フォッカーD.XXI(21)

 もともとは1934年に出された蘭印(オランダ領東インド・現在のインドネシア一帯)駐留の植民地軍の要求によって、カーチスP-6ホーク複葉戦闘機を更新すべく開発された、低翼単葉固定脚の単座戦闘機である。
 植民地用の戦闘機ということで、簡単軽量安価にまとめることを主眼に設計された。実際に、当時のメッサーシュミットBf109Dの半額でできたといわれる。
 構造は基本的に鋼管フレームに羽布と軽金属の外鈑で構成される。
 当初、RRケストレルIVを動力とする予定であったが、これはすぐにブリストル・マーキュリーVI-S9(645馬力)に変更されている。
 1936年2月17日付の蘭印政府(総督府)の「戦闘機より爆撃機の方が必要である」との政策変更(これにより蘭印はマーチンB−10改を購入することになる)の発表により注文はキャンセルされてしまったが、試作機初飛行のわずか10日前ということもあってフォッカー社では輸出用戦闘機として自社リスクでの開発続行を決意。1937年2月27日に初飛行にこぎつけた。
 まずオランダの本国政府がマーキュリーVIII(830馬力)付きのタイプを36機発注したが、実際の引渡しは次の顧客であるフィンランドよりも遅れた。輸出を優先したのである。
 フィンランドは1937年11月18日付で完成機7機(シリーズ1と呼称)とともに14機のノックダウン生産用パーツを発注、及び生産ライセンスを購入する。
 フィンランド向けの完成機は1938年7月に引渡、即時部隊配備となった。オランダ向けの機体は同年8月から12月にかけて引渡となる。
 フィンランド仕様とオランダ仕様はエンジンと武装に微妙に違いがあり、フィンランド機はマーキュリーVIIで、武装は.303(7.7mm)、胴体銃はヴィッカーズ、翼内銃はブローニングの組合わせであるが、オランダ機はマーキュリーVIIIで、武装は7.92mmのベルギーFN製ブローニングを胴体翼内ともに装備している。また、少数ではあるが翼下にマドセン20mm機関砲のガンポッドを備えた機もある。
 またフィンランド機もノックダウン分14機(シリーズ2と呼称)とライセンス生産分21機(シリーズ3と呼称)は胴体銃もブローニングとなっている。
シリーズ3ではエンジンの国内生産が間に合わず、ポーランドがライセンスしていたマーキュリーVI-S9を購入して搭載した機体があり、これは多少性能が劣っていた。このシリーズ3までは冬戦争に間に合った。
 1938年にはスペインの共和国政府とのライセンス契約が結ばれたが、ほどなくフランコのナショナリスト(ファランヘ党)が内乱に勝利を収めたため、立ち消えとなってしまった。
 また、1939年にはデンマークがグロスター・ゴーントリットの後継機としてD.XXI を2機購入し、10機のノックダウン生産を契約した。デンマーク機はマーキュリーVI-S9が標準エンジンであった。

 D.XXI の初陣は1939年冬からのソ連・フィンランド間の冬戦争である。この戦いではD.XXI はフィンランド軍パイロットの高い技量と優れた戦術によって圧倒的なソ連空軍に対して善戦し、フィンランド軍ではフォッケルの名で親しまれた。
 1940年春、ドイツ軍はデンマークに侵攻。デンマークのD.XXI は12機全機が可動状態にあったことはあったのだが、初日の奇襲で11機までが地上撃破されてしまい、まったく為すところがなかった。
 西方電撃戦の一環としてドイツ軍がオランダに侵攻したときには在籍36機中28機が可動状態にあり、初日には64ソーティをこなしてドイツ軍空挺部隊の作戦を大混乱に陥れたものの以降4日間のうちにまたたくまに20機(空戦8・対空砲火8・味方対空砲火2・事故2とされる)を失って戦力を喪失した。

 フィンランド空軍ではなお現役にあり、ライセンス生産も続行される。マーキュリー発動機はブレニム爆撃機のために必要なので、ツインワスプ・ジュニアにエンジンを換装することとされた(シリーズ4と呼称)。
 しかし、設計技術が未熟なところへもってきて、ツインワスプ・ジュニアはマーキュリーよりも本体も補機も重く、海面高度でわずかに速い以外は上昇力も最大速度も低下という改悪版になってしまった。
 それでもシリーズ4は41年12月から42年7月までに49機が製作されている。
 ツインワスプ・ジュニア搭載機はエンジン変更のためカウリング形状が変わっており、また胴体銃がシリンダ間をとおして発射するようになっていたのが複列エンジンになって不可能になったために、4挺とも翼内機銃としている。
 大戦末期の44年になって補用部品とジャンクをかきあつめてさらに6機のD.XXI が7月から10月にかけて組み立てられた(シリーズ5と呼称)。

(文:まなかじ)


オランダ陸軍航空隊のD.XXI。胴体後部の羽布が破れて内部のフレームが見えている。

ツインワスプJr搭載のフィンランド空軍機。やたらと数が多く、中央に小穴のあいた独特のカウルフラップに注意

諸元(フィンランド空軍実測値)※速力及び上昇時間は戦闘装備重量
マーキュリー(シリーズ2)ツインワスプJr(シリーズ4)
全幅11.00m同じ
全長8.20m8.30m
全高2.95m3.10m
翼面積16.7m2同じ
自重1,594kg1,850kg
全備重量1,970kg2,400kg
最高速度342km/h(SL) 418km/h(5,000m)354km/h(SL) 375km/h(2,000m)
上昇時間3,000mまで3分27秒、5,000mまで6分23秒3,000mまで5分02秒、5,000mまで10分12秒
上昇限度11,000m9,600m
航続距離950km800km
武装 ブローニング7.7mm機銃*4(胴体*2 翼内*2)ブローニング7.7mm機銃*4(全て翼内)
発動機ブリストル・マーキュリーVII 空冷星型9気筒840馬力P&W R-1535ツインワスプJr SB4-C空冷星型14気筒825馬力
乗員11

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