後ベルサイユ条約で兵器の所有を厳しく禁じられていた。戦闘機も爆撃機も軍用機と名の付くものは一切保有禁止、ベルト給弾の機関銃もダメだった。

恵ダメダメづくしですー。

彩戦闘機が無いんじゃ、武装コンセプトも語りようがないですね。

さしかしナチス党を初めとする右派勢力にとって再軍備は長年の悲願だった。1920 年後半に入るとスポーツ機と称する戦闘機や郵便機と称する爆撃機がドイツの空に登場し、やがて 1935 年ヒトラーの再軍備宣言によって新生ルフトバッフェがその覆面を脱ぐことになる。

恵映画で言えば悪役登場、じゃじゃじゃじゃ〜ん♪って感じですね。

彩でも、中身は He51 複葉戦闘機とか Do13 軽爆撃機とかあまりパッとしない凡庸な機体ばかりです。

さ凡庸ということはとりあえず世間並みということでもあり、ダメダメづくしから一気にここまで漕ぎ着けたことは世界を驚かすに充分だった。列強はこのハッタリに騙されてヒトラーの暴走を黙認する形になってしまい、あとで手痛いツケを払う破目になる。

恵でも、持っちゃいけない筈のベルト給弾機銃はどうやって調達したんでしょう?密輸入ですか?

さ機銃はラインメタル(Rheinmetall-Borsig)社よって秘密裏に開発されていた。これはスイスのソロサーン(Solothurn)社の MG30 を改造したものだ。

彩MG30 は陸戦用 MG34 の原形でもありますね。

さMG30 の開発にはラインメタルも深く関わっている。建前上は「弾倉式」の機銃を「スイスから輸入する」という形を取っていたが、最初からラインメタルでベルト給弾機銃を自前調達するつもりだった事は明白だ。

恵この頃のスイスとナチス・ドイツの関係ってドス黒いです…。

さソロサーン MG30 から MG15 旋回機銃がまず開発され、それを同調用に改修して MG17 固定機銃が開発されたと言われている。どちらも口径 7.92mm、反動利用式ショートリコイル作動、ボルト後部のラグに回転式カムが噛み込むロッキング機構は共通だ。

彩しかし 1933 年に 7.92mm 連装の複葉戦闘機では心細いですね。

さHe51 が間に合わせに過ぎないことはルフトバッフェも至極承知で、すでに大馬力・全金属・単葉の新世代戦闘機が秘密裏に開発されていた。これが有名なメッサーシュミット Bf109 だ。ドイツの駿馬として名機の誉れ高い機体だが、初期型 Bf109B(1937) の武装は He51 と同じ機首 7.92mm 連装に過ぎない。

恵貧相ですー。

彩一体何を考えてたんでしょう?

さ理由は色々あるだろうが、とりあえず「よくわからなかった」というのが本音じゃないかな。何せ彼等が空軍戦力を持つのは 20 年ぶりなのだ。新世代の戦闘機の武装についてどうあるべきか、それを検討する為の基礎データすら無い状態からのスタートだから仕方あるまい。

彩そして、ドイツはそんな状態で世界を相手に戦争を初めてしまったんですね。

さポーランドは予想以上に頑強に抵抗したが、密約によるソ連の奇襲もあって一ヶ月で陥落、ドイツはこれを「電撃戦」の名で世界中に宣伝した。戦略爆撃と空中戦艦はどこへやら、世界はこの新しい戦争の形に注目することになる。

彩電撃戦とは装甲車両と歩兵そして航空戦力を三次元的に組み合わせ、少数精鋭の機動戦力によって迅速に重点突破する戦法…とされています。

さ逆に言えば再軍備まもないドイツには予備兵力がなく、持久戦をこなせないが故に生まれた戦法とも言える。電撃戦力は「精鋭」だが「少数」である事も重要だ、すなわち第一波が撃破されれば第二波を放つ余裕はない。

恵ヒトラーは国運を賭けてバクチを打ってたんですねー!

さしかも不幸なことに彼は博打に勝ってしまった。もしこの時列強が本気でドイツを潰しにかかっていたら第二次大戦は5年早く終わったかも知れんが、ほとんどの国はまだ大恐慌の余波のなかにあり他国の運命に構っている余裕はなかった。

彩イギリスやフランスはポーランド侵攻に呼応して対独宣戦布告したものの、実質的には何の軍事行動も取っていませんね…。

さ自国に火の粉が飛んでくるまでは他人事だと考えていたのだろうな。ドイツの実力を過大評価していた事もあるだろうし、それはドイツ自身も同じだった。勝ち戦に自信をつけたヒトラーは更にレートを上げて狂気の博打を続けてゆく。

彩1940 年 5 月、オランダ・ベルギーを通路としてフランスに攻め込む破天荒極まりない作戦が開始されます。この時新型戦闘機の Bf109E が初デビューを飾っていますね。

さBf109E は待望の 1000 馬力エンジン・ダイムラーベンツ DB601 を搭載し、これにモーターカノンを積んで武装強化する筈だった。ところがエリコン FFS 20mm を購入して現物を合わせて見ると、シリンダ間隔が狭すぎて銃身が通らないことが判明したのだ。

恵何をやってるんでしょう?

彩ドイツ人って緻密なようでいて、こういう所が抜けてるんですね…。

さ大至急 DB601 に搭載可能なモーターカノン開発が発令されると同時に、Bf109E の火力強化計画も見直された。これが主翼搭載用の MG-FF 20mm で、エリコン FF をドイツで独自に改良したものだ。

恵MG-FF は製造工場の名前からイカリア(Ikaria) MG-FF と呼ばれることもありまーす。いかりや長介さんとは関係ないですよぉ。

彩エリコン FF の弾は 20x72RB ですが、MG-FF の弾はわずかに長い 20x80RB を採用していますね。少しでも初速を上げたかったのでしょうか。

さカタログ上ほとんど変わらんのだがな、ドイツ人的凝り性でいじらずには居られなかったのかも知れん。MG-FF は全長が短いためモーターカノンとして装備することも可能だったが、相性が悪く動作不良頻発で広く使われるには至らなかった。

彩結局、主生産型の Bf109E-4 は機首に MG17 を2挺、主翼に MG-FF 2挺の武装ですね。奇しくも日本の零戦とほぼ同じ装備です。

さ懸念された対フランス戦において旧式な MB.152 や MS.406 は Bf109E の敵ではなく、新鋭機 D.520 は数が足りず、平和ボケで時代遅れでガタガタの指揮運用もあってフランス空軍は一蹴されてしまった。かくして Bf109 は無敵の最強戦闘機として一伝説を築くことに成功したのだ。

恵ところで、ドイツでは空中戦艦構想の影響は受けなかったんでしょうか?

