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戦艦等の大型艦船において、一度魚雷が命中し浸水した箇所に、もう一度魚雷が命中するとどうなるのでしょうか? ちはや |
- 一度命中して大穴が開いてる中に突っ込んだのか、進水箇所の外板に魚雷が当ったのかで、話は違います。
前者ならば(その可能性は極少ですが)船体内部隔壁近辺で炸裂して大損害を艦に齎すでしょう。
後者ならば、浸水の程度で若干変ります。
つまり炸裂した板の内側が完全に水没していた場合は、その外板は壊れますが、内部への被害は、魚雷が遠くで炸裂したのと事実上同じなので、内側の隔壁が例えば頑丈で多重であったならば、被害は拡大しない可能性があります。ただしすでに浸水していた海水が動く事で、隔壁のみならず各種の配管や想像も無いような遠くのどこかに影響を齎す可能性は別に存在します。
また多少しか浸水して無かった場合は、魚雷の炸裂によるエネルギーの幾ばくかを浸水した海水が吸収するかも知れないという程度の話しになると思われます。
まあ、乱暴かつ単純にいうと、既に浸水してる部位に当っても、無傷の場所ほどの大損害にはならないと思われます。
SUDO
- 1における前者の効果を狙って、大型艦艇に対しては発射する場合、2本を同じ射線でと言う事をしていたようです。
具体例は忘れましたが、潜水艦戦記の中にはそのような記述があったように思います。
hush
- >2
相手が止まってるんで無い限り、同じ場所には当らないでしょう。
片舷に連続して二本当れば大損害確定(転覆すらある)だから、それを狙ったのであって、一種の二重弾頭効果を期待しての物では無いと思われますが。
SUDO
- >3
なるほど、あれはそう言う事だったんだ。
しかし、同一箇所に当てると言うのは相手が止まっていたとしても難しいでしょうね。実戦でそのようなケースが生じるとしたらかなり稀有なケースになりそうです。
hush
- >3
hush先生の言われるような事例は少ないですけど、伊168潜の田辺艦長が「(ヨークタウンを確実に仕留めるため)魚雷二本を一本として使用するため、(中略)1番・2番発射管の魚雷を発射した後、3番・4番魚雷発射管の魚雷を前の魚雷と同じ開度で同じ航跡に乗るように発射した。こうすれば小さな命中4発の変わりに大きな命中2発が得られる」と述べているように、やったことが無いわけでは無いですよ。
>4
サラトガの例がありますね<同一個所被弾。もっともこの際は乗組員は同一個所に2発命中、と報告したのに、被害調査の結果破口が一個なので1本命中と判定された結果、それが公式記録に記載される羽目になりましたが。
大塚好古
- それでサラトガの被雷数が二本とも一本とも書かれている本があるわけなんですね。
架空戦記ファン
- おかしな他意はありませんので、他の方と違う点はご容赦を。
状況によって結果は色々でしょうが、軍艦の場合、浸水している区画の直近で爆発
が発生すると、隔壁が抜ける(割れる)等、惨い影響が出る状況のほうが多いのでは
ないかと思います。
理由ですが
1)液体は非弾性なので、爆発に伴う衝撃(圧力)の変化は空気中に比較して
ストレートに伝わるであろう。
2)外販(装甲)は強度部材等によって比較的直接に支えられているが、隔壁に
ついては間接的に支えられている構造が多いし、板厚から考えても装甲板より
衝撃には弱いであろう。(割れるというより、抜けるというパターン)
なんてところです。
非弾性:この場合は圧縮されない物質の事と捉えてください。
水も厳密に観測すると圧縮されますが、空気等の気体に比較して
極少量なので非弾性と見ます。
例えば、全く変形しない筒(パイプ)があるとして、その筒の両端を
コルクで栓をし、中で極少量の爆薬を破裂させるとします。
筒内部を水で満たした場合と空気で満たした場合を見ると、水で満た
した場合のほうが遥かに大きな運動量がコルクに掛かります。
これは、筒内部が非弾性物質なので、両端にモロに爆圧が掛かった
ためですね。(注射器でも実験できます。)
この現象があるために、爆雷等は極少量の炸薬で、かつ直撃しなくても潜水艦の
耐圧壁を破壊できるんではないかと思います。
また、強度材に直接固定されているわけでもなく、かつ板厚の小さい隔壁の強度は
推進時の抵抗(衝撃)でさえ支えきれない場合もあると思われますので、この面か
らも隔壁の抜け等が発生する場合のほうが多いのではないかと。
蛇足ですが。
もちろん爆発が発生した深度によっても被害は変るかと思います。
極論すれば、爆発点が水面に極々近い場合は、爆圧の大半が空中に抜けてしまい
隔壁に及ぼす影響は小さいでしょう。
また、先の方のご照会にあった、「同一射線で2発発射する」と云う例は、相手の
速度、次発までの時間にもよりますが、比較的近い場所に2発が着弾する事が少々
でも期待できますし、主たる効果は同じ様な場所に2本受けることでの強度部材
への影響でしょうが、波及効果として、1本目着弾付近の隔壁への影響が出るかも
しれませんね。
機械屋
- >7
思い違いが大きいかと。
大型艦艇の場合、外板の内側に水中防御隔壁というものがありまして、その更に内側が船内構造です。
で、水中防御隔壁は、船体強度部材でもあったり、もしくはそれに頑丈に固定された、一種の装甲です。
魚雷を受けると外板が破砕されますが、外板と、水中防御隔壁と、その間の空間(場合に依っては多重化されてます)で打撃を吸収し、防御隔壁が守られ、船内を守るという構造になってます。
ですが、隔壁の外側の空間は壊れるし、浸水もするし、それは被雷部分の前後10m以上にも達する事が有ります(これは隔壁の頑張り度と魚雷の威力次第です)
そして魚雷が水中防御隔壁を抜けるかどうかは、この衝撃波と、破砕された船体破片の打撃と、爆発ガスの威力の多重打撃に耐えられるかどうかにかかってます。
そして水没してると、破片の突入が事実上阻害されちゃうんです。
衝撃波は距離に応じて減衰します。少し離れたところで炸裂した魚雷が船体に何も被害を与えなかった事例が多々あったり、防御構造に重油タンクを利用する艦船があるように、液体は衝撃波をよく吸収します。勿論空の空間でもですが。よって、外板>浸水部>水中防御隔壁という状態で外板部で魚雷が炸裂した場合、本来よりも防御力(水中防御隔壁の耐力)は向上します。
つまり隔壁は破れず、隔壁手前の空間は壊して浸水させられても、この場合は既に浸水もしているので、爆発圧力によって更に船体外周部の浸水区画を広げる事は期待できも、それ以上はどうなるか不明。
勿論先発魚雷が隔壁を抜いていたりして、船内各所に浸水を波及させていた場合は、その浸水部に於ては被害が広がったりする事があるかもしれないが、それは状況次第だし、まったく普通の状態ならば、この二発目も一発目と同等程度の、つまりは隔壁の奥にある何か重要部にまで浸水を至らしめ、艦の戦闘力と生存性に絶大な影響を齎したであろうから、全体的には、却って打撃は少なくなったという事になります。
