サンノゼ飛行日誌
5月以前の飛行日誌ログです。
- 2000年 5月27日 17:00−
N86889 1.2h/16.4h 13th
珍しく夕刻のフライト、カリフォルニアの夕陽は強烈なのでサングラスが必須。さて今日も「千本ノック」の離着陸特訓。最初に離陸してクロスウィンドに旋回したところで、管制塔から「Traffic adversary, Boaeing seventeen, 2200ft at 10miles south」と入ってきた。ボーイングの17型?えっ!それって B-17 じゃないの?!この土日は南のワトソンビルでエアショーがあるので、丁度展示を終わって帰ってきたところらしい。しかも B-24 も一緒に居るという。Wow!
ダウンウインドで飛んでいると左上方にでかい機影が二つ並んで現われた。こうなるともう訓練もそっちのけ、パターンを大きく回るという口実で着陸経路を伸ばし、しばし両機に眺め入る。B-17 の赤い垂直尾翼と B-24 の銀色の胴体が印象的。「これが訓練じゃなかったら追いかけてって編隊組むんだけどなぁ」と教官殿の言葉。実際に追いかけて行った好き者が居るらしく、「Hey, I can't keep up with B-17!(くそ、追いつけないぜ!)」なんて交信も入ってきた(^_^;)。
さて貴重な体験は体験として訓練である。今日はほぼ滑走路と並行の風だが 15kts 前後と強く、アプローチ角の見積もりとパワーセッティングに苦労する。なんせスロットルをほんの 1, 2mm 動かしただけで降下率がグンと変わるのだから大変だ。それでも何とかグライドパスは作れるようになってきたが、タッチダウン直前の滑り制御がどうも良くない。機首を引き上げるのに注意を払うと機体が滑り、滑りに注意を払うと機首の引きが甘くて浮き上がったりドスンと落ちたりしてしまう。
今日の新メニューは「ソフトグラウンド・テイクオフ」と「ノーフラップ・ランディング」。ソフトの方は芝生滑走路などで使うテクニックで、前輪を上げた「ウィリー状態」で滑走し浮き上がるというもの。ノーフラップは文字通りフラップを使わないでの着陸で、65kts のパスを守れるかどうかが成功の鍵になる。今日のように向かい風の強い日はまだ楽なほうで、風が弱い日は「サイドスリップ」つまり横滑りを使って減速させて飛行機を降ろすのだという。デブリーフィングでは「今度風が弱いときにやってみましょう」とのこと…本日のログタイム 1.2 時間。
- 2000年 5月23日 19:15−
明日フライトチェックを迎えるという生徒さんと教官の打ち合わせが長引いたため授業開始が少々遅れる。前回に引き続き法律の話、今回はパート 91 の巻。パート 91 はいわゆる航空法であり、すなわち飛行可能な航空機の定義や必要な装備、パイロットの責任と権限、基本的な飛行ルール(他の航空機は右側に回避するとか、滑走路の着陸は原則として左旋回とか)が定めてある。エアスペースごとの視界・速度・高度制限は以前に何度もやったのだが、覚えていたはずなのに曖昧になっている。飛行機に必要な装備については "A TOMATO FARMS" と覚えるとのこと。すなわち
Anti-Collision Light(衝突防止灯)
Tachometer(回転計)
Oil Pressure Gauge(油圧計)
Manuhold Pressure Gauge(吸気圧計)
Airspeed Indicater(対気速度計)
Temperature Gauge For Coolant(液温計)
Oil Temperature(油温計)
Fuel Quantity Gauge(燃料計)
Altimeter(高度計)
Retractable Gear Indicater(脚位置表示器)
Magnetic Compass(磁気方位計)
Safety Belt(安全ベルト)
もちろん固定ピッチプロペラなら吸気圧計は要らないし、空冷なら液温計は必要ない。複数形に A が付いているのもおかしいが、衝突防止灯が昼間目視飛行にも必須になったのはほんの10年ほど前なのだそうだ。それ以前は TOMATO FARMS で奇麗に納まっていた由。なお、目視夜間飛行には上記の他に "FLAPS" が必要になる。
Fuse Set For Spare(予備ヒューズ)
Landing Light(着陸灯)
Anti-Collision Light(衝突防止灯)
Position Light(航法灯)
Source Of Electric(電源)
何だか物凄い量の知識を丸呑みしてるみたいだけど、果たして消化できているのだろうか…言っているうちに第二回の筆記テストがある由。うーん…本日の座学 1.7 時間。
- 2000年 5月21日 13:00−