さ強いて言えば Bf110 双発戦闘機がそれに相当するな。MG17x4 + MG-FFx2 だから大口径重武装とは言えないが、弱い者いじめには相当な威力を発揮したようだ。

彩そして天狗になった独空軍はバトル・オブ・ブリテンに挑んで赤っ恥を掻くわけですね。


僕達の弱さがよかった

彩バトル・オブ・ブリテンは 1940 年 7 月からです。ヨーロッパ電撃戦で無敵を誇った Bf109 と Bf110 を向かえ撃つのはハリケーンとスピットファイヤ、どちらも 7.7mm 多連装が特徴ですね。

さ鈍重な Bf110 はたちまち馬脚を現わし、後方防御の単装 MG15 は気休めにしかならない事を証明した。曲がりなりにも戦闘機でこの有様だから、更に鈍重で同じくらい弱武装の爆撃機の運命は明らかだった。ドーバー海峡を超えて戻ってくる機体は軒並み穴だらけで戦死者や重傷者を抱えていたという。

恵悲惨ですー。

彩しかし、逆に言えば穴だらけになる程撃たれても墜ちない機体も多かったということですね。

さかくして英軍は 7.7mm の威力不足を痛感したのだが、ドイツ側も航空兵装に見直しを強いられた。Bf109E の主翼装備 MG-FF は初速が低く装弾数が少ないためなかなか当たらず、機首の連装 7.92mm では当たっても効果が少なかったのだ。取りも直さず威力不足の 7.92mm に代わる火器の配備が課題となる。

彩それが MG131 13mm 機銃ですね、登場は 1941 年頃とされています。製造元は MG15/17 と同じラインメタル、作動原理も同じソロサーン系の反動利用ショートリコイル式ですが、全長を短くするためロッキング機構が改良されています。

さもう一つ大きな違いがある、MG131 は全面的に電気発火方式(Electric Priming)を採用したのだ。つまり撃針が雷管を叩くのではなく、電極に電流を流すことで推進薬に引火する方式だ。これによって同調装置の設計実装が容易になる事は簡単に想像できるだろう、今までピアノ線や油圧管で伝えていた同調タイミングを電線に置き換えることができるのだからな。

恵MG131 は口径の割にコンパクトなのも特徴ですね。13x64B という使用弾に由来するのでしょうか。

さ逆だな、機関部を小さくする為にあえて弱装の短い弾を使ったと見るべきだろう。MG131 は MG15/17 を置換する為に開発された機銃だ、7.92mm 機銃のスペースを大改造することなく納まらなければ意味がないのだ。より高威力を求める新鋭機銃はモーゼル(Mauser)社に発注されていた。

彩それが MG151 ですね、MG151/15 と表記される事もあるようです。15mm というのは他にあまり例のない口径ですね。

さMG151 は DB601 エンジンに装備するモーターカノンとして開発されたのだが、ここでわざわざ 15mm 高速弾という未知の領域にチャレンジしてしまうのがまたドイツ人気質なのかも知れない。他国で 15mm 弾を量産したのはチェコの ZB vz60 重機関銃用 15x105 弾、ソ連の対戦車ライフル用 14.5x114 弾くらいだろう。

彩モーゼル 15x96 弾は弾頭重量 52〜72g、初速 850〜1030m/s となっています。高初速で知られたブローニング 12.7mm が 880m/s ですから凄い速度ですね、戦後の APDS 弾なみです。

さ命中率だけを考えれば初速は高いほど良いが、しかし物にはバランスというものがある。MG151 は強度の高いロティティング・ボルト機構を備えていたが、それでも凄まじい初速を受け止め切れず部品の破損などが絶えなかったそうだ。また、いくら高初速でもしょせん軽量弾ではパンチ力にも不満があり、ボアアップ版の形で登場したのが MG151/20 だ。

彩いわゆる「マウザー 20 ミリ」ですね。ちなみにマウザーは Mauser の英語風発音、モーゼルはドイツ語風発音だと思ってください。

恵松本零士さんの「爆裂弾道交差点」で読みました!すごい性能の機銃だったんですね!

さところが、カタログスペックで見る限り特に傑出した機銃じゃない。米英の使ったイスパノ 20mm にくらべ弾頭重量で約 3 割、初速で約 1 割劣り、発射速度はほぼ同等だ。

恵…あれれ(^_^;)?

さしかし重量はイスパノより 10Kg 近く軽く、全長は 60cm も短い。そしてクローズドボルト電気発火方式のため、この口径ながらプロペラ同調が可能だった。実際 Fw190 は主翼付け根に、Do335B は機首上面に MG151/20 を同調装備している。

彩航空兵装にとってサイズや重量は火力性能に匹敵するファクターなんですね。

さもっとも MG151 開発の契機となった肝心の Bf109 は機首にも主翼にも MG151/20 が収まらず、さりとてモーターカノン一挺に MG131 二挺では頼りなく、苦肉の策で主翼にガンポッドをぶら下げたりしているがな。

恵ささきさんって意地悪ばっかり言ってますね…。

彩いつもこうなんだから。気にしちゃ駄目よ、恵理子さん。

さだが、MG151/20 は 92g という軽量弾頭の割に大威力の炸裂弾を使用できた。これはドイツが独自に開発した Minengeschoss と呼ばれる薄殻榴弾だ。M-Geschoss と略されることが多いようだが、直訳すれば「爆雷弾頭」となるかな。日本では「鋼板搾出弾頭」と意訳していたようだ。

M-Geschoss
通常榴弾と M-Geschoss 榴弾(短遅延信管付き 20mm 弾頭)

彩MG151/20 を輸入した日本の機銃開発者がこの弾頭を見て仰天し、「我が国の技術では真似ることすらできない」と嘆息したという話があります。

さ普通、弾頭というものは金属塊を削り出して開口し炸薬や信管を詰め込むものだ。ところが M-Geschoss は薬莢と同様、板金を叩き出して弾頭形状に仕上げる製造工程で作られる。炸薬重量比はなんと約 80%、通常炸裂弾では 10% 前後だからその凄さがわかるだろう。

恵言うのは簡単でも、実際できるかどうかは別の話ですよね…。

彩弾丸は旋転しながら飛ぶものだから、叩き出し工程に狂いがあると重心が狂ってあさっての方向に飛んでいってしまいます。

恵発射の衝撃で変形してもいけないし、発射熱で炸薬が自爆してもいけないんですね。すごい総合技術力ですー!

さそもそも MG151/20 自体、精密プレス加工技術を駆使した鋼鉄の芸術品だったのだ。MG151 を捕獲したアメリカはその性能に惚れ込み、1943 年にロングアイランド工廠で海賊版 Cal.60(15.2mm) T17 機銃を数千挺も生産したが、製造不良が多くて実用に耐えず結局廃棄処分したエピソードまである。もちろん日本がホ-707 の名称で MG151/20 を生産した事実はない。

恵あれはフィクションだったんですか…。

さなお M-Geschoss 弾は MG151/20 の専売特許ではなく、MG-FF にも使われた。ただ MG-FF は弾頭重量変化に弱い API ブローバック作動方式のため、三割も軽くなった弾頭に合わせてスプリングを差し替える必要があった。この改良型を MG-FF/M と呼ぶ。

恵M は Modify ではなく M-Geschoss の頭文字なんですねー。

第二次大戦 ドイツ主要航空機銃
名称重量使用弾薬弾頭重量初速発射速度作動機構備考
Rheinmetall MG15 7.1Kg 7.92x57 11.5g 840m/s 1000rpmS-Recoil
Rheinmetall MG17 12.6Kg 7.92x57 11.5g 840m/s 1000rpmS-Recoil
Rheinmetall MG81 6.3Kg 7.92x57 11.5g 705m/s 1500rpmS-RecoilMG42 type locking
Rheinmetall MG131 16.6Kg 13x64B 34g 750m/s 900rpm S-Recoil
Mauser MG151 42Kg 15x96 57g 960m/s 700rpm S-Recoil
Mauser MG151/20 42Kg 20x82 92g 800m/s 700rpm S-RecoilMod MG151
Ikaria MG-FF 28Kg 20x80RB 134g 600m/s 520rpm API Mod.Oerlikon
Ikaria MG-FF/M 24Kg 20x80RB 92g 700m/s 540rpm API M-Geschoss
1m
WW2 主要ドイツ機銃


季節が残した昨日

ささて、1943 年を過ぎると第三帝国の未来は暗いものになり、祖国の空は米英の重爆撃機によって日夜の爆撃を受けることになった。これに対応すべく様々な新兵器珍兵器が開発されるのだが、航空機銃ではラインメタル MK108 が対重爆専用火器として開発された。

恵MK108 の特徴は短い銃身ですね、弁当箱からパイプが突き出したみたい(^_^;)