また潜水艦の耐圧殻は大型艦船の水中防御隔壁から見たら数段薄く、また爆雷の炸薬量は魚雷に差ほど劣るわけではなく、勝るものも少なくないという事も述べておきます。
SUDO
- >>8
>魚雷を受けると外板が破砕されますが、外板と、水中防御隔壁と、その間の空間(場合に依っては
>多重化されてます)で打撃を吸収し、防御隔壁が守られ、船内を守るという構造になってます。
ええ、理論的にはSUDOさんが仰るような効果も期待できるとは思います。
この場合、構造的には【海水−外部装甲板−空間(充填物は別考)−水柱防御隔壁】
という並びになっていますよね。
で、ご質問では「一度魚雷が命中し浸水した箇所に」という事ですし、SUDOさんの最初の回答にも
>一度命中して大穴が開いてる中に突っ込んだのか、進水箇所の外板に魚雷が当ったのかで、話は違います。
>前者ならば(その可能性は極少ですが)船体内部隔壁近辺で炸裂して大損害を艦に齎すでしょう。
>後者ならば、浸水の程度で若干変ります。
ということで、「前者ならば」で触れておられる「船体内部隔壁」が水柱防御隔壁を指すのかどうかは
定かでは無いですが、前記の構造でいうなら【海水−外部装甲板(破損して実際は効果なし)−空間(内部
には海水が充満)−水柱防御隔壁】という感じでは無いかと思います。
私が7で想定した場面もこれと同じわけですね。
力学の原理から考えると、空間内部に非弾性物質である海水が充満しており、それに圧力(衝撃)を掛けた場合
これはSUDOさんも仰るとおり、エネルギーの減衰は単純に距離(正確には爆発点から被作用点までの距離を
半径とする球体面積に比例)に比例して減衰します。
という事は、「つまり炸裂した板の内側が完全に水没していた場合は、その外板は壊れますが、内部への被害は
魚雷が遠くで炸裂したのと事実上同じなので」という事については、外板(爆発点)から作用点(内部)までの
距離次第となりましょうし、私の知っている例では、外販から隔壁までの距離は10mも無いでしょう。
となると、これまたSUDOさんご紹介の「それは被雷部分の前後10m以上にも達する事が有ります」という
事から見ても、「隔壁にストレートに衝撃が伝わり、恐らく外板より薄い隔壁は抜ける場合もあるだろう」と
いう事に繋がるんですね。
ちなみに、SUDOさんご紹介の「10mも被害」ということは非常に納得できます。
これは仰るとおり隔壁の頑張りでしょう。
つまり、隔壁外部が弾性物質で満たされていた&外板とその直後(内側)が非弾性で、それらが衝撃を
よく逃がした(非弾性ですので、衝撃を良く逃がします。)という事で、隔壁の外側にほんの少しでも弾性
物質の層が存在すれば、仮に外板より隔壁が薄くとも耐えられるという例でしょう。
ただ、隔壁外部が浸水した場合は非弾性層を通じて衝撃が(爆発点との間に弾性物質の層が無ければ)
ストレートに伝わりますので、これまたSUDOさんが仰るような「場合に依っては多重化されてます」
というように、弾性層を多重に容易する必要が出てきますね。
それと、蛇足で非常に恐縮ですが.....。
アヤフヤな記憶ですが、爆雷の炸薬量は日本の場合で100kg〜150kg、アメリカのもので
100kg弱〜270kg前後で有効距離が30〜40m前後ではなかったかと記憶しています。
航空魚雷は正確には知らないのですが、大抵は2倍前後ではないでしょうか。
もちろん、潜水艦の耐圧船殻の板厚が薄い事も炸薬を減らすことが出来る主要因ではありますが
例えば、駆逐艦の横30m〜40mの水上で炸薬を爆発させても(弾片による被害が無ければ)駆
逐艦は沈まないのでは無いかと思います。
ところが潜水艦は沈む......。
これは周囲が非弾性の海水で、爆圧が抜ける水面までの距離が長い(爆圧が大気中に抜けるより早く
潜水艦に到着する)からと考えるべきだと思うんですね。
そうでなければ、魚雷は史実より遥かに凶悪な存在になっていたとも思うんです。
(40m向こうで爆発した魚雷が駆逐艦を沈めるとか。)
機械屋
- >9
ちょっと違います。
(海水)船体外板(吸収層・浸水する)水中防御隔壁です。
船体外板は、物凄く薄いんです。艦の規模によっても異なりますが、場合によってはランチが当っただけでへこむ恐れがあるようなものもあります。
逆に水中防御隔壁は、例えば戦艦長門では高張力鋼25mmを三枚重ねてます。
魚雷が当るような深度には装甲はないのです。
大和なんかでは装甲がありますが、それが水中防御隔壁になって、その外側に船体外板が来るようになってます。
だから、外板よりも比較にならないほど頑丈で強靭な水中防御隔壁を、3〜5m離れた水中衝撃波だけで粉砕できますかと。
隔壁を歪ませる事は出来るかも知れません。ですが隔壁の後ろに水防壁が普通は存在するので、そこで浸水は止まっちゃう訳です。大型艦の防御構造は何重にも色々な工夫が為されており、一枚目をはがされたぐらいで如何にかなるようなものじゃないのです(勿論例外は多々有ります)
また潜水艦ですが、早々沈みません。
日本軍の実物級実験では、19mで炸裂した爆雷によって、内殻の鋲接部から漏水が起こるとされてます。つまり浸水が始まるだけで、即沈没じゃないんです。潜水艦はそうなったら浮上するか、緩慢な死を待つかを余儀なくされるだけであり、駆逐艦で言うなら至近弾でちょっと浸水した程度の損害でしかないんです。
また爆雷に対する投下艦の安全距離は70mとされてました。30〜40mで爆発されたら何等かの被害が出ることもあるでしょう。
水中での爆発が海面近辺より危ないのは事実ですが、浸水した艦に当った魚雷は海面下5〜10mで炸裂し、それも外板に当ってるんですから、非弾性であるとみなすのは難しいでしょう(浸水部に向かった打撃とて、該部の仕切り板の変形や、完全冠水していない等が予想されます)
また魚雷の炸薬ですが、航空魚雷で100〜420kg、一般的なのは150〜250kg級です。爆雷とあまり変らないんです。
SUDO
- 大和型戦艦の場合、舷側装甲は傾斜20°最厚410mmですが水面下40cm程でバルジ上端に達し、そこから下部はインナーアーマー(艦体最外板の内部に装甲がある)となり艦体最外板は装甲ではなくなります。
バルジ部の艦体最外板の厚みは14mm〜22mm、艦底部で22〜25mmです。
ソースは「戦艦『大和』図面集」(ヤヌス・シコルスキー氏著)です。ご参考まで。
Ranchan
- >>10
ええ、仰る事はよく理解できます。(構造と板厚の点ですな。)
ただ、SUDOさんの理論であると、(多くの場合)魚雷は第一激で外板+水中防御隔壁を
破らないと(船内への)浸水による撃沈は不可能となるわけですね。