N24373 1.4h/15.2h 12th
昨日にも増して暑い日、気温は摂氏35度に達しているらしい。八月生まれの私は暑ければ暑いほど元気になるという性格なので暑いのは気にならないが、汗がポタポタ落ちて目に入るのには往生した。乗機は N24373、「スリーセブンスリー」がちょっと発音しにくい機体だ。
今日も離着陸の訓練。全開にした換気口はヘヤドライヤーのように熱風を吹き出す。風はほぼ滑走路に並行だが 5〜10kt の範囲で揺らいでおり、風向きも多少左右に振れているようだ。今日も空港が混んでいるので左右滑走路をほぼ交互に使い、No.2 や No.3 の順番待ちで大きなパターンを回ることもある。毎回のように条件が変わるのでアプローチの練習には持ってこいだ。途中ぎこちないカタカナ発音の日本語で交信が飛び込んできたので「ご年配の日本人がおられるようですね」と教官に訊ねたところ、なんとその昔二式複戦「屠龍」に乗っておられた元少年飛行兵の方だとのこと。当時は燃料が欠乏してろくに訓練もできぬまま終戦を迎えたが、それから 50 数年後の今日、かつての敵国アメリカで改めて飛行機の操縦を習っておられるそうだ。何だか不思議な感慨にとらわれる。
今回は離陸時の左右のブレを押さえるのと、TPA(トラフィックパターン高度)を正確に守ることに注意を置いた。だがダウンウィンドからスロットルを絞ってベース−ファイナルに持ってゆくときの高度・速度の落とし方が今一つ安定しない。ファイナルのタッチダウン直前でやっと見当がついてピッチ・スロットルでジタバタ姿勢とパスを合わせているのでタッチダウンに余裕がない。「姿勢は段々よくなってきました」と教官は誉めてくれたが、まだまだソロで飛ぶ自身はない。よい点は伸ばし、悪い点は補うよう修練を積まねば…本日のログタイム 1.4 時間。
- 2000年 5月20日 13:00−
N6321M 1.4h/13.8h 11th
急に気温が上がってムッと暑くなってきた。飛行場向かいにあるプール「レイジング・ウォーター」名物の滑り台には早くもお客さんの行列ができている。今日もクローズド・トラフィックの練習だが、ニーボード(膝の上に乗せるメモ板)を忘れて記憶に頼って無線周波数をセットしたら、管制塔にグラウンドタクシー許可を申請してしまって赤っ恥をかいた(Reid-Hillview では地上管制 121.65MHz, 航空管制 119.80MHz で別々なのだ)。先日と違い好天しかも昼過ぎのため飛行機が多い。左右どちらか開いている滑走路を割り当てられるので右旋回と左旋回両方のパターンを練習することになる。どちらから回った場合でも、南からのアプローチではショッピングモール(East Ridge Mall)の上空を飛び越えるので怖い。ショッピングモールの建物に突っ込んでゆくような錯覚を受けて操縦桿を引き過ぎると速度が落ち、それをスロットルで誤魔化してアプローチするとタッチダウンの時に浮き過ぎてしまって焦ることになる。うまく滑走路の上に持ってきても、接地直前に失速直前まで操縦桿を引いて飛行機を「落とす」のがどうにも怖く、また機首が上がった状態で前が見えないので飛行機の滑り方向を見極めることができない。教官いわく「二度めにしてはまぁまぁの出来だけど、もっと視野を広く持つようにしなさい。あと各段階での手順と確認は手を抜かず確実に」ということだった。ヒコーキ乗りへの道は厳しい…本日のログタイム 1.4 時間。
- 2000年 5月19日 19:00−
気象の話は前回で終わって今日からは法律の話。空の法律 FAR(Federal Aviation Reguration) というのは猛烈な分量のあるもので、教本にはパイロットに必要な部分だけを抜き出した抄版が別途付属しているのだが、それですら電話帳ほどの厚さがあって閉口する。ただしプライベートパイロットとして本当に必要な部分はもっと少ない。FAR は「パート」と「サブパート」で分類され、例えばパート 61 サブパート 81 と言えば「訓練パイロット」の定義を定めた条文であり、FAR.61.81 のように表わす。今回の授業で習ったのは 1, 61.56, 61.57, 61.81, 61.102, 61.113。興味深いのは 61.56 の「フライトレビュー」で、アメリカでは一度取った航空免許は生涯有効なのだが(ただし高齢になると医療審査(Medical Certificate) が通らなくなる)、24 ヶ月ごとに一回は教官同乗で「一通り飛べる」ことを証明しなければならない。飛行技術充分な者なら2時間程度で済んでしまうが、長く飛行と御無沙汰していた者は基準を満たすことができず何度もやり直すことになるという。日本の飛行免許には何故かこの制度がないらしい。日本の飛行免許制度のおかしな点について教官にいろいろと話を伺ったのだが、それはまた別の機会に記すとしよう。本日の座学 2.0 時間。