彩独特の形と発射音から Presslufthammer、「砕岩ハンマー」の渾名があったそうです。

さ銃身が短いのは 30x90RB という短い弾を使い、400〜500m/s という拳銃弾なみの低初速に収めているためだ。 反動が少なく機関部も軽量で済むし、ボルトストロークを短縮し発射速度を高める狙いもある。いかに低初速とはいえ 330g もある炸裂弾が一銃あたり秒間 10 発も吐き出されるのは脅威だぞ、しかも MK108 の弾は全て炸薬比率の高い M-Geschoss だ。

彩初速というひとつの性能を捨てることで、他の性能を実現したわけですね。

さ全てを同時に成立させようと躍起になるドイツ人の性格からすると珍しい妥協とも言えるな。MK108 は多くの部品をプレス加工で製作し自重 60Kg/全長 105cm というコンパクトさで、単純な API ブローバックのため可動部分も少なく、Bf109/Fw190 のような単発戦闘機にすら装備可能だった。MG151/20 のときにも述べたが、航空兵装にとって小型軽量であることは重要なのだぞ。

恵ドイツは他にも沢山の大口径機関砲を開発してますねー。

さ怒涛のソ連戦車を叩きたい東部戦線と、雲霞の重爆編隊を蹴散らしたい西部戦線。彼等が必死に大口径機銃を開発したのはわかるのだが、殆どがモノにならなかった。

名称口径開発年度解説
MG/C30 20mm 1935 対空機銃の航空用改造。発射速度が低く実用性低し
MG204 20mm 1937 飛行艇の旋回銃に一部採用。実用性低し
MK101 30mm 1937 モーターカノン用。発射速度が低く実用性低し
MK103 30mm 1943 モーターカノン用。いじくり回してる内に終戦
MK112 55mm 1944 MK108 の大口径版。Me262 搭載を目論むも間に合わず
MK114 55mm 1944 対空機銃の航空用改造。空飛ぶ高射砲台を目指すも間に合わず
MK214 50mm 1944 対戦車砲の航空用改造。Me262A-1a(V)に搭載、重過ぎて失敗
BK3.7 37mm 1943 対空機銃の航空用改造。東部戦線で一部活躍
BK5 50mm 1943 対戦車砲の航空用改造。目立った活躍なし
BK7.5 75mm 1942 対戦車砲の航空用改造。目立った活躍なし

恵…何をやってるんでしょう?

彩また例によって発明好きが裏目に出たんですね。

さしかも戦後の軍用機は凄い勢いでジェット化し、ロケット弾・ミサイルの進歩もあって発射速度の低い航空機関砲は省みられなくなった。だからドイツが必死になって開発した航空火器の殆どは進化の袋小路で消えていったのだ。

恵かわいそうです…。

さしかし、一つだけ大きな例外があった。それがモーゼル MG213C リボルバーカノンだ。

恵リボルバーカノン…パトレイバーのアレじゃないですよねぇ。

さ砲身から手前はガトリングガンとほぼ同じ原理だが、砲身は一本だけだ。薬室(チャンバー)が複数あって回転しながら装填−発火−排莢を並行して行う。言葉じゃわかりにくいだろうからアニメーション GIF を作っておいたぞ。

恵わーい、私アニメ大好きですー♪

彩恵理子さん…なんか勘違いしてません?

Revolver Canon
リボルバーカノン原理図(クリックするとアニメーション)

彩MG213C は 1500 発/分、口径を 30mm に拡大した MK213C/30 は 1200 発/分を実現しています。30mm 弾が秒間 20 発というのは凄まじい性能ですね。

恵20mm 版の初速 1050m/s もムチャクチャ速いですー。

さこれが 1943 年頃に完成して Me262 にでも積まれていたら米重爆は半分くらい生きて帰れなかったろうな。だがしかし例によって大戦には間に合わず、戦後は主に西側でコピーされ航空機関砲の一基本形態となる。

彩その話はまた戦後編、ということですね。

第二次大戦 ドイツ大口径航空火砲
名称重量使用弾薬弾頭重量初速発射速度作動機構備考
Rheinmetall MK108 60Kg 30x90RB 330g 505m/s 600rpm API
Rheinmetall MG/C30 64Kg 20x138B 134g 950m/s 300rpm S-Recoil Mod.AA gun(Flak30)
Rheinmetall MG204 55Kg 20x105B 134g 750m/s 400rpm S-Recoil
Rheinmetall MK101 180Kg 30x184B 447g 800m/s 250rpm S-Recoil
Rheinmetall MK103 141Kg 30x184B 330g 920m/s 400rpm Gas/Recoil
Rheinmetall MK112 275Kg 55x175RB 1475g 600m/s 300rpm API Enlarged MK108
Rheinmetall MK114 700Kg 55x450B 2030g 1050m/s 150rpm Gas Mod.AA gun(FLAK58)
Rheinmetall BK3.7 295Kg 37x263B 640g 820m/s 160rpm S-Recoil Mod.AA gun(FLAK18)
Rheinmetall BK5 540Kg 50x419R 1100g 960m/s 45rpm L-Recoil Mod.AT gun(PAK39)
Rheinmetall BK7.5 1000Kg 75x714R 3300g 933m/s 45rpm L-Recoil Mod.AT gun(PAK40)
Mauser MG213C 75Kg 20x135 112g 1050m/s 1500rpm Gas Rev.cannon
Mauser MK213C/30 75Kg 30x85B 330g 530m/s 1200rpm Gas Rev.cannon
Mauser MK214A 490Kg 50x419R 1100g 960m/s 160rpm Recoil Mod.AT gun(PAK39)
1m
WW2 ドイツ大口径機銃


追いかけて追いかけて

彩さてドイツ空軍の武装コンセプトは…どうまとめたら良いんでしょう?

恵初期の 7.92mm 同調武装ってのはわかりますが、その後は…15mm に 20mm に 30mm、モーターカノンが出たり消えたり、まるでバラバラですー。

さBf109 も Fw190 も米英の戦闘機にくらべ小柄で、主翼多連装に適していなかったのだろうな。

彩しかし Ta152 や Do335 など末期の高性能機でも相変わらず混載武装ですよ。Do335 なんて串型双発のくせに機首に MK103 モーターカノンと MG151 同調機銃を積むというゲテモノぶりです。

恵あの飛行機はカタチもゲテモノですけどぉ(^_^;)

さTa152 の武装案には MK103 軸内砲・MG131 同調銃・MG151/20 主翼銃・MG108 ガンパックというおよそ無茶苦茶な例もある。不思議なのはこんなに弾道バラバラな機銃を混載しながらも、武装の機首集中化には相当な努力を払っていることだ。

彩Fw190 の主翼付け根同調機銃とかですね。異種口径混載による照準困難は把握されていたんでしょうか?

さ彼等も素人じゃないから把握してたろうが、どこまで問題意識に上がっていたのだろうか疑問だな。それに大戦後半には戦爆連合の大編隊に立ち向かう必要上、高速・低威力の中口径機銃と低速・大威力の機関砲の両方を積む必要があったのだろう。

恵中口径多連装で妥協することを潔しとしなかったんでしょうかね。

彩MG151/20 主翼四連装なんて悪くなさそうなんですけどねぇ。Fw190A-8 では一度それをやったあと、Fw190D-9 や Ta152 では外翼銃を降ろしてしまっています。ロール性能低下が気になったのでしょうか。

さそのくせ火力増強ガンパックなんて飛行特性ガタ落ちな代物を持ち出すから更にわからん。何だかドイツ戦闘機に確たる武装コンセプトはなく、試行錯誤しながら「理想の機銃」を捜し求めているうちに戦争が終わってしまったように思えるな。

恵理想を追えば追うほど、現実とのギャップが大きくなって行ってるみたいですー。

彩頭上に重爆の大群が来ているのに、成層圏を跳躍して地球を一周する爆撃機の構想を大真面目に考えてる人達ですからねぇ。

さ戦闘機だけではないのだが、優れた技術やアイデアを持ちながらも、それを実戦に用いるより夢を追いかける方に浪費してしまったようだ。ドイツ人は戦争に向いていない民族なのかも知れんな。


第二次大戦:イギリス編


奇跡の足音

さバトル・オブ・ブリテンの話が出た流れで、次は英国に行ってみよう。

恵7.7mm 多連装の世界ですね!

