作戦要務令

第四部


上陸戦闘

第1章 上陸戦闘に関する諸準備

第4節 集合点及び上陸点に向う航行中に於ける準備
  1. 第35
    乗船終了せる輸送船は、単独又は編隊を以って逐次集合点に向い航行し、護衛隊と会合するを通常とす
    航行中、輸送指揮官及び各部隊長は乗船迄に実施せる諸準備を補備完整す
  2. 第36
    集合点に到着せば、師団長以下各級指揮官は戦闘に関する諸準備を完全にするを要す。特に上陸戦闘の訓練は、状況の許す限り之を実施し、以って各部隊の鞏固なる団結と、協同する諸隊の精神的結合とを図り、将兵の自信力を向上せしむること緊要なり
    集合点に於ける上陸戦闘の訓練は、平時訓練の状況、企図する上陸の要領等を考慮し、通常基礎及び綜合に分ち之を実施するものとす。而して、訓練に充当し得る時日は通常短きに鑑み、重点を定め其の徹底を期せざるべからず
  3. 第37
    基礎訓練に於いて実施すべき事項、概ね左の如し
    各兵種
    船内に於ける上陸準備
    輸送船より舟艇への移乗
    歩兵、戦車、及び工兵
    水際戦闘、特に跳込、上陸直後の戦闘、及び艇上射撃
    上陸直後に於ける通信連絡
    暗夜に於ける戦車の揚陸
    所要に応じ、水際障碍物の破壊又は排除、及び断崖其の他特殊の海岸に於ける上陸法
    砲兵
    上陸当初の観測及び通信連絡
    砲車の揚陸、及び臂力に依る陣地進入の要領
    艦船上に於ける射撃の要領
    通信部隊
    輸送中及び戦闘各期に於ける通信
    陸海軍間周波数の整合
  4. 第38
    綜合訓練に於いては、上陸開始の時機、上陸部署、戦況、地形等を勉めて実際の状況に近似せしめ、為し得る限り泊地進入より第1回上陸部隊の達着ならびに一部の水際戦闘迄を訓練するを要す
  5. 第39
    集合点に於いて一部乗船区分の変更又は舟艇の積換を要する場合に於いては、錯誤なきを期すると共に、其の実施は勉めて最小限に止むるを要す。馬、材料に於いて特に然り
  6. 第40
    輸送指揮官は、集合点に在る間若しくは集合点出発後成るべく速やかに、各部隊の上陸に関する命令及び揚陸作業隊との協定に基き、上陸に関する命令を下達す
    輸送指揮官の下す上陸に関する命令に於いて示すべき事項、概ね左の如し
    • 上陸順序
    • 舟艇移乗(移乗区分、舟艇接舷位置、集合時刻及び場所、要すれば移乗開始の時期)
    • 船内に於ける上陸準備完了の時刻
    • 勤務員の数、差出区分及び配置
    • 上陸実施間輸送船の対潜、対空、防毒、非常等の処置、及び之を撤する時期
    • 陸岸輸送船間の通信
    • 救助
    • 給養
    • 輸送指揮官上陸後に於ける代理者等
  7. 第41
    輸送船隊集合点を出発するや、護衛隊の護衛を受けつつ泊地に向い航行す。此の間、上陸部隊は機会を求めて上陸に関する命令の徹底に勉め、諸準備を整え、且つ所要の訓練を実施すること緊要なり