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外国軍砲兵の用法は其編成、装備に基くもの多きが故に 之を明に知悉するを要す
然れども編成、装備に関しては 各国共機密事項とするを以って 茲に説述する能はざるを遺憾とす
依って以下其公刊せる典範に依り 主として世界大戦に最も関係深き独、仏、露(ソ連邦)軍砲兵に就き比較研究して 以って他山の石たらしめんとす
砲兵の任務に関しては 歩兵の任務達成に協力すべき根本原則には固より差異なし
赤軍は敵を圧服して其歩兵の攻撃精神を旺盛ならしめ 敵に与ふる精神上の効力を物質効力と不可分とし 精神的威力を高調せるは着目すべく
仏軍は 作戦の性質が運動戦なると陣地戦なるとを問わず 其攻撃地帯に対し適切に配置せられたる火力を以って最後の時期迄極力維持する 敵陣地に対しては 攻撃は失敗に終わるべきを断定し此攻撃奏効の為には攻者は相当強大なる物質的手段を集結使用し 其火力の優勢に依り敵の精神的 若は物質的抵抗を破砕すべきを述べて火力優勢論を明白にし 其精神的効力は集団火力に在りとし 分散火力は敵を不安ならしめ得るも之を麻痺せしむる能はず 独り火制地域を設定し之に各種口径射弾を至短時間に集中するときのみ敵を掩蔽部内に蟄伏せしむべしとせり
独軍は其強大なる破砕力偉大なる精神的効果を認め 正当なる目標に対し適時適所より良好なる射撃を為すときは決定的効果を齎すものとし 其火力機動目標捕捉主義を仄めかし又砲兵の精神的威力は弾丸の猛烈なる爆発に依り生起し 其効果は炸薬量及弾数の多大 並 時間空間的の砲火集中に依り 敵の精神を錯乱せしめ 其決断力及抵抗力を萎靡せしめ 単に軍に此作用のみに依るも尚勝敗の決を与ふべしとせり
之に依りて観察するに 砲兵運用の根本は 物質的効果に伴う精神的効果を収むるに在りて 之が為 集中火力の効力に期待する点 各国共 異なるなきを知るべし
次に戦闘各期に於ける任務に就て仏軍の述ふる所 左の如し
多少時間に余裕あるときは友軍歩兵の前進を妨害すべき有形的障害を排除し 敵火の能力を減殺することを努む(破壊制圧)
又仏軍砲兵は任務達成の為の射撃方式として 根本に於て左の二種類に分類しあり 而して急襲、至短時間、集中火に依るべきを推奨し 経済的確実 且 完全なりと称す
本来の目的は人員に在りて兵器、障害物、通信機関を破壊するときにも 其人員を戦闘外に立たしむ
敵戦闘員の戦闘価値を減殺し 之をして地下掩蔽物内に遁逃せしめ 其活動を制限又は痿痺せしむ
独軍に於ては 射撃の方式及其適用の部に於て射撃方式を定義し砲兵任務を明にし 以って射撃要求及命令下達を容易ならしむることとせり
敵歩兵突撃防止の為 其最前戦闘線前に設ける火力掩護の意とし 発射速度を最も完全に利用する射撃を短時間(一弾波は通常二、三分)持続(持続時間は臨時命令)す
殲滅射撃は敵歩兵の攻撃準備を初期に於て屏息せしむるものにして 敵歩兵が実際攻撃を準備しあるか 準備しあるものと判断せるとき 敵の陣地又は前地の某部分に対し実施するものとす
射撃は阻止射撃に準ずるも 一弾波の持続時間は阻止射撃に比し稍長く 発射速度は之より小なり
命令法としては「K西方隘路に十分間の殲滅射撃」と命ずるが如し
比較的長く射撃を持続するときは 発射速度を不規(時々増加し或は減少す)に変更す