さその少し前には第一次大戦後から変わり栄えのしない複葉機に連装ヴィッカースを積んでいたのだが、1930 年代中頃から方針が変わり始める。英国の近代的戦闘機第一弾は 1934 年のグロスター・グラディエーター(Gloster Gladiator)だ。

カッコ良い
Gloster Gladiator Mk.I

彩…どこが近代的なんですか。

さなんと罰当たりなことを言うのだ。グラディエーターは外見こそ古臭いがな、中身は…いや、中身だってやっぱり古臭いが、羽布張り複葉機のくせして主翼に機銃を搭載する無茶をやったことで記録されるべき機体なのだぞ。

恵無理して誉めなくてもいいですよぉ(^_^;)。

彩グラディエーター Mk.I は胴体左右に同調式ヴィッカース、主翼下部のポッドになんとルイスを搭載しています。改良型 Mk.II(1938)では四挺とも新鋭ブローニング.303 機銃に換装されていますね。

さブローニング.303 は米国の M1918 Cal.30 の従兄弟にあたる機銃で、英国がその豊富な知識と経験を投入して完成させたものだ。彼等は何よりも発射速度向上に心血を注ぎ、1200 発/分を達成することに成功した。

彩記録によると 1933 年のトライアルでヴィッカース、ホチキス、ダルネ、マドセン、そしてコルト・ブローニングが比較検討された結果コルト・ブローニング MG40/2 を選定、英軍独自の弾薬に合わせる改良を施し 303 Mk.I として採用していますね。生産は 1938 年から開始されています。

さ統計によると一回の空中戦において射撃チャンスはせいぜい5、6回、一回の射撃時間は2〜3秒程度という事がわかっていた。この限られたチャンスを戦果につなげる武装はどうあるべきか、まずは下の表を見てほしい。

口径発射速度投射密度
発/秒
搭載弾数射撃時間
7.7mm 1200rpm20300rnd15sec
12.7mm 600rpm 10200rnd20sec
20mm 600rpm 1060rnd 10sec

彩射撃チャンスが理論通りだとすると持続射撃時間は 10〜18 秒が必要十分になるわけですね。

恵20mm の 60 発ドラム弾倉だとゼンゼン足りませんね…。

さそしてペイロード問題がある。投射密度を上げるには多連装化の必要があるが、限られた重量のなかで何挺を搭載できるのか。必要な装弾数は発射速度から逆算できるので、例えば武装ペイロード 200Kg で搭載可能門数を比較してみよう。

口径自重弾薬重量15 秒射撃に
必要な弾数
一挺あたり重量
(本体+弾薬)
200Kg 以内で
搭載可能門数
総投射密度
発/秒
7.7mm 10Kg 30g 300rnd 19Kg 10 200
12.7mm30Kg 120g 150rnd 48Kg 4 40
20mm 50Kg 200g 150rnd 80Kg 2 20

恵20mm x 2 門の重量で 7.7mm だと 10 挺!!

彩ちょっと待ってくださいよ。投射密度ばかり言ってますが、当たっても効かなかったらどうするんです?前に「金属機に対して 7.7mm は効果が薄い」って話が出たと思うんですけど。

さうむ、投射密度に弾頭重量を掛けたものが投射質量になるが、それを比較すると次のようになる。この数字だけ見る限り威力は大差ないぞ。

口径弾頭重量投射密度
発/秒
投射質量
g/秒
7.7mm 10g 20x10=2002000
12.7mm50g 10x4 =40 2000
20mm 120g 10x2 =20 2400

彩数字だけ見てるとそうなんですが…なんか騙されてる気がします、話が出来すぎじゃないですか?それにいくらバラ撒いてもしょせん 7.7mm では…。

さイギリスには秘密兵器があった。第一次大戦の飛行船狩りで活躍した特殊弾頭があったろう?それを発展させたものがブローニング.303 にも使われていた。正式名称を「Incendiry.303in B.Mark IVz*」、一般にはデ・ヴィルデ(De Wilde)の秘匿名称で知られている。

彩秘匿名称のほうが一般に知られているって変な話ですね?

さデ・ヴィルデとは人名でスイスの発明家だったらしい。彼は自分の開発した焼夷弾丸を世界中に売り込んでいたらしいが、B.Mk.IVz 弾はそれとは無関係に英国人オウブリー・ディクソン(C. Aubrey Dixon)によって開発されたものだ。だが弾丸の正体を隠すため、あえて紛らわしい「デ・ヴィルデ」の名称を付けたという。

恵イギリス人の秘密主義って時にいやらしいですー。

さ英戦闘機の .303 弾帯は通常弾に徹甲弾とデ・ヴィルデを混ぜて装填してあった。徹甲弾で装甲とガソリンタンクをぶち抜きデ・ヴィルデで発火させ止めを刺す発想だな。これが一銃あたり秒間 20 発、8 連装だと秒間 160 発降り注ぐのだぞ。

恵ドイツ爆撃機が穴だらけになる訳ですー。

英軍 .303 弾頭
英軍が第二次大戦で使った .303 弾頭

彩…でも、墜ちなかったんですよね。

さ英軍の計算どおり、多弾数を撃ってとにかく当てるという目的は達成した。だがドイツが装甲板と防漏タンクを採用すると 7.7mm では当たっても墜とせなくなってしまった。7.7mm 徹甲弾では 100m まで接近して撃角 90 度でも 7〜8mm 装甲しか抜けないから、実際の戦闘距離で装甲板はほとんど射抜けなかったろうな。He111 など数百発被弾した機体が生還した例があるという。

彩ご自慢のデ・ヴィルデはどうなったんです?

さ表面でパチパチ弾けて火花を出すので、着弾確認に便利だったという話がある。逆に言えば金属機に対する貫通力不足で期待したほどの効果は得られなかったようだ。

彩あーあ。

さデ・ヴィルデは発火しながら飛翔するため弾道追跡にも役立ったという。当時の曳光弾は重量が軽くGをかけながら撃つと重い徹甲弾の弾道と分離したらしいが、デ・ヴィルデの弾道特性は徹甲弾に一致していたのだそうだ。「だからデ・ヴィルデは有効だった」と英国人は言うが、彼らが自国の兵器を誉めるときは眉に唾を塗らねばならないな。

恵ささきさんはウチュー人だから眉毛ないですねー。

彩だから時々変な資料に騙されてトンチンカンな事を言うんですね(笑)

さ…ったく、この小娘どもが…(怒)


両手には降り注ぐかけらを

さとにかく 1930 年代、英国は得意のオペレーションリサーチによって多銃主義に辿り着いた。ブローニング 303 機銃は単位時間内に可能な限りの多弾数を吐き出す銃として設計され、ハリケーンもスピットファイヤもフルマーも 8〜12 挺の多連装を装備した。こうなると機首同調なんてチャチなことは言ってられない、全機銃を主翼に搭載する方針を世界ではじめて確立したのだ。

恵スピットファイヤなんて思いっきり翼端にまで機銃を積んでいますが、弾道が散って困ったりしなかったのでしょうか?

