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歩兵操典
第四篇 歩兵砲教練
第三章 戦闘
第一節 分隊
第414
陣地進入に先だち、分隊長は射撃用意を為し、且つ通常四、五番《四番》【四番】及び所要の砲手を伴い、先行して射向附与の準備、砲床準備等を為す。直接照準に依り射撃する場合に於いては、進入後直ちに発射し得る如く準備すること特に緊要なり
第415
射向附与の準備に於いては、通常予定の砲位置(連、大隊砲に在りては砲の眼鏡の位置を、速射砲に在りては車輪の位置を謂う)に標桿を立つ
標桿法に依り射向附与を準備するには、原点(目標)及び予定の砲位置を含む線上に適当なる距離を間し、通常六番(一番)は前方に、分隊長は後方に、各々標桿を立つ
第288
砲床準備に方りては、示されたる方向(目標)に対し左記事項を考慮し、勉めて平坦なる所に砲の位置を選び、要すれば作業を行い修正す
駐鋤位置は掘開容易にして、十分なる抗力を有すること
大隊砲及び速射砲の駐鋤位置は左右高低なく、且つ抗力等斉なること
両車輪の位置は左右高低なく、且つ抗力等斉なること
勉めて遮蔽し、且つ砲口前の地形地物の為、射撃を妨げられざること
射撃の為、沙塵の飛揚せざること
速射砲に在りては、勉めて脚を移動することなく射撃し得ること
連隊砲に在りては常に対戦車射撃を考慮し、分隊長は示されたる位置に予め所要の設備を施し置くを要す
第417
分隊を陣地に進入せしむるには、方向(目標)を示し、左の号令を下す
「
砲ヲ据エ
」
一、二、三、五番《二、三番》【一、二、三番】は予め砲を転向し置き、予定の砲位置に正しく眼鏡【概ね左車輪】を一致せしむる如く、協同して砲を据う。《二番は脚止板を脱して左脚を、三番は右脚を外方に開く》【一番は左脚を、二番は右脚を外方に開く】
分隊長は直ちに砲の後方に移り、要すれば五番《二、三番》【一、二番】をして砲の方向を修正せしむ
連、大隊砲の直接照準に在りては、五、一番《二、三番》は直ちに砲を固定す
連隊砲に在りては、四番は照準坐に腰を下ろし、照準具の左右及び前後(直接照準に於いては左右)の傾斜を概略修正す。一、二、三、五、七、八番は概ね第十五図の位置に伏臥す。但し、七番は轅桿を砲の後ろに搬送し、位置に就く。九番以下は弾薬箱を八番の位置に置き、弾薬逓送の配置に就く
大隊砲に在りては、四番は砲の左脚に腰を下ろし、照準具の左右及び前後(直接照準に於いては左右)の傾斜を概略修正す。二、三、五、六番は概ね第十五図の位置に伏臥す。但し、二番は砲を固定し位置に就き、五番は提桿を持つ。七番以下は弾薬箱を六番の位置に置き、弾薬逓送の配置に就く
速射砲に在りては、四番は両頭槌を予定の駐鋤位置の外側後方に置き、次いで予定の砲位置を示す。砲を据うるや、一、二番は直ちに砲を固定す
砲を固定するには、一(二)番は左(右)脚の駐鋤止板を脱し、両頭槌を以って駐鋤を打込む
三番は砲の右脚に跨りて折敷き、距離分画を概ね1000米にし、安全装置を解き撃鉄を圧下したる後装填す。四番は砲の左脚に跨りて折敷き、左車輪後部を外方に開き、照準具の左右の傾斜を概略修正す。二、五、六番は概ね第十六図の位置に伏臥す。七番は砲を据え終らんとするに先だち弾薬箱を三番の身辺に搬送し、蓋を開きて装填に便なる如く置き、八番以下は携行せる弾薬箱を六番の位置に置き、弾薬逓送の配置に就く。二番は、要すれば分隊長の指示に依り三番の装填を補助す
