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3214 駆逐艦島風について質問いたします。
日本海軍の水雷夜襲戦術は従来、遠距離隠密発射→突撃というものであり、このために次発装填装置がついていたそうですが、すると次発装填装置のない島風はどのように運用するつもりだったのでしょう。
高速をいかしていきなり突撃したのでしょうか、それとも昭和16年の演習の結果、すでに遠距離雷撃は諦めていたのでしょうか?
アクチャーブリ

  1. それは、見方が逆です。
    島風型は遠距離雷撃専門の水雷戦隊を組むつもりの艦だったのです。
    だからこそ、搭載雷数からすれば甲型より1本減らしてでも、可能な限界いっぱいの一斉発射数としての片舷15射線と、外側遠くを大回りして射点につけるだけの高速力が必要だったわけです。

    遠距離雷撃を諦めたからこそ、島風型(というか丙型駆逐艦)は1隻だけでおしまいになり、以後の整備をやめちゃったのですよ。
    通常の間合いでの高速雷撃戦には片舷4射線を最低限とし、6〜10射線が必要十分を満たす値で、8〜9射線が最適雷数なのです。
    つまり、15射線は過剰なんですな。贅沢に10射線を構成するにしても、発射管まるまる1基が余計になります。
    また、五連装零式発射管はクソ重たくて、四連装九四式発射管2基+予備魚雷8本よりも零式3基のほうが重くなる他、被害を受けて水圧機が落ちてしまった場合、緊急時の手動旋回が極端に遅いという欠点があります。
    これで、砲熕兵装は甲型と同じで排水量は2割増し、機関の価格も高いですし、遠距離雷撃戦を行わないとすれば、突っ込ませるには向いてない上に勿体無い艦になってしまうわけで、なかなか無駄の多い駆逐艦ですね。

    まなかじ

  2. >1
    昭和16年度策定のマル5、マル6計画では33隻の島風型建造を計画していたと聞きます。
    島風型量産が中止になったのは太平洋戦争開戦及びその後の戦局の推移によるものと聞きましたが、仮に太平洋戦争が開戦しなかったとしても「島風」(または改「島風」)量産は見直された可能性が高いのでしょうか?
    Ranchan

  3. 甲型駆逐艦の次発装填は、突撃後の再攻撃に備えたものです。
    基本的に、隠密遠距離発射は重巡と重雷装艦の魚雷で賄うものとされていました。
    昼戦230本、夜戦130本がその見積もりでしたが、数えてみるとわかるように、これは現有の戦力でギリギリで、何らかの事由で巡洋艦の数が欠けるとこの水準は達成できません。
    丙型駆逐艦の15射線は、この巡洋艦群の隠密発射を補填し、また状況により更に増強する必要性がある場合にも臨時に対応可能な機動的水雷戦力として用意されていたものです。
    従って、巡洋艦に欠けがなく、また敵の布陣が我が方にとって都合が良ければ、丙型駆逐艦もまた甲型や特型と並んで、主力の砲戦に呼応するタイミングで重巡群の砲戦の掩護の下に敵艦隊に突入します。
    この際には島風型の40ノットの快速力は、過負荷全力で30ノットに迫るアメリカの新型戦艦に対して威力を発揮するはずです。
    この点において島風型の高速には2つの意味があり、だもので、>1の「遠距離雷撃専門」というのは言い過ぎで、訂正します(ぉ

    しかし、遠距離隠密発射そのものの有効性が15年度、16年度の演習で疑問視され、また、それは規模はずっと小さかったもののスラバヤとバタビアに見るようにまんざら杞憂でもなかった。
    しかも、なにしろ夕雲型よりもだいぶ高価で、且つ価格だけでは済まない造機上の問題もありますし、既に述べたような零式発射管固有の問題もあります。これらを完全にバランスさせるのはおそらく当時の日本として不可能でしょう。
    決戦局面での理想を追った結果として、兵器としては夕雲型よりも入手性が悪化し、はまるツボがより狭くなった、かえって使いにくい艦になっています。
    マル五の16隻はとりあえず完成させたかもしれませんが、以降航空の進歩に伴い水雷戦術にも変化が起きるはずで、マル六以降の建造続行には疑問なしとしません。
    まなかじ

  4. 詳細な回答ありがとうございました。
    あやふやだった部分がだいぶ整理できました。
    アクチャーブリ

  5. >3
    ご教授有難うございます。
    「島風(丙型)」は甲型駆逐艦の性能向上・後継型と思っておりましたので、「甲型駆逐艦と比べてむしろ無駄が多く、使い難い艦になっている」とは考えも致しませんでした。
    Ranchan


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