ちょっとご説明します。
今回の設問(ご質問)では「外板を破り、内側の隔壁までを浸水させている」という事です
ので、結果として外板の厚みは関係ないわけですね。
で、SUDOさんの説である「外板よりも比較にならないほど頑丈で強靭な水中防御隔壁を
3〜5m離れた水中衝撃波だけで粉砕できますかと。」という事が正として考えると、戦艦の
水中防護隔壁を破って船内に浸水させるには
1)第一激で外板を破り
2)第二激を破れた外板の部分(むき出しになった隔壁部分)に直撃させ
水中防御隔壁表面で爆発を起こし、その力でもって隔壁を破壊する。
という事が必要ですね。
確かに、戦例を紐解けば、結果として同じ部位に2発を受けた例はあるでしょうが、上記の
要件については、これはもう確率論が数重に支配するわけで、「水中防御隔壁が存在する
部位については、船内浸水は余り考慮する必要がない。」というあり難い思想ができそうな
気がします。
さらに積極的に考えましょうか。
ある魚雷(仮にA魚雷としましょうか)を受けて外板を破られ、水中防御隔壁まで浸水して
いたとしても、応急修理等で水中防御隔壁の外側に適度な厚みの外板(魚雷Aが爆発するに
充分な衝撃を与えられる板厚)をぶら下げておけば、その部分に魚雷Aを受けても問題は
ない、つまり、水中防御隔壁との間の浸水があっても、「防御についてはなんらの心配がない」
ということになるんですね。
で、ちょっと観念から離れて見ましょう。
爆薬の爆発によって生じる衝撃エネルギーで金属や管を成形する「爆発成形法」というものが
あります。(WEBでもここらは結構紹介されているかと思います。)
これは大別すると、試料の表面に爆薬を密着させる「直接法」と圧力媒体を介する「間接法」に
分類されるんですが、間接法の圧力媒体には大半の場合、水が用いられます。
空気でなく、容器に封入して非弾性にした水を用いる理由は種々ありますが、大きな理由として
は「空気に比較して衝撃波の作用効果が大きいため、少量の爆薬で変形が可能」ということが
存在するんですね。
※:どの程度の差かは学生時代の資料を引っ張りださないと解りませんので
ご容赦を。 あやふやな記憶ですが、200kgという大量の(しかも燃焼速度の
早い)炸薬ですから、5m程度の距離では、直接法と間接法での衝撃エネルギーの
差は無視できるほど小さいのではないかと思います。(圧力伝播の形が水中では特
殊、例えば多重衝撃による作用エネルギーの増大等が存在しますしね。)
なんといいますか、メジャーでないものを振り回して煙に巻いているような印象で恐縮ですが....。
確かに、SUDOさんの仰るように、材料厚みから入ると破れないんではないか?という感覚に
私もなりますが、相手側の炸薬と圧力伝播から考えると、これはもう充分に起こりうるという
考えになるわけですね。
もし資料類が必要でしたら、図書館等で簡単に手に入りそうなものをご紹介しますので
お気軽にご用命くださいな。(宇宙開発事業団系の論文に、解りやすいものがあったと思います。)
機械屋
- >>10
で、もう少し
>水中での爆発が海面近辺より危ないのは事実ですが、浸水した艦に当った魚雷は海面下5〜10mで炸裂し
>それも外板に当ってるんですから、非弾性であるとみなすのは難しいでしょう(浸水部に向かった打撃
>とて、該部の仕切り板の変形や、完全冠水していない等が予想されます)
とありますが、先ず
1)爆圧は静水が全周から均等に掛かっていますので、極論すれば、爆圧は「爆発点から
作用点までの距離によって決まる」と考えていいかと思います。
つまり、水面1mの爆発でしたら、爆発による衝撃が1mに達した時点で上方で
静水圧がない空気中に触れますので、爆圧はその部分に多く逃げる可能性があります。
(魚雷が命中した場合に、上方向に水中が高く上がるのはこのためですね。)
ですから、先のSUDOさんの例の「3〜5m離れた水中衝撃波」というのは、爆発が海面下
5〜10mというのを考えると、全周から静水圧を受けた状態、つまりは非弾性流体無での爆発
と考えるのが妥当と思います。
重ねますが設問では「隔壁まで浸水」ということですし、SUDOさんも仰るように
「(海水)船体外板(吸収層・浸水する)水中防御隔壁」ですから、これはもう密閉された
空間の大半が非圧縮性液体で満たされている「非弾性」と考えるのが宜しいでしょう。
ポイントは外板のあるなしではなく、外板と防御隔壁の間が何で満たされているかです。
もちろん、空気と水が混在する場合もあるでしょうが、空気が充分な量なければ緩衝作用も
比例して落ちますし(そもそも、200kgもの炸薬の爆圧を緩衝できる空気量は膨大な
量になりますし.....)、水中での衝撃波の伝播を減衰させうるほどの形態を保持する
(どこに当たるか解らない魚雷に対して、そういう狙いの設計をする)事は現実的に不可能
でしょう。
2)完全冠水していない可能性は勿論あります。
もっとも、それは設問をどう捉えるか、どういうケースについて解答するか....という点で
すから、思い違いという範疇ではないような気もします。
むしろ、「衝撃を吸収するほど上手い具合に冠水させる」というのが困難なようにも感じ
ます。
もちろん、こういう事(設計)が不可能というわけではないです。
ただ、相手は言い方は悪いですが「どこに、どういう角度で当たるかは設計者が支配できない
相手からの攻撃」ですし、水中での圧力伝播を考えても、相当厳しい(条件を整えるのが
難しい設計)でしょう。
機械屋
- >>10
で、ついでに。
潜水艦の例は、公式などの大仰なものを振り回さずに(感覚的に)ご理解いただこうと
考えて提示した例ですので、あまりおきになさらないで下さい。
仰るように、ケースバイケースですしね。
ただ、ここもやはり物理法則が支配するというか、「非弾性とみられる水中で爆発させれば
炸薬が少なくて済む」という原理に支配されているんだと。
(例が悪かったかもしれませんね。 申し訳ないです。)
感覚的な例なら.....。
一部の地域では、川魚を取るのに、川の中の石に衝撃を加えるって方法があります。
川の中の石に、大きな石をぶつけて、衝撃で魚を気絶させるんですね。
面白い事にこの場合、魚を空気中に吊るして(例えば水槽に入れて)同じ事をやると
例えば双方1mづつの距離でも、水中の魚は気絶しても、空気中の魚は(音で驚くものの)
全く気絶はしません。
ちなみに、双方の距離に置ける音量には大差は無いです。(当然ですね。)
水中での圧力伝播ってのは、これほど減衰しにくいものなんですが、この例の方が良かったかも
しれないと反省しながらご紹介しています。
機械屋
- >>11
興味深い数値をご紹介いただきまして有難うございます。=)
非常に参考になりました。(一つ賢くなりました。)
機械屋
- >12他