阻止射撃及殲滅射撃は 陣地戦に於ては之を実施するを原則とし 運動戦に於ては 友軍歩兵稍長く停止するの已むなきを予測したるとき等 稀に例えば敵と戦闘実行中夜に入るを予測し 且 其夜前進を企図せざるとき 日没前之を行うが如し
阻止射撃及殲滅射撃は試射を必要とするものに非ず 又必ずしも常に可能なるものにあらず 我が陣地を過早に暴露せず 且 弾薬を節約する為 単に地図上に於て計画するを有利とし 諸元を測定する為の射撃は全く行わざるか 或は一、二発の発射を為し方向を点検するに止まるものとす
従って 某程度正確なる地図を必要とす
之等の点は 独軍に於ける急襲的戦法及企図秘匿の要諦として認識するを要す
擾乱射撃は中間地及後方地の敵陣地、野営宿営中の敵を擾乱し不安に陥らしむるものにして 此射撃の配置及時間を不規ならしむるは 目的を達する為極めて必要なることとす
発射速度に関しては一定の法則なく 短時間の集中せる急襲射撃と個々の射撃とを 相交えて行うを通常とす
破壊射撃は敵陣地各部、砲兵陣地、機関銃陣地 及 迫撃砲陣地等に対し 通常稍長時間連続して計画的に効力射を実行する射撃にして 屡々大規模の破壊射撃を以って友軍歩兵の攻撃を準備することあり
射撃を故障なく実行する為目標、時間、弾薬の種類 及 弾薬の使用を予め規定し 各砲車の為筆記しおくを要す
長時間一中隊一時間の発射速度は左の最大発射弾数を超過せざるを要す
急襲射撃は擾乱射撃の区域内に応用せられ 又は有利なる瞬間目標(戦況)を捕え 或は急襲攻撃を準備する為に使用す
此射撃は 多くは地域射撃の形式を以って行い総じて鉄槌的に実施す 此射撃を観測して行うに方りては観測の能否に依り其終りを決定するも 無観測射撃に在りては 急襲射撃の後尚適当に個々の射撃を行うか 又は更に小急襲射撃を行う
本射撃は攻撃歩兵の前方に砲兵火を逐次に前進せしむるか又は躍進せしめ 以って敵の戦闘動作を萎靡せしめ 且 敵の逆襲に対し移動的墻壁を作るに在り
以上の如く規定するも 其適用及射撃速度の規正及弾薬の使用に関しては 戦術上の状況に適応せしめ固定的規定を下に拘束するを戒めあり
赤軍に於て砲兵の任務は直属上官の賦課、戦闘間下級者たる歩兵指揮官及観測斥候の要求、砲兵隊長の独断に依り発生し 以って達すべき目的を定む
一般軍隊指揮官 任務賦課の為には 砲兵の任務達成方法及使用器材等に干渉すべからざるを示し 現地に就き地物に依り指示し地図等を併用すべきを示せり
又射撃に於ては縦射を賞用し 正面大なる目標には 努めて側方より射撃せしめ 已むを得ざるも斜射の目的を達せしむ
赤軍砲兵の射撃法を大別して 撲滅射撃 及 制圧射撃の二とす
之が為殺傷、瓦斯弾中毒、破壊、焼夷に依るものとし 小なる目標には通常精密射撃を行う
国際法規の掣肘を受くること少なき赤軍が堂々と砲兵操典に瓦斯弾中毒と記せるは注目の価値あり 殺傷の為には各種弾薬用いるも破片性化学弾を其中に掲記せり
暴露歩兵制圧(殺傷)の為には一粁正面三乃至六中隊を用ふれば十分なりとし 火力集中の際 重要方面 一門の火制正面を二十乃至六十米とせり 側射の効力を正面射に数倍するとして賞用するは既述の如し
歩兵火器撲滅の為には 中隊又は単一砲を用い 一機関銃巣に中距離に於て射撃速度を発揚して七十五発にて目的を達成し得べしと為す
掩護物の下方に在る機関銃又は迫撃砲制圧の為には 一二二粍又は一五二粍榴弾砲を用い 二千五百乃至四千米の距離に於て 地雷弾四十乃至百発を要するものと示せり
