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砲兵戦術講授録 原則之部

第三篇 砲兵戦闘ノ特別原則

第四章 追撃及退却に於ける砲兵

追撃 及 退却戦に在りては 戦場頻繁に移動するのみならず 一地の戦闘に於いても戦闘準備の為使用し得べき時間短少なるを通常とし 砲兵は十分なる機動性 及 射程の自由性を発揮し 敏速なる射撃準備を整えて 適時陣地を占領し 適切なる火力の運用によりて 神速なる戦況の推移に即応し 以って歩兵の戦闘に協力せしむるを以って運用上の要訣とす

従って 此種戦闘に於ける砲兵に対しては 綿密精細なる射撃準備 巧妙精到なる火力配置等を期待することなく 専ら軽快なる移動性と 迅速なる戦闘参加を本旨とし 且 為し得る限り長遠なる射程を活用せしむるを以って 砲兵用法上の方針となすを要す

第一節 追撃に於ける砲兵

追撃は 彼我歩兵のマラソン競争に非ず 空中を自在に飛翔する弾道の追撃に依り敵を壊乱に陥らしむるを理想とするものなるが故に 追撃に於ける砲兵は 軽快なる運動性と 長遠なる射距離とを活用し 神速なる火力機動を十分に発揮して 先ず戦場を離脱せんとする敵を猛射し 砲火の障壁に敵を圧倒して之を戦場内に殲滅せんことを期し 次で敵兵漸次離隔するや 退却する敵の主要なる部分に火力を集中し 特に適切にして好機に投合する交通遮断 及 擾乱等の射撃を以って 敵を壊乱に陥らしむるを要し 此等は独り有形上の効果のみならず彼我両軍に与える無形上の貢献亦至大なりとす

第一款 追撃準備

砲兵は 各観測所 及 標定所等に亙り 広く精良なる眼鏡器材を整置し 且 多数の観測所 及 斥候要員等を配置せる関係上 彼我第一線を以って接触せる歩騎兵に比し敵兵退却の微を発見し得る機会多く 高級指揮官は此等砲兵情報機関による捜索の結果を善用することを忘る可からず

追撃の初動に在りては 砲兵主力は依然現陣地に在りて射撃を継続し 猛進する我が歩兵に協調して適時適所に敵を殲滅せんことを期すると共に 直後の要度を顧慮して 速やかに斥候を派遣し 陣地を偵察し 状況を確かめ 逐次観測通信機関を集結し 弾薬補充を完了し 以って即時追撃前進に移るの準備を整うるは 即ち 爾後に於ける追撃戦闘成果の円滑完璧を期する最大の要因にして 斯くの如きは砲兵各級指揮官の適切なる状況判断と機宜に応ずる独断とにより之を行い得べきも 高級指揮官は全般の状況と戦闘指導の大綱とに基き 成るべく速やかに砲兵の追撃準備に関する指針を与え 特に其弾薬補充の円滑を期すること緊要なりとす

第二款 戦場内の追撃
  1. 一、 砲兵の射撃目標

    砲兵は退却する敵の主要部分を火制して 敵をして戦場を離脱し能わざらしめ 特に敵を要点に捕捉するの着意を肝要とし 之が為 特に敵の自然に蝟集して通過すべき隘路、橋梁、渡渉場等の如き 退却路上の重要点に火力を集中して 其退却を遮断し 若は 我歩兵の追撃を阻止反撃する為 尚頑強に抵抗せる敵を圧倒猛射して之を潰乱せしむるを肝要とす

  2. 二、 砲兵に協力せしむべき航空部隊

    追撃 特に其初期に在りては 前述の如く 砲兵は敵後方の要点に対する射撃により偉大なる効果を収むべき好機を活用せしむべきこと必須焦眉の要件とす 而して 此際 砲兵は一部の観測機関を挺進して 敵情の捜索 及 射撃の指導を補助せしむべきも 其実施は時と共に困難の度を増加するを以って 高級指揮官は 航空機 特に飛行機を 砲兵に配属 若は 協力せしめて 砲兵任務達成の為必要なる捜索 及 射撃観測に任ぜしむるを肝要とし 之が為 予め両者をして十分なる協定を遂げしむる如く配慮するを以って必須の事項なりとす

  3. 三、 陣地変換

    砲兵は十分に有効なる射撃を期待し得る限り 依然其陣地に在りて任務を続行するを可とするも 敵兵漸次退却するに伴い 射撃指揮困難となり 射程は増大し 歩砲の協同は困難となり 遂には敵兵射程外に脱逸するに至るべきを以って 逐次に陣地を変換して 歩砲兵の協同を緊密にし 且 絶えず敵をして有効なる砲火を脱し能わざらしむる如くするを要す