先にも述べたように、魚雷の水中爆発は衝撃波による板破砕と、破片による板破砕と、ガス圧によるもののトリプルで行われるのです。
第一撃の衝撃波で外板を破砕し、続いて残衝撃波と金属流と爆発ガスが、外板と隔壁の間の空間を踏破して隔壁に襲い掛かり、これらが隔壁を破壊するのです。
だから隔壁に水中衝撃波が到達しても、それが、従来のトリプルコンボよりも大もしくは同等の打撃であると判断できるのかどうか、なんです。
少なくとも真珠湾のウェストバージニアの事例や、プリエーゼシリンダーの構造を思えば、冠水してるほうが打撃は弱くなると考えざるを得ません。勿論対象の強度と魚雷威力から覆ることも無いとはいえないとは思いますが、大型艦の構造と実際の戦例を先ずは確認してみる事をお薦めします。
SUDO
- >>16
議論(?)がループするのは本位ではありませんが、折角の休暇日なのでもう少し。
>先にも述べたように、魚雷の水中爆発は衝撃波による板破砕と、破片による板破砕と
>ガス圧によるもののトリプルで行われるのです。
はい、これについては、そのとおりだと考えます。
ただ実際的には、板破砕片については、飛散方向への抵抗(例えば、周囲が水で、その中を
断片で進むのであれば水よる抵抗)と、飛散開始時点での運動量の関係がありますから、大して
期待は出来ないでしょうが。
ただ、(ここがループしている部分と思うんですが)
>第一撃の衝撃波で外板を破砕し、続いて残衝撃波と金属流と爆発ガスが、外板と隔壁の間の空間
>を踏破して隔壁に襲い掛かり、これらが隔壁を破壊するのです。
といわれる点、(1発目についてはお説の通りだと思いますが)
一度浸水している部位について、健常時と同じ空隙を保持しえていると考えるか考えないか.....
でしょうか。
保持しえていると考えれば、2発目も十分に保てるのは当然ですね。(その空隙の存在で1発目
を耐えているんですから。) ただ、私としてはそうは考えられないんですね。
文字で書いた場合、「外板に当てて水中装甲をむき出しにして、2発目を剥きだしになった
水中装甲に直撃させなければ、水中装甲は破れない」ということになりますが、こうなると
感覚的にSUDOさんも疑問を感じられませんか?
※:この時、現実では鋲接部の緩み等での浸水もあるでしょう。 そして、その量が大きい場合は
無傷と評価するわけには行かないでしょう。 また、その量が少ない場合は、装甲厚みよりも
排水ポンプの能力が防御上のネックになりますね。
また、後半では既にSUDOさんご自身が私と同じ事を仰っているように感じます。
一撃目では「外板の後ろに空間が存在する」ために、第一激の衝撃は外板が受けますね。
じゃ、外板が破損して衝撃を受けきれなくなっている(部位に着弾した)二激目は、その衝撃を
何が受けるのか。
爆発点(破損した外板)と作用点(水中隔壁の表面)は、SUDOさんのご説明なら3〜5mの
距離です。 爆圧が大きく抜ける水面は5〜10m先です。
両者の間に健全な緩衝層があるか否か。
つまりは「外板は非弾性物質なので、第一撃の衝撃は周囲の装甲(非弾性物質方向)にも伝わり
減衰する。 しかし、2発目の着弾では、1発目着弾で外板が破損している状況であり、外板での
衝撃の拡散は1発目一撃目より小さい。 よって2発目では、1発目のより増大した第一撃を中装甲
と残存緩衝層で受けなければならない」となるんですね。
で、私の考えを結論から申し上げると「爆発点から作用点までの距離をA、爆発点から大気(水面)ま
での距離をBとした場合、A>Bならば、爆圧の大気中への放出は少ないので、非圧縮性で静水圧が掛
かった水中(近似非弾性下)では、1撃目より大きな衝撃が襲う」となりましょう。
ウエストバージニアの件については、工学的に紐解けるほどの状況を得られませんでしたので
パスさせていただくとして(申し訳ありません。 諸数値をご紹介いただければ紐解けるかと
思います。)、プリエーゼシリンダーのメカニズムについて衝撃伝播からご説明します。
ポイントは「外板がなぜ破損するのか?」だと思うんですね。
感覚的にご説明します。
鉄製金魚鉢の中に鉄板を吊るしている状況で、少量の炸薬(金魚鉢が割れる最低量)を爆発させたと
考えてください。
この場合、金魚鉢が割れても、鉄板は割れないでしょう。
なぜなら、鉄板は周囲を非弾性物質で囲まれていますので、伝えられた衝撃は周囲の非弾性物質に
逃げ、鉄板には圧縮・引っ張りの応力しか掛かりません。(厳密に言えばせん断応力も掛かりますが)
つまり、「鉄板が破損するか否かは材料の圧縮・引っ張りの強度と、衝撃伝播によって減衰した爆圧の
関係に依存する」なんですね。
他方、鉄製金魚鉢が割れるのは「金魚鉢の外側は弾性物質であるので、衝撃全てを受け、圧縮・引っ張り
に加えてせん断応力が掛かる」という事ですね。
となると、外板内部を「衝撃を充分に伝播できるだけの量の非弾性物質で満たしておき、その非弾性物質
を水中装甲と絶縁(間に弾性層を入れる)しておけば、衝撃は非弾性層を伝播して減衰する」という効果
が期待できると。
で、非弾性物質を水とすると、艦船内に無駄な重量を抱え込む事になるので重油にし、(おっしゃる様に)
爆発ガスのエンタルピー(このときのメカニズムは、ガス体が作用しますので弾性物質内での材料応力に
なります)で非弾性物質を封入している層が破損して広範囲に機能を喪失する状態を避けるために、非
弾性層を小分けしておく。 このとき、非弾性層を十分密にして、かつ衝撃伝播しやすい形(量を大きく
する等)にしておけば更に有効なので、パイプ形状の物を用いるのがいいだろう.....となりますね。
追い討ちをかけるような他意はありませんが....。
SUDOさんのご理論について、一撃目は非常に納得できます。
ただ、今回の「質問のケース」ですと、衝撃の伝播を考慮しないわけには行かないので......。
これを無視すると、現在使っている各種の工作技術の原理原則や、各種の研究が崩れますが、それが
どう説明できるか.....って感じなんですね。
なんといいますか、シンプルな状況下なら、爆圧は距離の3乗に反比例し、爆薬の総エンタルピーに
比例する....というのは原理や観測からも納得できます。
ただ、それは弾性物質内でのことで、非弾性物質が関わるとなると「3乗に比例」と単純に割り切れ
なくなるのではないかと思われます。
機械屋
- >>17
いや、仰るコトはよく判るんです。
だから、ウェストヴァージニアの事例を見てくださいと。
衝撃波が達するというのと、該部を壊せるは別の話です。
数メートル奥にある防御隔壁を壊せるほどの衝撃波を魚雷が元々持ってるかどうかは怪しいのです。
これは潜水艦と爆雷の関係でも判るでしょう。潜水艦を壊そうと思ったら、19mで歪むんですから、破砕するならもっと近い距離が必要で、その数倍の耐力を持つ大型艦の防御構造にはどのぐらいの距離になるでしょう?