- 2000年 5月16日 19:00−
前回の続きでお天気の学習。今回は飛行前・飛行中に利用可能な気象情報について。まず FD(Forcast of winD) または ALOFT と呼ばれる高度ごとの気温/風力予報、AC(Aviation Convective) または Contective Outlook と呼ばれる雷雲予報、ハリケーン予報の WH、要注意気象情報の WW。AIRMET(AIRmen's METeological information)または WA、SIGMET(SIGinificant METeological information) または WS と呼ばれる要注意気象情報、Convective-Sigment または WST と呼ばれる雷雲情報。更に地表観測による気温/雲量/風力配置図である Surface Analsys Chart、その概略版である Weather Depiction Chart、気象レーダー情報の Rader Summary Chart、とどめに気象衛星情報の Satellite Weather Picture と超広範囲の気象概略を示す Low-Level Prog Chart、更にその他数種類。勘と度胸だけで飛んでいたリンドバーグや坂井三郎の時代と異なり、科学の発達した今日では余計なお世話と思えるくらい豊富な気象情報を揃えることができる。しかし飛行機乗りの心構え「1に準備、2に準備、3・4が無くて5に準備」はどの時代でも同じこと。積乱雲に阻まれて山に叩き付けられたり、雷雲に突っ込んで翼がモゲてしまってからでは遅いのだ。神ならぬ人間が不完全きわまりない機械で圧倒的な大自然の中を飛ぶ以上、情報は多すぎるということはない(と格好いいこと言ってみても、勉強はタイヘン…x_x;)。本日の座学講習 1.7 時間。
- 2000年 5月14日 15:00−
N6321M 1.2h/12.4h 10th
3500 フィートに雲があって雨の混じる天気。こんな日のサンノゼは南西から風が吹き、いつもと反対方向の13(磁方位130)滑走路を使うことになる。風向きは16なので30度右からの横風、いわゆるクロスウィンド。この条件で「クローズド・トラフィック」すなわち離陸−着陸の反覆練習を行う。正しいアプローチ条件になるよう高度速度を保持するだけでも大変なのに、風に対する補正をラダーとエルロンを適切に使って行わなければならないのがひどく難しい。一つだけ救いなのは、こんな天候なので日曜日にも関わらずトラフィックが少ないこと。結局6〜7回着陸を繰り返したが、最後の一回は教官はフリーハンドでタッチダウンした。初めてのクロスウィンド着陸にしてはまぁまぁの出来だが、これからはアプローチからタッチダウンまでの手順がスムーズにできるよう身体で覚えてゆくとの事。本日のログタイム 1.2 時間。
- 2000年 5月13日 9:00−
N67596 1.4h/11.2h 9th
朝からの飛行だが空に上がれば眠気も忘れる。31Lから南に飛んでアンダーソン湖の上空で目隠し飛行。その後サウスカウンティ空港へ着陸の練習。更にグランドリファレンスをやったあと Reid-HillView で「フルストップ」、つまり着地→タクシーバック→テイクオフをやる。教官が着陸時のオーソリティを80%くらい渡してくれるが、タッチダウン直前20%のコツが掴みにくい。これからしばらくは離着陸訓練に励むことになるとのこと。本日のログタイム 1.4 時間。
- 2000年 5月9日 18:45−
GWは一杯飛ぼうと思っていたのに、日本からの予約がギッシリで一回も飛べずじまいだった(T_T)。今回は久々の夜学。気象についての続きである。飛行機が避けるべき危険な気象…雷雲、竜巻、突風、乱気流、氷結…について学ぶ。セスナ 152 のような小型機は雷雲なんかに入ったら一たまりもない。危険な積乱雲(Cumlonumbus)からは最低 20 マイル離れて飛ぶよう教えられる。また METAR, TAF, PIREP といった航空気象情報の読み方についても教わるが、これが 122150Z0820G38KT1/2SMR36L2400FT…といった電信・テレタイプ時代そのままのフォーマットでほとんど暗号かプロトコル解析。もっとも現在はインターネットが普及してもっとわかりやすい形態での気象情報も取得できるが、慣れれば METAR もスラスラ読めるようになるとのこと…本日の座学講習 2.0 時間。
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