さ航空機銃はわずか上向きに搭載され、特定の距離で落差が照準線に一致するように調整されている。これを弾道交差点と呼ぶが、主翼装備銃の場合左右の弾道もここで交差するように調整する。英軍パイロットは一点集中よりも各銃ごとに交差点をずらし、目標の前後左右を弾幕で包む込むよう調整することを好んだようだ。

収束弾道 分散弾道
一点集中弾幕分散

彩射撃距離はバトルオブブリテン初期に 400 ヤード(360m)でしたが、実戦では遠すぎて当たらない事が判明してすぐに 200〜250 ヤード(180〜220m)に改められたようです。

さ装弾数は各銃あたり 300 発、オペレーションリサーチの計算どおりだな。対する Bf109E は機首 MG17 が片銃あたり 1000 発、主翼の MG-FF が 60 発。機首銃は連続射撃一分以上に耐えるが、航続距離の短いメッサーにこんな沢山の弾を積む必然性がよくわからん。

彩対して MG-FF は 7.2 秒、2、3連射で弾切れです。迎撃戦ならともかく、侵攻作戦に向く兵装じゃありませんね。

さBf109E は旋回性に優れたドッグファイターだったが、その兵装は少々チグハグで機体特性にマッチしていたとは言いがたい。一方、全銃の弾道特性が揃った英軍機は目標の見越し方向に弾幕を張る偏差射撃に向いていた。

恵…でも、当たっても墜ちなかったんでしょー?

さ当時の英軍パイロットは実戦経験の少ないヒヨッ子揃いだったんだぞ。とにかく敵機に弾を当てさせ、戦果を持たせる事が先決だった。墜とせなくても被弾すれば死傷者が出るだろうし、穴の開いた飛行機は修理せねばならんから出撃率が落ちる。そこまで計算づくだったとは言わないが、結果的に 7.7mm はバトルオブブリテンの勝利に大きな貢献をしたと言えるだろう。

彩結果論で言えばそうですが、やっぱり威力不足は明白ですね。

さ英軍でも 1935 年に大口径砲を検討している。空中艦隊思想の影響を受けてヴィッカース 40mm なんてイロモノに走ったりもするが、本命はフランス製のイスパノスイザ HS.404 20mm 機銃のライセンス生産型イスパノ Mk.II だった。

彩もともとイスパノスイザ HS.12Y エンジンに組み合わせるモーターカノン用に開発された機銃ですね。作動は基本的に反動利用のショートリコイルですがロック解放をガス圧で行う凝ったメカを備えています。全長 2.5m 自重 50Kg というのは下手な 30mm 機銃を上回りますね。

さ威力も凄まじいぞ、20x110 弾の 130g 弾頭を初速 880m/s で叩き出すのだ。MG151/20 の 92g 800m/s はもちろんエリコン FFL の 128g 750m/s も大きく上回る。

恵エリコンだって FFS なら 128g 830m/s ですよ、ばかでかいモーターカノンと主翼装備用機銃を比較するなんて不公平です!

さそのばかでかい銃を単座戦闘機に搭載してしまうのがイギリス人の恐ろしいところだ。最初は双発単座のワールウィンド(Westland Whirlwind) の機首装備(x4)に、次にスピットファイヤの Mk.IB の主翼(x2)に搭載された。実戦の結果 20mm の威力は絶賛されたが、60 発入りドラム弾倉の容量不足と故障多発が報告された。

彩1941 年までにベルト給弾ユニットが設計され、それ以降の標準装備となっていますね。スピットファイヤの場合一挺あたり 120 発を装填していたようです。

さ投射密度は 4 連装で 40 発/秒、投射質量は何と 4800g/秒だ。しかしイスパノ 4 挺に各 120 発を付けると約 300Kg になる。スピットファイヤは Mk.V 以降で武装変更が容易な C 翼になったが、多くの機体が 20mm x 2 + 7.7mm x 4 の混載にしていたのは重量問題があったのではないかな。

恵20mm 二門で 7.7mm 10 挺ぶんですからねぇ…。それに装弾数 120 発で射撃時間 12 秒だとちょっと足りない感じですー。

彩スピットファイヤとならぶ英国の救世主、ハリケーンの主生産型が 1941 年には早くも 20mm x 4 の Mk.IIC にシフトしているのとは対照的ですね。

さハリケーンは分厚い翼が機関砲装備に適していたのと、戦闘爆撃機的な運用を求められた為だろうな。スピットファイヤの混載武装は苦肉の策だったと思う。グリフォンエンジンを積んだ Mk.21 以降の E 翼では 20mm x 4 が標準装備となるが、後継機のタイフーンが順調に実用化されていたらこんな物を作る必要はなかったろう。

翼がたくさん
英国戦闘機武装形態

恵タイフーンって分厚い主翼からこれ見よがしに主翼機銃を突き出していますね。不思議なことに改良型のテンペストでは主翼の中に収まっていますが。

さ取り付け方法も改良されたのだが、機銃そのものも違うのだ。タイフーンの機銃はイスパノ Mk.II だが、テンペスト(初期型を除く)に搭載されたのは銃身の短いイスパノ Mk.V だ。ちなみにテンペストの装弾数は 150〜200 発だったらしい。

彩イスパノ Mk.V の開発は 1943 年、発射速度向上のため銃身を約 30cm 短縮し軽量化のため再装填機構を省略しています。これによって発射速度 25% 向上、重量 16% 軽減、しかも初速は 3% 強しか落ちていません。

さそれでも全長 2.2m もあるとか、独特の作動機構のため銃架が複雑になるとか、同調装備できないとかの欠点もあるが、総合的に見てイスパノ Mk.V は第二次大戦中に実用化された最優秀の航空兵装だと言える。アメリカの従兄弟 AN-M3 や M24 と並んで戦後 20 年以上も使われたのだ。

恵こんなに優秀な機銃なのに、本家のフランスでは大して活躍してないのは皮肉ですねー。

さなお、英国の旋回機銃は 7.7mm だった。動力銃座にはブローニングが使われていたが、人力銃座には主にヴィッカースK型(Vickers Class K)が使われた。これはルイスの後継機として 1935 年に開発されたものだ。同調機銃として名高い反動利用のE型とは全く異なるガス圧駆動の旋回用機銃で、ヴィッカース・ガス・オペレーション略して VGO と呼ばれることもある。

彩皿型のドラム弾倉を使うため外見がルイスに似ていて、時々誤記されることがあるようですね。

さ外見は似ていてもルイスより 20 年新しい設計だ。発射速度は 750rpm から 1100rpm に向上し、整備性・耐久性・信頼性も大幅に向上していた。高い発射速度が評価され英軍の特殊部隊(SAS)に採用されたこともある。

恵そういえばタミヤ 1/35「砂漠のネズミ」改造ジープのプラモに付いてましたー。

彩松本零士にタミヤMMシリーズ…恵理子さんって意外にマニアックなんですね。

恵えーん、ひどーい。彩華さんまでそんな事言うなんてー。

第二次大戦 イギリス主要機銃
名称重量使用弾薬弾頭重量初速発射速度作動機構備考
Vickers E 11Kg 7.7x56R 11.2g 723m/s 850rpm S-RecoilMaxim
Browning 303 9.9Kg 7.7x56R 11.2g 811m/s 1200rpmS-Recoil
Vickers K 9.3Kg 7.7x56R 11.2g 732m/s 1100rpmGasVGO
Hispano Mk.II 50Kg 20x110 130g 880m/s 600rpm Gas/Recoil(Mod.HS404)
Hispano Mk.V 42Kg 20x110 130g 850m/s 750rpm Gas/Recoil(Mod.HS404)
1m
303 一族
Hispano Mk.II
Hispano Mk.V


もう泣かない

さ次は大口径砲に行こう、まずはヴィッカースのS型(Vickers Class S)、以前にも何度か出てきた 40mm 機関砲だ。作動は反動利用のロングリコイル式、もともと空対空用に開発されたがこの目的には使い物にならず、のちにハリケーン IID に搭載され対戦車用として使用された。

彩重量 134Kg、40x158R 弾使用。弾頭重量 760g、初速 730m/s、発射速度 100 発/分、ドラム弾倉で装弾数 15 発。ただし 1130g 徹甲弾頭を使用した場合、初速は 615m/s に落ちます。

恵たった 15 発…役に立ったんでしょうか?