15mm前後の外板が破壊されるのは炸裂点から2m前後なんです。魚雷破口サイズから見てそんな程度です。逆にいうならそれより遠くでは大変形はしても破砕されません(勿論、爆発威力等でも可変します)
ではその数倍の厚みの隔壁を3〜5mの距離で破砕できますか?
ゼロ距離なら50〜100mmの隔壁をも破壊できる可能性はあるでしょう。それを否定する気はありません。ですが3〜5m離れて同じだけの打撃を与えられますか?
私は衝撃伝播を否定する気は全くありません。
ただ、それでは変形はできても破砕には足りず。艦の防御構造から見たら、無傷部に当った場合に比して大きな被害(浸水量等)を与えられる保証は無いという事です。
勿論、いけそうな構造もあります。
大鳳みたいに、外板・大きい空層・薄い液層・水中防御隔壁というデザインならば、元々破片が隔壁に達しないという見積もりでデザインされてるので、空層による爆発威力拡散が冠水によって果たせない場合、隔壁が水中衝撃波に耐え切れない虞はあるでしょう。
また大和のように、厚みはあるけど装甲であって変形で吸収する度合いの弱い隔壁を用いた一層式、つまり外板・大空層・水中防御隔壁の場合は、冠水してるほうが、隔壁部材の特性から危険性は上かもしれません。
ですから、先ずは防御構造と被害事例を調べてください。たぶん、威力(さらには用いる炸薬の特性)と構造や部材の特性で、何ともいえない千差万別の様相を見せると思われます。
SUDO
- 蛇足を承知の上で少しだけ
>17.
>
なんか、機械屋さんの一連の発言を見ていての感想になるんですけれども、衝撃波(爆圧)以外の要素を無視しているから話が噛み合っていないのではないですか?
具体的には、>16.でSUDOさんが述べられている『魚雷の水中爆発は衝撃波による板破砕と、破片による板破砕と、ガス圧によるもののトリプルで行われる』の第2、3要素に全然触れずに、第1要素(衝撃波)のみを見て書き込まれているので、文面自体は非常に綺麗に纏まっているものの、方向性にズレを生じていますし、全般の流れからすればさして必要としない解説(ex.プリエーゼシリンダーのメカニズム)をツラツラと書き込んでいるのではないですか?
口さがない台詞を許してもらえれば、機械屋さんの一連の発言は実験解析(理論値)であっても、決して事故調査では無いんですよ。
だから、爆圧に関しては非常に綺麗な理解と予想に繋がっているのですが、実験では無視すべき要素(この場合だと、第2要素の破片による船内構造の切り裂きetc.)が大きい場合、事象とのズレが生じている。だからこそ、「事例を見てくれ」といったレスが帰ってきているのではないでしょうか?
で、話を元に戻しまして、空間(空気層?)をはさむ場合と、全水中(浸水箇所の外板に当った)の場合での被雷時の差ですが、ガス流や跳片(スプリンター)を考慮すると、後者の方が減衰が大きなため被害(特に切り裂き)が少なくなるでしょうし、爆圧も空気中よりも水中の方が隔壁全体により均等に伝播しますから区画全面が歪む事で吸収しそうな気がします。
(もっとも、歪みが蓄積し、区画全体が少しずつ破壊されて全体的に漏水する事は否定しませんが、これには次の防水区画で食い止める事を期待するべきでしょう)
ちなみに希少な例(>1.一度命中して大穴が開いてる中に突っ込んだ)に関しては、言わずもがなというヤツですね。
ついでに、レス>17.の※部でご自身が述べられているのですが、艦艇へ与える被害とは、浸水多量による転覆・沈没(今回は浸水だけに限定させて下さい)であり、局所的に見れば防水隔壁を壊せばよく、手法は爆圧による破壊(部材を吹き飛ばし/抜く、焼き切り)でも、構造の歪み(多量の漏水)でも、魚雷の破片や吹き飛ばされた部材による切り裂きでも何でも良いんです。
できれば3種類とも加わったトリプルコンボがベストなのでしょうが、ガス流や破片の被害を期待しにくい水中での全水中での被雷の場合だと、第一撃ほどの被害を与えるのは考え難い(但し、歪みが蓄積するなどして被害が倍加する可能性はある)といった発言は自然な流れでは無いでしょうか?