    砲兵の陣地変換に当りては 予め之を計画し以って適次之を開始し 且 逐次に之を行いて 敵に及ぼすべき砲兵威力を間絶なからしむるを肝要とし 其陣地は巧妙ならんより機宜に適せじむるを本旨として定め 其移動推進は歩兵の前進に伴い 危険を顧みることなく果敢に之を行い 成るべく前方に進出して 歩砲の協同を良好ならしむると共に 勉めて長く有効火力を発揮する事を主眼とせざる可からず

  4. 四、 砲兵の指揮 及 配属

    追撃戦闘に於いて砲兵逐次に陣地推進を開始するに至るや 砲兵の統一指揮は次第に困難の度を増加するを以って 勉めて多くの砲兵を第一線歩兵の指揮官に配属するを以って有利とし 之に依って第一線歩兵と砲兵との協同を緊密ならしめ 短時間の戦闘準備により直接歩兵に協同して適切なる火力運用を期せしむることを得べし

第三款 戦場外の追撃

此時期に於ける砲兵は 所要のものを追撃隊に配属し 一部は包囲迂回部隊に属し 其他は追撃すべき師団主力と共に前進せしめ 以って適時追撃戦闘に参加せしむべきものとす

追撃間に在りては 上空 及 地上に於ける敵の奇襲に対し 砲兵の自衛に関し顧慮せざるべからず

  1. 一、 追撃隊に属する砲兵

    追撃隊の威力を成るべく強大ならしむるべき着意上 特に多くの砲兵を配属するを有利とし 且 十分なる弾薬を携行せしむること緊要にして 状況によりては砲数其ものは多少寡少なるも 比較的豊富なる弾薬を携行せしむるを可とすることあり 是 追撃中に於ては自ら頻次の戦闘実行を要し 此際 敵の抵抗を迅速に圧倒し果敢なる前進に資する為 特に砲兵として 砲数と其弾薬との総和を合算するを要すればなり

  2. 二、 包囲迂回部隊に属する砲兵

    退却する敵を包囲し 或は 其退路を遮断する為 有力なる一部隊を使用するに方りては 之に一部の砲兵を配属するを要し 特に其運動性を十分に発揮せしめ得る如く配慮するを要す

  3. 三、 主力と共に前進する砲兵

    成るべく縦隊の先頭に近く位置して前進せしめ 特に其 観測班 挺進班を 適宜前方に推進せしめ置き 以って所要に応じ速やかに戦闘に参加せしめ得る如くせざる可からず

第四款 夜間追撃

夜間敵兵退却の微あるや 砲兵は 速やかに敵の退却状態と 友軍の追撃状態とを較量して 主要なる退却路上に於ける要点 及 予想する敵の集合地域等に対し 火力を準備し 且 第一線部隊と最も緊密なる連繋を保持し 次いで 敵の退却開始を察知するや急襲的に射撃を開始して敵を混乱に陥らしむること肝要なり

我が歩兵の追撃進捗に伴い 夜間砲兵の追撃射撃の継続は至難なること多きを以って 爾後 砲兵は速やかに前進準備を整え所要に応じ前進運動を開始すると共に 翌払暁に於ける戦闘参加を期し速やかに準備するところあるを要す

第二節 退却に於ける砲兵

退却戦闘に於ける砲兵は 其火力と運動性とを適切に活用せば 啻に友軍の戦場離脱を容易ならしむるのみならず 砲兵自隊の戦場離脱も亦容易なるものとす

退却中に於ける砲兵は 戦況上 統一指揮を有利とせざる場合多く 之を 収容隊 若は 後衛 或は 退却縦隊等に 配属使用するを通常とし 之に依って其運動性、長射程 及 火力機動性を活用すべきも 特に運動性十分ならざる砲兵は成るべく速やかに退却し就かしめ 所要の地域に先行せしむるを可とす

第一款 退却準備

砲兵の退却準備には 退却路の偵察、観測通信機関の撤収 並びに 後方機関の整理を必要とし 而も他面 最後の時期迄 戦闘実行の為 所要の連絡施設を必要とするを以って 状況之を許せば 適時退却に関する意図を余示して 其実施を円滑ならしむること肝要なり

収容隊には 其任務上 特に多くの砲兵を配属し 以って其射程を活用して 成るべく長く 且 遠方に敵歩兵を阻止し得しむる如くするを要し 此等砲兵は 速やかに陣地偵察を行い 且 所要の観測挺進団を新陣地に先遣して 射撃準備に着手せしむるを要するを以って 退却の意図を決するや 勉めて速やかに之を命令せざる可からず