速射砲、及び連、大隊砲の直接照準に在りては、砲を据うるや直ちに射撃操作を開始す
第418
陣地に進入せば、十二番《十番》【十番】は直ちに弾薬箱を弾薬小隊、要すれば戦砲隊の弾薬馬(弾薬車)より受取り、九番《七番》【八番】以下は、之を八番《六番》【六番】の位置に逓送す。八番《六番》【六番】は弾薬所命の数に達せば、合図にて逓送を中止せしむ。八番《六番》は目標に対して射向を附与し終らんとするに先だち【六番は七番の搬送を終りたる後】、弾薬箱を砲側に搬送し、蓋を開きて置く。但し、直接照準に於ける連、大隊砲に在りては、陣地進入を終らんとするに先だち搬送す
弾薬1箱を射尽くせば、八番《六番》【六番】は別命なく砲側に弾薬を補充し、後方の砲手は逐次前方の砲手の許に到り、充実せる弾薬箱と空箱とを交換す
第419
分隊長は予め砲の固定に勉むべきも、余裕なきときは射撃開始後速やかに行う
発射に際し砲後退するの虞あるときは、連、大隊砲に在りては砲側砲手を砲より離れしめ、速射砲に在りては四番をして頭を眼鏡より離さしむ
第420
陣地進入及び陣地変換に方りては、勉めて行動を秘匿す。之が為、地形地物、陰影を利用し、遮障を設け、偽装を施す等の処置を講ずると共に、敏活に動作す。此の際、砲側に蝟集せざるを要す
陣地変換に方り、分隊長は要すれば進路を偵察し、且つ適宜砲手を交代せしむ
第421
陣地変換を行うには、左の号令を下す
「
前進用意 前へ(駈歩前へ)(早駈前ヘ)
」
「
前進用意
」
の号令にて、一乃至七番《一乃至六番》【一乃至四番】は
「
撃方止メ
」
及び
「
用意ヲ解ケ
」
【
「
撃方止メ
」
】に準じ操作し【砲尾を砲尾托架に装し】、分隊長以下卸下(脱駕)行進に準じ前進を準備し、
「
前へ(駈歩前へ)(早駈前ヘ)
」
の号令にて一乃至七番《一乃至五番》【一乃至六番】は適宜散開し前進す。八番《六番》【七番】以下は充実せる弾薬箱を携行す
他の方法にて前進せしむるには、
「
前進用意
」
の号令の次に砲の姿勢、隊形、前進法、諸被及び照準具の処置等を示す
射撃姿勢より砲を後方に撤去して砲の位置を移動し、或は陣地を変換するには
「
変換用意
」
の号令にて、遮蔽して砲を後方に移し
「
前進用意
」
に準じ操作し、爾後の行動を準備す
繋駕(駄載)にて陣地を変換せしむるには、
「
前進用意
」
の号令の次に
「
砲ヲ繋ケ(載セ)
」
と号令す
第422
連、大隊砲の分隊長は戦闘間、小隊長の号令に注意し、砲手の操作、特に分画の装定及び砲の射向を監視し、要すれば点検し、以って正確なる射撃を行う。又、常に砲の機能、就中後坐量ならびに弾薬補充に注意し、要すれば小隊長に報告すると共に機宜の処置を講じ、射撃を継続す
速射砲の分隊長は戦闘間、目標の選定、射弾の観測修正を適切ならしむると共に、敵情、砲手の操作、特に射撃の修正及び砲の射向に注意し、以って正確迅速なる射撃を行う。又、常に砲の機能、就中後坐量ならびに弾薬補充に注意し、射撃に支障なからしむ。状況、特に地形之を許せば、敵の意表に出で、或は損害を減少する為、砲の位置の小移動を行うを利とす。
第423
防禦に在りては、分隊長は砲の威力を増大し、且つ損害を減少する如く、諸般の設備を施すこと緊要なり。之が為、砲床準備及び待機間の掩護を十分にし、砲の位置、弾薬補充路等の偽装及び遮蔽、ならびに弾薬の集積集積に必要なる掩護の設備等を施す
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