追記
ずっと↑で、至近弾を例に出されていましたが、直接船体に被雷して構造が(内側から)破壊される例と、均等に圧力(至近弾)をかけて構造物を押し曲げる例とに分けて考えられた方がよろしいのではないかと思います。
能登
- >>18>>19
なるほど、能登さんのご教示で私の説明の悪い点がわかりました。有難うございます。
で、この話については「現状の観測機器で」「実機の被害を確認できない」ということがありますので
どうしても実験解析(理論値)になるのはご容赦を。
まず、「誘爆を起こさず、魚雷のみで浸水した大戦中の戦艦」が残っていませんし(少なくとも、それ
を再観測したものはありませんし)、当時の結果を見ても、(表に出ている)観測としては非常に定性的
なので、そこから原理を導き出す事はできないんですね。
ですから、原理としては実験解析から出して、それで定性観測を評価すると「非常にマッチするじゃん」
ってことなんですね。
爆発に関する観測が定量的にマッチしだしたのはここ30年ほど、なかでも「相当説明ができてきたな」
ってのは、ここ20年ほどなんです。
これは、種々の実験や観測から、測定方法や機器が開発されたからなんですが、それでやっと
極々一部に、艦船への水中爆発の影響も取り入れた「構造材への影響系」の論文が出ているようですが
言い切ればそれ以前の観測については「始点と結論はわかっているが、その間のプロセスがわからない」
ものなので、当時の記録を観察しても適切に評価できない(誤差ファクターを排除できない)なんですね。
そのため、ウェストバージニアの実例(動的実例かつ定性的観測)に関しては、仮に見ても正しく評価で
きないんですよ。(仮に、水中爆発の衝撃効果を肯定するものでも.....です。)
ただ、プリエーゼシリンダについては、静的モデル(他の要因を純粋に取り除いたモデル)で定量的
観測も可能ですから、これについて先のレスで解釈もうしあげたと。
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で、ここで私の書き方が悪かったんですが、「魚雷の水中爆発は衝撃波による板破砕と、破片
による板破砕と、ガス圧によるもののトリプルで行われる」という事、これは水中爆発において
も当然発生します。ただ、空気中の爆発とは、ちょっと異なるんですよ。
ここらの基礎知識ですが、弾性とは「物質が外部からの力によって変形するかどうか」であり
圧縮性とは「物質が外部からの力によって体積を増減させるか否か」です。(両者別物です)
1)水は非圧縮性であるけども、液体であるので本来は弾性
2)空気は圧縮性であり弾性
3)外板および水密区画は非圧縮製であり非弾性
ってことで、本当は水は弾性物質なんですが、ここに、先端を潰した注射器があるとします。
中に空気を封入した場合は、ピストンを押すと内部の空気が圧縮される(体積を減じる)ために
注射器は変形(ピストンが押し込まれる。)しますので、注射器全体としては弾性があります。
※:この場合、注射器は外部からの圧力を気体の圧縮(圧縮熱)という形で吸収した
わけで、弾性とは「外部からのエネルギーを他の形に変換して保持できる能力」という
事が出来ます。
鋼材も、ブロックですと外部エネルギーを他の形に変換できない(圧縮応力分や、凹み
という形では吸収、極微量なので工学的には無視します)のですが、スプリングという
形にすると外部エネルギーを吸収しますので(スプリングの縮み)弾性に変ります。
で、注射器に水を入れた場合は注射器全体としては非弾性ですよね。
これは当たり前で、全て非圧縮性物質が内部にあり、外部は非弾性物質だからです。
つまり、(非常に乱暴な結論ですが)
原則1:弾性物質の場合は、それ自身が外部から受けたエネルギーとは違う形に変換
するために、受けた外部エネルギーの一部はロスするが、非弾性の場合はロス
ロスが発生しない。(圧力伝播面積はどちらも同じという点に注意。)
となります。(
次に、
>第一撃の衝撃波で外板を破砕し、続いて残衝撃波と金属流と爆発ガスが、外板と隔壁の間の空間
>を踏破して隔壁に襲い掛かり、これらが隔壁を破壊するのです。
この点について、私も全面的に同意(工学知識は拙いですが....)なので、これを少しメカニズム
として分解してみます。
【分解モデル】
1)爆発の発生→個体から気体への急激な膨張(発熱反応)
2)爆発のエネルギーが3要素に分解される
a.ガス体の膨張に伴って発生する圧縮波
(周囲の物質が圧縮されて生まれる圧力エネルギー)
b.爆発ガス自体の熱エネルギーである燃焼波(いわゆる火炎)
c.圧縮波と燃焼波が共存したデトネーション波
d.音波
とまぁ、簡単に書くとこうなるわけですね。
で、上の引用にある「第一撃の衝撃波」と「残衝撃波」というのは圧縮波であるわけです。
また、「爆発ガス」というのは燃焼波であるわけですね。
そこで、上のa/b/dについて、空中爆発と水中爆発での作用点におけるエネルギー割合を
見ますと
圧縮波 燃焼波 音波
水中爆発 70〜80% 両者合計で20〜30%程度
空中爆発 20〜30% 両者合計で70〜80%程度
となります。(デトネーション波については、乱暴に言えば圧縮波と燃焼波に4:6くらいで
割り振られると考えていただければ結構です。)
※:出展をご紹介したいですが社内秘なのでご容赦を。
論文としては、同じ様な観測を「水中爆発における衝撃現象について」として
田中克己氏(産業技術総合研究所)論文化しておられたと思います。
つまり、(爆発点と作用点の距離にも寄るのですが)水中爆発では、エネルギーの大半が
圧縮波という形で伝播され、空中爆発では大半が燃焼波(もしくは燃焼波と同時に到達する
デトネーション波)として伝播すると考えてください。
では、なぜこういう事が発生するか。
これもモデルにすると、先に書いた分解モデルの続きが以下のようになるからなんですね。
【分解モデル】
1)爆発の発生→個体から気体への急激な膨張(発熱反応)
2)爆発のエネルギーが3要素に分解される
a.ガス体の膨張に伴って発生する圧縮波
(周囲の物質が圧縮されて生まれる圧力エネルギー)
b.爆発ガス自体の熱エネルギーである燃焼波(いわゆる火炎)
c.圧縮波と燃焼波が共存したデトネーション波
d.音波
→水中爆発の場合
3)爆発ガスが熱エネルギーで膨張する(熱によるガスの膨張)が、この体積増加
のエネルギーを周囲の液体が急速に吸収する。→燃焼波が圧縮波に変化
a.微視的に見れば、火球が小さい領域(爆発直後)においては、固体から気体への
変換が発生しつつあっても、火球内部の温度は恐ろしいレベルになります。
(それなので、鋼材表面で爆発を起こすと、熱貫流率が低い鋼材でも温度による
充分な応力が掛けられるんですね。)
b.火球内部に関しては、圧力も高いものになります。
ただし要注意なのは「この圧力が鋼材に掛かるわけではない」ということ。
圧力が発生するのは「球体が膨張しようとするが、外側に膨張を押し止める
抵抗が発生するので、火球体積の膨張と爆薬の燃焼(燃焼ガスの供給)に
アンバランスが発生している」からです。
つまり、外側の「膨張を押し止める力」が弱いor爆薬の燃焼が緩慢なら
圧力上昇は低く抑えられます。
なので、『弾性物質(空気)中で爆発する爆弾は厚い鋼材で爆薬を覆って外側の
抵抗を増やす必要があり、魚雷は外側が非弾性物質(かつ静水圧も持つ)の
水なので、爆弾に比較して薄い鋼材で覆うだけで済む』んですね。
c.そして、その圧力は空気中よりも効率よく外側に伝播されます。
なんとなれば、外にあるのが非圧縮性の水であるから。
つまり、燃焼波が微視的に見れば水を気化して水蒸気爆発を起こしたり
高速で周囲に伝播していくということですね。
ここら、水中での音波(圧力)の伝わり方が空気中より遥かに速い(高い)
ことを考えていただければ良いかと思います。
→空中爆発の場合
4)爆発ガスが熱エネルギーで膨張する(熱によるガスの膨張)が、この体積増加
のエネルギーを周囲の気体は充分に受け止められない(空気の比熱が低い)ので
『熱量の多くはガス体に残ったまま』となる。
機械屋
- 正直言って何を言いたいのか全く理解できません。
できうるならば、1)脳内にあるアウトラインがしっかりしていない思考を形にし、2)一旦整理した後、2)箇条書きにて、話して貰えませんか?