さ同じ目的で使われたドイツの BK3.7 が重量 300Kg で 12 発なのに比べるとマシだろう。もっとも両翼に重荷をぶら下げたハリケーンは鈍重で空戦能力が皆無に近く、対戦車ロケット弾の実用化とともに一線から引き下げられたようだ。

彩40mm 徹甲弾は 400m で 50mm 鋼板を射抜く貫通力を持ったそうですが、これでもタイガー戦車相手には「力不足」とされたようですね。英軍の対地ロケットは貫通力が低い代わりに炸薬量が多く(弾頭重量 27Kg)、直撃でなくともキャタピラや転輪を吹き飛ばすことで戦車の動きを止める効果があったようです。

ささて英軍のトリを務めるのは「6ポンド砲(six-pounder)」の通り名で知られているモリンズM型(Molins Class M) 57mm 自動砲だ。もともと装甲車に積む速射砲として開発されたが、ドイツ戦車の重装甲化に伴いお蔵入りになったあと航空用に転用された経緯を持つ。

恵なんだかドイツの BK シリーズと似た経緯ですね。

さ自重 816Kg はドイツの BK5(540Kg) より遥かに重く、弾頭重量は BK5 の約 3 倍 3170g に達する。作動は反動利用のロングリコイル式で発射時に砲身は 80cm も後退し、電動ラック式の弾倉には 22 発が搭載可能。こんなバケモノみたいな大砲を積むにはバケモノ級の機体が必要だが、英軍にはそれがあった。

彩「木製の驚異」デハビランド・モスキート(De Havliland Mosquito)ですね。

さモスキート FB.Mk XVIII、通称「ツェツェ(Tsetse)」モスキートだ。モスキートの多用性を象徴する存在として有名な機体だが、実はたった 27 機しか生産されていない。その全機がビスケー湾のUボート狩りに配属され、実害もさることながら大きな心理的被害を与えることに成功したという。

彩57mm 徹甲弾は水中数メートルでもUボートの圧力殻を貫通したようですね。援護に来た Ju88 と撃ち合って 57mm を命中させ一発でバラバラにしたという珍しい記録も残されています。恐れをなしたドイツ海軍はモスキート行動海域でUボートの昼間浮上航行を原則禁止、これにより稼働率が大幅に低下したようです。

恵イギリス人を怒らせると怖いですー!!

さ第二次大戦中に英国で試作された航空火器は他国に比べるとずっと少なく、ここに紹介した以外にほんの3〜4機種程度しかない。手当たり次第に試作できる余裕がないほど追い詰められており、出来上がった火器は無理矢理にでも実用化しなければならない事情もあったのだろう。

彩クラスSやクラスMはその象徴ですね。

恵どちらも別の目的で作って失敗した機銃を流用したんですねー。

さロールスロイスでは 12.7mm 機銃も試作していたが米国供与のブローニングが入手できたこと、イスパノ 20mm が成功したことによってキャンセルされている。イスパノには長くて重くて装弾数が少ないという欠点もあったが、目前の戦局に必要な性能を満たせば良いと割り切ったのだろう。

恵理想ばかり追いかけてるどこかの国とは大違いですー。

さそれが吉と出るか凶と出るかは状況次第で、必ずしもドイツの理想主義が悪いわけではない。だが短期間に目的を決しなければならない戦争という事態には、イギリス人の現実主義の方がより適していたという事なのだろう。

第二次大戦 イギリス大口径航空火砲
名称重量使用弾薬弾頭重量初速発射速度作動機構備考
Vickers S134Kg 40x158R 760g 730m/s L-Recoil 100rpm
Molins M 816Kg 57x441R 3170g 790m/s L-Recoil 60rpm
Vickers Class S
1m


第二次大戦:ソビエト編


明日の出会い

さ全地球の労働者諸君、いよいよ我らがソビエト連邦における航空機銃の紹介であるっ!

恵うらーっ!!

さ歌えインターナショナル!♪起て飢えたる者よ〜今ぞ日は近し〜♪

彩…二人して何バカやってんですか。

さいや、ソビエト機銃はあまり知られておらず資料も少ないので気合を入れて行こうと思ってな。

彩要するに書けることが少ないから記事を水増しって訳ですね。

さうぐ…と、とにかく始めるぞ、1917 年革命後のソビエト連邦成立からだ。帝政ロシアは世界各国から雑多な軍用機を買い集めていたが、革命後のソビエト連邦は世界の孤児となり、事実上の鎖国状態に追い込まれた。しかもスターリンの大粛正によって優秀な技術者は収監処刑されたり海外亡命する有様だった。

彩巨人機イリヤ・ムロメッツ(Ilya Muromets)の生みの親、後にヘリコプターで有名になるイゴール・シコルスキー(Igor Sicorsky)もこの時アメリカに亡命していますね。

恵スターリンさんって自分の首を絞めてますー。

さI-1〜I-6 までシロート集団による「できるかな」状態の試行錯誤が続いたのだが、ここで意外な助っ人が現れる。ベルサイユ条約で航空機開発を禁じられたドイツが、技術供与を餌にソビエトで秘密裏に研究を行うことを持ち掛けたのだ。この奇妙な関係は 1922 年から 1933 年まで 11 年間続く。

彩俗にいう覆面空軍(Clandestine Air Force)ですね。

さドイツの本音は共産主義を嫌っており最新技術を渡さなかったが、時代遅れの技術でもソ連には有難い贈り物だった。1928 年に買った中古のハインケル HD-37 複葉機は BMV VI エンジンともども I-7 として制式に量産されている。

彩BMV VI はミクーリン(Mikulin)系エンジンの基礎となっていますね。戦後には AM-47 3100hp なんて化物に発展してます。

さスターリンの梃入れもあったのだろうが、この頃からソビエトの航空技術は急激な発展を見せるようになる。I-14 と呼ばれたツポレフ ANT-31(1933) は低翼単葉引き込み脚で、主翼に機関砲を二門積むという世界の趨勢を 4〜5 年先取りした斬新な設計だった。しかし斬新に過ぎて受け入れられず、複葉で 7.62mm 同調機銃二挺の I-15 がソ連空軍の主力戦闘機となる。

彩I-15 の初期型に使われた機銃は PV-1 と呼ばれています。Pulemyot Vozdushnyi 1 …「航空機銃1号」という投げやりな命名ですね。マキシム機銃を航空用に改良したもののようで、性能的にも第一次大戦の MG08/15 と大差ありません。

恵時代錯誤…とも言えませんね。日本でもまだライセンス生産のヴィッカースがバリバリの現役なんですから。

さだが新鋭機銃の開発は既に始まっていた、それが 1933 年に完成した 7.62mm ShKAS だ。Shpitalnyj Komaritskij Aviatsionnyj Skorostelnyj、「シュピターリン・コマリスキー式航空機銃」程度の意味らしい。

恵ロシア語の発音規則なんてわかりませんが、「シカス」と発音するんでしょうかねー。

さI-15 の改良型 I-15bis, I-152, I-153 等は ShKAS を四挺搭載していた。グラディエーターと異なり二挺が機首上面・二挺が機首側面と全てプロペラ回転面内の同調式で、のちのソ連戦闘機の機首集中主義の萌芽を見るようで興味深い。

愛複葉機ポリカルポフちゃん
Polokarpov I-15bis

彩ShKAS は 7.62x54R 弾使用で作動はガス圧式、デグチャレフ DP 軽機のメカを軽量化・高発射速度化させたものらしいですね。重量 10.6Kg、弾頭重量 9.6g、初速 825m/s、発射速度なんと 1800 発/分です。

さ更に飽くなき発射速度向上を求めるロシア人は 1937 年に Ultra ShKAS を開発、発射速度は 2500〜3000 発/分に達したという。

恵イギリス製ブローニング 303 の倍以上です!秒間 50 発ってムチャクチャですよぉ、300 発弾帯が 6 秒で無くなっちゃいます!

