作戦要務令

第四部


上陸戦闘

第2章 上陸戦闘実施

第2節 各兵種の戦闘
第2款 其の他の兵種
  1. 第104
    戦車は通常重点方面に於ける第一線歩兵に配属し、主として天明後に於ける歩兵の戦闘を容易ならしむ。之が為、所要の兵力を第1回に上陸せしむるを有利とすることあり
    戦車を搭載せる舟艇には、為し得れば其の直接協同すべき歩兵の一部を同乗せしむるを可とす。第1回上陸のものに於いて特に然り
    戦車は舟艇航進中、要すれば其の銃砲に依り敵を制圧しつつ上陸す
  2. 第105
    砲兵は機を失せず歩兵の戦闘に協同する為、一部の指揮機関及び所要の連絡者を第1回上陸部隊と共に上陸せしめ、主力は第2回以後に上陸するを通常とす。而して、師団の上陸初期に於いては統一指揮困難なるを以って第一線歩兵に配属し、状況之を許すに至れば逐次砲兵指揮官をして統一せしむるを通常とす
    状況に依り、砲兵の一部を海岸付近の岩礁、島嶼等に、又、後れて上陸する砲兵を輸送船上に配置し、或は輸送船に装備する火砲を以って陸上の戦闘に協同せしむることあり。此の際、海軍の行う上陸掩護射撃との協調に関し考慮するを要す
  3. 第106
    砲兵の達着点は上陸後の戦闘を考慮し、砲車の揚陸及び臂力前進容易なる地点に選定し、揚陸作業隊と協定して所要の標示を為し、且つ連絡者を配するものとす
  4. 第107
    砲兵は上陸の初期馬を欠き、又、海岸に於ける砲車の運動は困難なること多きを以って、長距離の臂力前進を準備すること必要なり
    上陸の初期、成るべく速やかに一部の馬を上陸せしめ、砲兵の運動を容易ならしむるを得ば有利なり
  5. 第108
    大発動艇よりする野砲(十榴)の揚陸要領、概ね左の如し
    • 砲手2名は直ちに上陸して、歩板を基点とし砲車の車輪下に褥を展置し、砲車通過し終れば直ちに之を撤収して更に前方に展置し、其の他の砲手は協力して砲車を所命の地点に輓曳す。此の際、分隊の砲手以外の者少なくも6名を以って援助せしむ
  6. 第109
    大発動艇よりする山砲の揚陸要領は第108に拠るか、若しくは左の要領に依る
    • 予め船内に於いて輪帯に履板を装し、通常砲手8名を以って砲車を歩板上より揚陸す
  7. 第110
    護衛隊上陸掩護射撃を実施する場合に於いては、砲兵指揮官は陸海軍の協定に基き、関係艦艇と射撃目標(地域)、射撃の指導、通信連絡等に関し予め細密なる協定を遂げ、以って砲兵の戦闘指導に遺憾なからしむるを要す。此の際、観測機関は海軍の射弾観測に任じ、又は援助を与うるものとす
  8. 第111
    師団工兵は、上陸戦闘に於いて主として歩兵の水際戦闘に協同し、陸上に於ける障碍の排除、進路の開設、砲兵の陣地進入援助、水際障碍物の排除、揚陸作業等に任ず。之が為、所要に応じ第一線歩兵、砲兵、及び揚陸作業隊に協同せしめ、又此等に配属するものとす
    工兵を各舟艇に分乗して上陸せしむる場合に於いては、工兵の指揮官は上陸後速やかに之を掌握すること緊要なり
  9. 第112
    上陸戦闘の初期、高射部隊は為し得れば輸送船上に在りて、関係部隊と協同し主として泊地及び上陸点の掩護に任ず
    師団長は、上陸の進捗に伴い機を失せず一部の高射部隊を上陸せしむること緊要なり
  10. 第113
    飛行部隊は機を失せず飛行場の設定及び飛行準備の完成に勉むるを要す。而して、陸軍飛行部隊は上陸の初期に於いては其の活動自ずから十分ならざるを通常とするを以って、海軍飛行部隊の活動に待つ所少なからず
    飛行部隊の主要なる任務、概ね左の如し
    • 制空
    • 海上警戒
    • 捜索及び連絡
    • 重要なる地上目標の攻撃
    • 砲兵の射弾観測等
    師団長は、上陸間指揮連絡の為、特に飛行機を準備しあること緊要なり
  11. 第114
    行李、輜重等の上陸は多大の時間を要するを以って、上陸海岸に於ける揚陸設備、馬の集合場、荷物及び材料の集積場、馬繋場、其の他警戒に関する事項等を偵察し、上陸後に於ける集結、警戒勤務員及び其の行動等を規定すること必要なり