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1936年発布
赤軍臨時野外教令
第十一章 特殊の状況に於ける行動
其の四 住民地戦闘
第306
住民地は、戦闘に当り敵の観察に対して軍隊を遮蔽し、敵の軽火器に対して之を掩蔽するも、砲兵火力及び爆撃飛行隊の攻撃を吸引するの不利あり。然れども、住民地、特に石造家屋を有する村落は、信頼すべき抵抗拠点を形成し、有力なる対戦車地区を構成するに便なるものとす
第307
住民地戦を行うに当り、顧慮すべき事項左の如し
イ
住民地の大小及び其の構成、建造物の種類及び強度、ならびに周囲の地形
ロ
公益及び政治機関、生産企業、倉庫(特に軍用倉庫)、及び瓦斯掩蔽部の有無
ハ
市内輸送機関、停車場及び鉄道網の有無、ならびに其の状態
第308
住民地に対する攻撃に当りては、周到なる捜索及び空中写真に依り、堅固なる石造建築物の有無、街路の関係位置、縁端ならびに住民地内部に於ける防御組織及び準備せられたる抵抗拠点の有無を明らかにすること肝要なり。住民地防禦の為価値を有する堅固なる建物及び其の他物件は、突撃準備に当り努めて全部之を破壊す。側防を予防する為、住民地の突出部は他の地区に先んじて先ず之を奪取せざるべからず
住民地内部に於ける戦闘は、必ず住民地外部に行動する軍隊との協同の下に遂行せらるるを要す。此の際、住民地外部の軍隊は住民地を迂回して敵の側面及び背面を攻撃するものとす。住民地内部に行動する軍隊の主力は、菜園、庭園、内庭等を経て攻撃を続行し、街路は之を小支隊の行動に委するものとす
歩兵部隊は、歩兵重火器、火砲、工兵ならびに爆破器材の増加を受け、豊富に手榴弾を支給せらる。此の際、重砲兵は歩兵に連絡班を派遣するを要す
住民地に対する攻撃成功の基礎は、重砲及び飛行機の投下爆弾を以って、敵の占領せる堅固なる建造物を破壊するに在り。停車場、発電所、給水所、及び電話局等は先ず第一に占領すべきものとす
住民地を占領せば、努めて速かに防御施設を行う。之が為、周到に家屋を点検し完全に敗残兵を掃蕩するを要す。是等の作業は凡て攻撃部隊に続行する第二線部隊及び予備隊の任とす
第309
住民地防禦は必ず其の外部に行動する軍隊との戦術的協同を基礎として組織せられ、且つ遂行せられざるべからず。住民地外部の軍隊は、住民地を瞰制する高地、及び住民地の側面ならびに背面に向う近接路を扼する地点を占領し、住民地自体の防禦の為には機関銃及び連大隊砲を属すること必要にして、而も最小限の歩兵を之に充当するものとす。最も堅固なる建造物、特に十字路に在るものは之に全周防禦の設備を施して相互に側防拠点となし、且つ街路を横断して対戦車障碍物及び対歩兵障碍物を設置す
抵抗拠点には堅固なる掩蔽部を設置し、防火資材を完備す。敵、若し住民地に突入し得たる時は、防禦部隊は仮令敵の包囲に陥るも、尚各家屋を固守し、頑強なる抵抗に依りて、隣接地区よりする逆襲を容易ならしむ
住民地は全縦深に亙り防御施設を行い、第一線は直接住民地の縁端に之を求むること無く、若干内部に後退して之を設け、其の前方に在る多数の建築物は対戦車障碍物及び遮障として之を利用するを有利とす
住民地は高射砲及び高射機関銃を以って対空防禦を行い、且つ多数の建造物を利用して対化学掩蔽部を設備するを要す
住民地の防火勤務を組織することも亦住民地防禦の一要件なり
第310
通信連絡の為、無線、自動車、自動自転車、自転車、有線機材等を利用する外、伝令の交通を容易ならしむる為、街区の内部を経て貫通路を設くるを可とす
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