さ流石にこれはやりすぎで、少数が製造されたにとどまったらしい。それにソ連空軍は 1936 年のスペイン内乱で実戦経験を積み、7.62mm の威力不足を既に体験していた。

恵ドイツも同じ経験をしたはずなのに、戦闘機の武装強化はバトルオブブリテンで痛い目に会う 1940 年までモタつくんですよね。何やってんでしょう。

彩きっとゲーリング元帥が「Bf110 があるんだから単発戦闘機に大火力なんて要らん」とか「戦闘機を振り切れる我らの高速軽爆に重防御武装なんて要らん」なんて言って戦訓のもみ消しをやったんでしょうね。

さソ連空軍は対地直協任務を重視した為だろうか、かなり早い時期から積極的に中・大口径機載砲の開発を始めていた。1935 年には ShKAS を大型化した 12.7mm ShVAK が登場しているが、性能的に中途半端で競作相手の BS が採用されている。

彩BS は Berezina Sinkhronnyj「ベリツィン同調機銃」の略でしょうね、1940 年に改良型の UB が完成してます。UB は Universalnyj Berezina で「ベリツィン汎用機銃」の意味ですね。装備形態によって同調用の UBS、主翼装備用の UBK、旋回機銃用 UBT の三種類があったようです。

さガス圧利用式、重量 25Kg、12.7x108 弾、弾頭重量 48g、初速 860m/s、発射速度 1000 発/分。ブローニング M2 より軽くて火力は同等という優秀な機銃だ。一方、不採用となった ShVAK は 1936 年に口径を拡大した 20mm ShVAK として復活する。

彩ShVAK は Shpitalnyi Vladimirov Aviatsionnaya Krupnokalibernaya、「シュピターリン・ウラジミーロフ式航空用大口径銃」の意味ですね。「シヴァク」と発音するんでしょうか。作動は ShKAS 譲りのガス圧利用、自重 42Kg、22x99R 弾、弾頭重量 97g、初速 860m/s、発射速度 800 発/分、しかも設計当初からベルト給弾可能です。

恵殆ど MG151/20 と同じ性能じゃないですか!こんな凄い機銃をソ連は 1936 年に持っていたんですか?

さ20mm ShVAK は凄すぎてまだ積むべき飛行機がなく、I-153P(機首同調) や I-16 type17(主翼装備) に搭載されたが性能的にアンバランスだった。ShVAK がその真価を発揮するのは、LaGG-1 や Yak-1 など次世代戦闘機が登場する 1941 年まで待たねばならない。

恵機銃だけが完成しても、それを搭載する高性能機に必須の大馬力エンジンが遅れていんたんですねー。

彩その遅れに乗ずるかのように、ヒトラーは 1941 年 6 月独ソ不可侵条約を破棄してバルバロッサ作戦を発動。ソ連にとっての「大祖国防衛戦争」が始まります。

第二次大戦 ソビエト主要機銃(1)
名称重量使用弾薬弾頭重量初速発射速度作動機構備考
PV-1 14.5Kg 7.62x54R 9.6g 800m/s 700rpm S-Recoil Mod.Maxim/Vickers
ShKAS 10.6Kg 7.62x54R 9.6g 825m/s 1800rpm Gas
UB 25Kg 12.7x108 48g 860m/s 1000rpm Gas
ShVAK 42Kg 20x99R 97g 860m/s 800rpm Gas
1m
WW2 ソ連主要機銃(1)



雪解けを待っていた子供のように

さ度重なる警告・予兆にも関わらずスターリンはドイツの侵入に全く備えておらず、スペイン内乱で貴重な戦訓を積んだ指揮官達は台頭を恐れて粛正されていた。ドイツ軍は弱い相手に滅法強く、ただでさえ旧式な I-153 や I-16 が主力のソ連空軍は数日で壊滅したという。

恵バトルオブブリテンで評価の怪しくなった Bf109E や Bf110 が弱いもの相手に大活躍を見せたんですねー。

彩ドイツ陸軍も向かうところ敵無しで、単体での性能で優る新鋭 T-34 中戦車や KV-1 重戦車も下手っぴな運用のため各個撃破されてしまったそうです。

さまさに祖国存亡の危機だが、危機の一端を招いた元凶のスターリンはここで冷静かつ冷酷な判断を下す。旧式兵器による絶望的抵抗によって時間を稼ぎつつ、兵器生産施設を遥か後方ウラル山脈の東まで後退させたのだ。この為に新兵器の生産は半年〜一年遅れることになるが、1942 年以降はドイツ爆撃機の及ばぬ工場から続々と送り込まれることになる。

恵代表的なのがドイツ陸軍から「黒死病」と恐れられたイリューシン Il-2「シュトルモヴィク(Ilyushin Il-2 Sturmovik)」地上攻撃機ですね。

さシュトルモヴィクの牙となったのが 23mm VYa 機関砲だ。設計者 Volkov and Yartsev の頭文字だというが、「VYa」をどう発音するのかサッパリわからん。

彩VYa は 1941 年開発、作動はまたもやガス圧利用、重量 66Kg、23x152B 弾使用、弾頭重量 200g、初速 880m/s、発射速度 600 発/分となっています。徹甲弾は射距離 400m で 25mm 装甲を貫通する威力を持ったそうです。

さシュトルモヴィクはこれを両翼に一挺づつ搭載した、よく誤解されているのだがモーターカノンではない。シュトルモヴィクに搭載されたミクーリン AM-34 は BMV VI の発展型で、構造上モーターカノン装備に向いていなかったのだ。だから同系列のエンジンを積んだ MiG-1/MiG-3 にもモーターカノンはない。

彩ソ連もう一つの液冷エンジン、クリモフ(Klimov) VK-105 系はイスパノスイザ 12Y の発展型ですからモーターカノンと相性が良かったようですね。

さM-105 を積んだ LaGG-1/3、Yak-1/7/3/9 は ShVAK モーターカノン一門に 7.62mm ShKAS 二挺ないし 12.7mm UBS を同調装備し、これが大戦中期ソ連戦闘機の基本パターンとなった。Yak-9T や Yak-3T などモーターカノンに NS-37 37mm 砲を装備したものも作られたが、さすがに重荷に過ぎて少数生産にとどまったらしい。

彩NS-37 は 1941 年開発、ソ連機銃には珍しく反動利用のショートリコイル式ですね。NS とは例によって開発者二人 Nudelman と Suranov のイニシャル。重量 170Kg、37x195 弾使用、弾頭重量 735g、初速 900m/秒。発射速度 300 発/分ってホントでしょうか、このクラスの機関砲としては非常に高い値です。

さショートリコイル式は発射速度を上げやすい代わりに反動が強くなる欠点がある。Il-2/3M はこれを両翼下に一挺づつ積むという無茶をやっているが、よほど頑丈な機体だったのだろうな。

恵でもソ連って I-16 で世界に先駆けて主翼機銃を実用化した割に、主力戦闘機のほとんどが機首集中武装なんですね。

さこれは戦術運用思想云々より、生産整備性を最優先にした為らしい。またこの頃のソ連戦闘機は翼が木造ベニヤ張りのものが多く、主翼機銃装備に適していなかったことも理由だろう。

