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3172 既出であれば申し訳ありません。
二重反転プロペラは推進効率向上効果がありますが、航空機の場合は重量増加に伴うデメリットがそのメリットをうち消してしまうため、実際に採用された例は多くありません。他方船舶の場合は、大型タンカーも含め採用例がかなりあるようですが、軍艦での採用例は潜水艦に留まっているように感じます。軍艦での二重反転プロペラの採用例が少ないのは、どのような理由に基づくのでしょうか。また、WWII当時に採用が検討されたことはないのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
富士見町

  1. 下のサイトによると、二重反転プロペラ機構の大型化に問題があったようです。魚雷、それに一部の潜水艦(旧ソ連のヤンキー級原子力潜水艦など)で用いられてきましたが、初めてタンカーのような商船で実用化したのが93年といいますから、まだ民間大型船用でも歴史が浅いわけです。
    二重反転式の利点として、推進効率の向上、キャビテーション・ノイズの減少があります。静粛性が求められる潜水艦の場合、機構の複雑化といった短所を考慮しても実用可能でそれなりの費用対効果があるとみなされたから採用されたのでしょうが、大型の軍事用水上艦艇となると馬力も大きいし、それに対応できる二重反転プロペラの開発が難しかった、従来型のプロペラに比べそれほど効果が上回るわけではないといった事情があるからではないでしょうか。
    http://www.translog.jp/topics/no005/Nl93-3-5.pdf
    アリエフ

  2. 去年行われたABS(米国船級協会)の講義テキストのその部分を丁度読んでいますので、専門外ですが受け売りですとお断りしたうえで・・・(私はこの講義に参加しておりません。テキストは借り物です。(^^;;;;)

    1、構造の複雑化と二重反転装置による損失
      単軸単機船では二重反転とするためにギアボックスが必要になります。ここでの損失が推進効率の向上とトレードオフの関係になり、結果的に構造の複雑化、特にスタンチューブの二重化というかなり難しい構造を残すだけになる事。

    2、コレクティブピッチの採用が事実上不可能
      現代の商船では、運行経済性が非常に大きなファクターとなります。推進効率向上は確かに経済性向上に寄与しますが、それよりもエンジンを最も経済的な回転数で運用できる事による経済性向上ははるかに大きなファクターになります。自動調速ガバナーとコレクティブピッチ(可変ピッチ)の組み合わせは、機関室の無人化との関連も含めて、船舶運用コストへの影響が非常に大きく、この手法を採用することが難しい二重反転方式は経済的観点から採用されがたいとしています。

    3、推進効率向上の別アプローチの存在
      単軸船の推進効率向上には種々の方式が存在し、その多くが二重反転方式に近い推進効率の向上を、船舶建造上もっと簡易な構造で実現しています。(例えば整流版付きダクトなど。)

    講義テキストでは上記のような理由が挙げられております。ただし、これらは商船における理由で、軍艦におけるものではありませんが、軍艦においてもこの理由からの類推は可能と思われますので、参考としていただければと思います。

    なお、講義は昨年(2003年)5月20日から28日にかけて、メキシコ/カンクンにおいて、ラテンアメリカ各国のABS検査官向けに行われたものです。
    elebras

  3. アリエフさん、elebrasさんありがとうございました。
    最近の大型タンカーでの採用に関するニュースを読んで、商船の場合は大型船はともかく中・小型せんにはかなり採用されているように、勝手に解釈していたのですが、実際にそうでもないのですね。
    富士見町

  4. スクリュウの直後に自由回転するスクリューより少し径の大きな
    翼羽根を設置することでスクリュウの後流の回転力成分を推進力として
    回収できてトータルで推進効率が増す、という考案を世界の艦船の記事で
    みたことがあります。