本来ならば衝撃インピーダンスの高低だけで話が終わるトコロをわざわざ水は非圧縮性流体、気体は圧縮性流体云々…の様に無駄に区別して話すことで、話を故意にわかりにくくしているようにも感じます。誰も貴方の言いたい事が理解できないでしょう。少なくとも私は全く理解できません。冗長的にだらだら書いてるなぁという感想しか持ち得ないです。
sorya
- >20
圧の伝播が効果的であるという事は判ります。それを詳細に解説したいという気持ちは(理解も納得も同意もしませんが)尊重します。
で、破片及びメタルジェットの突入の有無が問題の多くを占めるという事をご理解いただけますか?
この事は、ウェストバージニアと、同艦とほぼ同規模同構造のカリフォルニアの、真珠湾の被雷結果からも理解できるはずです。
勿論、それが詳細な破壊メカニズムを解剖する物では無いだろうと思われるのは判りますが、撃沈されながら引き上げられて調査された後に復帰したこの艦には、それなりに詳しい調査報告が為されております。
先ずはそれらを見た上で、もう一度解析して見てください。
何故カリフォルニアは二枚目を抜かれて、Wバージニアは抜かれなかったのか、5枚目の変形量は逆にWVの方が大きいのに。
これが浸水していた場所に被雷した結果として起こった事なんです。
カリフォルニアの二枚目は空層と一枚目の液層を突破した破片によってなされ、空層が冠水してたWVでは破片は来なかったが、空層が一つ無くなった結果として圧の最終5枚目への伝播はより強烈になったと、そういう事なんです。
ですから、もしも、二枚目までしかないような構造の艦の場合、空層が冠水してるほうが隔壁が抜かれないわけで、逆にこの魚雷がもっと大威力だったりしたら、空層が冠水してた場合は最終層が耐え切れなかった可能性はより高くなります。
どっちも起こりうる事態です。
つまりは防御構造と、破片の関係を見ないで圧だけで話を進められないのです。先ずは爆発衝撃波で生成される破片とメタルジェットの振る舞いとその威力にも意識を向けてください。その上で各艦で用いられた防御構造のデザインを良く考えてください。
SUDO
- え〜〜、ちょっと長くなりましたし、論文に近くなって読みにくいので、ポイントだけを
再掲してみます。
といいながらも、これも論文調で長いですがお許しを。(相当詳しくご説明しないと誤解が
解けないと思いますので。)
SUDOさんも能登さんも仰る「水中ではガス体の速度減衰が大きい」ということに着目します。
これは確かに「ガス体(燃焼波)」から考えると正しいんです。
でも、ちょっと視点を変えて考えてください。
「減衰=エネルギーの低下」ですよね?
となると、そのエネルギーはどこに消えるのか.......。
エネルギーは、何かの打ち消す作用をしないと消えませんね。(エネルギー保存の法則ですね。)
例えば、弾性物質ならば材質の変形(圧力や温度を応力に変換して消す)が可能です。
では、非弾性物質ならば?
答えは「非圧縮性なので、圧力にドンドンと変換していく」なんです。
(厳密には水の水蒸気化という"顕熱・潜熱"の形にも変りますが、これの一部も蒸気圧力と
いう形で圧力になります)
つまり、「ガス体の燃焼波はどんどん減衰するが、その分は周囲の物質圧力と(一部は温度に)
に変換される」ってことです。
しかも、炸薬の周囲を非弾性物質で囲う(ちょうど、爆弾が炸薬の周囲を厚い鋼鉄で囲うように)
ことで、膨張に対する抗力を生み出し、圧力上昇を効果的に果たす効果も生み出すんですよ。
ここをご理解ください。
このメカニズムが成り立たない(物理法則が通用しない)となると、私が先に述べたように
「現在使っている種々の技術が裏付けられなくなる」となります。
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そこで、ご質問の例に戻ります。
状況としては「外板が破れ、水中隔壁までが浸水している」です。
つまり
1)第一撃は外板を破れたものの、水中隔壁は突破できなかった。
2)水中隔壁までは水に浸かっているが、その空間は完全満水であるかは設問外
です。
これでは漠然としすぎていますので、もう少し具体的にしますと、SUDOさんご紹介の
3)外板と水中隔壁の距離は3〜5m
4)命中箇所深度は5〜10m
となりますし、私がプラスしたものとしては
5)空間が満水であるかは設問外だが、防御側が完璧に状況を設定できず(完全満水に
ならないようにする決定的な手段がない)ので、満水になる状況も発生すると
考える。
です。
この状態でモデルを解きます。
1)外板と水中隔壁の間(仮に外部空間と呼びましょう)が冠水しています。
2)その状態で、第一撃が命中した部分(破れば部分)の直近に第二撃が命中しました。
3)そこで爆発が起きます。
4)爆薬は、エネルギーを3つの形で放出します。
a.ガス体の膨張に伴って発生する圧縮波
(周囲の物質が圧縮されて生まれる圧力エネルギー)
b.爆発ガス自体の熱エネルギーである燃焼波(いわゆる火炎)
c.圧縮波と燃焼波が共存したデトネーション波
5)圧縮波はそのままの形態で水中壁に到達します。
6)燃焼波は、周囲が非弾性物質なので、エネルギーを圧力波に変換しつつ水中壁に
到達します。
丁度、ガス流が減少しているように見えますが、エネルギーは不可視の状態で保存
されます。(エネルギー保存の法則)
7)圧縮波と燃焼波は、減衰しながら伝播します。
減衰の近似式は(極単純なモデルで説明すると)
1)圧縮波は、進行距離を半径とする球体の「表面積」に比例して減衰
2)燃焼波は、進行距離を半径とする球体の「体積」に比例して減衰
(厳密には、圧縮波の伝播に従って、ある点では爆発点付近が真空になるので
その分の体積を減じる必要がある。)
ですから、圧縮波の方がエネルギーとしての減衰率は低いです。
8)圧縮波は、それを打ち消す物質に出会うと急速に減衰します。
水面に出会った場合は、運動エネルギーを水柱(水の運動)という形で極短時間に
