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砲兵操典
第二篇 銃教練
第一章 基本
第一節 小銃
第三十九
装填を為さしむるには左の号令を下す
弾薬を込め
不動の姿勢にあるときは銃口を左前上方にする如く右手を以て銃を概ね体の中央前に上げ左手を以て概ね銃の銃身の所を握りその腕を体に著け指は銃床の溝に置き床尾を右乳の右下方に在らしむる如く床尾を体に接す
注目して右手を以て下より槓桿を握り之を起しつつ充分に引き弾薬盒の蓋を開き弾薬を撮み出し挿弾子溝に嵌め拇指の頭を弾薬の後部に充て弾倉内に押入れ次で遊底を閉じ安全装置にし弾薬盒の蓋を閉じ留革を掛けたる後右手を以て木被の所を握り不動の姿勢に復す
第四十
弾薬を抽出さしむるには左の号令を下す
弾薬を抽け
不動の姿勢にあるときは装填に於ける如く銃を構え注目して右手を以て弾薬盒の蓋を開き銃を撃発装置にし左手を尾筒の所に持ち来し其の四指を伸ばして方窓部に当つるが如くし静かに遊底を進退して弾薬を出し之を弾薬盒に納む弾薬を出し尽くせば残弾なきことを確かめたる後左手の指を以て受筒板を圧して遊底を閉じ徐に引き金を引き弾薬盒の蓋を閉じ留革を掛けたる後右手を持って木被の所を握り不動の姿勢に復す
第四十一
良好なる射撃姿勢は成熟せる据銃、照準及び撃発と相俟ちて命中を良好ならしむる為必須の要件なり
射撃姿勢は兵の体格に能く適応せしめ常に堅確にして而しも凝る事なく自然の状態に在らしむるを要す
第四十二
射撃姿勢を取らしむるには目標を示したる後左の号令を下す
伏射(膝射)
不動の姿勢にあるとき目標を示さるるや先ず之に正対す
伏射の姿勢を取るには頭を目標の方向に保ちたる侭左手を以て弾薬盒を右に移し左足を約半歩右足尖の前に足尖を僅かに内にして踏み出すと同時に状態を半ば右に向け右膝より逐次に地に著け左手を体の前に出して体を射撃方向に対し約三十度にして伏臥し同時に右手を以て銃を前に出し左手を以て概ね銃の銃身の所を握り指を銃床の溝に置き装填したる後右手を以て稍々下方より銃把を握り目標に注目し銃把を顎の稍々前にある如くし両肘を地に支う
膝者の姿勢を取るには頭を目標の方向に保ちたる侭左手を以て弾薬盒を右に移し左足を伏射に於ける如く踏み出すと同時に上体を半ば右に向け左手を以て剣鞘を前に払い右足を曲げ其の股を目標の方向と殆ど直角なる如く平に地に著け腕を右足の後方に於て地に著け左足を立て同時に右手を以て銃を前に倒し左手を以て概ね銃の銃身の所を握り注目し状態を自然の方向に概ね真直ぐに保つ
射撃姿勢を取りたるときは銃口を概ね眼の高さにし右手の食指を用心鉄の内に入れて伸ばし予め装填しあるときは銃を撃発装置にするものとす
射撃姿勢を取りたる後不具合を感ずるときは其の姿勢の侭速やかに修正し膝射の姿勢に在りては体格に依り腕を右足の上に載することを得
第四十三
射撃に方り地上の目標に対し特に指示なき時は最低の照尺を用い照準点は目標の下際とす
第四十四
射撃を為さしむるには要すれば照尺及照準点を命じたる後左の号令を下す
撃て
連続して射撃を行う而して装填する毎に弾薬盒の蓋を閉じ留革を掛くるものとす
第四十五
射撃を中止せしむるには左の号令を下す
撃方待て
据銃を止め次発の用意を為す
第四十六
射撃を止めしむるには左の号令を下す
撃方止め
注目して銃を安全装置にし照尺を装しあるときは之を旧に復し頭を目標の方向にし伏射に在りては其の姿勢を取りたる時と概ね反対の順序を以て上体を起し左足を約一歩前に踏み出して起ち右足を左足に引著け弾薬盒を旧に復し不動の姿勢に復す
第四十七
射撃のため地形、地物を利用するの要は銃の最大威力を発揚するを主とし併せて遮蔽の効果を収むるに在り故に此の主旨に基き兵をして目標の景況に応じ諸種の地形、地物に付きその価値を判別し要すれば之を改修し適切に利用して射撃する事に熟せしむべし然れども之が利用に腐心し却って姿勢の堅確を害し射撃効力の発揚に支障を来すが如きことなきを要す
第四十八
小銃の射撃に在りては地被亦は土塊と雖も巧みに之を利用して射撃姿勢を堅確ならしめ若くは銃を地物に委託して射撃効力を発揚するの著意緊要なり
銃を地物に委託する場合に於ては銃口を地面より少なくも約糎離隔せしむるを要す
胸檣に依る射撃は身体の左側又は前部を内斜面に接し左肘或は両肘を腕座に置き銃を胸檣に依託するを可とす
樹木の後に在りて膝射を為すときは左手の前腕を樹木に託するを通常とす
第四十九
地形、地物を利用する膝射の姿勢に在りては右足尖を立て腕を右踵の上に載せ或は腕を地若くは右足(右踵)より上げ或は両膝を立てて両肘を其の上に置き腕を地に著け或は左肘を膝より離す等適宜応用の姿勢を取ることあり
敵に対し右又は左に傾斜せる土地に於ける伏射の姿勢に在りては射撃方向に対する体の角度を増減し又は片肘を開閉し或は足を曲ぐる等の手段に依り姿勢の安定と据銃の確実とを図るを要す
第五十
対空射撃を為すには通常膝射の応用姿勢を用ふるものとす
対空射撃を為さしむるに在りては先ず方向を示して射撃姿勢を取らしめたる後目標を示す事あり
第五十一
突撃を為さしむるには着剣の後左の号令を下す
突撃に 進め
予令にて右手を以て木被の所を確実に握り銃口を上にして銃を提げ動令にて早駈にて前進し次で「突っ込め」の号令にて喚声を発し敵に向かいて突進し格闘す之が為突入の稍々前に於て両手を以て銃を保持して刺突の準備を為すものとす
射撃しあるときは予令にて銃を安全装置にしたる後前項により動作す
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