3499 いつも御世話になっております。
例によって些細なことですが。
小説、戦史記述等で、
第二次大戦までの船団護衛の編成に、トロール漁船が含まれていることを散見することがあります。(特に英国関連の船団に多かったと記憶します)

まず、事実としてとらえておいて良いのでしょうか?

事実であれば、なぜ、他の漁船でなくてトロール漁船なのでしょうか?
他の徴用商船等では果たせない何かがあったのか、とも思えます。
愚考すれば、
1.外洋航行性能を認められた
2.漁網や漁具で溺者救助、対潜攻撃、警戒等、何かできるため
3.他に船団内で航行中に特別な働きができた?
  または英国のトロール船に固有の理由があった?
というところなのですが、有力な資料が見つかっておりません。

諸賢の御助力、御高見をお願い致したいところであります。
よろしくお願い致します。
まつかぜ

  1.  第一次大戦時に外洋型トロール船は外洋航行船団の護衛艦として使用した場合、この任務に使用するに充分な速度と航洋性があり、また対潜艦としてソナー及び爆雷兵装などの必要な装備を施せるだけの強度とスペースがあることが評価されています。この評価もあって大戦間の英海軍では、外洋型トロール船を戦時に徴用して対潜護衛艦として使用するのは規定方針となっていました。
     しかし第二次大戦直前になると、商船の速度性能向上等の要因から、民間徴用のトロール船は大西洋横断を含む外洋航行船団の護衛艦として使用するには能力不足と看做されたため、外洋作戦用の船団護衛艦としては新たに捕鯨船ベースのフラワー級コルベットが整備されることになります。一方で徴用されたトロール船は沿岸用の船団護衛艦及び掃海艇としては有用、と評価されたことから、主としてその目的に充当されていますが、第二次大戦開戦後に生じた対潜護衛艦の不足のため、これらのトロール船改装対潜護衛艦が外洋作戦任務に就くことも度々発生しています。
    大塚好古

  2.  大塚さんの回答につきると思いますが、ちょっと補足。
     トロール船は、底引き網を引くため、強力なエンジンを積んでいる(低速の船団ではそこそこ快速)。また網の操作のため、船の操縦性も配慮されているので、軽快な行動が可能。といったあたりが、同クラスの商船や一般漁船と比べた場合の、具体的な利点かと。
    カンタニャック

  3. >大塚様 カンタニャック様
    早々に的確な御回答をありがとうございます。
    漁網・漁具で、というのは甚だトリッキーな視点かな、と思っていたのです。
    (でも、網で潜水艦に損害を与えるとか、溺者救助や漂流物引き上げというのは否定できないと思ってました。)

    「外洋型」「底引き網漁船」ということでフネ自体の適性が評価されたわけですね。両氏の御回答で氷が溶けるように納得できました。
    まつかぜ

  4. ゴミかもしれませんが
    >漁網・漁具で、というのは甚だトリッキーな視点かな
    あながちそうとも言えません。
    潜水艦が登場して、最初に水中の潜水艦に対する攻撃方法として考えられたのが「表示付き網」(1904年の英海軍演習において使用)となります。これはそのままトロール網に浮きを取り付けたものです。定置式の防潜網をトロール船で運用すると思って頂くとイメージがわくかと思います。
    細かいバリエーションが多数あり(発煙式とか単艦運用か2艦運用かとか)ましたが、一部は第一次世界大戦前半まで使われていたと思われます。

    実際問題としては大塚様やカンタニャック様の回答が正しいのです。
    いぎし ちじ

  5. 誤;正しいのです
    正;正しいです

    ちなみに網に引っかかった潜水艦は、身動きが取れなくなって浮上したところを砲撃か体当たりで攻撃するのですが、イギリスでは銛の先に爆弾を取り付けたBomb-Lanceという兵器も採用されています。
    地中海に派遣された日本艦隊にも支給されていますが、これによる撃沈記録や攻撃記録はありません。
    いぎし ちじ