放出します。
水中隔壁に出会った場合は、隔壁への圧力や衝撃、つまりは「せん断・圧縮・引っ張り」
の応力として放出します。(こちらは水の運動エネルギーとは違うことに注意)
要するに、空中であろうが水中であろうが、爆発のエネルギーは何らかの形で保持されます。
つまりはエネルギー保存の法則ですね。
ただ、空中の場合は与える相手が悪い(受け取り速度が遅い)ので、ガス体自体で保持して
ガス体が膨張しなくてはなりませんが、水中の場合は相手が良い(受け取り速度と形が空気に
比較して都合よい)ので、衝撃波という形で保持できるんですよ。
ですから、SUDOさんや能登さんの仰る「ガス流体が減衰する」という点は、これは全く
その通りと私も思うんです。
でも、その形は5次元の彼方に消える事は出来ないので、ほかの形でどこかに残存せざるを
得ない事になります。
それが圧力波なんですよ。(ですから、ず〜〜と圧力を中心にして論じているわけです。)
で、蛇足ですが....。
なぜウェストバージニア等の動的モデルを見ても評価できないか。
先ずは爆薬の正確な燃焼速度と有効爆発量が不明なんです。
なにせい、爆発直前の魚雷中炸薬を分析したデータは無いですしね。(実験なら出来ますが)
次に、鋼材の正確な物性も不明、被弾後の正確な変形量も不明。 もちろん、応力の量も
不明です。(曲がりだけでは評価できません。伸び・曲がり・変形が必要になります。)
しかし、プリエーゼシリンダーの場合は現実の実験として良く似た例も存在しますし、現在の
解析モデルからも評価できます。
なんとなれば静的モデルですから。
ちなみに、プリエーゼシリンダー設置艦船の被害の実例は知らないんですが、先ほどから述べる
水中爆発の理論から考えると、恐らく以下の様な事が出るんではないかと思います。
1)横方向の船体強度部材(船体の長手方向ではなく横手方向)に上手く設置すれば
相当量の爆発エネルギーを吸収できるだろう。
2)ただし、強度部材との連結方法を上手くやらないと、逆に広範囲に被害を及ぼす。
3)命中時に、通常の艦船への命中より大音響が出るはず。
ちょうど、歌合戦で慣らす鐘(? あのキンコンカ〜〜ンって奴です。)の様に。
4)シリンダーを納める部屋の施工が悪い(鋲接なら鋲の強度が低い等。溶接なら溶接
部位の強度不足)と、効果は殆ど出ないだろう。
機械屋
- >>21
真に申し訳ない限りです。
もうひたすらに私の説明力不足なので、心からお詫び申し上げます。
なにせい、燃焼工学系で爆発はセミプロですので......。
ただし、
>本来ならば衝撃インピーダンスの高低だけで話が終わるトコロ
という事ではありません。
エネルギー保存の法則、爆発直後の領域における燃焼波の衝撃波への変化がありますから
どうしても弾性・非弾性の説明を抜かすわけには行かないんですよ。
(実際、燃焼工学でもこの点が一つのポイントになりますし。)
>>20
ナルホド、面白い報告ですね。
確かに、充分にエネルギーを受けられる(質量のある)断片が存在すれば、断片効果も期待
できますね。
そして
>二枚目までしかないような構造の艦の場合、空層が冠水してるほうが隔壁が抜かれない
という点も同意です。
空層に冠水しているってことですから、その空想表面積に圧力が分散しますし。
(空層が充分な接合面表面積とで保持されていることが前提ですが)
ただ、
>メタルジェットの振る舞いとその威力にも意識を向けてください
ということですが、確かに私はとりあえず無視して話しているんですね。
ただ、これはもう設問の段階で「一撃目では薄い外販は破れているものの、水中隔壁が破れて
いない。→外板もしくは魚雷の弾等材料が、空気中を伝わったメタルジェットとして水中隔壁に
ぶつかっていても、水中隔壁は破れていない。」ってことで、論外にしているんですよ。
「カリフォルニアの二枚目は空層と一枚目の液層を突破した破片によってなされ」ってありますが
この破片は何の破片なんでしょうね。(外板なのか、骨材なのか。)
ま、長くなりますのでここら辺りで。
とりあえず爆発に関する工学研究から見ると、現状ではこういう風になって
いるよ....程度に捉えてください。
機械屋
- >24
隔壁が破られるか否かと、その近辺部位の浸水箇所の有無は関連しません。
一般論として、隔壁が破られなくても、命中箇所の前後10mぐらいの外板と隔壁の間の空間は浸水するんです。
だから、浸水してる場所への被雷は、破片等が隔壁を打ち破る威力を有していたか否かとは、無関係になります。もう多重にボタンの掛け違えというか、認識の微妙なずれが起こってるんです。
圧がかかって歪もうが何だろうが、それが魚雷の齎す破壊の総てではないという事実を認識した上でないと、各種の考察は空回りを続けるだけです。
SUDO
- >>機械屋(#24氏)
貴方はセミプロでもあり得ません。セミでもプロと名乗るからには、こんな冗長的で拙い投稿はできないはずですから。正直なところ、査読を受けた経験すら無いのでは?とも疑っていますよ。
例えばwebでよく見かける産総研の田中氏の名前は出すけどその筋の先駆者である疋田氏の名前を出さないところとかどこかで出してる秘術文書の書き方講座といった本の内容を忠実にトレスするようなところからです。個人的な感想を言わせて貰えると、情報が未消化のため未だ知識として結実していない=体系的な専門教育を受けていないといった感があります。
それはそうと、爆薬による構造破壊を考える場合は衝撃インピーダンス(定性的には音響インピーダンス)を考えるだけで十分です。必要なのは爆薬のエネルギ(つまりは圧力プロファイル)がどのような結合状態にて構造に伝達するのか?という話に集約されるのですから。所謂爆風圧が水を介して伝達された場合と空気を介して伝達された場合における相違を述べるだけで十分ですよ。ま。これはあくまでも爆薬によって引き起こされる一次被害に関しての話になりますが。でも、このくらいのマクロ的な視点で定性的には説明可能です。
sorya