    既存の船のスクリューのハブを改造するだけでレトロフィットできる利点も
    あるそうですが、実際に普及してるのでしょうか?
    Navy

  5. 遅レスとなりましたが、商船に関する部分のみ書き込みさせていただきます。
    まず前提条件として、現在では、技術の熟成により、船型改良やプロペラ設計で、なかなか推進性能を向上させることが難しくなってきております。そのため、二重反転プロペラの採用で期待できる十数%の推進効率の向上というのは、非常にインパクトのある数字であるということを心にとめて下さい。
    では、何故、二重反転プロペラの商船への採用実績が少ないかというと、複雑な機構を十分な信頼性で実現することの技術的に困難であったこととコストが高いことが原因となっています。
    前者に関しては、国内で建造実績のある2社でも、片方はたいしたトラブルはなかったようですが、もう一社の方は就航後もいろいろ苦労があったいう話が耳に入ってきます。
    後者に関しては、要は設備への余分な投資が何年で回収できるかという話ですので、燃料費が上がって運行コストに占める割合が増えれば、採用が促進されるでしょう。

    >2 elebrasさんにではなく、ABSのテキストに対する反論ですので、ご容赦下さい。

    1、構造の複雑化と二重反転装置による損失
    構造の複雑化はその通りですが、二重反転装置による機械損失が、数%の前半(1〜3%ぐらい)を超えるとは考えられず。上手に設計した二重反転プロペラであれば、十数%の推進効率の向上を期待できるので、差し引きしても相当の効率向上があるはずです。また実際に、先ほど例にあがった日本のある造船所の建造船の実績で、燃費ベースの実績で十数%の効率向上があったとのことですので、トレードオフの関係になるというのは、ちょっと不可解です。二重反転プロペラを余程まずい設計をしないかぎり効果がはるかに上回るはずです。

    2、コレクティブピッチの採用が事実上不可能
    二重反転式プロペラをCPPとすることは技術的に難しいのは事実ですが、そもそもVLCCやバルカー等の大型外航商船は、ほとんどFPPを採用しているはずです。まずもってCPPはFPPに比べて、プロペラ効率が悪くなる傾向がありますし、巡航状態の長い大型の外航商船は、ほぼ同一速力で航海していますので、加減速時の性能に優れたCPPを採用するメリットは今のところほとんどありません。CPPは航路が短く出入港の多い、フェリーや内航船等での採用が多いようです。またFPPであっても機関室の無人化は可能であり、多くのM0船はそうなっているはずです。よってCPPにできないので、経済的観点から採用されがたいというのは、全くナンセンスな感じがします。

    3、推進効率を高める装置はいろいろありますが、その効果はせいぜい数%程度ですので、推進効率のみを比較するのであれば、十数%は見込める二重反転プロペラと比べるべくもありません。そんなすばらしいものがあるなら、こぞって採用されているはずです。実際の運行上、こうしたデバイスの効果が認知できるのは3%以上の効果がある場合といわれています。そのため、デバイスによっては、全然効かなかったみたいなことを、船主さんから耳にすることは良くあります。

    というわけで、相当見当はずれな感じなのですが、何か二重反転プロペラに対する敵意を感じてしまいます。全文を読んでみたい!!


    >4既存の船のスクリューのハブを改造するだけでレトロフィットできる利点も
    >あるそうですが、実際に普及してるのでしょうか?
    ボスキャップフィンですね。http://pbcf.motech.co.jp/index_J.htm これを読むと860隻に採用されているようなので、結構実績はあるようですね。

    兄弟船

  6. 二重反転プロペラは、当然ながら推進軸が内外二重となりますので、軸系の重量増大を招きます
    また、内軸の軸受は、相対滑り速度が外軸の約2倍となりますので、平軸受だと潤滑に相応の配慮が必要です
    んでお題に戻って
    >軍艦での二重反転プロペラの採用例が少ないのは、どのような理由に基づくのでしょうか。
    ・・・については、
    1. 主機が艦尾近くでないと推進軸が長くなるので上記の欠点が顕著となる(潜水艦、魚雷、それにタンカーなどは推進軸が短い)
    2. 軍艦は駆逐艦以上は多軸(2軸以上)なので、互いに逆回転とするコトによって単螺旋のような左右(潜水艦や魚雷の場合は上下左右)への傾度が打ち消せる
    3. 武人の蛮用に耐えるには構造がシンプルなほうが良い
    4. 燃料費があまりやかましく言われない
    などが挙げられると思います
    駄レス国務長官


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