歩兵操典

第二篇 中隊教練
第三章 夜間戦闘
第三節 追撃、退却
  1. 第229
    夜間中隊長は敵との接触を密にし、機を失せず其の退却を看破し、直ちに敵を急追すべし。此の際、中隊長は特に部下を掌握を確実にし、前方、側方を警戒し、常に接線を準備し、断乎敵中深く突進すべし
  2. 第230
    敵に近接しあるとき夜間退却を為すには、特に細心の注意を以って企図を秘匿す。之が為、敵の捜索を妨害し、且つ日没前に於ける部隊の移動を避く
    退却に方り敵に近き場合に於いては、通常大隊長の部署に依り第一線の要点に僅少の部隊を残置し、以って主力の退却を掩護せしむ
  3. 第231
    残置部隊は警戒を厳にし、敵斥候の潜入、捜索を妨げ、且つ手段を尽くして敵を欺騙し、敵の攻撃に対しては之を猛射して撃退するに勉め、要すれば果敢に逆襲し、以って企図を秘匿し、飽く迄其の位置を保持すべし。此の際、指揮官以下の犠牲的精神は、克く友軍の戦場離脱を完うせしむるものなり
    残置部隊は、所命の退却時機に至れば、隣接残置部隊と連繋を保ち、勉めて全線同時に離脱するを可とす