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1936年発布
赤軍臨時野外教令
第十二章 軍隊の移動
其の三 自動車輸送
第352
自動車輸送は、軍隊の兵力移動、時間の節約、及び軍隊の体力愛惜の目的を以って実施せらる
自動車輸送は次の場合に於いて有利なり
イ
狙撃大隊及び砲兵大隊は15乃至20粁以上
ロ
狙撃連隊は一日行程以上
ハ
狙撃師団は1日半乃至2日行程以上(諸兵種混合の場合)
狙撃大隊及び連隊は通常其の全編成を以って、又、狙撃師団は師団後方機関を除きたるものを以って輸送せらる
最も有利なる狙撃師団の輸送距離は200乃至400粁とす
第353
自動車縦隊の行進速度は昼間に於いて1時間15乃至25粁、夜間は燈火を使用する場合に於いても若干減少す
自動車専用道路に依るか、又は縦隊の自動車数少なき時は其の速度は更に増加すべし
第354
各部隊を一時に輸送する為の自動車所要数は平均左の如し
イ
狙撃大隊及び連隊砲中隊の為
100乃至120台(1噸半)
ロ
砲兵大隊の為
180台(3噸)
ハ
狙撃連隊の為
700台(1噸半)
第355
自動車部隊の指揮官は、輸送に当り兵団(部隊)指揮官の指揮に入るものとす。技術的準備、輸送の実施、ならびに危害予防、及び自動車の正確なる運用に関し、其の責に任ず
第356
兵団(部隊)の自動車輸送を行うに当りて顧慮すべき件左の如し
イ
自動車輸送に対する軍隊の準備(輸送間の必需品の算定、行進順序、戦闘警戒手段、経理衛生獣医関係の処置)
ロ
積載ならびに卸下地区の準備(偵察、施設、及び各部隊への配当)
ハ
行進路の準備(捜索、通信、交通規整、道路橋梁修理、但し道路橋梁作業は輸送を命じたる統帥部之を行わざる時)
ニ
輸送資材の準備(燃料及び滑油の補給、輸送資材の集結、修理器材の配当、輸送距離に応ずる自動車の設備)
第357
積載地区は、多数の積載場、自動車集合(待機)地区、進入進出路、交通規整所、及び通信機関より成る
各狙撃大隊又は砲兵大隊には、通常独立せる積載地区を配当せらる。大隊地区の広さは通常1粁X1粁半とす。大隊積載地区を合して連隊積載地区とし、連隊積載地区を合して師団積載地区とす
狙撃大隊の積載作業は昼間40分乃至50分、砲兵大隊は1時間乃至1時間半を要す。夜間に於いては平均15分を増加するものとす
第358
自動車縦隊の行軍序列は左記要件を備うるを要す
イ
任務、状況、地形、及び行軍計画に応ずること
ロ
縦隊の有する凡ての資材を遺憾無く活用すること
ハ
縦隊内の各部隊及び各梯隊の協同を容易ならしむること
ニ
部署に柔軟性を有すること、即ち、縦隊内各部隊の任務及び行動方向を妨げざること
兵団は数縦隊(数道路に沿い)、及び数梯隊(一道路上)の縦深横広に分散せる隊形を以って輸送せらる
軍隊の輸送は、所要の配属部隊、給養及び補助部隊を含む、完全なる戦術単位を各梯隊に配する如くせざるべからず。予備自動車、修理自動車、及び燃料車は、各梯隊の後尾に続行す
自動車輸送に於ける行軍間の警戒は徒歩行軍の場合と同様の原則に拠り、時間計算に依る同様の距離上に之を配置す
第359
自動車縦隊の行進に当りては、自動車間の距離25乃至50米、狙撃大隊間の距離3乃至5粁なるを通常とす
2時間毎に10分乃至15分の停止を予定し、自動車の技術的点検、積載物の締め直し、運転手の給養、及び梯隊長径の規正を行う
120乃至150粁以上の距離に亙る輸送に当りては2時間乃至2時間半の大休止を予定し、自動車の小修理、人員の休憩、食事、及び馬匹の水飼いを行う
第360
自動車輸送間の軍隊指揮は左記手段に依る
イ
所要の通信連絡組織(既設通信線、無線信号、連絡用飛行機の利用、自動車及び自動自転車に依る幹部の派遣)
ロ
交通規整勤務組織(交通規整所の配置、規整線の設定)
ハ
正確なる指揮官位置の指示、又は司令所移動計画の提示、縦隊内各指揮官の位置の指定
敵と衝突を予期する場合に在りては、同一縦隊内に在る各部隊指揮官は通常上級指揮官と共に前衛と同行す
第361
卸下地区は積載地区と同様の要領に依りて決定せらる。各梯隊卸下地区に於ける道路を開放する目的を以って、自動車は速かに示されたる集合地区に退去するものとす
狙撃大隊の卸下は昼間15乃至20分、砲兵大隊は30乃至40分を要し、夜間は平均15分を増加す
第362
兵団(部隊)の積載卸下地区は周到に偽装せられ、高射砲、機関銃、及び駆逐飛行隊、其の他あらゆる対化学資材を以って掩護せらるるを要す
第363
自動車縦隊の行軍間に於ける対空防禦の要領左の如し
イ
必要に応じ、被輸送兵団及び自動車部隊の防空資材、ならびに臨時配属の防空資材を縦隊内に分置す
ロ
被輸送兵団の機関銃を以って対空射撃を準備す
ハ
進路上の危険地区に高射砲中隊及び高射機関銃を配置す
ニ
対空監視及び警報組織を完成す
ホ
駆逐飛行隊を以って輸送地区の上空を哨戒す
第364
行軍間に於ける自動車縦隊の対化学防禦は、各自動車に携行する防護天幕ならびに消毒材料、各梯隊(又は梯隊群)の有する消毒材料車及び移動洗浄消毒所に依る
第365
行軍間に於ける自動車縦隊の対戦車防禦は、各縦隊毎に当直対戦車砲を定め、且つ之を配当することに依り保障せらる。本対戦車砲は、敵機械化部隊の襲撃に当りては縦隊より分離し停止して、其の位置より射撃を行う
自動車縦隊の編組内に機械化部隊ある時は、対戦車防禦の積極資材として之を使用す
第366
自動車輸送に於ける人馬の衛生は、或は軍用道路上に施設せられたる衛生又は獣医に依り、或は被輸送部隊の衛生ならびに獣医に依る
第367
自動車輸送に関し、各司令部は左の文書を調製す
イ
狙撃及び砲兵大隊は自動車輸送梯隊の編成図
ロ
連隊及び師団に在りては、命令、自動車資材需要量計算書、縦隊編成図、輸送計画表
対空、対化学、対戦車防禦、通信組織、及び資材補給に関しては特別の指示を与うるものとす
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