  6. 老婆心ですので、聞き流していただいて構いませんですが・・・

     英国で言う「外洋トロール船」は日本での「遠洋トロール船」とはまったく違う船です。どちらかといえば日本では「以西底引き」漁船がそれにもっとも近いと思います。
     日本での「遠洋トロール」漁船は、1万トンに達する船もあり、非常に大型ですが、主にドッガーバンク周辺を主たる漁場としていた、往時の「外洋トロール」漁船は、それよりもはるかに小さい船です。大きくても数百トンというレベルですが、操業海域の海象が非常に厳しいため、荒天時運用に優れたノウハウを持っていました。
     しかし、日本での遠洋漁船のように、単独で何ヶ月も洋上で操業できる能力は無かったと思います。またエンジンなども特段「強力」というわけではなく、荒天海域に適するように、喫水の深い船型を採用していました(現在でもそうですが)ので、速力もあまり大きくは無かったようです。
     北海周辺での対潜兵力としての利点は、海底地形に対するノウハウが蓄積されている事、漁具運用のための船尾スロープ、もしくはそれに類するものの存在が対潜落射兵器運用に都合が良かった事が挙げられますが、アスディックなどの装備に対して、電気的な適合性があったのかどうかは不明です。操船性能は、漁船の常として一般商船よりは格段に優れているはずですが、専門の軍艦(対潜艦艇)よりも優れていたか、というのにはかなり疑問があります。
    elebras

  7. >6
     第一次大戦の時点でならば、専門の艦というのがそもそも存在しません。
     またトロールから発達した対潜艦艇が後に登場することや、第二次大戦の日本でもっとも多用された対潜艦艇である駆潜特務艇が漁船ベースであるように、両大戦における専門艦艇とは、漁船に所要の装備を施した程度の代物だったりしますので、操船性に大差はないでしょう。
     またWW1時ではアスディックは無いも同然ですし、爆雷も限られてます。主たる対潜戦闘手段は見張りで潜望鏡を見つけて突っ込むというような時代です。
     対潜護衛に向いた艦は基本的に存在せず(何しろそんな概念すらなかったんですから)駆逐艦とて非常に限られた外洋航行能力と数量の無い時代だったのです。
     船団護衛用の対潜戦闘の出来そうな船舶なら何でも良かったんです。
     トロールは一応それなりの適正があって、数もあったので、とにかく護衛船舶の数が必要だった英国では優劣以前に利用せざるを得なかったし、恐らく選択肢は無かったんです。
    SUDO

  8. >6
    戦後日本の「遠洋トロール船」に関しては、確かに仰るとおり、現在の一般認識ではこちらが主流となりますね。
    私の説明不足でした。ご指摘ありがとうございます。
    なおアズテックに関して当方の資料では、能動的な探知(アクティブソナーに関しては1919年、すなわち戦後に実用化されたとあります。(但しジェリコー提督の著作によるWW1末期に採用された「電気的な探知」が磁気探知なのかアクティブソナーなのか確信が持てません)
    受動的な探知(水中聴音機)に関しては水中雑音と人工音の区別をする技術(機械的な事なのか、ノウハウ的な事なのか確信できていませんが、おそらく両方)が低かったため高速で航行する場合に役に立たなかったとあります。

    >7
    SUDO様の仰るとおりだと思います。「ゴミ」とは前置きしながらも、このAnQという場で特殊な事例を挙げてしまい、申し訳ありません。
    いぎし ちじ

  9. >6,7
    レスが遅れて申し訳ございません。
    いわれえみれば、20世紀はじめの漁船ですと機帆船はもとより純帆船もまだまだ活躍していたわけですから(帆船のトローラーもあるとは思いませんでした)、モータライズされているならトローラーだろとドリフター(流し網漁船)だろうと、エンジンがついていて外洋に出られて大砲と爆雷か掃海具をつめる船ならなんでもよかったんだというご意見に同意します。
    「強力なエンジン」以前に「補助エンジンでない主推進機としてのエンジン」を積んでいること自体が重要だったんでしょう。
    カンタニャック


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