歩兵操典

第三篇 機関銃及び自動砲教練
第三章 戦闘
第三節 中隊
第一款 攻撃
  1. 第313
    戦闘の為前進する大隊、疎開せる隊勢に移れば、中隊は捜索、警戒、対空、対戦車、及び対瓦斯の処置を講じ、地形及び我が砲火の効果を利用し成るべく駄載にて前進し、所要に応じ疎開し、速やかに敵に近接す。此の際、対空射撃に任ずる機関銃は、卸下して所属部隊と同行するか、若しくは要地に先行す
    中隊卸下せば、戦銃隊の駄馬は通常弾薬小隊長の指揮を受けしむ。状況に依り給養掛下士官をして指揮せしむることあり
  2. 第314
    中隊長は任務を受くるや所要の偵察を行い、次いで小隊長に状況、自己の企図、小隊の陣地及び射撃目標、基点、射撃開始の時期、使用弾薬の概数、小隊爾後の行動、連絡、弾薬補充、要すれば進路等、所要の事項を命ず。時として、射撃目標に代え協同すべき部隊を示す
  3. 第315
    歩兵の中距離に於ける行動を支援するには、中隊は勉めて歩兵の前方に在りて要点に躍進し、適時歩兵の前進を妨害する敵を制圧す。此の際、弾薬を浪費し、且つ爾後の行動を拘束せられざるを要す
  4. 第316
    戦闘間、中隊長は各小隊の射撃及び運動を統括す。之が為、指揮に便なる所に位置し、戦況及び射撃の効果を観察し、大隊長及び協同すべき部隊との連絡を確保し、小隊に状況、就中他の重火器及び砲兵の射撃に関する事項を示し、適時新たなる任務を与えて火力の指導を適切にし、又、戦況に応じて梯次、要すれば中隊同時に陣地を変換し、以って大隊長の意図の如く戦闘を遂行す。状況に依り、中隊長は直接中隊の射撃を指揮することあり
  5. 第317
    戦闘間、中隊長は指揮班をして小隊長、要すれば大隊長、第一線中隊長、他の重火器部隊等との連絡、ならびに敵情の視察に任ぜしむ
  6. 第318
    第一線歩兵敵に近迫するや、中隊長は各小隊をして突撃支援に適する陣地を占領し、火力を最高度に発揚し、敵の側防機能を撲滅若しくは制圧し、或は突撃点を猛射せしめ、突撃を誘起するを要す。之が為、突撃部隊と連絡し火力を密に協調せしめ、且つ爾後の戦闘の為十分なる弾薬を準備す。此の際、一部を以って側防機能の射撃に専任せしむること少なからず
  7. 第319
    第一線歩兵敵陣に突入せば、機関銃は機を失せず有利なる地点に進出し、陣内の攻撃を有効に支援すべし
    陣内の攻撃に在りては、中隊長は極力掌握を確実にし、大隊長の爾後の使用に直ちに応じ得ること緊要なり
  8. 第320
    第一線歩兵の突撃頓挫したるときは、機関銃は損害を顧みず之に最も損害を与うる敵に対し熾盛なる火力を発揚し、以って突撃復行の動機を与うべし。此の時機に於ける幹部以下の勇敢なる動作は、第一線歩兵の志気を振起し、遂に突撃を成功せしめ得るものなり
  9. 第321
    夜暗を利用し敵に近接して攻撃準備の位置に就き、払暁より攻撃を実行する場合に於いては、機関銃は状況の許す限り、予め陣地を偵察し、所要の標示を行う。而して攻撃準備の位置に進出するや、速やかに附近の部隊と連絡し、警戒を厳にし、工事及び偽装を行う等、諸準備を整え、且つ黎明を利用して射撃準備を点検修正し、第一線歩兵の突撃に最も有効に協同するを要す
    黎明を利用して突撃を行う場合に於いては、突入天明に及ぶことあるを顧慮し、十分なる射撃準備を整え、且つ第一線突入後、直ちに之に追及し得るを要す
    撒毒地域に陣地を占領するの止むなきときは、通常夜暗を利用して所要の制毒及び工事を行い、黎明直前陣地に進入するを可とす