掩蔽陣地を占領せる砲兵撲滅の為には 空中観測 及 砲兵捜索特種機関を要するも 工事を施さざる砲一門を撲滅するに要する弾数は五十発以上、工事ある場合は更に多数の弾丸を要す
三中隊を以って敵の一砲兵中隊に試射を完了するに要する時間は 砲飛連絡の難易に依り差異あるも三十乃至四十分を要するものとす
敵砲兵を完全に制圧するは極めて困難にして 通常戦闘の全期間継続せらる
破壊射撃は左の要領に依る
三門編成七六粍中隊は一時間乃至二時間内に 幅六米 深さ二十米の通路を鉄条網に開設す
所要弾数は二粁以内にて観測容易なるとき 正面二米に榴弾五十発を要す
発射速度は一発毎観測の為 一門一分一発を越ゆべからず
七六粍乃至三〇五粍の各種火砲を用ふ 散兵壕に対する側射は正面射に比し 概ね二乃至三倍の効力を発揮す
地雷弾 焼夷弾を併用す
石造建築物の破壊の為には 一二二粍以上の榴弾砲を用い 所要弾数一「ヘクタール」約八発とす
鉄道橋破壊の為には三〇五粍乃至二二八粍砲を用い 百乃至二百発を要す
各砲種に就き 正面二米破壊の為の所要弾数を示せば 左の如し
榴弾、弱断面散兵壕、交通壕、三粁以内
正面射三〇発、側射十発
地雷弾、散兵壕及軽掩蓋、三粁以内
正面射三〇〜四〇発、側射一〇〜一五発
地雷弾、完全断面の散兵壕及重掩蓋、三粁以内
正面射一五〜二〇発、側射七発
戦車及装甲車撲滅には単独火砲をして近距離より予め試射せしめ待撃射撃を行う
擾乱射撃は概ね独軍のものに同じ
砲兵制圧の為には榴弾、榴霰弾を併用し(二、三中隊を以って時々急襲、其間一中隊又は一火砲にて適当の時間を間し射撃続行)又は化学弾(非掩溜性)を用ふ 弾幕射撃は左の如く実施す
固定弾幕射撃は左の目的を以って通常陣地戦に於て行う
七六粍砲は正面二十米につき一分二発の破裂弾あるを要し 三門中隊は各門一分六発の発射に依り正面百米に弾幕を形成す、側射は弾幕の正面幅を三乃至四倍に達せしむるを得、射撃時間は何れの場合にも三分を越えず
移動弾幕射撃は陣地戦に於て多数の火砲を有し弾薬豊富なるにあらざれば実施困難とす
移動弾幕射撃には単一なるものと重複せるものとあり 重複せるものは近き距離は破片性弾丸 遠き距離には非掩溜性化学弾を用ふ
本社撃は 逐次推進する方法を用い 後退方式を許さず
五秒毎に二百米を増加する計算(無観測)射撃 又は 観測しつつ歩兵の前進に伴い射程を延伸する方法を用ふ、所要弾数 発射速度は固定弾幕射撃に準ず
目潰射撃は発煙弾又は燐含有弾を用ふ
各種火砲に依る任務分担を各国軍に於て比較すれば左の如し
歩兵の直接支援及掩護
運動法に依り乗車砲兵、乗馬砲兵、駄載砲兵、自動車積載砲兵に分つ
敵陣地破壊、対砲兵戦、時として制圧及交通遮断
運動法に依り繋駕砲兵、自動車積載砲兵、自動車牽引砲兵に分つ
任務は対砲兵戦 其他 交通遮断 及 擾乱射撃に任じ 瞬間目標にも使用せらる
鉄条網破壊 及 戦場工事の破壊
遠距離目標、堅固なる目標
以上の如しと雖 各火砲共最適合の任務以外なりとの口実を以って無為に終わるを戒め 特に攻撃準備破砕 及 敵の重要なる阻止の為には挙て使用すべきものとなり
目標の種類に依り 最適当の砲の任務を示せり
尚小口径火砲を以って目的を達し得るものに猥りに大口径を用いざるを原則とす
赤軍の火砲の種類多きは注目すべし
独軍に在りては「ヴェルサイユ」条約に火砲の種類を制限せられ野砲、山砲、軽榴弾砲を有するのみなるが 野砲に遮蔽砲兵の制圧を賦課しあり 軽榴は本邦の用法に同じ