第二款 戦場離脱
  1. 一、 第一線の退却に伴う砲兵の任務

    砲兵は其最大威力を発揮して友軍の戦場離脱を容易ならしむるを要し 之が為 我が歩兵に最も危害を与える敵を火制するを要し 従って 其目標は我が歩兵に追撃圧迫する敵歩兵 若は 我が歩兵の退却を阻止する敵砲兵等なるを通常とし 此際 砲兵は其損害を介意することなく 離脱困難なる歩兵を援助すべき協同の精神を発露すべきものとす 是 砲兵は其長射程と運動性とを活用せば 第一線歩兵より適宜後方に陣地を占領せる関係上 第一線歩兵の退却に就きたる後尚 若干時間は其陣地に止りて 自隊に危険を及ぼすことなく 我が歩兵の退却を容易ならしむる如く火力を運用すべき余裕を有するを通常とすればなり

    退却に方り 戦況 更に急迫し 我歩兵 敵に撃退せられたるが如き場合に在りては 砲兵は一層勇敢に其戦闘を継続して最高の犠牲的精神を発揮すべく要求せられある主旨も亦 砲兵の特性上 前述の如き戦闘行為の可能性を有するに職由するものにして 高級指揮官としては 収容部隊陣地占領の適切なる指導と相俟ちて 退却開始前の砲兵 並びに 第一線配属砲兵の退却を適時下命するを要す

  2. 二、 砲兵主力の退却時機

    砲兵主力は 収容隊 既に其陣地に就き 第一線を収容し得るに至れば 適時退却に就かしむるを本則とす 蓋し砲兵は 第一線歩兵より自然の掩護を受けつつ戦闘を行いある際に於ては 第一線の退却に協力して敵を阻止し得るも 前線の歩兵既に砲兵陣地附近まで後退するや 砲兵は敵の一部より奇襲を受くるに至り 全般の退却の指導上 却って繁累となることあればなり

    収容隊 既に陣地を占領し 第一線を収容し得るに至れば 我が第一線歩兵は 収容隊 特に先ず其砲兵の掩護の下に 逐次兵力を集結し得るを以って 未だ退却を開始することなく戦闘を継続しある主力砲兵は 適時之を退却せしむることを得るものとす

    人或は言わん 第一線歩兵の退却開始前に於て 収容隊 既に陣地を占領し 第一線を収容し得るに至らば 未だ退却せざる主力砲兵をして 我が歩兵に危害を与える敵を射撃せしめ 時としては 之が為 好んで損害をも蒙らしむるを要せざるべし宜しく 収容隊陣地に就き第一線を収容し得るに至れば 即時主力砲兵を退却せしむるを可とせずやと 一理なきに非ず 然れども 砲兵は 既述の如く 其射程 運動性 並びに陣地の関係上 第一線退却開始後 少なくも若干時間は 危険なく戦闘を継続し得るを以って 我が第一線の退却開始の当初に於ては 旧陣地にある主力砲兵 及 収容隊の両者を以って 第一線の退却を援助し 次いで 主力砲兵に危害を及ぼさざる如く適時に之を退却せしむるを以って勝れりとす

第三款 後衛砲兵

後衛は 其任務上 持久戦を策するを以って 射距離長遠なる砲兵を以って 敵を遠距離に支持し 以って時間の余裕を求むるを最良とし 之が為 後衛には比較的大なる砲兵を配属するを要す

後衛砲兵は 敵を遠距離に阻止すると共に 後衛陣地の両翼に対する 敵の迂回 若は 包囲行動を 火制するに利便にして 且 爾後の退却容易なる陣地を選定すべきものとす 然れども 若し後衛にして靭強なる抵抗を予期する場合に在りては 砲兵も亦 以上の外 後衛の陣地前をも射撃し得る如く陣地の配置を定めざるべからざるものとす

第四款 夜間退却

夜間の退却に方り 砲兵は通常特別の任務に服せしむることなく 第一線に先だち退却に就かしむるものとし 状況に依り一部の砲兵をして収容に任ぜしむることあり

収容に任ずべき砲兵は 敵の近接最も容易なる方面 又は 地域に対し火力を配置せる部隊中 敵と離脱最も容易にして 且 友軍歩兵の退却の繁累とならざるものを使用するを可とす

退却すべき砲兵主力には 特に友軍他部隊との行進交叉を考慮し 要すれば之が規正の方法を講じ 又 砲兵退却の為 路上を閉塞して支障を呈し易き輜重等は 予め之を処理し 以って友軍の相互の混淆錯綜なからしむること 極めて肝要なり