彩1942 年には空冷 Ash-82 エンジンを積んだ La-5 が登場しています。この機体も主翼銃なしですが星型エンジンなのでモーターカノンが積めず、機首同調の 20mm ShVAK 二挺だけというのは少々心細い気がしますね。

さ1944 年からは発展型の La-7 が生産されているが、相変わらず機首集中武装だ。機銃は同じ 20mm だが新型の B-20 となり、タイプによっては三挺が同調装備されている。戦後の試作型 La-126(1946)では機首に 20mm x 4 連装、更に発展した La-9 では 23mm x 4 連装にエスカレートしている。これは同調機銃装備の最多記録だろうな。

彩B-20 は 12.7mm UB の拡大型で例によってガス圧利用、重量 25Kg、20x99R 弾使用、弾頭重量 97g、初速 800m/s、発射速度 800 発/分となっています。API 発火でもないのに 20mm 機銃で重量 25Kg ってのは凄いですね。

さ消耗品と割り切って耐久寿命を思い切り短く設定したのだろうな。B-20 は登場時期が遅く第二次大戦ではあまり活躍していないが、総合性能でイスパノ Mk.V を上回るかも知らん。しかも弾は 20mm ShVAK と互換性があるのだ、新型機銃を作るたびに弾も新しくこさえる何処かの国とは大違いだな。

恵ささきさん、意地悪ですー!

彩20x99R 弾は機関砲弾には珍しく薬莢先端を絞っていないストレートケースですね。もともと 12.7mm だったのをネックアップしたのでしょうが、これで 800m/s という高初速を実現できたのはちょっと不思議です。

さ弾頭重量が軽いためかも知らんが、ホ-5 は更に軽い 80g の減量弾で初速 735m/s のヘッポコぶりだからなぁ。ソ連は機銃の寿命が縮むことを承知の上で強力な推進薬を詰め込んだのかも知れん。どうせ航空機銃なんて数千発も撃つ前に墜落や不時着でオシャカになるのだから、これは合理的な選択と言える。

彩強装弾によって性能を確保していたとすると、その裏には優れた材料工学や加工技術があった事になりますね。

さソ連といえば「質の不足を数でカバーする」とか「しょせん西側のコピー」というような印象があるが、冷戦時代のプロパガンダで偏ったイメージを植え付けられているようだな。今ここで高らかに宣言しよう、我らがソビエトの技術力は世界一イィィッ!!

恵うらーっ!!

さ♪いざ闘わん〜いざ奮い立て〜♪あぁ〜インカ帝国〜我等がもの〜♪

彩ま、またそうやってセコイ字数稼ぎを…。

第二次大戦 ソビエト主要航空機銃(2)
名称重量使用弾薬弾頭重量初速発射速度作動機構備考
B-20 25Kg 20x99R 97g 800m/s 800rpm Gas
VYa 66Kg 23x152B 200g 880m/s 600rpm Gas
NS-37 170Kg 37x195 735g 900m/s 300rpm S-Recoil
1m
B-20
VYa
NS-37


最後まで知ってる強さ

恵ソ連戦闘機の武装コンセプトって単純明快ですねー。

さ12.7mm および 20mm による機首集中武装主義」の一言で片付いてしまう。単機の火力性能で見れば他国に見劣りするところもあるが、生産整備まで含めたトータルでのメリットを重視したのだろうな。

彩ドイツが重防御で航続距離の長い重爆を多数持ち、ウラル越えの戦略爆撃を実施していたら様相は違っていたかも知れませんが…。

さそうなったら主翼に VYa や NS-37 をぶら下げた迎撃機をワンサカ作って対処したろう。頭上に重爆が来てから泥縄式に機関砲を開発したどこかの国と異なり、ソ連は 1941 年の段階で 7.62mm から 37mm まで世界最強クラスの航空火器を揃えていたのだぞ。

彩成り振り構わぬスターリンの梃子入れが効いたんでしょうかね。1930 年代に時代遅れのマキシムをいじくり回していたのが嘘みたいです。

さShVAK や B-20 のように確立されたメカを拡大して大口径版を作ることが多かったのもソ連機銃の特徴だ。悪く言えばなんとかの一つ覚えだがな(笑)

恵しかも、ほとんどがガス圧作動でしたねー。

さそれが不思議なところだ。ガス圧作動にはメリットも多いが、気温の変化に弱いという欠点がある。ガスの吹き戻し量をレギュレーターで調整して対応できるのだが、航空機銃の場合は飛行中に激しく気温が変化するので全てのコンディションに合わせるのが難しい。

彩地上の気温に合わせて調整すると、上空では低温によるガス圧低下で発射速度低下や動作不良を起こすようですね。ガス圧作動航空機銃の元祖、ルイス機銃も低温に悩まされヒーターを付けるなどの対策を取っていたようです。

さだから第二次大戦中、ソ連以外ではほとんどガス圧作動の航空機銃を作っていない。ソ連の場合は強装薬にして低温下でも充分なガス圧を確保し、なおかつ高温下で吹き戻しが過剰になっても壊れないよう頑丈に作っていたのか…あくまで想像に過ぎんが。

彩出ましたね、当てずっぽうな推論。

恵第二次大戦終結後はジェット時代となって東西冷戦を迎えるわけですが、ソ連戦闘機の武装コンセプトはどう変ってゆくのでしょう?まさかジェットにモーターカノンじゃないですよね…。

さミサイル時代に移行する前の第一・第二世代ジェット時代、西側が 12.7〜20mm 中口径多銃装備を継承したのに対し、ソ連は 23mm〜37mm の中・大口径を少数混載するアプローチを取った。この話は朝鮮戦争編で詳しくやることにしよう。

彩その前に日本・アメリカの太平洋編を済まさなければなりませんね。特に日本の航空機銃は読者の皆さんが一番期待していると思いますよ。

さうぅ…プレッシャーきついのぉ。


編集後記


さ以上で欧州編は終わりである!いやー、気合い入ったなー。

恵テキスト量で前回の 1.5 倍くらいになってますよー!お疲れさまでしたー。

彩…フランスとイタリアはどうしたんです?

さそんな名前の国あったっけ。

彩あります。思いっきりあります。第二次世界大戦にばっちり参加しています。

さあははー。

彩笑ってごまかさないでください!

さフランスは MAC7.5mm とイスパノ HS404 20mm、イタリアはブレダ-SAFAT の 7.92mm と 12.7mm、輸入品のモーゼル MG151/20 を使っていた。以上。

彩…。

さ仕方なかろう、少なくとも英語圏にはほとんど資料がないのだ。原語を当たれば何か出てくるだろうが…。

彩フランス語もイタリア語も読めないんですね。

さなら、お前は読めるのか?

彩…あははー(^_^;)

恵私も読めないです…。

さという訳だ、うん。フランス語やイタリア語なんて読めなくって当たり前!問題ない。

彩…まぁ、いいでしょう。で、次は太平洋編ですね。

さうむ。取り上げるのはアメリカと日本だが、日本は海軍と陸軍で二系統の全く異なる機銃があるから、事実上三カ国ぶんの分量になると思う。

恵日本海軍の「恵式」20mm も取り上げるんですねー♪

さあと、第二次大戦各国主要戦闘機の投射質量・投射密度・射撃時間・固定兵装重量の総まとめもやりたいな。携行弾数については資料が少なくて困っているのだが…。

彩ドボアチーヌ D.520 とかマッキ MC.202 も入れてあげてくださいね。

さ相変わらずキツイ皮肉を言う奴だな…。まぁ「取り入れる方向で前向きに検討する」ということにしておいてくれ。

彩という事ですので、読者の皆さん期待してお待ちくださいね。

さま、またそうやってプレッシャーかける…。

恵ところで、ささきさんの血の色って結局何色だったんです?

彩まだ気にしてたんですか?


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